忍者ブログ
変換なしの雑食夢

ran

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

親友の妹に懸想する三成

「兄様!」
「やれ、姫。きよったのか?」
「当たり前です。兄様が…倒れたと聞いて私がどのような思いで参ったと」
「ヒヒヒッ。ただの過労よ」
「?!石田様!!!!!」
「う…」
「やれ叫ぶな叫ぶな」
「病身の兄上に無理難題を申したのですか!」
「…すまない」
「違う違う。ぬしもおちつきゃれ。それに主はなんともなかろうが本に三成は怖い男よ。叱られたらなんとする」
「私の一番は兄様です!…もし兄様に何かありましたら私、生きてなどおれません」
「なっ?!」
「愛い愛い。」
「もう、この様な心配などしたくありません。」
「ほれ泣くな泣くな。可愛い顔が台無しよ」
「は、い」
「…刑部。」
「ん?何よ三成」
「貴様は暫く休んでいろ」
「そういうわけにはいかぬよ」
「貴様に何かあったら妹御に…いいな。書類は私が代わる」
「ぬ…」
「妹御」
「は、い」
「泣くな。」
「申し訳ございません。兄様が倒れたと聞いて折から心配で。貴方様にも無礼なもの言い御容赦くださいませ」
「いや、私が刑部に無理させたのは事実だ。」
「違う違う」
「刑部」
「兄様…お願いですからじっとなさって」
「刑部を頼む。ほって置くと勝手に仕事をし始める故。」
「あいわかりました」
「三成…」
「寝ていろ。体を愛うも貴様仕事だ。妹御のことは心配するな。半兵衛様に伝えておく」
「…すまん」
「いや、良い」






親友の妹に懸想する三成







「…」
「はいる…すまん!」
「やれ、構わぬ構わぬ」
「寝て、おられるか?掛物は?」
「ヒヒヒッ。主は我にも我の妹にも優しい優しい。」
「なっ?!」
「だがのぅ…」
「な、なんだ」
「まだ手放す気はない」
「…知っている。何より、離れられぬだろう」
「まぁなぁ」
「…それより掛物だ」
「ヒヒヒッ。愛い愛い。」

拍手

PR

自己嫌悪の三成2

「怪我をするなど!本当に貴様は愚図だ!」
「…はい」
「況してや骨折など!私の顔に泥を塗る気か!!!」
「…」
「薬代も馬鹿にならん!」
「なれば」
「なんだ!」
「里にお返しください。」
「…は?」
「私がここにいてもなんの役も立てますまい。里にはもう伝えております。」
「そのような事…!!!秀吉様が許しは、」
「太閤殿下におかれましては私の妹を嫁がせる事でお許しを頂きました。」
「は?!何を勝手に!!!」
「貴方様が…大谷様に」
「私は言っていない!!!」
「言った言った。故に我が動く羽目に」
「何故だ!!!」
「主が一昨日言ったのをもう忘れたか?今の様に罵詈の延長と言ってものう。ちと可哀想よ。医師にも療養を勧められておる。」
「?!」
「里に帰ってゆるりとせよ。何…次の結婚もようよう直ぐに決まろう。」
「いえ…私の様なものですから」
「そうだ!こんな女!!!私以外貰い手はおるまい!!!」
「はぁ」
「な、なんだ」
「明日、迎えが来る。」
「な?!」
「荷物は後で送ろう」
「お手数をおかけします」
「き、貴様は私を裏切る気か!!!きょ、許可しない!!!!」
「ヒヒヒッ」
「さ、里に手紙を書く!これ以上愚図を押し付けられたら堪らん!」
「現に子もなさぬでな。そろそろと言われておる時期の今回の事件よ。」
「子、など!そのうち産まれる!!!」
「今の状態で主の子が産まれるわけがなかろう…ん?」
「…もうし、わけ」
「これはいかぬ。やれ、医師を」
「は!」
「また、熱が出たのか!」
「申し訳ございません」
「早く治せ!!!この愚図が!」
「…」
「三成」
「あ…」
「申し訳ございません…本当に」
「その、だ。っ!もう私は行く!!!!」





