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変換なしの雑食夢

ran

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初恋の三成 8

「懐に入るまで野生の動物みたいなんだよね。でも入って仕舞えばすぐ懐いてくれるんだけど」
「左様左様。敵か味方か見極めて味方とわかれば至極可愛らしいものよ」
「ふふふ。味方とわかったかな?」
「ひひひ」
「用意は万端なのね」
「何時になるかなぁ」
「早くして欲しいよねぇ。」






「梅!」
「?!」
「今帰った!」
「…」
「怪我は無い。そんな顔をするな」
「本当ですか?」
「ああ。秀吉様からお褒めいただけた。」
「良かった」
「?」
「…」
「如何、した?」
「え?」
「さっきまでと反対の顔だ。…その、」
「???」
「その。私にだ。笑って、いるのは初めてかもしれない」
「そうですか?」
「ああ」
「…」
「…」
「それより」
「ん?」
「お帰りなさい」
「?!」
「無事で何よりです」
「あ」
「?」
「…そのだ」
「石田様?」
「…ただいま」



にこりと笑うのでこちらの頬も緩む。帰って間も無い、其れこそ甲冑のままの状態で嫌ではなかっただろうかと思いつつも会わずには居られなかった。





「あの」
「何だ?」
「お姿…改めなくても?」
「あ、ああ」
「あ、そうだ。」
「?」
「少し、いえやっぱり後で」
「???」
「疲れておいででしょう?」
「…いや、平気だ」
「なら。少し部屋まで行ってきます」
「?」
「ついてきていただけますか?」
「?!」
「?」
「あ、う…それ、は」
「石田様?」
「そ、の。」
「?」
「やはり、半兵衛様の許可を得ないままは」
「え?」
「…」
「あ、の!」
「?」
「お渡ししたいものがあるのです」
「???」
「えっと…ですね。それが、部屋に。あって…今戦から帰ってきた人ばかりだからあまり…その」
「!」
「やはり私一人で」
「す、すまない!」
「?」
「ついていく。もしものことがあったら大変だからな」
「ありがとうございます」




盛大に勘違いした己を恥じながら梅の顔を見るとふふふと笑われた。良く、笑うようになってくれたと思う。さあ行こうといって歩き出すとキョロキョロと周りを見ている。ごった返す兵士がやはり恐ろしいのだろう。
大丈夫だろうかと思いつつ、少し開けたところに出ると身体が強張るのがわかる。




「梅」
「え?!あ…すいません」
「…」
「石田様?」
「抱きかかえる許可を」
「は?」
「私の足ならこの喧騒は一瞬だ」
「!」
「顔色も悪い…すまない」
「?」
「私のせいだ…」
「?!」
「…」
「ち、違いますよ。そんな…あからさまに落ち込まないでください」
「しかし」
「梅様ー!!!」
「あ」




いたいたと言いながら老女がかけてくる。はたとした顔をして、少し待っててくださいいいですねと言ってそちらに梅が行く。確か…半兵衛様の乳母を呼び寄せて梅につけたと言っていたが、その方だろうか?と思いながらそちらを見ていると助かりますとかそそっかしいとか言いながら何かを受け取って急いで帰ってくる。手には笹の描かれた風呂敷包み。半兵衛様からか?と思いつつもそれをじっと見てしまう。青い顔の梅が少し困った顔をしてそれを持ってくる。それと状況が余りにも不可思議なのだ。






「あの、ですね」
「?」
「お約束しましたから」
「約束?」
「お迎えに上がると」
「ああ」
「急いで来てしまって…これを」
「?」
「い、らなかったら捨ててください」
「あ、おい!」





そう言うとパタパタとかけて行った。
手には先ほどの風呂敷包み。





「やれ、三成」
「刑部」
「梅殿に会えたか?」
「会えた、が」
「?」
「逃げてしまった」
「…またなんぞ致したか?」
「いや…これをだ。」
「?」
「置いて…半兵衛様からか?」
「それは…賢人のものではあるまい。」
「なら」
「…開けて見りゃれ」





