忍者ブログ
変換なしの雑食夢

ran

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

十二国

目を覚ますと大宗伯様がいた。
凄く驚いた顔をなさるものだから思わず大宗伯様と言おうとしたものの声が酷い声で逆に驚いてしまう。
途端に酷い眩暈と吐き気だ。かたりと立った大宗伯様が女官を呼びつけながら私の背中をさするのだ。

「大丈夫ですか?」
「私は?」
「覚えておいでにならないか。倒れられていたのだ」
「あ、ああ」
「王宮の医者が見るといったものの台輔の女妖がならぬと突っぱねましてな。街の女医を呼んで診てもらいましたのでご安心を」
「主上には?」
「台輔が」
「成りませぬ」
「なにをいっておられる?」
「彼の方のなす邪魔をしてはなりませぬ。直ぐに台輔をお戻しください」
「貴方は今自分の状態がわかっておいでか?」
「これ以上役立たずの女にはなりたく無いのです」
「は?」



目が回る世界は大層気持ちが悪い。その中でいった言葉はどの様に届いたのだろうか?再び手放した意識の中で私は微睡む



「どこだっ!」
「おい、まだ寝ているんだ。少し落ち着け」
「血を少し吐いた。台輔は別室に」
「だけど」
「ここでお前まで倒れたらどうする。少し待ってろ。直ぐに知らせる」
「うん」
「心配するな。あれがお前を置いていったりはせぬよ」
「…なんかあったら直ぐ知らせて」
「ああ」


「でだ」
「…」
「医者はどこだ?」
「今彼女を診ています。ああ、戻ってきたか」
「お初に」
「いい。あいつは」
「只今寝ておられます」
「仙が病むとはどういうことだ」
「端的に申しても」
「構わぬ」
「相当お身体を悪くなされておいでです」
「そんなに悪いのか?」
「今仙籍を抜かれましたら数日と持ちませぬ」
「…」
「滋養をつけさせしっかり休息させてくださいませ。何より殿下は主上にこのことを知られぬ様私の元まで来ておいででしたから。気取られますな。彼の方は思っている以上に孤独でございます。滅私の御心がお強いのです。一層哀れなほどに」
「そうか」
「お優しい方でございます。今主上が知ったと気がつけば誰よりも傷つき精神を追いやるのは彼の方で御座います。もっと」
「…」
「もっと彼の方を愛しんでくださいませ。」







パタリという音で目を覚ますと悪戯が失敗した様な顔をした彼がいて思わず笑ってしまう。


「起こしたか?」
「いえ」
「いや。いい寝ていろ」
「誰かに聞きましたの?」
「何がだ。今彼奴らから逃げてきたところだ。」
「…」
「どうした?俺が帰ってきたら不味かったか?」
「いいえ」

そういって其の儘ベッドに倒れこんでくる。風の匂いとたまの匂い。
顔の横に主上の顔があって思わず笑ってしまう


「なぁ」
「はい」
「何時ぶりだ?」
「何時ぶりでしょう?」
「寂しかったか?」
「いいえ」
「間違えたな」
「?」
「寂しい思いをさせているな」
「主上」
「ここでは名前のはずだが?」
「もう昔過ぎて忘れてしまいました」
「名もか?」
「忘れられるはずありませんでしょ?」
「そうか」
「尚隆様」
「ん?」
「貴方は風の匂いがします」
「お前は花の匂いだな」
「ふふふ」
「なぁ」
「はい」
「後悔していないか?俺を選んだことを」
「いいえ。」
「何時もの無理ばかりさせている」
「貴方様こそ」
「ん?」
「私の様な女には縛られてお辛くありませんか?」
「バカを言うな。俺の隣にはお前しかいらん」
「もし、他の」
「諄いぞ」
「ふふふ」
「?」
「私、貴方のそばにいたいわ。だから、死ぬときも貴方のそばがいい」
「おい」
「先に私を殺して死んでくださいませ。」
「どうかしたのか?」
「だって。これはきっと夢ですもの」
「夢か?」
「ええ。貴方が私のそばで寝ているのですから。直ぐに気がつけませんでしたわ。まだまだですね、私は」
「…」
「でも」
「?」
「夢ならいい夢ですね。」
「そうか」
「寂しくないわ」



そうして私は夢のような微睡みに再び手を放つ。

翌朝起きて冷たいままのそこを見るまで。きっと私は一番の幸せ者だろうから


散りゆく野薔薇

拍手

PR