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変換なしの雑食夢

ran

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十二国

目を覚ますと大宗伯様がいた。
凄く驚いた顔をなさるものだから思わず大宗伯様と言おうとしたものの声が酷い声で逆に驚いてしまう。
途端に酷い眩暈と吐き気だ。かたりと立った大宗伯様が女官を呼びつけながら私の背中をさするのだ。

「大丈夫ですか?」
「私は?」
「覚えておいでにならないか。倒れられていたのだ」
「あ、ああ」
「王宮の医者が見るといったものの台輔の女妖がならぬと突っぱねましてな。街の女医を呼んで診てもらいましたのでご安心を」
「主上には?」
「台輔が」
「成りませぬ」
「なにをいっておられる?」
「彼の方のなす邪魔をしてはなりませぬ。直ぐに台輔をお戻しください」
「貴方は今自分の状態がわかっておいでか?」
「これ以上役立たずの女にはなりたく無いのです」
「は?」



目が回る世界は大層気持ちが悪い。その中でいった言葉はどの様に届いたのだろうか?再び手放した意識の中で私は微睡む



「どこだっ!」
「おい、まだ寝ているんだ。少し落ち着け」
「血を少し吐いた。台輔は別室に」
「だけど」
「ここでお前まで倒れたらどうする。少し待ってろ。直ぐに知らせる」
「うん」
「心配するな。あれがお前を置いていったりはせぬよ」
「…なんかあったら直ぐ知らせて」
「ああ」


「でだ」
「…」
「医者はどこだ?」
「今彼女を診ています。ああ、戻ってきたか」
「お初に」
「いい。あいつは」
「只今寝ておられます」
「仙が病むとはどういうことだ」
「端的に申しても」
「構わぬ」
「相当お身体を悪くなされておいでです」
「そんなに悪いのか?」
「今仙籍を抜かれましたら数日と持ちませぬ」
「…」
「滋養をつけさせしっかり休息させてくださいませ。何より殿下は主上にこのことを知られぬ様私の元まで来ておいででしたから。気取られますな。彼の方は思っている以上に孤独でございます。滅私の御心がお強いのです。一層哀れなほどに」
「そうか」
「お優しい方でございます。今主上が知ったと気がつけば誰よりも傷つき精神を追いやるのは彼の方で御座います。もっと」
「…」
「もっと彼の方を愛しんでくださいませ。」







パタリという音で目を覚ますと悪戯が失敗した様な顔をした彼がいて思わず笑ってしまう。


「起こしたか?」
「いえ」
「いや。いい寝ていろ」
「誰かに聞きましたの?」
「何がだ。今彼奴らから逃げてきたところだ。」
「…」
「どうした?俺が帰ってきたら不味かったか?」
「いいえ」

そういって其の儘ベッドに倒れこんでくる。風の匂いとたまの匂い。
顔の横に主上の顔があって思わず笑ってしまう


「なぁ」
「はい」
「何時ぶりだ?」
「何時ぶりでしょう?」
「寂しかったか?」
「いいえ」
「間違えたな」
「?」
「寂しい思いをさせているな」
「主上」
「ここでは名前のはずだが?」
「もう昔過ぎて忘れてしまいました」
「名もか?」
「忘れられるはずありませんでしょ?」
「そうか」
「尚隆様」
「ん?」
「貴方は風の匂いがします」
「お前は花の匂いだな」
「ふふふ」
「なぁ」
「はい」
「後悔していないか?俺を選んだことを」
「いいえ。」
「何時もの無理ばかりさせている」
「貴方様こそ」
「ん?」
「私の様な女には縛られてお辛くありませんか?」
「バカを言うな。俺の隣にはお前しかいらん」
「もし、他の」
「諄いぞ」
「ふふふ」
「?」
「私、貴方のそばにいたいわ。だから、死ぬときも貴方のそばがいい」
「おい」
「先に私を殺して死んでくださいませ。」
「どうかしたのか?」
「だって。これはきっと夢ですもの」
「夢か?」
「ええ。貴方が私のそばで寝ているのですから。直ぐに気がつけませんでしたわ。まだまだですね、私は」
「…」
「でも」
「?」
「夢ならいい夢ですね。」
「そうか」
「寂しくないわ」



