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変換なしの雑食夢

ran

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銀英伝

「待って!」
「…」
「オーベルシュタイン夫人!!!」
「…」


元帥府恒例の行事が始まる。ミッターマイヤー中将との追いかけっこは些かな骨が折れる。絶対勝てないのでキルヒアイス大将閣下を見つけるか何処かの部屋に逃げ込むしか無い。今日は閣下が見当たら無いので必死に逃げていると人に思いっきりぶつかってしまう。
メイドさんなら大変だと思ったものの相手の服は軍服で顔を上げると困ったようなミュラー中将の顔が現れる。



「すいません。怪我は?」
「大丈夫、です」
「オーベルシュタイン夫人!」
「やだ、あの人!!!」
「あの」
「本当にごめんなさい。私逃げないと」
「お願いがあるのですが」
「は?」
「ミッターマイヤー中将を描いてあげる事は出来ませんか?」
「絶対やです!手を離してください!」
「ミュラー中将!そのまま捕まえててくれ!」
「そういうのが嫌いなの!私が何をしたっていうの!!!」
「彼には奥さんがいまして。」




何故かミュラー中将が朴訥と話し始める。何言ってんですか離してくださいよと言っても離してはくれない。但し痛くもない。
不審げに見つめると愛妻家で貴方の絵を次の戦いまでに持たせたいらしいのですと言われ目を真ん丸くする。

「踏ん反りかえった絵が欲しいのかと」
「違います」
「捕まえた!!!」
「いたーーーー!!!」
「大丈夫、ですか?」
「やっぱり嫌い!!」
「私を嫌っても良いが絵は描いてくれ」
「如何して私なんです。良い絵描き沢山居るでしょう!」
「オーベルシュタインの絵を見た」
「絵?」
「君の絵だ。とても良い絵だった」
「夫に絵は描いて無いですが?」
「そんなはずは無い。これ位の」
「あっ」
「「?」」
「だから礼か」



くつくつ笑ってミッターマイヤー中将をみる。不思議そうに見ているのだろう。


「わかりました」
「!?」
「貴方の事は嫌いですが書きましょう」
「喜んで良いのか?」
「私はとても気分が良いので」


そう言ってミュラー中将を見る。なぜか妙に顔が赤いものの気にし無いでおこう。




絵の行方

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銀英伝

「おい」
「?」
「行きたくなければ行かなくていい」
「うん」
「お前が何処ぞで要らぬことを聞いたら手間がかかる。」
「ああ、それは陛下にも言いましたよ。下手に聞いたらミンチにされるって」
「そうか」


そうですよと言いながら庭に水をやる。夏はいいな。トマトがいい色だわ。鉢から畑に返したときどうなるかと思ったけどなんとかなったらしい。今日はトマトのサラダだわと言えばすごい顔で見られた。


「怖いなぁ」
「諦めろ」
「何を?」
「一般的に優しい男というのをだ」


不意に後ろを振り返ると一寸の変化も無いオーベルシュタインさんがいて思わず笑う。本を手にして愛犬を撫でる姿は私が一番好きな姿かもしれない。どうしたと言わんばかりにこちらを見て本を閉じる。ホースを置いて横に座ると怪訝そうな顔をする。


「貴方は十分優しいわ」
「…」
「驚いている」
「馬鹿だバカだと思っていたが」
「失礼ね!」
「私を優しいなどというのはお前くらいだ」
「そうかもしれないけど。理由が違う」
「?」
「甘ったるい言葉を聞いて喜ぶ私を想像できます?」
「…」
「酷い顔」
「煩い」
「人には好みがあるの」
「?」
「私は貴方のがいい」
「そうか」
「私が貴方を好きだから。貴方が優しいことも知ってるし酷いことも知ってる。それを加味して結婚したのよ!」
「…」
「無理矢理結婚したと思ってたの?」
「ああ」
「貴方が怖いから?」
「ああ」
「今日はトマトのサラダ大盛りね!」
「…」
「貴方が大好きだからよ。覚えてて」
「…覚えておこう」


ふふふと笑って私は立ち上がる。


「貴方が言えない分私が言ってあげるわ」
「それは助かるな」
「良かったわね。」
「大盛りはいただけないがな」


キスしたら許してあげるわと言えば渋々ながらキスをくれる。
それで十分だと思えるのだからこれは愛情なのだと私は思うのだった


トマトのサラダ大盛

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銀英伝

アイスブルーのドレスを着て、物憂気に壁に立っていた彼女を見た瞬間恋に落ちたのだ。

「で直ぐにオーベルシュタイン夫人とわかったわけか」
「あの時は夫人ではなかったかな?まぁあのドライアイスの剣に女がいるとは驚いたがな。今では我が幕僚の専属画家だ」
「…」
「この間メックリンガー中将と美術について語っていたよな」
「ああ。芸術家同士馬があったのだろう?部下達が困っていたな。同じ絵描きなのはわかるが…」
「メックリンガー中将は水彩画彼女は油彩画が専門なのです。」
「「…」」



