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変換なしの雑食夢

ran

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銀英伝

「オーベルシュタイン上級大将閣下?」



彼女が倒れたと聞いてビッテンフェルト提督やミッターマイヤー提督とともに見舞いに来ていた。ひどくずぶ濡れで急いで医務室にお連れしたものの風邪をひいたらしい。今朝見かけた時物凄く顔色が悪かったからな。案の定かといったのはミッターマイヤー提督だった。
今日はヒルダさんのデッサンの日だと言っていたからな。彼女の夫人好きは有名だが倒れるほどとは知らなかった。


「だらしが無い!」
「彼女も女性だったということだろう?ロイエンタールがいたら散々からかっただろうに」
「二人とも!大体ビッテンフェルト提督は原因なのですからきちんと謝って差し上げてくださいよ」
「わかっているがな」
「この寒空の下池に落としたのですから」
「…流石はミュラー提督。お優しくていらっしゃる。」
「何が言いたいのです?」
「報われんなぁ」
「…言わないでください」
「まぁ何はともあれ。ああ、あそこか」


そう言って指さすと背を客がいる。あれは確かオーベルシュタイン閣下の側近か。…当たり前だが彼も心配だったのだろう。

「もうよろしいのですか?」
「時間か惜しい。」
「は」



音なく閉められたドアの向こうから出てきたのは案の定で。
かつかつと規則正しい音ともに歩いてくる。



「貴公もやはり妻は心配と見える。」
「ビッテンフェルト提督!」
「…貴公のお陰で仕事が増えた。もうあれを追いかけるのはやめて頂きたい」
「彼女が絵を描いてくれさえすればいつでも」
「其れだけ嫌われているということだろう」
「なにっ?!」
「時間か無い。失礼する。」
「見舞っても?」
「多分寝てるだろうが、好きにし給え」
「…自分の妻に対して些か冷淡では無いか?」
「あれも承知だ。ほっといて貰おう」


舌戦でこの男に勝てるやつなどい無いだろう。少し彼女が可愛そうな気がするなと思いながら閣下の顔を見ていると不意に視線がこちらを向く。



「あれに恋慕しても無駄だ。」
「は?」
「だが…そうだな」
「?」
「もし私に何かあればミュラー提督を頼るように言っておく」
「は?」
「その時は頼んだ」




そう言ってかつかつと歩いていく。
見えなくなると私以上に2人が憤慨していたものの、私はそうできなかった。あの、閣下が頼むのだ。私に。



「愛妻家としてあれは許せん!」
「いえ、ミッターマイヤー閣下」
「?」
「彼の方の精一杯なのでしょう」
「はぁ?」
「大丈夫か?」
「ええ。」
「ミュラー提督」
「帰ります」
「おい」



きっと彼女が好きだという気持ち以上に彼もまた彼女のことを愛しているのだろう。




ミュラー提督の大いなる壁

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銀英伝

失敗したなぁと思った時には遅かった。昨日水浸しになった後きちんと拭けばよかったなぁと思いつつ後の祭りで仕方がない。
無理して元帥府に来たばかりに倒れてしまった。
いや、私は悪くないぞ。あのライオン頭が悪いんだ。追いかけ回して池に落として!オーベルシュタインさんは眉ひとつ動かさず通り過ぎて行ったけど。まぁ通常運転過ぎて泣ける。ビッテンフェルト中将は全然大丈夫なのに。絶対書いてやるものか。


「寒い」


しんとした部屋でなんだか寂しい。やはり慣れ無いなぁと思いながら天井をみる。早く帰りたい。まだあそこの方がいいと思っていたらドアが開く。白い髪と黒い服。かつかつと歩く音まで規則的である。でも誰よりも何よりも落ち着くのだから不思議だ。


「だから行くなと言ったのだ」
「今日はヒルダさんのデッサンの日だったから」
「朝聞いた」
「大丈夫?」
「ではないな」
「ごめんなさい」
「寝ていろ」
「ん」
「帰る時に回収に来る」
「ん」
「もう行く」
「パウルさん」
「どうした」
「ありがとう」



そう言うとため息をついて誰にも聞こえ無い小さな声で心配をかけるなと言って頭を撫でてくれる。きっと後ろにいる部下の人には見え無いのだろう。もうよろしいのですか?という声だけ聞こえる。もう十分です。