その場に座り込んで風呂敷を広げる。白檀の淡い香りがして、薄紫色の着物が現れる。




「縫取りか。無紋は不味かろうしなぁ」
「着物?」
「主のであろう」
「?!」
「はよ着替えるが良かろうに」
「何故?!」
「さてなぁ。礼、であろう」
「!」
「良かったなぁ」










初恋の三成 8








「梅」
「お帰りなさい、父上様」
「変わりなく?」
「はい」
「それより、三成くんに何したの?」
「?」
「会いたいってさ。わざわざ僕に申し出てくれたよ」
「…」
「通してあるから会っておいで」
「…今は、その」
「?」
「どんな顔して合えばいいか」
「いつも通りでいいんじゃない?」
「そういう意味では」
「…そう言えば」
「?」
「新しい着物着ていたね」
「!」
「大丈夫。すごく喜んでいたから。」
「本当?」
「本当」
「…」
「行っておいで」








「半兵衛」
「おや、秀吉」
「二人はどうだ?」
「可愛いものさ」
「祝言はいつにする」
「それはまだ先だよ」
「そうか」
「意外と可愛がっているよね」
「当たり前だ。吾とて心配している」
「ふふふ。本当にね」

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初恋の三成 7

「戦、ですか?」
「ああ」
「それはまた」
「すまない。昼からの予定は」
「お気になさらないでください。それより」
「?」
「お怪我を致しませんように…」
「!」
「石田様」
「う…そのだ」
「???」
「本当に」
「武士なのですから」
「…」
「だいたい今までならば嬉々として行かれたでしょう?」
「今でもそうだ!…が」
「?」
「梅との約束を反故してしまう」
「…」
「何だ?」
「い、え。石田様」
「?」
「本当に性格が変わられましたね」
「…黙れ」
「…ふふふ」
「?!」
「弱々しい。でも…こういう時に約束するのはよろしくないと言いますから」
「そうなのか?」
「怪我せず帰ってきてくださいね」
「…」
「眉間の皺が凄いです」
「仕方がない」
「初陣から早2年。父上も期待していましたよ」
「何?!半兵衛様がか!」
「はい。まずは元気に行って帰ってくる。帰ってきたらお迎えに上がりますから」
「必ずだぞ!」
「はい」
「…暫時待っていてくれ」
「はい?」



風のように走っていく。成る程、足の早いことだ。但し、答えを聞いてから行って欲しかった。
待ちぼうけである。
場所が場所だから本来いたくは無いのだけどなぁと思いつつあんなに残念そうな石田様の顔を見た後無碍にはできないし。仕方なく縁側に出て座っていると影ができるので顔を上げる。




「や!」
「?!」





上げるんじゃなかった。









「な、何ですか?!」
「話があるから。少し良い?」
「や、だ!」
「?!」
「ごめんなさい…」
「ちょっと待って!…今、飲んでないから!本当!!!」
「…」
「この間ごめん!」
「…」
「何度か会いに行こうと思ったんだけど…半兵衛様に駄目って!でもさ…」
「…」
「本当に、ごめん!許し…て?!」
「やだ…誰か…」
「?!?!!!泣いて?!!??」
「貴様…」
「?!?!????!」
「梅!」
「げ!三成!」
「頭を垂れろ!一瞬で済まさん!苦しむように…切り落としてくれよう」
「ま、待て!」
「石田、様…」
「…こちらに来い。刑部!」
「はてはて…ひひひ。この馬鹿は」
「おお、たに?!」
「ふふふ。」
「半、べえさま!!!」
「君、ね。本当に懲りないというか…君のやったことの重大さをわかっていないようだね」
「す、すいません!」
「梅殿。こちらにこりゃれ。三成」
「…私は此奴を罰してから」
「…石田様」
「?!」
「ふーん。ご指名みたいだね。」
「な?!その…梅?」
「…」
「顔色が悪い…部屋で横になれ。」
「は、い」
「…半兵衛様」
「梅についてやってくれ給え。…ふふふ。僕がしっかり体に刻んでおくからね。あと、彼女が良いというなら部屋に連れてやって。ダメなら僕の部屋で良いから」
「はい。」
「さぁ。行こう。我は先に行って準備して居る」
「サァ行こうかな。…ね、」
「す、すいません!」






