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変換なしの雑食夢

ran

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侍女と三成 6

「やれ」
「これは刑部様」
「あれの具合は如何よ?」
「難産でして…疲れて寝ております」
「?!」
「ああ。後産もきちんときてますからご心配なく。ただ疲れていただけですよ」
「左様か」
「…あら、お連れ様?!治部様??!」
「何だ貴様!」
「やれ五月蝿い!」
「?!」
「で何処よ」
「ですが」
「良い良い。あれにも言っておる」
「なれば…此方でございます」




床がギシギシとなる。見た目以上に古いのだろう。ここは何処だ?と聞けば刑部の屋敷の一つらしい。ここが一番近くて安全故なぁといったものの合点がいかない。あれにもそれにも妻はいない。
さすれば誰のお産があったのか?何より、刑部が戦終いをせずに来るほどだ。…刑部の姉妹なら私を呼ぶはずはない、と思案したら小さな鳴き声が聞こえる。子供かとつぶやく前に刑部がじとりと睨んでくる。…五月蝿いと言いたいのだろうが私のせいではないと言いたい




「おや?」
「おお、姉上」
「う?!」
「吉継に三成かい?お早い参陣だこと」
「な、ぜ此処に」
「ふふふ。一応用心棒かな」
「ひひひ。辱い。で」
「誰が父親かわからぬなぁ」
「?」
「おや?まだ言うてないのか」
「ひひひ」
「何の話だ?」
「まぁ良いか。」
「此処か?」
「開けても良いかい?」
「少しお待ちくださいませ…はいよろしいですよ」





障子が開けられる。なぜ私がと思いながら嬉々として子供のところへ行く刑部の背中を見る。子供が好きだったのか?と思いながらその顔を見て心臓が止まるかと思った





「銀、色?」
「男の子か?」
「そうだよ。立派な跡取りを産んでくれた。」
「刑部!」
「ひひひ。父親似の髪よな。銀の真っ直ぐな。ほれ、こちを見りゃれ。あぁ。目もそっくりよ」
「!」
「ほら、三成。此方に来なさい」
「姉上殿」
「一昨日からのお産で生まれたのは今朝方よ。ふふふ。そなたらが帰ってくるのをみこうしたようね」
「本に。愛い」
「おや、如何したんだい?立ち竦む性格ではないだろう?」
「刑部」
「ん?」
「私、の子か?」
「如何にも」
「っ!は、離せ!姉上殿!!!」
「短慮はいけないよ。お前が悪いからこうなっているのだから。」
「母の名は椿よ」
「あの?!裏切り者がか!!!」
「裏切り者?」
「間者と言っておりましたから」
「ちが、うのか?」
「あの子に大それたことができると思うのかい?此処に来た時にはお前に強かに打たれて骨をやっていた位だからね」
「な?!」
「怨みに落ちてぬしは椿を殺しかけていたのを覚えておるか?」
「…」
「あの時にはすでに子がおったのよ。然しなぁ。あれはぬしの心残りになってはいかぬと言って命懸けで側におるといったのよ」
「あの時に、いたのか…」
「左様。悪しきに絆されておるし、ぬしも主とて憎悪に満ちておったからな…すまぬ。」
「裏切り者」
「ではないよ。お前たちが無事であるようにと臨月の腹で神社仏閣に参っていた位だしね。ふふふ。怪我はしていないか食べてはいるのか。本当に心配していたよ。」
「生き、て」
「生きているよ。ただね、三成」
「?」
「もう二度とあれを傷つけはしないかい?」
「しません!もう、決して」
「もししたら我が打ち据えるわ」
「私が乳母に入るから二人がかりだね」
「あれ、は?」
「椿かい?奥の間で寝てるよ」
「っ!」










侍女と三成 6







「…ん」



ずいぶん寝ていた気がする。少しだけ頭がいたいなぁと思いながら昨日生まれた子供のことを考える。寝て、いるのかしら?あたりの静けさからそうなのだろうと思案してふと庭を見る。

治部様は如何しておいでだろう?