自己嫌悪の三成 2







「熱が下がらない?」
「そうよの。怪我が膿んでな。案の定よ」
「…」
「体を揺するな。落ち着きのない」
「奥のところに行く」
「邪魔になろう。何よりぬしの言は奥の治療の妨げになろう」
「ぐ…」
「何故心にもない事しか言えぬか。」
「私だって好き好んで」
「言わぬというか?の割には」
「言うな!何故だ…私はあれの前に出ると言いたい事の真逆を言ってしまう!」
「…本に主は素直ではないのう」
「どうすればいい?」
「思った事を言えばいい。有難いかな、賢人が離縁の話を止めてくれている」
「!」
「千載一遇のチャンスよ」
「だ、が」
「熱が下がらぬからなぁ。このまま死んでしまう事もある様よ」
「?!」
「ヒヒヒッあれは武士ではないからなぁ」
「本当に、」
「ん?」
「その様な…」
「(揶揄い過ぎたか)」
「やれ三成」
「奥!」
「…行ってしもうたな」

拍手

自己嫌悪の三成

「失礼いたします」
「何の用だ!」
「お着物の直しをお持ちいたしました」
「そんな物!私のいない内に置いておけ!」
「申し訳ございません」
「…まだ何かあるのか?」
「お茶を…」
「いらん!大体書物をしているのだ!何かあったらどうする気だ!」
「申し訳ございません」
「フンッ!気の利かぬ奥だ。目障りだ!下がれ!!!」
「…失礼致しました」




いつも通りのやり取りすぎて悲しくなる。本当に夫婦なのだろうかという思案は一週間で回帰する。新枕を無言で共にしたのちにまともな会話などない。況してや枕を交わす事などありはしなかった。一年。嫌悪にまみれた日々だった。いや、永遠に続くのだろうそれに戦慄を覚える。嫌われているのだから致し方ない。太閤殿下が命じて致し方なく娶った女子が私なのだから。美しくも聡明なわけでもない。平々凡々な嫁御など目障り以外の何物でもないだろう。一層、お目通りせぬ方がいいのではと最近本当に考えているとくらりと眩暈がした。あ、旦那様の湯呑みが割れてしまう。また罵られてしまうという恐怖にそれを守ろうとしてしまった。だからと言ったら聞こえがいいが、自分の身の事を忘れてしまった。案の定、我が身は縁を投げ出され、庭に落ちてしまう。ごきりという嫌な音とぐさりと足に何かが刺さった痛みと。それらで覚醒するかと思ったのに。意識は遠のいてしまうのだった。




目を覚ました時一番に思った事は部屋の中である。という事だった。きょろきょろと視線のみを使って周りを見渡すと此処が自室であること。如何やら寝巻きに着替えられている事。怪我が思いの外痛くない事。それらがわかって声を出してみようと思うものの声が出にくい。何より起き上がる事も難儀する。それを無理したのがいけなかった。




「?!」
「っ!」
「起き上がらないで下さいませ!重症なのですよ?今は医師を呼んで参ります!」




痛くないは寝ていたせいだった。馬鹿だ馬鹿だと思っていたが正真正銘の馬鹿だった。激痛に脂汗が出てくる。如何やら足と背中に何かあったらしい。強かに打って居りますから絶対安静でございます!と医師に叱られる。矢張り足に枝が刺さり運悪く貫通しているという事と背中は全体に青痣が出来るほどの打撲。なんと気がつかなかったのだけれど腕は折れているらしい。気が付きませんでしたと言えば固定していますからねと返される。





「やれ、奥」
「大谷様、このような…っう!」
「動きなさるな。昨日まで生死の境を彷徨っておいでだった故」
「?!」
「主が庭に落ちてのち雨が降ってのう。低体温で見つかった時は死体と思ったほどよ。満身創痍の上に長時間雨に晒され案の定高熱が出てなぁ。本に危なかった」
「そうですか」
「だが良かった。我は、みつな」
「…其の儘死んでいれば良かったですね」
「は?」
「さすれば、旦那様の憂いが一つ減りましたのに。」
「お、奥?」
「大谷様」
「な、何か?」
「本に私は愚図で気の利かぬ、役立たずでございますね」
「ど、如何なされた?!」
「いえ…今自分の至らなさに嘆いております。」
「三成に」
「彼の方は私の事など箸にもかけませんでしょうが…言わないで下さいませ」
「は?何故」
「これ以上目障りになりたくないのです」
「そんな事はない。本にぬしのことを心配しておった」
「ふふふ。そんな優しい嘘を吐かなくても良いのです。あの方が私を厭うておいでなのは知っておりましたから…」
「奥よ。それは、いや」
「大谷様?」
「…ひひひ。主も中々大変よの」
「いいえ。それほどでもございません」
「そちではない…まぁいい。これは我よりよ」
「?」
「軟膏。傷によく効く」
「!ありがとうございます」
「今は第一に身体を治す事のみ考えられよ。全てはそれからよ」
「はい」