何ですか?と尋ねると女運が無いとロイエンタール中将に言われる。わかっている。でもこの人に言われたく無いものだと思いながらミッターマイヤー中将を見る。言いたい事は同じだろう。

「私も絵を頼んだのだがな」
「そう言えば」
「剣もほろろに断られた」
「また、なんで」
「オーベルシュタイン夫人の軍人嫌いは有名だ。こそこそせず嫌いだと真っ向向いて言うものだからビッテンフェルト中将と似ているかな?」
「昨日恫喝まがいに絵を描けと言った彼に絶対描くかと叫び返していたぞ」
「…」
「あそこまで行ったら筋鐘入りだ。」
「噂をすれば」


そういうと大きな音と共にビッテンフェルト中将が部屋に入って来られる。あの女という台詞と共に。


「ダメだったらしいな」
「ぐぅぅ!!!あの女!絶対描かぬと言いやがる!」
「なら無理にかかせなくても良いだろう?」
「いや、こうなれば俺にも意地がある」
「にしても私は早く描いてもらいたいものだがな。次の戦いまでにエヴァに持たせたい」
「相変わらず愛妻家ですね」
「卿も真面な相手を選べれば直ぐに愛妻家に成れるだろう?」
「いわないでください」
「大体お前だって他の絵描きに描いて貰えば良いだろう?」
「いや、そのだな」
「?」
「家族に贈る絵は彼女に描いてもらいたい。」
「はぁ?」
「威厳に満ちた今までの描き方じゃなくてな。自然で良いんだよなぁ?」
「…よく分からんな」


そういうとミッターマイヤー中将が立ち上がってもう一度頼みに行ってくるという。何故か俺の腕を取って。


「来い」
「えっですが」
「話せるチャンスだぞ!」
「…」
「帝国軍人が女1人に参ってどうする?」
「ああ、ロイエンタール中将まで」
「何か面白そうだな」



結局4人になるのかと思いながら廊下を引きずられていると件の人が現れる。こちらを見た途端この世の終わりのような顔をされたのは気にしないらしい。案の定、ビッテンフェルト中将が追い掛け、夫人は逃げ回る。それを3人掛かりで止めた頃には彼女は柱の陰に隠れてこちらを睨んでいた。



「やはり卿は連れて来るべきではなかったな」
「すまない。オーベルシュタイン夫人。怖がらせてしまって。」
「…」
「その、あなたに絵を描いてもらいたくてだな」
「…」
「夫人?」


珍しく反応がないなと思っていたらポロポロと涙を流していた。
どきりとする。
あのビッテンフェルト中将まで晴天の霹靂だったのだろう。たじろぎ、目を見開いているのだから。

「す、すまない。オーベルシュタイン夫人」
「そのだな」
「は、ハンカチ!これを使ってください」
「…」
「夫人?」
「結構です。」
「っ」
「ミッターマイヤー中将。」
「は、はい」
「頼まれた絵ですが絶対に描きません」




そういうと彼女は静かに涙を拭うと一礼して立ち去る。



「どうしょう」
「恨むならビッテンフェルト中将を恨むんだな」
「あの女でも泣くのだな」
「失礼だな。」
「ミュラー中将?」
「…」
「ダメだな。完全に灰になってる。」





ミュラー中将の無謀な戦い

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銀英伝

「何ですか?」
「姉上が大層夫人の絵を気に入ったからだな」
「しれっと何言っているんですか。私は美人の絵を描きたいのであってむさ苦しい軍人の肖像画を描きたいわけではないんですよ」
「むさ苦しいわけではないだろう?」
「自分の美貌を知ってらっしゃる。これだから美人わ!」
「今まで聞いたら激怒したセリフが夫人が言うと面白いのは何故かな。キルヒアイス?」
「キルヒアイス大将閣下の優しさを少しはみならってくれればいいのに!」
「オーベルシュタイン夫人」
「?」
「お茶は?」
「入ります」




陛下にそのようにしゃべるものが居ないので良い休息になっているのでしょうとあの人畜無害そうな顔で言われたら何も言えなくなる。キルヒアイス大将閣下も大変ですねといえばふふふと笑ってみせるのだから。にしても私と同年代の人がこんなに偉いのだから並大抵のことは無かっただろう。陛下も大変ですねといえばついでのように言うなと足蹴にされた