最後の文では勝ったとだけ書かれていて精神的なことは書いていなかった。まだ憎悪の沼から出てこられていないのかもしれない。

会いたいな…と自然に紡ぐ。きっと大谷様に笑われてしまうだろう







「椿」
「大谷様」
「寝ていないといけないよ。…気分は如何だい?」
「私は…息子は?」
「寝ているよ…父親にそっくりなのに気性の穏やかな子だよ」
「ふふふ。本当はお優しい方なのですよ」
「如何だか…客が来ている」
「?」
「通しても良いかな?」
「大谷様?」









「椿」
「じ、ぶ…様?」
「ひひひ。息災か?」
「刑部様!」
「我が先に会うことはならぬよ。…なんせ父親が息災なのだから」
「ですが…治部様」
「何だ?」
「申し訳ありませんでした」
「「?!」」
「ふふふ。椿、三成が困っているよ」
「ですが…側にいると言いましたのに」
「それは!…私が悪い。子を」
「?」
「成していたなど…いやそれ以前の愚行だ」
「治部様」
「手を上げてくれ」
「…」
「少し痩せたな」
「あなた様の方こそ」
「良く、産んでくれた」
「治部様」
「必ず守る。もう、」
「?」
「あのような愚行はいたしはせん。から、」
「治部様?」
「帰ってきてくれ。私の奥に」
「?!」
「椿」
「治部様?!あ、あの」
「寝てしまったな」
「昔よりぬしの場ではよう寝ておったなぁ」

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侍女と三成 5

「何だと…」
「やれ聞こえなんだか?椿は手打ちにいたしたと申したのよ?」
「何故!」
「間者よ間者」
「な、に!」
「徳川のなぁ。ぬしの寝首はかけぬとも…やれ三成」
「おのれ…おのれ!!!!!!!!」
「死体は徳川屋敷に投げ込んだ。明日から遠征よ。気を引き締めりゃれ」
「刑部!」
「ん?」
「貴様」
「我はぬしを裏切らぬよ」
「なら」
「…」
「ならばいい」










「おい」
「ん?」
「誰からの手紙だ」
「ひひひっ。順調を知らせる手紙よ」
「?」
「主とていいのか?」
「貴様の策だ。疑う余地もない」
「左様か」





「刑部…?」
「ん?ああ。すまぬすまぬ。」
「手紙か?」
「ああ」
「?」
「秘密よ秘密」
「?」





「…」
「とうとうきよったかぁ。ん。致し方ない」
「?」
「ひひひ。終わればわかる。なぁ、三成」
「さっぱりわからん!」









侍女と三成 5








「刑部!!!!!!貴様!!!!」
「やれ三成。如何した?」
「戦終いを手伝え!」
「ひひひ。朗報よ。ようやきた。」
「何を言っている?」
「やれ、左近よ」
「はいはいっと!」
「我と三成は出かける故。」
「…は?」
「私はいかん!」
「良いのか?」
「そんな暇がどこにある!刑部!貴様もそうだ!早く」
「後悔するが?」
「???」
「明日一番には帰る。やれ!東は何処ぞ」
「…如何したんっすかね?勝った時より嬉しそうっすよ」
「知らん!」

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侍女と三成 4

月のものが来ないと気づいた時には3月と言われた。
相手は今まさに私を手篭めにしている治部様だろう。正気と狂気の割合が後者に重くなりつつあるこの人に告げたほうがいいのだろうかと思案する。私を手酷く抱いてそのまま眠りにつくこの方の神威がわからなかった。好いた女子、とおっしゃったがあれは何だったのか。軋む体に鞭打って万年床から起き上がる。
苦悶も思案もし尽くした。答えが見つからないだけだ。ふと、外を見るとまだ日も高い。朝から嬲られて何時になったのだろうかとぼうっと考えていたら後ろから抱きすくめられた。