体に力が入らない。握っている石田様の袖をゆっくり離すと身体が立っていられなくなる。するとすまないと言って体を支えてくれる。




「…石田様」
「良い。立てるか?」
「腰が、抜けて…ごめんなさい」
「そうか」
「本当に嫌になる」
「仕方が無い…あの下衆め」
「石田様」
「何だ?!」
「顔が怖い」
「…」
「本当にごめんなさい。戦準備…で、忙しいのに」
「そんなことどうにでもなる…すまん」
「?!」
「抱きかかえることを少しの間許してくれ」
「お、」
「?」
「重い、ですよ」
「…」
「?」
「…くくく」
「笑うな…」
「お前の方が弱々しいな」
「もう!」
「行くぞ。」
「…ん」







初恋の三成 7






「…」
「少しましになったか?」
「…」
「こっちを向けるか?」
「嫌です」
「…っ。くくくく」
「もう!…あ」
「向いたな」
「…もう」
「許可をもらっているから此処で仕度をするから安心しろ」
「!」
「あの愚か者は半兵衛様が始末をつける。」
「…はい」
「今日は私が詰める。明日からは時間が空いたら来るが」
「?!」
「如何した?」
「む、無理はダメです」
「わかっている」
「戦さ場で怪我しちゃう」
「…」
「それは駄目」
「ああ」
「石田様?」
「手を出せ」
「??」
「何を贈るべきかわからなかったから、気にいるか否かはわからん」
「…わ」
「この間、堺に行った折買い求めた。」
「唐錦ですか?」
「名物裂になると聞いている」
「こんな大変なもの!」
「…好みに合わないか?」
「そういうわけでは…但こんな高価なもの」
「反物を渡したが着てもらえてないから…好みが合わないのは知っている」
「う…」
「なので城下に行った折」
「違うのです」
「?」
「その」
「???」
「好みはあってます…」
「!」
「…」
「なら、」
「?」
「なら良かった」
「…」
「おい急に…如何した?顔を覆って。気持ち悪いか?」
「い、え」
「?」
「お気になさらず…」
「ならいいが。…其処に居る。何かあれば言え」
「はい」






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初恋の三成 6

「…」
「やれ、梅殿」
「?!」
「何をしりゃれる。此処は我の執務室だが?」
「い、え…あの。…今石田様は?」
「三成か?ちと待たしゃれ。もう少しすれば」
「い、いえ!正確に言えば」
「?」
「大谷様にお話があるのです…その」
「?」
「石田様のいないところで」







そういえば数度瞬いて大谷様がこちにこりゃれと案内してくれる。きっと石田様のいないところに通してくださるのだろうと思えば、庭先に面した一間。曰くここなら密会とも思われないし、人が来ればすぐわかるということだった。