自己嫌悪な三成







「三成」
「…これを渡しておけ!」
「そういうのがよろしくない。」
「っ!」
「歯軋りするではいわ。本に主は…惚れておるなら優しい言葉の一つや二つ」
「むむむむむむむむりだ!」
「なれば離縁だのう」
「?!」
「死ねば良いと言う奥がこの世の何処に居る?」
「う…」
「好かぬなら」
「?!」
「好きなら」
「…っ?!」
「そういう童のような意地悪など流行らぬわ。」
「う、あ」
「あれ?!殿!奥様殿がお見舞いに」
「そんなわけあるか!!!己が身も守れぬ愚図に用はない!!!」
「これ、三成」
「…わかって居ります。申し訳ございません」
「う…」
「本に私は」
「奥方様?!どうぞお泣き遊ばしますな…」
「ふふふ」
「っ?!」
「はてさて。難儀よなぁ」

拍手

喜ぶ三成

「塩梅はいかがか?」
「奥方様はお会いできる状況ではございません。どうぞお許しくださいませ」
「昨日もそう言っておった。が、赤子の乳はやれておる様よ。実際」
「命を削っておいでです」
「は?」
「赤子が泣けば起きられるのです。それ以外はずっと…」
「…」
「奥方様は…もう」
「何を言う!なれば三成が如何なろうか、主はわかっておるのか!」
「ですが…難産の末、後産も何とかという現状。水を飲むのがやっとの状況でございます。」
「ぬ…」
「あのまま亡くなっていてもおかしくなかったのです。現に…赤子の声で生き返った様なもでございます。」
「聞いた。だが…」
「お寂しそうになさっておいででした。何も言わず、何も言われず。いるのかいないのかわからない様な人生だったと。」
「左様か」
「殿は…」
「あれは今は太閤と賢人の相手をしている。子が出来て喜んでいるだけよ。」
「では知らないのですね。」
「ああ」
「なんと酷な」
「言うてくれるな。」
「ですが…いいえ。出過ぎた真似をいたしました。失礼いたします。」
「奥に目どおりが叶うなら。頼んではもらえないか?」
「…」
「頼む」
「一応、聞いてみましょう。が、期待なさらないでください」





そう言って部屋に入ると珍しく奥方様の声が聞こえる。穏やかな声。ただ、小さくて弱々しい。聞いていましたよと言って笑うと刑部様を中に入れる様におっしゃられる。





「奥」
「ご無礼を。」
「お声が出にくいのです。どうぞ側に」
「ああ。ああ。なんという事よ」
「ふふふ。この子の名は決まりましたか?」
「また三成がいいに来よう。その時に」
「いいえ、刑部様。お教え下さい。その時まで私が私であれるかわかりませんから」
「…佐吉にする」
「殿の幼名ですか。」
「ああ」
「そう。佐吉。貴方は佐吉と言うのですよ」
「…奥」
「ああ、これで思い残すことも無くなりました」
「は?」
「この子は乳母に。もう私の乳は出ていない様です。良い乳母を見つけてきております。」
「ま、またしゃれ。」
「私の仕事は終えましたよ。刑部殿。願わくば文の一つも書きたかったのですが無理の様です。」
「何をいわしゃる。主はまだ、」
「豊臣の礎となり、叔父の血を尽かさず旦那様と交わらさせ。男の子を産むこと。それが私の」
「違う違う。主は子を養育させ、三成と睦まじく」
「殿にも太閤殿下にも半兵衛にも言わないでくださいませ」
「奥」
「あの方達にとって私は一つの媒体でございます。死して憂いがなくとも…御不快にだけはなりたくないのです」
「媒体などではない!」
「刑部様」
「そのような事あるはずがない」
「あの後より一度も旦那様にお会いしておりません」
「…」
「太閤殿下も半兵衛も。佐吉の事を連れて行き、それで終い」
「それは」
「そういうものでしょう。そういうものです。だから、私は」
「奥よ」
「誰にも看取られるる事なく、死にたいのです」
「…」
「嗚呼、眠い。」
「奥?」
「すぅ…」
「?!」





驚く刑部様に御安心下さいませ。お眠り遊ばせただけですと言う。
きっと近いうちに現実になってしまう悲劇を目の当たりにしてこの人は何を思うのだろうかと思いながら奥方様に布団をかけるのだった。