「っ!」
「許可していない」
「治部、様」
「寝ていろ」
「仕事が」
「ほっておけばいい」
「しか、し」
「私を裏切る気か!」
「っ」
「貴様も!家康の元、へ!」
「行きません」
「嘘を言うな!」
「私と徳川様は縁もゆかりもない関係です。治部様。どうぞ落ち着いてください」
「何、が!徳川様だ!!!あの科人に敬称をつけるなど…」
「ひっ」
「やはり貴様!内通していたな!椿はそんな大それた事は出来無い!忍びか!?」
「痛っ!」
「此処で馘いてやろう!」
「やめ、て…」
「いえ、やす」
「じ、ぶ、…さ」
「?!」
「っかは!ごほごほ」
「わた、しは。何、を」
「っ」
「椿!」
「やっ!」
「っ!」
「申し訳ありませぬ…申し訳」
「あ!謝るな!私が…また」
「!」
「…触れるのも…恐ろしいか?」
「治部、様」
「すまない…お前にこんな思いを」
「!」
「何故、私はお前を…」
「治部、様」
「…」
「なか、ないで下さい」
「?!」
「治部、様」
「…すまん」
「…」
「愛している。誰よりもだ。誰よりもお前を」




恐ろしい呪詛に耳を傾けて私は眠る。次起きたらあの世かもしれない。
けれども情というのは恐ろしい。誰にも必要のされない私がこうまで執着されるのなら。それが一夜の夢のごとき話でも。私は彼を捨てる事ができない






侍女と三成 4






「首の痣」
「え…?」
「三成か?」
「刑部様」
「主もそろそろ逃げしゃれ。馘かれよう」
「…」
「ぬしに何かあればあれはますます闇を深めていく。」
「ですが」
「…」
「あの方にとって小石程度なものでも…馘かれて死んでしまったとしてもお傍にいたいのです」
「悪き方に絆されておるな」
「刑部様」
「やれ、」
「?」
「何故腹を庇う?」
「!」
「…左様か。なれば」
「お待ちください!」
「三成に告げて離れなければなるまい!」
「あの方の心残りにはなりたくないのです!」
「愚かな…」
「申し訳ありません」
「…なれば」
「?」
「我の言う事をひとつだけきかしゃれ」

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侍女と三成 3

「おい」
「は…治部様?」
「執務室に行く。」
「え?ああ。はい」
「あなたも来い」
「…?」
「あなたは私付きの侍女だ」
「それは…そうですが」
「不服か?」
「いえ。…お待ちください。支度いたします」




あれから何かあれば呼び出される。はじめは冗談かと思ったのにと思いつつ同僚に詫びを入れると治部様付きになるほうが大変なので構わないとのこと。憐憫の眼差しを向けられた。確かに徳川様との戦が近くていらいらしているから私が他人ならそういう顔をするな。





「失礼いたしまっわ!」
「家康!!!!!!!」
「治部様?」
「おのれ!科人が!」
「…(聞こえてない)」
「おのれぇ!!!!!」
「(隅に居よう。必ずいる様にと言われたもの…良い結果にはならなさそうだけど)」








「…」
「やれ、三成」
「刑部」
「ひひひ。また手酷く抱いたか?」
「…」
「あの侍女は?」
「気をやっていた」
「隣で寝させたか」
「…ああ」
「嫌われるぞ」
「?!」
「手篭め要員ではないか」
「違う!」
「なれば普通にめでりゃれ」
「…」
「徳川との戦いも近い」
「当たり前だ!私の頭の中は憎悪に満ちている!…だが」
「ん?」
「そんな時。あれの顔を見てしまったら…私は」
「故に手篭め要員と言われるのよ」
「…」
「にしても」
「な?!」
「やはり居らぬか」
「刑部!」
「我はあずかり知らぬよ。…まぁ普通ならそうよな」
「っち!」
「でよ」
「何だ」
「渡せられたか?」
「…」
「故に手篭め要員なのよ」






侍女と三成 3






「おい!」
「っ!」
「すまん…怪我は」
「ない、です。」
「立て」
「っ」
「どこか怪我をしたか?」
「い、え。」
「?」
「私は大丈夫ですので、どうぞ一人にしておいてください」
「それ、は」
「…」
「すまない」
「いえ」

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胃袋以上に掴まれた三成

「(また来てますね)」
「(寝てる…スゲェな。あの萩さんの怒声を聞きながら寝るって)」
「(行ったことねぇけど戦さ場ってこういう感じなのかね)」
「三次!笊!碗を出しとけ!話してる暇なんてないよ!」
「へい!」
「柿沼!強物の支度は?」
「もう少しです!」
「遅い!」
「萩さん」
「ん?」
「石田様…気づいてます?」
「石田様?膳の支度も侍童も…」
「…」
「いつの間に。また寝てる…誰か掛物」
「へい!」
「最近ここでよく寝られるな。お疲れなのだろう。そっとしてさしあげろ!其れより!膳!!!」