そうして私は夢のような微睡みに再び手を放つ。

翌朝起きて冷たいままのそこを見るまで。きっと私は一番の幸せ者だろうから


散りゆく野薔薇

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十二国

「風漢様ぁ?」
「んー?」
「 今迎えの者ってのがきてますけど?」
「もう少ししたら行くと伝えてくれ」
「はぁい」

多分情事の最中なのだろう。暖簾越しに聞こえる其の声に溜息をつく。きっと上客なのだろう。女将も申し訳無さげにこちらを見てくるものの返す気は無いらしい。
私は苦笑して嬌声から離れていく。きっといつもの三人が来たのだろうと思っていたのだろう。


「あんたも大変だねぇ」
「いえ。主人のためですから」
「にしても」
「?」
「あんたも風漢様の相手してるのかい?」
「は?」
「まぁこの細腰であの人の相手をする訳にはいかないか。壊されちまう」
「ふふふ。」
「うちに来ても手練れが何人も参っちまってさ。気も効くし肝も座ってる。うちにずっといて欲しいもんだ」
「私も大旦那様の命がございますから。でもまだかかりそうでございますね。」
「あの姐さんは中々離しゃしないさ。急ぎかい?」
「いえ。出直しますわ。支払いは?」
「今んところ大丈夫さ」
「なら、大旦那様が来る前に帰って来ます様お伝えください」


そういって筆を借り、手紙を書く。そして金を渡して宜しくと頭を下げると逆に恐縮されてしまった。が、仕方が無い。
一礼して門を出る。不意に今あの人がいるだろう部屋を見ると窓辺に枝垂れるあの人と女性がいて。目が少し会う。驚いた顔をして、困った顔をなさるものだからまだ知りたいことを知れてい無いのだろう。微笑んで一礼する。上げた時にはもうい無いだろう。


「王妃殿下」
「先生?」
「もう街には行きますな」
「ですが…皆忙しそうで」
「貴方様も同じではありませぬか」
「大体こうでもせねばここには参られはせぬ」
「王宮の医者がおられますでしょ?」
「主上に筒抜けでしょ?無駄なご心配をおかけする訳には参りませんし。王宮の医者はみな殿方ですもの」
「女の私がよろしいと?」
「いいえ。私、先生が好きなのですよ」
「王妃殿下」
「随分悪いのかしら?」
「仙で無ければ数ヶ月も持ちますまい」
「そんなに?」
「少し休めませぬか?湯治でもなんでも。」
「そうね」
「いくら仙でも無茶が過ぎると倒れてしまいます。」
「ふふふ」
「笑い事では無いのですよ」
「ありがとう」
「?」
「あなたがいつも心底心配してくれるから。私はあなたが好きなのね」



そういって薬をもらって立ち上がる。が、やはりうまくいか無いらしい。影から出てきた白様が私の手を取ってくれる。初めて来た時はそれもできなかったのだからさすが先生ねといえば怒られた。

ここ数年。体の不調が酷かった。来るところまで来てしまったのだろう。

『王妃殿下』
「はい」
『おやすみください』
「ありがとうございます。あと」
『誰にも申しませぬ』
「ありがとう」


そうして私は瞳を閉じてしまう。贖うことのできない睡魔の中で女将の台詞を反芻するのだった



枯れゆく野薔薇

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十二国

「お前は」
「はい?」
「なぁー。桃まだ?」
「はいはい」
「よくモテるのだから」
「はい出来ましたよ」
「ありがとう」
「…」
「ふふふ。口の周りが汚れているわ」
「まじかよ」
「こちら向いて」
「えー」


聞いているのかという声とともに机を叩くのでびっくりして主上を見ると不貞腐れているので若干困る。主上と呼ぶと頬を膨らませてそっぽを向くものだから益々だ。急いで手を洗って側に行く。ぷにぷにと頬をつつくと怒られた。