「でも、陛下と大将閣下の絵はいいとして他は嫌ですよ。」
「如何してです?」
「軍人だからです」
「夫人は軍人嫌いと見える。」
「大嫌いです」
「良い方ばかりですよ」
「初めて来た時に取り囲まれましたから!」
「ああ。そういえば」
「あの高圧的で値踏みをする感じが生理的にダメです。」
「でも夫は軍人だが?」
「あの人は良いのです」
「贔屓ではないか?」
「情と言ってください」
「くくく」
「大体陛下と大将閣下も特別枠ですから」
「…」
「あっ照れてますね」
「煩い!」




ローエングラム派閥の専属画家になれと言われて固辞している。
特にあの4人は頂けません。紅茶を飲みながら視線に気がついて顔を上げる。


「前から不思議に思っていたのだか。」
「はい?」
「何故そこ迄軍人を嫌う?」
「あー」
「ラインハルト様!」
「夫人のこれは私のそれとよく似ているからな。キルヒアイスも気になるだろう?」
「お茶が不味くなりますよ」
「よい」
「私の父は知りません。」
「は?」
「まぁよくある話ですよ。母は売春婦でしたから。それも妹が小さな時に死んでしまいましたから、よく覚えていません。覚えているのはメアンコリーな表情を浮かべて夜の街に出ていく顔だけかな?」
「…」
「母が死んで娼館の奥さんとか姉さん達が育ててくれて。まぁ店にいつかは出ないとと思ってましたよ。それが15の時かな?その時のことは一緒忘れられないな。きっと。」
「軍人か?」
「ええ。しかも凄く嫌な奴で首を絞めるの。私はなんとか生きていたけど妹はダメだった。」
「酷い」
「よくある話。娼館ではね。ただ、醜聞を揉み消すために私達はいない事になって。私は裸一貫。捨てられたの。そのまま死ぬかなぁって時に肉屋の夫婦に拾われて。今に至ります。って凄い顔!」



麗しい顔をそこ迄歪まさなくてもと思いながらふと思う。オーベルシュタインさんが変わり者すぎて違和感なく居たものの元娼婦で何処の馬の骨とも分からない女が同席してはいけないのかも‼︎そう思っていそいそと席を立とうとすると低い声で座れと言われる。いや怖いですよ。ちらりとキルヒアイスさんを見るといつもと違って怖い顔をしている。助けが居ない!


「何をしている」
「いや、退室」
「如何してだ?」
「夫が変わり者過ぎて忘れていましたが同席してはならないのかなぁ…顔が怖い!」
「オーベルシュタインは知っていたのか」
「一応」
「なんと言っていた?」
「それが如何したと」
「は?」
「あと、妹の墓を作ってくれました。無いのは不便だと言って」
「あいつらしいな」
「?」



そういうと同じ様に「だから如何した?」と急に言われる。鳩が豆鉄砲食らった顔をしているのだろう。珍しくくくくとキルヒアイス大将閣下が笑われる。

「夫人が何であろうとも別に興味は無い」
「其れも如何いう言い草なんですか」
「ただ、良き友だ」
「…」
「あと其奴の顔を覚えているか?」
「ラインハルト様」
「八つ裂きに」
「ふふふ」
「?」


ありがとうと言うとなんとも言え無い顔をして構わんという。
そして些かな間があって我が幕僚にはその様な輩はい無いとぼそりという。



「?」
「気が向いたら描いてやってほしい」
「…」
「無理にとは言わん。」
「陛下と大将閣下はいいです」
「ん」
「他の方はおいおい」
「わかったが、ミッターマイヤーが描いて欲しいと言っていた。妻に渡したい様だ」
「あー、どの人だろう」
「…」
「まぁ良いや。会ってから考えます。」



そう言って絵を描き始めるとキルヒアイス大将閣下に行儀が悪いと叱られる。破壊的だなと陛下はくくくと笑うのだ





若輩者達のティータイム

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銀英伝

絵筆を取りながら何が起こったのだろうと思案して眼下の人たちを見る。元帥閣下とキルヒアイス大将閣下。楽しげな雑談中である。ただ何故そのに私が行かなくてはならないのか?呆然としながらスケッチブックと鉛筆を出そうとした瞬間銃口がこちらを向く。2人のではなく護衛と呼ばれる軍人さんから。もう無理。


「銃をさげなさい」
「しかし、」
「鉛筆とスケッチブックで殺せるものなら見ものだな。ただし、オーベルシュタイン夫人だからな」
「は?」
「些か見ものではあろうがな」
「…」
「ああ。大丈夫ですよ。夫はここで私が殺されても眉毛ひとつ動かさずに仕事を続けますから。ただ、私としても銃口は向けないでいただければうれしいかぎりです。」
「それも如何なのだ」
「…」
「オーベルシュタイン夫人?」
「…」
「喋らぬか!」
「ラインハルト様」
「だって、」
「「???」」
「私は庶民ですから。こう、高貴な方と話せるエスプリなど持ち合わせていませんし」
「はぁ?」
「大丈夫ですよ。私は元々庶民の出ですから」
「私もそのような…ここはいい。下がれ」
「は」