あれから何故か石田様は賄い方の囲炉裏で転寝することが多くなった。死ぬほど珍しいことらしく半兵衛様どころか殿下までこそりと見に来られたのだから本当にそうなのだろう。ただ、今となっては日常化しているので何とも言えない。喧騒の中で寝るほうが寝やすい気持ちはわからないでもない。
掛物をかけてじっと見てみても熟睡しているようだし…まぁ良いか。何より邪魔せず静かなので無碍にもできない。




「ふー…」
「終わりやしたね」
「公家から食事に呼ばれているらしくてな、皆昼から明後日の昼まで休みだよ。片付けしてとっとと休みな」
「でも大谷様と石田様の分は?」
「簡単なものが良いらしい。大谷様から食べたいものの書付を貰った。これなら私一人で十分だから」
「きちんと休んでくださいよ」
「はいはい。石田様も寝てるし…其れ終わったら休ませてもらう」
「なら…」
「ほら休める時に休みなさいよ」
「はい」



一人一人といなくなるのを見届けて私は菜物を検める。今日は良い菜物が多い。惜しいなぁと思いながら塩をふる。漬物にしておくものと煮浸しにするもの。取り敢えず刑部様の書付を見るとあまりにも量が足りない。



「…ん」
「良い魚があったな。確か…ああそうだった。漬けとかないと傷んでしまう。」
「…」
「出汁もあるし。…治部様達は少食だな。甘味は食すかな?」
「…」
「葛があった筈。体にも良いし…あら」
「…すまん」
「起きていらっしゃるなら声をかけてください」
「いや…そのだ」
「昼餉は食べられそうですか?」
「ああ。…いただく」
「直ぐに用意いたします」
「ん」
「(ずいぶん眠そうだな)…あ」
「?」
「折角ですから温かいものを賞味くださいませ」
「いや…」
「ふふふ。少しお待ちくださいよ」
「あ…」
「治部様?」
「楽しそうだな」
「ええ。もともと作るの好きなんですよ」
「そうか」
「膳は冷えてしまいますから」
「然し美味い」
「!」
「…」
「嬉しい」
「あ、う…」
「ほら出来ました」
「あ、りがとう」
「ふふふ」






胃袋以上に掴まれる三成





「…やれ」
「寝ておられますよ」
「の、様よ」
「葛湯飲まれますか?」
「ああ。にしてもすまぬ」
「?」
「ぬしも休めまい」
「私はもう此処何年もこの囲炉裏前で雑魚寝ですから」
「?!」
「いや〜…一介の賄方に部屋などありませんし。私が行くと皆緊張しますから」
「まぁ男ばかり故」
「そうですね。」
「ひひひ」
「でも半兵衛様が横に寝床構えてくださいましたから。これ以上は」
「左様か?然しなぁ」
「?」
「いつか体を壊そう」
「一下僕ですから。そうなっても困らぬ様にはしておりますよ」
「そういう訳では」
「…刑部?」
「ん?起きてしもうたか?」
「ああ…すまん」
「寝ぬぬしの方がいかぬよの。」
「そうか?…藤殿辱い」
「いえ。…葛湯飲まれますか?」
「頂く」
「…」
「美味い」
「…ふふ」
「仲が良いなぁ」
「?!」
「そうでございますか?」
「!?」
「三成が此処まで懐かれるのは珍しい」
「…ふふ」
「ん?」
「いえ、」
「?」
「美味しいと半兵衛様もよく言ってくださいます。元々半兵衛様の推挙でしたから。」
「そうなのか?」
「ええ。焼き場の時に厨房につまみ食いに来られて」
「ひひひ。賢人はよく食らうからなぁ」
「ええ。お褒めいただき身にあまる光栄なのですけど。…治部様に褒めて頂くと」
「私か?」
「凄く嬉しいですね」
「!」
「ひひひ」
「身分違いなのに申し訳ありません。あ、芋菓子を作るので召し上がってください。」
「あいあい。すまぬなぁ」





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