「して」
「…」
「また三成のことか?」
「はい」
「何かしりゃれたか?」
「いいえ…」
「?」
「石田様と大谷様は竹馬の友と聞きました」
「竹馬ではないがなぁ…まぁその様なものよ。」
「ならば、石田様の真意をお教え頂きたいのです」
「?」
「先だっての変装も。気づいておいででしたでしょう?」
「あー…」
「よくよく思い返せば最初は弟に話していましたが最後は私に話しかけていました。何より風邪薬。あの時まで誰にも気がつかれなかったのです。あの薬だってすぐに手に入るものではありません。…ひき始めの時には気づいていたということですよね…。寝込んでいる間お姿は拝していませんが贈り物を…あの時の反物ではありません。菓子に滋養のある食べ物草子。」
「ひひひ」
「訳がわかりませぬ!」
「主とて人の子よなぁ。混乱しておるか」
「当たり前です。裳着よりのちの変わり様…私にどうしろと」
「そうよなぁ。以前言った通り主と好を通じたいのよ。生きる意味になりたいとは大それたことよなぁ。ほんに三成らしくなく三成らしい。」
「…」
「そういやな顔をなさるな。何というか…我とて合点がいかぬ所も多い。されどなぁ」
「?」
「この2年。あれにも様々な縁談が舞い込んできておるが、けんもほろろよ。好いた女子がいるとてなぁ。」
「その様な方がいるのですか?!」
「主よ、主。」
「…」
「そ、その様になぁ。いやな顔をすでないわ。」
「ダシに使われている気が」
「ダシ?」
「結婚したくないから…面倒くさいとあの人なら」
「太閤の命をもっても駄目なのにか?その程度ならもう何処ぞの姫を娶っておるわ。」
「?!」
「嫌われていることもわかっている。其れでも主を嫁に娶りたいと思っているし否なれば誰とも好を通ずるつもりはないと」
「…また、何故?」
「裳着の折、一目惚れの様よ。」
「所詮見た目か!」
「ひひひ」
「近くに女がいないせいです!私なんて普通です。…綺麗な人みれば変わりますよ」
「と思うのになぁ。ちと違う」
「?」
「ハレの日なのに所帯なさげで何処となく寂しそうで気になったと…この世を憂た目で見ているのが痛々しいと。…笑わせてやりたいと思ったそうよ」
「…」
「主を笑わせたいのは元々よ。初めて会った折より」
「え?!」
「主は忘れたか?」
「いえ、だって!叩くし暴言凄いし!」
「我とてそう思っていたが、最近になって思い出したのよ。あれが花を摘んだりしておった相手は主だったよの。主とて普通に受け取っておったわ。変わったのは主が三成にしたことよ」
「?」
「思いっきり押してなぁ。いや、蹴ったのよ。馬乗りになって…。理由は女は下がっていろと言った三成を」
「腹たって男も女もないって!叫んだ…」
「ひひひ」
「弱いと駄目だというのに私に勝てないなんてって…」
「そうよ」
「…」
「…」
「…」
「…」
「言いました」
「ひひひ。先だって思い出した時に三成に聞けば忌々しそうに言っておったわ。元々は悪童から主を庇うつもりが後ろから蹴られたと。理由は様々とて主の事を女でも男でもないと思い至った事。まぁ、すぐに力に差はできてくるし主は侍女で三成は侍童よ。やることなすこと正反対よ。齢を重ねる毎に主は女で三成は男。そう普通は思うのだが…何故か主の事は好敵手…と言えばいいのか益々己の張り合う対象に見ていた様よ。無論自分の土俵のなぁ。故に男の様に扱う。侍女に求められるのは強さではないのになぁ。主も主で突っ掛かるし。故に人でもなく常に横にいる張り合う兄弟の様に思っておったのかもしれんなぁ。」
「…兄弟も人です」
「人という枠より濃いのでなぁ。あれの人は他人よ他人。主をもう一人の自分の様に見ていた様よ。家族、兄弟。女でもなく人でもなく。己の片割れ、好敵手を拗らせた張り合う輩。そう見ていたと言えば完璧よな。」
「言葉が足りなすぎです」
「其れが三成よ。ひひひ。あの日、あの時。主がそういうものではなく一人の女であり、全く己と違うものであると気づいた様よ。己とは全く異なり、守らなくてはならない…否守りたいものと理解したのよ。急にではなかろう?あれとてよくよく考えると主に手を出すのは三成のみぞ。基本的に主を苛めたものは完膚無きままにしておったよ。あの愚者は哀れなものよ。二人がかりで折檻されておったわ。…潜在的に主を思う気持ちがなかったとは言い切れぬのよ」
「?!」
「主にとっては勝手な話の様だがなぁ。この2年、あれを見ていたら本気なのはようわかった。」
「勝手です」
「元凶は主にあるがなぁ」
「う…」
「して」
「?」
「次は主の本心を教えて欲しいものよなぁ」
「…」
「…」
「…」
「…梅殿」
「今、己の馬鹿さ加減と戦ってますから!」
「ひひひ」
「もう!頭が回らない!」
「はてさて…おや?」
「おい!刑部!」
「きよったわ」
「…石田、様?」
「梅?…刑部!!!」
「はてさて、勘違い致すな。我は相談役よ」
「相談?如何した??」
「っ?!」
「何かあったのか?」
「…う、あ」
「梅?」






