忍者ブログ
変換なしの雑食夢

ran

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

銀英伝

「ビッテンフェルト閣下」
「お、ミュラー夫人」
「まだ違いますよ」
「来週だろ?ってどうした?」
「いや、そのですね」

柱に隠れているとビッテンフェルト閣下に見つかる。半笑いで。いやこちらにも事情がありましてと言いながら柱の向こう側を指差す。ひょこりと言わんばかりに柱の向こう側を見て剣呑な顔になる。此処は予想外。貴族の女性たちが集まって悪口を言っているのだ。誰の?勿論私の。


「なんだぁ、ありゃ?」
「いや予想してましたけど」
「そうなのか?」
「パウルさんはああいう人だから羨望と言うより珍獣を見る面持ちだったんですけど。ナイトハルトさんはああだから。礼儀正しいし人気があるから。いままでのぶんがどろっと」
「はぁ?」
「もう結構疲れてきた。」


そう言うと何故か憮然としたビッテンフェルト閣下が私の頭をガシガシと撫でてつかつかとその輪に入っていく。


「貴公らは何のつもりか!面と向かって言えぬことをこそこそ言うな!!!」

とご婦人に一喝したのだ。唖然とした。蜘蛛の子を散らすように逃げていくご婦人たちと満足そうに帰ってくるビッテンフェルト閣下。副官の方が困ったような顔をしている。


「いつもの事ですから」
「そう言えば、以前」
「先達てはお口添えありがとうございます。」
「いいえ。私は何も。でも」
「はい。困った人なのです」
「部下泣かせね。」
「悪口を面と向かって言う方ですから。ただ、あなた様の事は気にかけておいでなのでお怒りになられたんだと思います。」
「犬猿の仲って言われていたのにね。」
「閣下はそう思っておいでではないようですよ」
「?」
「珍しく芯のある強い女性だと。例の追いかけっこの後よく申しておいででしたから。」
「…」
「お疑いですか?」
「8割くらいは」
「あなたのプライスレス宣言がお気に召したようです。ただあの性格ですから。逃げられたら追いかけたくなるそうです」
「あらやだ。」
「何が嫌だ!」
「ビッテンフェルト閣下ではないですよ」


そうかと言って頭を撫でられる。くしゃくしゃと。髪がボロボロになってしまうわと言っても止めないで、よしっと大きな声で言うと腕を引っ張って連れて行かれる。


「お前もいちいち逃げるな!」
「ご婦人って苦手なの」
「そうか!私も苦手だな」
「…結婚することできるかしら?」
「誰がだ?」
「貴方が」
「…」
「何急に赤くなっているんですが」
「おまっ!もういい!!!」


そういうとナイトハルトさんの執務室に投げ込まれる。何事かと思ったのは私だけではない。ナイトハルトさんもびっくりして駆け寄ってくれる。


「しっかり守ってやれ!」



そう言っていなくなるのだ。嵐のような人だと思う。ただし人物評価は変えないといけないらしい



氷結の欠壊

拍手

PR

銀英伝

「財産なんて放棄してやるぅぅぅぅぅ!!!!!」
「あらどうしたの?」
「聞いて!あんのドグサレ貴族ども!!!『あら、夜戯の上手な方は宜しいわね、また閣下たちをお騙し遊ばして!おほほほほ』って。ああムカつく!!!」
「貴女のそういう叫びを聞いたの久しぶりだわ」
「『財産目当てでしょ?』って。財産目当てでオーベルシュタイン閣下と結婚してみたらいいわ。」
「出来ないでしょ?落ち着いて。」
「なんかもう、久々すぎたけど。何なのかしら?あの人たち」
「以外とミュラー提督を狙っていた人多かったから。仕方がないわ。財産はそのままにしておいて。オーベルシュタイン閣下が夢枕に現れたら面倒だわ。」
「!」
「忠告しておくわよ。貴方の枕には立たず私の方にくるからやめてよ絶対。」
「ちぇ」

にしてもと言いながらお茶を頂く。そういう事をするから選ばれないのがわからないのかしらとはっきり言う彼女が私は好きだ。
くつくつと笑っていると片眉を吊り上げてこちらを見るものだから陛下と似てきましたねという。よくお茶をしてそうやって見られたものだ。