喜ぶ三成












そうなる日は突然であの日より10日もせぬ内に奥方様はお亡くなりあそばした。本当にお休みになっていらっしゃるようなのに、あの、美しい四肢はやせ衰えておいでで殿方が思うよりひどい状況だった事を如実に伝えてくる。




「お、く」
「…」
「おい、起きろ。なぜだ?何故寝ている…」
「三成」
「起きろ。目を覚ませてくれ。私は!」
「…」
「貴方に言いたい事が沢山あったのだ。それを!何一つ伝えていない!!!」
「三成!」
「これは夢か!何故こんな夢を見る…奥が、私の奥が!!!」
「もうよさぬか!」
「刑部!!!」
「奥は死んだ。子を産むのに耐えれぬほどの奥が子を成した事すら奇跡に近い!主は知っていたはずだ。」
「だが!奥は秀吉様と」
「奥は太閤ではない。ただの人間よ。酷な事よ。」
「…」
「赤子は唯一の遺児よ。大切にしりゃれ」
「…っ!うう」
「三成」
「あああああああ!!!」

拍手

放置する三成

子供ができましたと言えば、三成様は停止して漸く、そうかとだけ呟く。そしてそれ以降御渡りどころか朝餉も別となり、戦に行ってしまわれた。よくあることだ。戦前は朝餉を取らずに用意をするからいつもならああ戦が近いのかと思うのだけれども今回は子供が出来た私を厭うたのだと思ったのだ。どちらなのは分からないが。まぁ前者だろうけど。
元々結婚意識の薄い旦那様だった。父としても同じだろう。叔父である太閤殿下から下賜された嫁は目の上の瘤だと当初から言われていた。元来口数の少ない旦那様と無愛想な私。いや違う。根本的に昔から苦手とした太閤の姪。其れが私だ。半兵衛の悪趣味によって組まれた縁組の中でもピカイチな組み合わせだと思うのだ。義務による同衾もこれで終いだ。一層の事私にでも旦那様にも似ていなきゃいい。太閤殿下に瓜二つなら泣いて喜ぶだろう。そういう男だ。
其れから半年。悪阻を終え戌の日を終え。全て一人で采配してこなしていく。産婆の手配も済んで、出産も一人でするのかとと思った臨月に近い頃に旦那様が前触れも無く帰ってきた。音も沙汰もなかった。文一つよこさぬひどい男である。



「おかえりなさいませ」
「あ、ああ」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「あ」
「三成様!!!」
「左近か。火急の用か」
「ええ!あ、申し訳ありませんでした!奥方様がいたんですね」
「いや、構わん。入れ」
「でも…」
「良いのですよ、左近殿。では旦那様。失礼いたします」
「え?!」
「おい…」
「火急の知らせに私がいては何かとお目障りでしょう」
「そんな、事は」
「自室に控えております。では失礼いたします」
「あ、ああ」