『女子供を苛める下衆は秀吉様には必要ない!此奴はお前より役に立っている!力の有無で評価するな!!!大体女は弱いものだ!女!下がっていろ!』






「…」
「梅?」
「『私がお前を守ってやる…』」
「お、い?」
「梅殿?」
「泣くな…本当に如何した?刑部」
「はてさて。我とて…やれ如何した?」
「頭が痛い」
「まだ身体が治っていないせいだろう。医師を呼ぶ」
「やれ、我が行こう」
「いや、私が行く」
「ひひひ。主はおらしゃれ。」
「しか、し」
「では暫し待たれよ」








初恋の三成 6








「向こうに行っている」
「う…」
「(着物を掴んだだと?!)本当に如何した?顔も赤い」
「っ!?」
「?」
「そ、の」
「?」
「なんで、」
「何がだ?」
「私なのですか?」
「は?」
「私は、そんなに綺麗でも愛想が良いわけでもないし。実の親は死んじゃてますし。…今となっては父上の名前欲しさに近づいてくる輩が多くて人間不信だし。」
「その、だ」
「?」
「…私は梅以外に子をもうけたくない。」
「は?」
「お、怒るな!どう言えばいい?添いたくないのだ。お前以外とは」
「何故?」
「知らん」
「!」
「だが、笑う顔も泣く顔も。怒る顔も。全て私に向けて欲しいとも思っている」
「い、石田様?」
「元服する前は本当に子供だった…その、だ」
「お、落ち着いてください」
「華奢なお前を初めて見た折から…守ってやりたくて。だが。守るつもりの女に蹴られて馬乗りされた程度で…」
「わ、忘れてください!」
「度量が足りん…謝ろうとしたが叫ばれる上犬猿のようになってしまってだ」
「?!」
「私の言葉足らずのせいだが…段々そのだ。」
「…石田様」
「?」
「もう、私の至らなさはようようわかりました」
「???」
「子供のようにばかりしていて…自分の事ばかりでした」
「それは私の方がだ…その。すまなかった」
「?!」
「…梅?」
「私の方こそ、ごめんなさい」
「…」
「本当に。あの時も助けていただいたのに。裏があるとか人間してダメな風に考えていました。本当にごめんなさい」
「?!」
「?」
「裏など、ない。本当ならば…あのまま奴の腸を。」
「!?」
「…!!!」
「私のですか?」
「ち、ちがう!…いや、今までがそうだから仕方がないが、お前を傷つけたいと思ったことはない!」
「…」
「信じてくれ」
「わかりました」
「!」
「あと」
「?」
「お見舞いの品。ありがとうございます」
「受け取ってくれるのか?」
「え?」
「いや…今までなら」
「そうですね」
「…受け取ってくれるだけでありがたい」
「…」
「?」
「お礼をしたいのですけども…お好きなものも知りませんし」
「なら」
「?」
「じょ…」
「???」
「城下へ、行かないか??」
「!」
「む、無論!邪なことなどしない!その、だ。」
「いつにいたしますか?」
「!?」
「石田様?」
「本当、か?」
「はい」
「な、ならば!今からだ!!!いや…明日。明日は如何だろうか?」
「わかりました」

拍手

童程度の三成

石田三成という人が居る。
太閤殿下や竹中様の覚えめでたいこの男は、私にとっては天敵でしかない。しがない侍女である私の前に現れては文句ばかり言われる。やれ、掃除が雑だの。やれ、縫い目が粗いだの。お茶の淹れ方がなっていないだの。文字が汚いだの。重箱の隅を突くかのような小姑ぶりを発揮してくる。事実手を抜いているのを見透かされている上、重臣である石田様に言い返すこともできない一侍女の私に何やら苛立って結局愚図!鈍間!!!役立たず!!!!!の三つの言葉を投げかけていなくなるのだ。