「かっこ悪りぃな」
「六太」
「母ちゃん取られたガキみてぇ」
「おまえこそ。母親に甘える糞ガキではないか」
「なにをー!」
「なんだぁ?」
「ふふふふふ」
「「?」」
「本当の親子の様」
「「誰が!!!」」
「あら母親は私がなれるかと思いましたのに」
「!」
「当たり前だろ!俺の母ちゃんはお前だけだもの」
「ありがとう六太」
「…」
「あら主上は?」
「意地の悪い女だな」
「そうでございますか?」
「ああ」
「なら」
「お前とは本物の夫婦だ。この糞ガキが子供というのが腹立たしいだけだ」
「なにお」
「いらっしゃい。六太」
「抱きかかえるな。重いだろう」
「六太なら大丈夫ですわ」
「なら、いいが」
「どういうことだ?」
「いい旦那様だということよ」
「えー?」
「お前な」
「いい息子といい旦那様を得て幸せね」
「「…」」
「?」
「俺仕事してくる」
「え?」
「俺も」
「…」
「お前も来るのだろう?」
「ええ」
「?」
「ですがもう少しだけ」
「「は」」
「折角久しぶりに3人揃ったのですから。」



そういうとこそこそ出てこうとした2人がぎゅうぎゅうと抱きしめてくる。それがおかしくて私も抱き返すのだった



寂しい野薔薇

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十二国

「延王妃殿下」
「ご無沙汰しております。それと」
「?」
「申し訳ございませぬ。折角早のご招待を受けましたのに。着いた早々風邪などひいてしまって」
「お気になされますな」
「もう歳でございますね」
「なにをおっしゃておられるのか」
「実は私体があまり強くないの」
「は?」
「仙でなければ長生きは出来ぬだろうと。これは主上に秘密ですよ」
「はい」
「不思議ですね。誰にも言う気は無かったのです。驍宗様のお顔を拝しましたらつい。戴も良い王を得られました」
「私は」
「驍宗様」
「?」
「私も秘密を申したのです。あなた様も」
「!」
「でなければ狡いですわ」
「あなた様は変わりませんね」
「それが私ですもの」


そう言って微笑むと先ほどより温和な顔になられる。


「泰麒がですか?」
「怯えているような顔をするのです」
「そうですか」
「何か?」
「いえ。泰は台輔お可愛い方でしょ?内の悪さと違って」
「え?」
「ふふふ。困っていらっしゃる」
「どう言えばいいのか。」
「六太や景台輔の言を聞けば優しく穏やかなお子だと。」
「はい」
「ですから気を使われているのでしょう」
「何に?」
「天に」
「は?」
「うちの悪さですら主上をお連れするのに何日もかかりました。王となるものの重責は凄いものと側で見てわかっているつもりです。ですがそれを決めた麒麟の重責も凄まじいものです。あの子が悩み傷つく様も見て参りました。」
「そうですか」
「時にあの子がこう言うのです。天は何も教えてくれないと」
「…」
「雨が降るのを人は経験で憶測をつけることが出来ますがそれ以上は無理でしょう?なのに麒麟たちはそれを真剣に考えるのです。それはとても可哀想で無意味なことなのに。懸命に考えるのです」
「はい」
「特に泰台輔は六太と一緒な蓬莱生まれですから。この世の理に疎いではなく、分からないことだらけでしょう。その上王がないとか。益々持って分からないことだらけなのに責務だけのしかかる。慈愛ものですから益々持ってお労しい限りです」