そう言って私は顔を見ず一礼する。
お腹が痞えて歩きにくいと思いつつ侍女に腕を借りて立ち上がり部屋を出る。本に酷い男だ。









「横ににられますか?」
「ええ」
「目眩などは?」
「目が回りそう。気分が悪いわ」
「近頃、貧血が非道うございますね」
「仕方ないわ。」
「お疲れが出てきたのでしょう。もう臨月近くですのでごゆるりとお体をお休めくださいませ」
「ええ」
「ですか」
「?」
「この後刑部様が御目通りを願う出ておりましたが」
「どうせ、側の話でしょ?私は用済みですから」
「奥方様」
「お好きになさったら良いのにね。あ、そうそう。面会だったわね。…そうね。床から出れずによければ」
「お伝えしておきます」
「もし寝ていたら起こして頂戴」
「いえ、あの」
「…外にいらっしゃるのね。いいわ。お通しして」
「はい…刑部様!」
「案内くらいさせますよ」
「ヒヒヒッ。我とて居ても立っても居られない程でなぁ。おうおう。大きゅうなられたな」
「ああ。お知らせする前に戦に立たれましたからね。勝ち戦おめでとうございます」
「いや、なに。…いつよ」
「再来月かしら?後ひと月半から其のあたりまででしょう。小舅殿」
「ヒヒヒッ。ようやったようやった。やれ、三成は?」
「知っていますよ」
「其れは当たり前よ。男の子なら嫡男なのだから。そうではない。今どこよ」
「さぁ…」
「さぁ?」
「今挨拶はしてまいりました。左近殿とお話しなさっておいでだと」
「あのうつけ者は」
「?」
「主とて良いのか?」
「何がですか?」
「せっかくの赤子よ。」
「子は楽しみでございます」
「なれば」
「私は我が子として。あの方は太閤の血縁としてでしょう。為れば産まれた後に意味を成すというものです」
「は?」
「男親というのはそう言うものでしょう?子を駒にしかお見になりませぬから。半兵衛にしても太閤殿下にしてもそうでございます。実家の父母も。男の子をと言うばかりで。貴方様もそうでございますね」
「いや、何。そう言うわけではないが…奥よ。皆楽しみにしておるのよ」
「ありがとう存じ上げます。で、御用は?」
「その、なあ。主の顔を見に来ただけよ。」
「左様で御座いますか。」
「それに」
「?」
「本心を言ってしまえば主のいう通り太閤始め皆、男の子を待っておる。」
「そうで御座いましょうね。」
「三成と主の子がどう言う意味を持つかも聡い主ならようわかっておろう」
「ええ。ですからこの様な結婚を半兵衛が画作したのではないですか。年の頃合が丁度良いのは私だけでしたから。扱いにくい嫁で御座いましたな。」
「いや、何。そうでもないが…如何した?」
「旦那様の側の件でございましょう?」
「…本に主は。聡過ぎるわ。」
「言いにくそうでしたから。どうぞお好きになさって。私は用済みですから」
「これ、奥」
「この半年、放っておいたのです。後ひと月ほおっておても同じ事でしょう。」
「…そう言うわけではないのだがな。」
「刑部様はとても賢い方ですからはっきりとわかっておいででしょう。」
「ぬ…」
「…少し疲れました」
「奥」
「刑部様…奥方様は本当にお加減がお悪いのです。今は皆様がお帰り遊ばしています故気丈しておいでですが、本来床から上がれるほどお元気ではないので御座います」
「これ」
「…どう言う事か?」
「元より体の丈夫な方ではないので御座います。出産など…。ですがお家のためと。其れなのに差配に手配。家人のことまで気にかけて下さり、皆案じておでなのです。差し出がましくも何度か文をお書きいたしましたが…ご返事もなく。どうぞお願い申し上げます。今は御前よりお下がりくださいませ」
「…止しなさい。申し訳有りません、刑部様。」
「い、や。主は」
「はい」
「体がそんなにも弱いのか?」
「ある程度に。」
「知らなんだ…とは言えすまぬ。何の手助けも出来なんだ。」
「いいえ。謝らないでくださいませ。」
「ちと聞きたい」
「はい」
「三成は」
「知っておいででした。」
「左様か…」
「奥方様、少しお休みくださいませ。顔色が」
「大事。ありませんよ。」
「いや、すまぬ。我は帰る故ゆるりと」
「ありがとうございます」






そう言うと悲しそうな目で私を見て部屋を出て行かれる。ハズレを引かされたと思った様ねとくつくつ笑うと侍女が静かに泣くのだった。









放置する三成







目を覚ますと当たりが薄暗い。朝なのか夕なのか、わからないと思いながら水差しを見る。ゆっくりと起き上がって一口水を含むと枕元に箱がある事に気がつく。
お守りと張子の犬。こんなものあったか?と思っていたら侍女が部屋に入ってくる。



「起きられて大丈夫ですか?」
「ええ。これは」
「左近様が…安産祈願で有名なのだとか」
「そう、ありがたい話ね。」
「これは刑部様から」
「砂糖菓子?」
「力がつくと」
「二人に礼をしないと。嫁入りの際持ってきた茶器をお渡しして。」
「はい」
「でこれは?大量のお守りと札ですが」
「…殿からです」
「…そう」
「ご寵愛下さっておいでなのです。ですがあの御気性ですからわかりにくく」
「ええ。知っていますよ」
「なら」
「大事なのは子でしょうから。ふふふ。ご覧なさい。男の子祈願ばかり。」
「奥様」
「良いのです。お礼をしないと。叔父上から頂いた香炉と。私はこの様な状態ですので、文を代わりに書いてください。殿と後二人に。」
「…はい」
「捻くれ者でダメね。素直に喜べないの」
「いいえ。」
「このまま」
「奥様?!」
「…もう少し休むわ。よろしくお願いします」

拍手