「貴様は!」
「石田様」
「な、何だ?!」
「もうこれからは大丈夫でございます」
「は?!」
「そんなに怒鳴らなくてももう大丈夫ですから」
「…如何いうことだ」
「私村に帰ることにしました」
「!?」
「長きにわたっての御叱咤。有難く、お礼致します。では」
「ま、待て!」
「ひゃ!」
「す、すまない。だ、が」
「石田様?」
「暇乞いとは如何いうわけだ!」
「…有り体に言えば」
「?」
「重臣である石田様が私の仕事が気に入らないのを皆知っておりましたので…その。」
「その、何だ!」
「クビですね」
「!」
「まぁ、仕方ないんですよ?私のせいですし。もう少し頑張れるかな…とは思ってましたが…ダメみたいでしたし…ああ!石田様について申し上げたわけではなくてですね。その。仕事出来ないからが原因ですから…私自身のせいなんですけど」
「…暫時待て」
「?」
「お前の上役に会ってくる。やめさすなどという愚考!断じて許すものか!」
「は?え」
「名は何という?!ああ良い。取り敢えず、刑部を」
「お、落ち着いてください!」
「何だ」
「石田様が私の仕事気に入らないんですよね?」
「貴様の仕事が気に入らないといつ言った」
「いや、日に2.3回は。」
「…」
「最近特に5.6回は間違いなく」
「それは」
「?」
「貴様の仕事が気に入らないのではない。貴様が私の側以外で仕事をしているから気に入らん!」
「は…?」
「特に最近は酷い。私の部屋から一番遠いところになってしまっただろう!ますますもって腹立たしい!」
「え?あの…それは。」
「何だ?」
「石田様がよくお怒りになるからであって…その配慮で」
「馬鹿を言うな!私の部屋近くでは言ったことがない!」
「…そう言えば」
「ふん!」
「ふんっ…て。そんな子供ではないのですから」
「煩い!元はと言えば貴様が!」
「私が?」
「私以外にも、笑う、から」
「!?」
「私を見れば、怯えるのにだ!」
「…石田様は私のことがお嫌いなのかと」
「?!」
「いえ、私だけでは無く。公然の事実として。皆そう思っていますので」
「嫌っていない!!!!!」
「っ?!」
「嫌って、いない。嫌えるものか…寧ろ」
「石田様?」
「…おい」
「はい?」
「此処はクビになったと言ったな」
「え?はい」
「なら、都合が良い」
「?」
「今日から私が貴様を貰い受ける」
「は?」
「明日からは私の婚約者だ」
「?!」
「貴様の両親の住まいは何処だ?挨拶に使者を遣る。心配しなくて良い。すべてこちらに任せろ」
「あ、」
「まずは秀吉様の許可を得なければいけない。…着物を誂えるか。」
「あ、の」
「誰か!呉服屋を呼べ!今すぐだ!あと、刑部も」
「あの!」
「何だ?」
「急展開すぎて…ついていけません」
「?」
「急に側室だなんて!」
「誰が側室と言った」
「遊び女???」
「馬鹿者。正室だ」
「はっ?!」
「変な顔をするな」
「せいし…は?!え???」
「何だ!文句でもあるのか!!!」
「石田様」
「何だ」
「私のことお嫌いなのでしょう?」
「嫌いでないと!今言っただろう!」
「で、すけど」
「?」
「今までのあれは」
「…ああ」
「?」
「話しかけるきっかけがなかったからだ。別段貴様の仕事に過不足ないと思っている。」
「話かける…為?」
「そうだ」
「…つかぬ事をお伺いいたしますが」
「何だ」
「石田様は私のことを嫌っておいでではないのですね」
「ああ」
「遊び女としてでも無く」
「当たり前だ」
「罵詈雑言や暴力で鬱憤を晴らそうとしているわけでも無く」
「…当たり前の事を言うな!何が言いたい!」
「恐れ多いことですが」
「だから!」
「私のことを憎からず思っておいでなのですか?」
「当たり前だ。貴様を初めて見た時から愛いと思っていた。でなければ正室などにはせん!」
「…」
「何だ?」
「初めて知りました」
「…」
「…」
「…」
「…」
「言っていなかったか?」
「初めて聞きました」