「実はね。」
「?」
「陛下と貴方は恋人だと思っていたの」
「はぁ?」
「あの陛下が二人きりになるのはあなた位だったから。其れも貴方とオーベルシュタイン閣下の姿を見て下賤だったと反省したわ。」
「ふふふ」
「?」
「二人きりになる理由は皇妃殿下のせいよ」
「え?」
「プライドの高い陛下がなぜか私めに貴方のことを相談してたの」
「嘘でしょ?」
「口止めされたから。もう時効だからいいでしよ?」
「…」
「壊滅的に恋愛が不器用でしたけど。」
「本当に」
「いいの?」
「いいの。そこが好きだったから」


私も二人を見るの好きだわと言えば微笑まれる。


「最近」
「ん??」
「陛下が貴方と話していた理由がわかったの」
「?」
「いいストレス発散だわ」
「褒めてる?」
「凄く」
「なんか腑に落ちない」
「地位も名誉も名声も。無頓着な貴方だから。私が私としていられるのに必要な時間ね」
「褒められた!」
「ふふふ」
「でも大変ね」
「わかってやっているから大丈夫よ」
「これからは今までのように話し相手になるからね」
「頼りにしているわよ、ミュラー夫人」
「…」
「結婚式もしないで。いいの?」
「いいの。恥ずかしい」
「以外と恥ずかしがり屋ね」
「うー」


ウエディングドレスの用意はいつでも言って。ご祝儀はムカつく貴族の一掃でいいかしら?と笑う皇妃殿下がパウルさんに見えただなんて口が裂けても言えない。



皇妃殿下の相談役

拍手

銀英伝

「マインシャッツ」
「ナイトハルトさん」
「ん?」
「それ、かなり恥ずかしいわ」
「そうですか?」

ええと言って私はうなづく。言うに事欠いてマインシャッツはあり得ない。いや、子どもやペットにすら言う台詞だからいいのかもしれないけど。私の人生史上初めての事だから恥ずかしくていけない。
顔を両手で隠してうーうー言っていたらくつくつと笑われた。


「マインシャッツ」
「ひっ!」
「そんなにびくつかないでください。」
「遊ばないで!」
「だって面白いんですもん。」
「もんって」
「耳まで真っ赤だ」
「ひっ」
「くくくっ」
「ナイトハルトさん!」
「やっぱりマインシャッツだな」


そう言って抱きしめてくる。
愛しい人と囁きながら。


あの日以来この手のスキンシップが凄く増えた。寝る時は別だけれど、帰ってきてからそれまでの短い時間。ずっと一緒にいてくれる。抱きしめたり囁かれたり。精一杯甘やかしてくれるので私もお返しと言って頭を撫でたりしている。それが嬉しいらしく、にっこりと笑うものだからついつい私も絆されてしまうのだ。


「そう言えば」
「?」
「そろそろ家に帰らないと」
「え?!」
「え?」
「かえるのですか?」
「え、ええ」
「そうですか」
「ナ、ナイトハルトさん?」
「いえ…そうですよね」


そう言いながら抱きしめる腕の力を強めてくる。いや、それ。ちょと待って

「息息!!!苦しい」
「あ、え?!すいません」



苦しかったと言って解放されるのを待つが解放する気はないらしい。じっと顔を見てみると珍しくむすっとしているから面白い。ぷにぷにと頬を突くと帰るのですかと再び言われる。至極恨めしそうに。やっぱりこの人は可愛らしい。


「一度帰らないと」
「帰ってきたらあなたがいるから帰って来ていたのに。」
「そうおっしゃても」
「ですが」
「…」
「そんな。恨めしそうに見ないで」
「恨めしいですよ。」
「う…」


いじけた子ども。それがぴったりだ。くすくすと笑っていると不服そうに髪をすかれる。梳かれてキスを落とされる。


「マインシャッツ」
「だからそれは恥ずかしい」
「愛しています。」
「…聞いてます?」



絶対聞いてない。ぐりぐりと頭を撫でて差し上げると漸く落ち着いたのだろう。顔を見てくれる。


「結婚するとなると用意があるもの」
「!」
「家のこともオーベルジュさんたちに相談したいわ」
「そのままにしておくのでしょ?」
「ええ。かと言ってほっとくわけにも行かないわ」
「それはそうですね。」
「何より」
「?」
「あの人のところへ行きたいの」
「!!?!」
「ああ、違うわ。落ち着いて。お墓参り」
「…」
「報告しないと」
「私も」
「?」
「彼の方に許して欲しくて。毎日参らせていただきました」
「…」
「どうしました?」
「時々あなたがよく分からなくなるわ」


