銀英伝 銀英伝 ある女の一生 終 2015年06月27日 「私は軍人です」と静かにいう。抱きしめられている分声が近い。私は必死に押し返そうとしたものの微動だにしない。「だからいつ貴方を置いて死んでしまうかわかりません」「離して」「ですが、できる限りの努力で帰還して貴方の元に帰ります。」「は?」「軍人としてしか生きていけませんからやめることはできません。ただ、如何なる手を使っても貴方の元へ帰ってくる努力をします。貴方が孤独だと思わないように家族を作りましょう。貴方似の可愛らしい娘が私は欲しいです」「ミュラー提督?!」「馬鹿なことを言っているとお思いでしょうが貴方と家庭を築いて幸せになるのが私の夢です。」「他の方と。貴方ほどの人です。引く手数多でしょう」「私の地位に対してね。貴方はそういうところが無頓着すぎる。」「…」「それに他の誰でもなく貴方がいいんです」「っ」「出自はどうしょうのないもの。私自体庶民の出です。昔なら今の地位など到底無理でしょう。だから出自なんてどうでもいいんです。貴方が好きでやっていないこと。生きるためにやらざるおえなかった事で批判する者のこそなど私は知りません。もし其れで貴方を泣かせるような事があったら貴方を愛した者として守ります。あの人のようにとはいきませんが私は私のやり方でその者を屠ります」「貴方のやり方?」決闘でもなんでも。と言われて目を丸くして苦笑する。なるほどパウルさんとは全然違う。抱きしめた腕が少し緩んでミュラー提督の胸に寄り添うようになる。匂いも髪をすく強さも何もかも違うのに、落ち着くのは何故だろう。「オーベルシュタインなのですが」「?」「貴方のミドルネームにされたらどうですか?」「は?!」「もしプロポーズをお受けして頂けたらそういうつもりでしたから」「…前夫の名前を入れて貴方はいいのですか?」「あなた方の愛情の深さを一番知っているのは私でしょう。死んでもなお貴方を愛して守ろうとした方です。きっとそれが一番いい。」「夫なら理解に苦しむというでしょうね」「唯一が一つでなくてはならない理由はない。」「不貞のすすめですか?」「ち、違います!どう言えばいいのでしょう?不貞ではなく…不貞のすすめになってしまいますか?」「わからないわ。」「私も上手く言えませんが、貴方という人物からオーベルシュタインという人物を除く事はできないという事です。だから、貴方は気兼ねなく愛さればいいのです。」「パウルさんはなんていうかしら」「閣下もそれをお許しでお望みです」「傷つけるわ」「なんの問題がなくとも傷つけあう者です。問題はそこでは無くて、その対応です。きちんと話して解決していけばいい。その時間も幾らでもある。」ほうとため息をつく。それを見てミュラー提督は優しく笑って頬にキスをしてくれる。あの人と違うそれ。でも決して嫌ではない「もう一度いいます。」「はい」「結婚してください」はいというと再び泣いてしまう。涙に歪む視線の先のパウルさんは困った様に笑うのだった嵐の後 PR