童程度の三成







「おい」
「はい?あら?」
「ようやく!!!」
「石田様、如何したのですか???」
「如何したもこうしたも無い!!!貴様!何故逃げた!!!」
「わー、久し振りの怒声ですね…落ち着いてください」
「ねぇちゃん…」
「大丈夫よ。ほら石田様。末の弟です。泣かさないでください」
「す、すまん。…では無い!貴様!!!」
「ひっ?!」
「あ」
「しまっ」
「びえーーーん!」
「ほら泣かない。石田様!」
「す、すまん!泣くな」
「お母ちゃん!六をお願い」
「はいは…い?お、お武家様?!」
「貴様の母親か?」
「はい…そうですけど」
「すまない。お子を泣かしてしまった」
「いいいいいいいえ!滅相もありません!」
「顔を上げてくれ」
「とんでもございません!」
「…だが」
「お母ちゃん。六連れて中に入ってて。」
「だけど」
「大丈夫」
「…では」
「さてと。静かになりましたね。」
「…」
「こんなしがない村まで何の御ようですか?」
「貴様が逃げ出したからだろう!あの後私の知らぬ間に」
「あー…聞かれてませんか?」
「何をだ?」
「石田様家中の皆様が私ではならないと…まぁそうでしょうねぇ。」
「?!」
「刑部様はしばし待てと言ってはくれましたけど…ね。やっぱりそういうものですよ」
「…」
「怒っても無理ですよ!大体、あの日まで私自身嫌われていると思ってたくらいですし。いきなり言われても」
「言われても、何だ?!」
「そのとき来てた縁談断る為の口実かなって。」
「…」
「はたまた、結婚ちらつかせても遊び女かなって」
「…貴様は」
「?」
「貴様は、そう思ったのか?」
「…あれだけ言われれば若干」
「あれだけ?」
「え?!いや!皆さん。石田様のこと大好きだから!心配してですね。」
「…」
「私のような農民相手では後々困るだろうし。後々身分の高いお嫁さん貰うだろうから…私なんてお払い箱だろうし」
「誰が」
「石田様?」
「誰が言った!」
「お、怒らないでください!」
「これを怒らずに居られるか!!!」
「わ、私だって!」
「っ」
「理不尽だと思います!でも」
「おい」
「身分不相応な事をして貴方が苦しむのは、避けたい、です」
「泣くな」
「ぐすっ」
「すまん。貴様が私の言を信じずに出て行ったと…そう」
「石田様は小姑のようで…私の天敵でしたけど」
「?!」
「嘘は言いませんでしたもの」
「…当たり前だ」
「まぁ寄ってたかって言われるとそうかなぁって気はしましたけど。」
「おい!」
「石田様?」
「2年待て」
「?」
「其れまでに必ず迎えに来る」
「2年経ってこなかったら」
「必ず来る」
「…その時は他の人のところに嫁ぎますからね」
「必ず来ると言っている!」
「…」
「これをやる。持っていろ。必ずだ。迎えに来る」
「…はい」
「…」
「石田様」
「…このまま連れて帰りたいが」
「2年待てって言ったのご自身でしょ?!」
「家中の粛清や秀吉様の説得…其れくらいはかかる」
「粛清なんてしないでください!」
「しかし」
「平然というから恐ろしいです」
「…っち!」
「まぁたまに遊びに来てくださいな」
「?!」
「あばら家ですけど」
「…また来る」
「はいはい」
「…」
「何ですか?」
「待っていろよ!早く迎えに来る」
「はいはい」

拍手

初恋の三成 5

「梅」
「はい父上様」
「…」
「?」
「正則君が」
「…」
「そう死んだ顔をしない。正則君が正式に謝罪したいと言ってきているけど」
「お気持ちだけで十分です。とお伝え下さい」
「彼は意外としつこいよ」
「…」
「一度会う?」
「本当に嫌です」
「だよね…わかったよ。僕が言っておく」
「お願いします」
「それと」
「?」
「ひとつお願いがある」
「はぁ」