それ程あなたを想っているのですよと言って額にキスをくれる。よく聞くと毎朝の日課らしい。私がここに来てからの。脱帽する。あの人がナイトハルトさんを頼れといった意味が少しわかった。


「ありがとう。」
「許していただけたでしょうか?」
「あの人の苦笑とため息が聞こえそうだわ」
「そうですね。」


きっと卿も物好きだと言っているのかしら?と言いながら私は笑う。帰るのはあなたの居ない時にするわと言えば少し納得してくれたようだ。


「マインシャッツ」


慣れないこの言葉が慣れる日が来るのだろうかと苦笑しながらどうか老えるまで共にいたいなぁと願うのだった




最愛の人

拍手

銀英伝

「私は軍人です」と静かにいう。抱きしめられている分声が近い。私は必死に押し返そうとしたものの微動だにしない。


「だからいつ貴方を置いて死んでしまうかわかりません」
「離して」
「ですが、できる限りの努力で帰還して貴方の元に帰ります。」
「は?」
「軍人としてしか生きていけませんからやめることはできません。ただ、如何なる手を使っても貴方の元へ帰ってくる努力をします。貴方が孤独だと思わないように家族を作りましょう。貴方似の可愛らしい娘が私は欲しいです」
「ミュラー提督?!」
「馬鹿なことを言っているとお思いでしょうが貴方と家庭を築いて幸せになるのが私の夢です。」
「他の方と。貴方ほどの人です。引く手数多でしょう」
「私の地位に対してね。貴方はそういうところが無頓着すぎる。」
「…」
「それに他の誰でもなく貴方がいいんです」
「っ」
「出自はどうしょうのないもの。私自体庶民の出です。昔なら今の地位など到底無理でしょう。だから出自なんてどうでもいいんです。貴方が好きでやっていないこと。生きるためにやらざるおえなかった事で批判する者のこそなど私は知りません。もし其れで貴方を泣かせるような事があったら貴方を愛した者として守ります。あの人のようにとはいきませんが私は私のやり方でその者を屠ります」
「貴方のやり方?」

決闘でもなんでも。と言われて目を丸くして苦笑する。なるほどパウルさんとは全然違う。抱きしめた腕が少し緩んでミュラー提督の胸に寄り添うようになる。匂いも髪をすく強さも何もかも違うのに、落ち着くのは何故だろう。


「オーベルシュタインなのですが」
「?」
「貴方のミドルネームにされたらどうですか?」
「は?!」
「もしプロポーズをお受けして頂けたらそういうつもりでしたから」
「…前夫の名前を入れて貴方はいいのですか?」
「あなた方の愛情の深さを一番知っているのは私でしょう。死んでもなお貴方を愛して守ろうとした方です。きっとそれが一番いい。」
「夫なら理解に苦しむというでしょうね」
「唯一が一つでなくてはならない理由はない。」
「不貞のすすめですか?」
「ち、違います!どう言えばいいのでしょう?不貞ではなく…不貞のすすめになってしまいますか?」
「わからないわ。」
「私も上手く言えませんが、貴方という人物からオーベルシュタインという人物を除く事はできないという事です。だから、貴方は気兼ねなく愛さればいいのです。」
「パウルさんはなんていうかしら」
「閣下もそれをお許しでお望みです」
「傷つけるわ」
「なんの問題がなくとも傷つけあう者です。問題はそこでは無くて、その対応です。きちんと話して解決していけばいい。その時間も幾らでもある。」