パラパラとちってこのだだっ広い部屋に3人とは如何なものか。そう思っていたら顔に出ていたのだろう。くくくと元帥閣下が笑われて、これで堅苦しくないといわれる。少々の警戒を持ちながら道具を取り出しても?と尋ねる。燃えるような赤い髪の人がニコリと笑うのだから良いのだろう。談笑でもなんでもしててくださいと言いながらスケッチをすすめる。



「そちらを見なくてもオーベルシュタイン夫人」
「今日はスケッチの予定ですから」
「ほう」
「あっでも聞いておきたいことが。大将閣下」
「何ですか?」
「これは私的なものですか?公的なものですか?」
「?」
「私的なものなら…まあ必要はないのですがある程度の美化をお尋ねします。」
「美化?」
「ええ。女性に送られるのなら雄々しくとか。まあ色々。背を高くとかいう詐欺まがいな事をする者も居ましたが。」
「そうですか」
「ただ、凛々しく書いていいものか雄々しく書くのか自然に描くのかによって描き方が変わりますから。」
「自然でいい」
「わかりました。」
「それと至極私的なものだ。姉上にお送りするものだから」
「そうですか」
「…」
「?」
「何も言わぬのだな。流石オーベルシュタイン夫人という事か」
「ラインハルト様!」
「何がですか?」
「寵妃に贈るとなると大口のパトロンを得るに等しい。世辞を言うか悪言を言うか楽しみにしていたのだがな」



そうやってくつくつ笑うものだから私は片眉を吊り上げじっとそちらを見る。灰汁の強い我が主人の上司はなるほど意地が悪いらしい。スケッチブックを閉じて鉛筆を片付けると何故か慌てたような顔をする大将閣下がそれを制す。


「何を」
「帰ります」
「ほう」
「元帥陛下は場末の娼婦書きの女絵師で遊びたいとお見受けいたします。そういうのはどうぞ他で!」
「何?!」
「ラインハルト様!貴方も落ち着いて」
「落ち着いて入られますか!手を離しなさい!!!」
「「は?」」
「世辞を聞きたいなら言う人を悪言が聞きたいなら言う人を連れて来なさい!だから軍人なんて嫌いなのよ。」
「…」
「私はただ絵が描ければそれでいいの。もし公的なら辞退するつもりだったし」
「如何いう意味だ?」
「言わない!」
「そう臍を曲げるな」
「私が男でないから。女だというだけで描かれたものまで足蹴にされるんですよ。」
「そうなのか?」
「私のない頭で必死に考えてきたのに試すような事言われるし。鉛筆を出そうとしたら銃口をこっち向けられるし。もう、嫌!帰る!!!」
「お、おい」
「お待ちください。決してそういうつもりは」
「…」
「ラインハルト様も!だから申し上げたのです。幾らオーベルシュタイン卿の夫人といえども一般のご婦人にしていい行為ではないと」
「…」
「すまない」
「!」
「なんだ?」
「大将閣下、謝りましたよ」
「私も己の過ちに対して謝罪くらいする。」
「…私こそすいませんでした」
「何故謝る?」
「いや、軍人と一括りにして嫌いましたから。」
「そうか」


そういうと椅子に座って頬杖をつく。絵になるなぁと思いながら鉛筆を出していいか再び許可を得る。


「…」
「…」
「…」
「…何が話せ」
「談笑でもしててください」
「何かあるか?」
「あるでしょう?隣の家のあの子が可愛いとかこの子のスタイルがいいとか。」
「はぁ?」
「軍事機密はやめてくださいよ。貴方たちより夫に殺されます」
「…変わっているな」
「だからあの人と結婚できたのですよ」
「っ」
「あっ大将閣下が笑いましたよ。陛下」
「ラインハルトだ。」
「は?」
「ラインハルト様?」
「それでいい」
「嫌ですよ。それこそ夫にミンチにされる」
「…」
「あら、怒っても麗しい」
「オーベルシュタイン夫人」
「大体親しさを名前で表すなんてナンセンスですよ。どんな呼び方をしても友はともでしょ?キルヒアイス大将閣下」
「…」
「訂正する」
「?」
「壊滅的に変わっているな」
「よく夫に言われます。」



そういうと少し柔和な顔をなさるものだから私もつられてヘラリと笑う。後でお茶にいたしましょうというキルヒアイス大将閣下がその姿を如何思ったのか知らないが此処に夫が居なくて(お仕置き的な意味で)本当に良かったと思うのだった。




変わり者のオーベルシュタイン夫人

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