寂しかったのに不思議だ。重くなってくるまぶたは薬のせいではなくてオーベルシュタインさんのお陰なのだろう





暗闇の中の情景

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銀英伝

ローエングラムさん フられました





「…何がいけなかったのだ」
「全部でしょう?」
「オーベルシュタイン夫人、口がすぎ無いか?」
「私に聞いた時点でこう言われるのわかってらっしゃったでしょ?大体人のアトリエまでやってきて」
「…」
「なまじ顔が良いから。フられるなんて微塵も思わなかったんでしょ?」
「ああ」
「…」
「何だ?」
「ヒルダが可哀想。こんな人に目をつけられて」
「どういう意味だ」
「其の儘ですが?」
「大体オーベルシュタイン夫人の方がお可哀想なのでは?」
「ん?」
「ご主人はあれだしな」



そういうとイーゼル越しに閣下を見る。麗しいのだがいかんせん仕事が生きがいなのだ。頭の中には知略と呼ばれる恐ろしいまでの情報は詰まっていても女を口説き落とす情報は1グラムも入ってい無いのだろう。おいたわしい。ヒルダさん。


「きっと私が横で死んでも顔色ひとつ変え無いでしょう。わが夫は」
「だろうな」
「でも私は一回で求婚を受け入れましたけどね。」
「ぐ」
「大体フられたからって急に芸術鑑賞しても駄目でしょう。ここの人凄く疎いんだし。何よりもミッターマイヤー上級大将閣下に助言を求めたのが最大の敗因ですね。」
「何故だ?わが幕僚で随一の愛妻家ではないか」
「黄色いバラの花束持って求婚しに行った愚か者ですよ。あれは上級大将閣下が凄いのではなくてミッターマイヤー夫人の愛らしさから出てくる慈悲慈愛で持っているのですよ。ああ、また描きたいなあ」
「貴公のミッターマイヤー夫人好きには閉口するが。…花は駄目か?」
「貴方が花を贈る性格なら誰よりも似合うでしょうが。」
「なら」
「貴方が死ぬほど恋愛に疎くて女心を1μも理解でき無い人だから駄目なんですよーっと。出来た」
「ん。いい出来だ」



愛しのヒルダさんですものねと言えば真っ赤になる。この人の脳は素晴らしいけどプライベートはアウトだわ。そう思いながら乾いたら持っていきますねという。


「どうすればいい?」
「人には向き不向きがありますから。薔薇も良いですけど。素直になってみたらどうですか?」
「夫人はなんと言われたんだ」
「老犬と駄犬の世話」
「…それが良くて何故…」
「夫が花を持ってきたら、殺されるか死ぬ前でしょう。ああ、想像しただけで恐ろしい」
「それはそうだな」


きっとヒルダさんももう一押ししたらいけますよと言いながらお茶を入れる。汚い手で入れるなというので入れてやらずにいる。まぁ結局は怒るから入れるけど。


「本当に面倒くさいわ」
「煩い」
「まぁ良いですけど」
「なら言うな」
「給料上乗せしてほしいわ」
「…幾らだ」
「絵の具代」
「安い情報だな」
「私は貴方とヒルダさんには幸せになってほしいの」
「…そうか」
「貴方の妻は王妃。そのプレッシャーに打ち勝てるようにして差し上げたら?」
「!」
「やっぱり気がついてなかった」
「ご馳走になったな」
「失敗したら城立ててね」


ああと言って走っていく。キルヒアイス閣下がいたら笑っただろうなぁと思いながら微笑むヒルダさんの絵にお手柔らかにお願いしますとつげるのだった




皇帝陛下のサロン

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銀英伝

戦争が始まると暇になった。其れこそ何カ月も。帰ってこない主人を待つ犬になった気がする。寂しいなぁと思ったところで何も変わらない。手紙は駄目だし。来るはずも無いし。案の定来ないし。大体凱旋しただろう!帰ってこいよと思いつつ言えるはず無い。とてもたいへんだろうから。
…オーベルシュタインさんの部屋で寝たら少しは寂しく無いかなと思って我に帰る。本気でミンチにされる。

情事も何もかも私の部屋だったと思案してドアの前に寝転ぶ。


もう寂しくて死ぬかもと自分で書いたオーベルシュタインさんの絵を抱いて私は眠る。彼の部屋の前で


「ん」
「起きてしまったか」
「オーベルシュタインさんだぁ」
「他の誰に見える」
「オーベルシュタインさん」
「人の部屋の前で寝るな」
「…オーベルシュタインさん」
「何、泣くな」
「オーベルシュタインさん」




抱き抱えられて寝室に向かう途中なのだろう。目を覚ますとオーベルシュタインさんの匂いがした。何度も名前を呼ぶ。辛辣ながらも声が返ってくる。其れがどんなに嬉しいか。
ベッドに置かれると自然と体が離れる。其れが何よりも辛くて、何よりも寂しかった。オーベルシュタインさんは困ったような顔をしてシャワーを浴びてくるだけだという。