ほうとため息をつく。
それを見てミュラー提督は優しく笑って頬にキスをしてくれる。あの人と違うそれ。でも決して嫌ではない



「もう一度いいます。」
「はい」
「結婚してください」





はいというと再び泣いてしまう。涙に歪む視線の先のパウルさんは困った様に笑うのだった





嵐の後

拍手

銀英伝

熱も下がった。完治の日も近いだろう。歩きたいなぁと窓辺の方を見ているとミュラー提督が帰ってくる。大丈夫ですかといえば嬉しそうに、ここ最近は比較的平和で宇宙に行くことが少ないという。宇宙海賊は?と尋ねると辺境に現れたりしているものの管轄外らしく少し残念そうにしているのを見るとこの人も帝国軍人なのだと思い出す。


「如何しましたか?」
「ミュラー提督は軍人でいらっしゃる。」
「え?ええ。」
「そんなに出撃がしたいものかしら」
「そういうふうに聞かれると、はいと答えるしかありません」

そうと言って再び窓の外を見る。不思議そうな顔をしてこちらを見ながらすぐにギョッとしたそれに変わる。だって、泣いているのだから。あたふたと夫人と呼ぶものの私は顔をあげることができずにいる。ハンカチを取り出して私に手渡そうとするものの微動だにしない私にどうすればいいのかと途方に暮れているようだった



「あなたには申し訳有りませんが次に再婚するときは軍人と以外考えています」
「どうして?」
「あの人のように私を置いていくでしょ?」
「っ」
「もう嫌なの」
「嫌?」
「一人残されるのは」

この地獄の様な悲しみなど味わいたくもない。かってに決めてかってに死んだあの人を恨めたらどんなに幸せか。なのに思い出す顔はどれも優しく微笑んでいる、私の後ろで難しい本を読んでいるあの姿だけなのだ。


「貴方は優しい。」
「夫人」



きっとやさぐれてボロボロの心を貴方は癒してくれるだろう。そう言って顔を上げる。だけど貴方も私を置いていくでしょと言えば複雑そうな顔をする。素直で優しい人。あの人なら無理だなと言ってしまって終わることを言葉を考えて私に伝えてくれる。

「それに貴方に嫁ぐには私は不釣り合い」
「そんなこと。大体オーベルシュタイン閣下はどうなるのです。彼の方はずっと高い地位に居ました」
「あの人はいかなる手を使ってもその事を口外せぬ様にしてくれました。それに対して、手段は一切選んでいないと思います。実際、私の出自はどう遡っても夫との結婚で始まるはずです。」
「それは」
「あの人だから可能だった。ともに歩き、生きていく上での荊を如何なる手を使ってでも排除できるあの人だから」
「…」
「普通。いえ皇帝陛下ですらそこまでは出来なかったでしょう。通常の神経ではできる事ではないですから。貴方には出来ない。出来ないから貴方なのです。」
「そう、かもしれません。」
「あのときの私は無知で幼かった。あの人の苦労など知らずに安穏と暮らしていけました。でも今となっては私を得るものの苦悩がわかります。ミュラー提督」
「はい」
「私は父親の顔を知りません。どこの誰で何をしていたのか。名前すら知らない。母は幼い頃売春の相手に殺されました。私は」
「夫人」
「幼い妹とともに店に引き取られて体を売りました。妹が殺されたとき、目障りだと言って裸のまま捨てられました。妹は軍人によって、甚振られ、殺されたのです。」
「!」
「だから私は軍人が嫌いなの。特に軍人然している人が。ビッテンフェルト提督がどんなにいい人だとわかっていてもどこか苦手なのはそれが理由です。」
「…」



どんな顔をしているのだろう。それすらわからない。



「ですが何より怖いのは、パウルさんがいなくなってしまいそうで怖い」
「夫人」
「オーベルシュタインの名も別の場所て生きている私たちをつなぐ唯一のものだから。私は死ぬまであの人の事が好きだろうし忘れる事ができない。きっと貴方に嫁いだとしても比べてしまうわ。他の男を愛している女を愛せますか?一生。今は良くてもいつか疲れて傷つくわ。そんな事私が嫌」
「…」
「貴方まで巻き添えに出来ない」



そう言ってしまって少しだけ楽になる。
何も返事が返ってこないところを見るとやはり勘違いをしていたのだろう。



「明日家に帰ります。今までありがとうございました。」
「言いたい事は其れだけですか?」
「は?」


手を握られる。抱きしめられたと気づいたのかコロンが香ったためだろう。話し手とも言えず私は彼の名前を呼ぶのだった




嵐の日

拍手