そういうとすごく悲しそうな顔を為さるので如何致しましたと尋ねると分かりませんでしたと仰られるので私は起き上がる。


「延王妃殿下」
「驍宗様」
「お身体にさわります」
「知らぬこと解らぬことはたくさんあります。ただそれを蔑ろに為さいますな。」
「は?」
「王は時に搾取せねばなりませぬ。否。せねば成り立たぬのは王の方でございます。」
「はい」
「肝に銘じませ。度の過ぎた抑圧も度の過ぎた自由も何も生みませぬ。解らぬ時は止まって考えるのです。今回のように。誰かに聞いたり求めなさいませ。」
「わかりました」
「あの日申し上げましたでしょう?慈悲を手に入れればあなた様は王に足る方と」
「あの時より忘れなことはございません」
「泰台輔の為を思ったこれは間違いなく慈悲でございましたよ。」
「…」
「本当に戴は良い王をお向かいなさりました」


そう言って私は笑うのだ。驍宗様も少し微笑む。大丈夫でしょうか?とおっしゃる。


「その為に主上が参りました。あの人が無茶をなさらないか…六官始め皆心配しております。」
「…」
「叱責する為に参りましたの。それ以上に」
「?」
「これを」
「これは?」
「蓬莱。私の故郷にある魔除けですわ」
「魔除け?」
「ええ。良からぬものがあなたを苦しめませんように。必ず再び会えますようにと。」
「…」
「まさか祝いの品に入れるわけもいかず…いえ。やはりお返しくださいませ。このようなもの他国の王にお渡しするわけには」
「いえ」
「?」
「嬉しく思います」
「無理をなさらないで下さいまし」
「本当でございます」
「…」
「お返しを致したいのですが…この有様ですので何もお渡しすることが叶いません」
「なら」
「はい」
「後でお2人で尋ねてきてくれますか?」
「泰麒とですか」
「はい」
「出来ますでしょうか?」
「貴方ならそれと」
「?」
「我が主上が無茶をなさってもお許しくださいませ」
「ふふふ。あなた様らしい」


そういって苦笑なさるのだから大丈夫だろうなとそう思って私も苦笑するのだった




太陽と青空

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十二国

「今日は戴の王と麒麟が来る」
「戴、でございますか?」
「北の国だ」
「玉の産地でございましたね」
「ああ」
「主上」
「ん?」


何かお楽しみでもございましたか?と尋ねて帯を締めると苦笑される。お見通しか?と仰られるものだから私はくつくつ笑うことしかできない。


「お楽しそうでしょ?公務ですのに」
「どういう意味だ?」
「お逃げ遊ばしませぬし。それどころか衣装の指定まで」
「敵わぬな」
「安心召されませ。上は六官から下は下官まで皆知っておりますよ」
「そんなに分かりやすいか?俺は」
「ふふふ」
「笑うな。存外傷付いているのだぞ」
「お逃げ遊ばさないからですわ。何時もなら朝から大人気ない鬼ごっこを為さるのに今日はありませぬもの。」
「…」
「綺麗な女人か」
「は?」
「沢山の玉か」
「軽んじられているな」
「あら、大宗伯様の言でございますよ」
「あいつ」
「さて。出来ましたよ」
「…」
「主上?」
「でだ」
「?」
「お前はどう思ったのだ?」
「私ですが?」
「ああ」
「如何して?」
「…」
「また悪さなさったのですが?」
「違う」
「?」
「お前にまで軽んじられているかと思うとだな…どうも心地が良くない」


そう言うと不貞腐れながら椅子に座るものだから微笑んでしまう。其の儘膝間付いて膝に手を置くと私の名前を呼ぶ。

「私が主上を軽んじることはありません」
「どうだかな」
「其の前に見限ります故ご安心を」
「…」
「一応大宗伯様には申しましたの。戴の国に驍宗なる左将軍が腕の立つお方と風の噂で聞き及んでおります。最近腕が鈍るとぼやいておられましたから」
「時々だがお前」
「はい?」
「城から抜け出して居るだろう」
「まさかあなた様であるまいに。私まで抜け出しましたら誰が山積した書類に目を通すのです」
「お前の風が恐ろしい」
「恐ろしいついでに」
「ん?」
「西におられる白梅はお元気ですか」
「…」




見上げる主上の顔には冷や汗が一つ。にこりと笑ってお時間ですよと私は笑うのだ。




曲者と野薔薇

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