「嫌」
「無茶を言うな」
「離れるの嫌」
「駄々を捏ねるな」
「なら一緒に入る。」
「…ほう」
「離れるの嫌」


言うや否や再び抱き抱えられると部屋にあるシャワールームに連れ込まれる。壁に凭れ掛かると無理矢理キスをしてくるので私は首に手を回して其れに答える。


「其の儘寝ていればいいものを」
「オーベルシュタインさん」
「楽に寝れると思うな」
「うん」
「止まらんぞ」
「其れで良い」
「…」
「其れが良い」



其れが合図だった。
初めてだ。こんなオーベルシュタインさんを見るのも。こんなに求められるのも。この痩せた体のどこにこんな力が情熱があるのだろう。そう思いながら気がつけばいつの間にか湯船にはられたお湯の中に入っていた。2人で。


「意識が飛んでた?」
「ああ」
「そっか」
「ああ」
「温かいね」
「…」
「オーベルシュタインさん?」
「お前もオーベルシュタインだ」
「うん。オーベルシュタイン夫人って呼ばれるの好きよ」
「…」
「お前が破壊的に馬鹿なのは知っていたが。」
「ああそれ!なつかしいなぁ。」
「パウルだ」
「?」
「名前だ」
「…」
「如何した?」
「は、」
「は?」
「恥ずかしい」
「お前の感性に時々だがついていけん」
「パウルさん?」
「…」
「え、いや、んーーーー!!!」
「まだ私も若いということだな」
「あの、どちらへ」
「これ以上抱くのならベッドの上がお互い楽だろう?」
「へ?あの」
「あとだ」
「名を呼ばなかったら…わかっているな」


性格が変わっていません?!と言ったところで止まることはないだろう。ただ、ついつい恥ずかしくてオーベルシュタインさんと言ってしまったが為のお仕置きはオーベルシュタインさんらしくてもう二度と逆らうものかと心に決めました。




名前呼びの破壊力

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銀英伝

「夫人」
「わっ。ミュラー中将!助けて!!!」
「何故ミッターマイヤーの絵は描けて俺の絵は描けないのだ。夫人の絵まで描いたのだろう!」
「それはお会いしたミッターマイヤー夫人がとても愛らしい方でむさ苦しい軍人ばかり描いていた私のやさぐれた心を癒して下さったからです」
「むさ苦しいだと?!」
「そりゃ、こんな可愛らしい奥さんならずっと持っていたい気持ちわかんなくも無いなって。 」
「貴様」
「大体私はあなた嫌いだし貴方も私を嫌いでしょう!」
「別段嫌っておらん!」
「叫んだり追いかけているのに?」
「?」
「真逆…」
「彼の通常運転ですよ」
「最悪だわ」



そういうとげっそりとした表情のまま背中に隠れる夫人にドキドキしてしまう。何が最悪なのだ!と叫ぶビッテンフェルト中将を宥めつつ後退する。かの人のお陰で彼女と一緒にいれる反面、顔色が悪くなるのは居た堪れない。


「あの人は私の中の一番嫌いな軍人を体現しているのです。」
「そうですか」
「ミッターマイヤー中将は愛妻家ですが其れが一番の長所で最悪の短所。ローエンタール中将は女の敵。」
「手厳しいですね」
「ビッテンフェルト中将に貴方がキルヒアイス大将閣下の爪の垢でも飲ませたい!」
「…」
「いつもありがとうございます」
「いえ」
「ミュラー中将がいないと追いかけっこばかりで仕事ができません」
「いや、その」
「本当にありがとうございます」


そう言って微笑む彼女は本当に可愛らしいと思う。くつくつと笑う彼女もいいがこう言う屈託無く笑う姿もいい。



「ミュラー中将は肖像画は?」
「いえ」
「あまり興味が無いのですよね」
「そんなことは」
「?」
「出来れば」
「はい?」
「貴方のことを描いた絵が欲しいです」
「は?」
「駄目でしょうか?」
「またなんで?」
「あ、貴方の強運にあやかりたいと」
「強運?」
「はい!」
「まあ構いませんが強運?」
「あのオーベルシュタイン大将閣下と結婚する快挙を成し遂げられたのですし」
「ああ!結婚運的な」
「そ、そうです」
「そう言われればそうですね。そう言えば私の絵が欲しいとメイドさんに頼まれたような」
「ははは」
「良いですよ。一番に差し上げます。いつものお礼です」
「ありがとうございます」



そう言えば彼女は屈託無く笑う。
嘘の噂を流してくれたローエンタール中将とミッターマイヤー中将に感謝しながら手を振る彼女を見送るのだった




ミュラー中将の負け戦

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