生返事をするのではなかったととても後悔している。ただーこの人が一度言質を取って仕舞えば、テコでも動きはしない。
まさか男に変身して表の様子を見てこいと言われる何て思いもしなかった。しかも酒宴。肩書きは私の弟。元服前の14才と…まぁこれでもかというほど細かい設定をされた。
ただ、くノ一さんの化粧技術は日本一だと思う。誰も私だとは気づかなかった。




「やれ、竹松丸殿」
「大谷様…」
「ひひひ。誠主のお父上には困りゃるなぁ」
「…はい」
「まぁ。ように似合いよる。」
「あ、の」
「ん?」
「石田様は?」
「…三成か?如何した??」
「見当たらないので」
「ひひひ。あれは酒宴に来ぬよ」
「そう、なのですか?」
「先だって主に言われた言葉が答えておるようでなぁ。」
「?」
「主…いや、主の姉上に死ねと言うたことよ。」
「え?ああ…」
「言うてはならぬ言葉よな。我とて敵以外には言わぬ。言わぬ」
「…」
「あの時三成は強か飲んでいてな。…初めて飲んで、加減がわからぬようになったのよ」
「は?」
「その折、梅が賢人付きの侍女になると聞いてなぁ。皆ついに賢人が嫁を貰うと色めきだったものよ。まぁ、蓋を開ければ養女よな」
「はぁ」
「あれは認めん!と一言申してまだそのことを知らぬ主の前に行ってまぁ、後は例のごとくよ」
「よく覚えております。弱き者に半兵衛様の側は認めん!貴様のように弱き者は死んでしまえでしたね」
「我とて梅憎さで言うたと思うたが…」
「?」
「今思えばずっと側にいると思うた梅が人の者になると思うたのかもしれぬなぁ。…ひひひっ。悋気よ、悋気」
「大谷様」
「まぁ主には納得いかぬわなぁ。その話の後、ようちょっかいを…ん?」
「刑部」
「やれ、三成。珍しい」
「用が済めばすぐ帰る。…弟御が来ていると聞いた」
「ひひひ。我の後ろよ。竹松丸殿」
「お初にお目にかかる。私は」
「…」
「三成?」
「…刑部。これは半兵衛様の命か?」
「ひひひ。そうよなぁ」
「なら、いい。其処の」
「は、はい!」
「これを梅殿に」
「姉、上にですか?」
「私が渡すと受け取ってはもらえない。…先に見た時顔色が悪かった。薬だ」
「そのような物を」
「私からと言わず、刑部からと言えばいい。中々手に入らないものだ。これは反物。…確かに頼んだ」
「ですが…」
「其れとだ」
「?」
「私はお前が思っているように嫌ってはいない。むしろ、笑っていてほしい。願わくば私の横でだ」
「はぁ」
「…確かに伝えたぞ」
「え?!お待ち下さい!」
「ひひひ。いってしもうたなぁ」
「如何いたしましょう?」
「もらっておけ。特にその薬はよう効くからなぁ」







初恋の三成 5









「おかえり」
「ただいま帰りました」
「楽しかったかい?」
「もう二度と行きたくありません」
「三成君もいたかい?」
「いえ」
「?」
「直ぐ御帰りになりました」
「え?」
「何か?」
「いや、ね。弟御が来ると言ったら宴に行くって珍しく言っていたからね。色々話してくるかと」
「あまり…」
「如何したの?」
「い、え」
「…ちょっとこっちにおいでよ。ああ。やっぱり」
「?」
「ひどい熱だよ」
「ああ。通りで」
「いつからだろう?今日昨日ではないね…誰か」
「はい、何でございましょうか?」
「医師を。あと寝床を」
「あら!梅様。すごい熱!!」
「三成君の方が君をよく見ているね。症状にあいそうだ。医師にそれを見せて良ければ煎じてあげて」
「はい、只今」

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