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変換なしの雑食夢

ran

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三成→女武将

「…」
「…」
「…ぐ」
「如何した?」
「左近ちゃん可愛すぎ!」
「…またか」
「可愛くない?」
「可愛くはない。大体、私が男のアレを可愛いと評価すると思うか?」
「それはそれで良いと思うけど?」
「は?」
「あれ?三成は衆道の関係いないの?念弟の一人や二人」
「いない!」
「…まじかよ」
「貴様…私をなんだと思っている!」
「まぁ…あ!ほら見てよ!彼処で死に物狂いで戦ってんの!雑魚に必死で可愛い!」
「おい」
「ん?」
「貴様は本当に理解不能なものや不細工なものにまで可愛いというから、私のそれと同じとは到底思えんが」
「何?軽く喧嘩売ってる?」
「私はお前を可愛いと思う」
「…は?」
「行くぞ。お前の言う…可愛い左近が死にそうだ」
「え?!あ!ちょっと!!!」





時々三成の天然発言が恐ろしいと茶飲み仲間の吉継に言えば引き笑いされる。こいつのこういうとこが嫌いだ



「吉継…」
「ひひひっ!や、れ。またしゃ、ひひひ」
「あんたのそういうとこ嫌い。後は好きだけど」
「我も主の天真爛漫な所は好ましく思うが過ぎる所は過ぎる所は好ましくはない」
「もー!何?!」
「三成は本心しか言わぬ。そういう男よ」
「私が可愛いの?!」
「かもしれぬなぁ」
「信じられない!」
「そうか?」
「周りに女がいないからだよ。あ!色街には行かないの?」
「行かぬなぁ。献上された姫を叩ききったところを見たことがある」
「勿体無い!」
「左様左様。自ら要らぬでも下賜すれば役に立とうに」
「本当よ!」
「ああいう情緒を知らぬのよ。故に我とて大変たいへん」
「吉継大変だものね…」
「ひひ、でよ」
「?」
「三成は如何する?」
「取り敢えずそっとしておく」
「左様か」
「…あ!」
「ん?」
「三成ってまさか…」
「経験はある」
「何故知ってる?!」
「直接聞いた。」
「すげっ!流石吉継様」
「あまり好ましいものでないようよ。挙げ句の果てには言うことに事欠いて気持ち悪いと言いよった」
「極悪!」
「まぁ賢人に計られて良いも悪いもなく相手をしたらしくてなぁ」
「あら〜…」
「まぁ主とて経験あろう?」
「私ないよ」
「…」
「?」
「…主と契りを」
「違うって!いるならみんなで雑魚寝出来んでしょ!」
「まぁ…でも主なら」
「如何いうことだよ!」
「ひひひ」
「あんねー。私は普通の女じゃないのよ!男と肌交わして男の指揮をとってるって言われる事は死活問題なの!」
「そうよの…故にか?」
「それこそ半兵衛様に怒られる。相手も何も半兵衛様が見つけてくるもん!」
「それで良いのか?」
「嫌なら斬り殺して良いそうだから」
「物騒よなぁ」







三成→女武将






「おい」
「やれ、起こしゃるな」
「風邪引くぞ」
「ふむ。なれば主がはこばしゃれ」
「ああ」
「んにゃ」
「…気持ち良さげに寝ている」
「主は眉間にシワ寄せて寝る故。こうも呑気に寝られるこやつの性根に感服するわ」
「…」
「これでも引く手数多なのが不思議よな」
「他は知らん」
「左様か」
「掛物を持ってくる」
「ん?」
「起こすのには忍びない」
「ひひ」
「何だ?」
「本気で好いておるな」
「可愛いと言われる左近の腸を…と思う程度にはな」
「怖や怖。」

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失恋女と三成

「好きなの?」
「あ?」
「うた様」
「な、何故?!貴様が知っている!」
「当たり前じゃん。私も吉継も知ってるよ〜。こそこそ二人してあってんの知ってるよ」
「な?!」
「本気なんでしょう?」
「…ああ」
「相手が相手だしね」
「ぐ…身分違いなのはわかっている」
「早く半兵衛様にお願いしなよ」
「む、無理を言うな!」
「何で?」
「身分も違う…何よりお二人ともご結婚されていないからだ!」
「馬鹿じゃないの?」
「何?!」
「半兵衛様に言われてるでしょ?真似しても意味がないって!あと三成には後継をって。子供産めって言ってんのに結婚するなは言わないよ。半兵衛様は頭良いんだよ?道理はわかってるって!」
「それは…そうだが」
「大丈夫よ!あんたの秀吉様狂いは死んで生まれ変わっても変わんないでしょ?」
「なんだその言い方は!」
「事実でしょう?」
「ま、まぁそうだが」
「なら善は急げだ!行こう」
「ま、待て!」
「良いもの持ってんの!私」
「は?あ!」
「半兵衛様ぁ」
「お、おい!」
「何だい?おや。藤君に三成君かい?」
「こんにちは」
「半兵衛様!失礼いたしました!藤!行くぞ!」
「如何したんだい?楽しそうだね」
「半兵衛様、この間の戦で私にご褒美下さったでしょ?」
「ああ。よく頑張ったからね。願いをひとついう事を聞くだったかな?欲しいもの決まったかい?」
「はい」
「着物かな?新しく出来た店の甘味かな?」
「違います」
「おや?では何かな?」
「半兵衛様の妹君といつも一緒にいる」
「え?ああ。あれは秀吉の遠縁の娘だよ。うたと言うのだが…それが如何したんだい?」
「うた様と三成では家柄はあいますか?」
「え?」
「藤!!!!!」
「あいませんか?」
「いや、其れは…三成君を後継者にする良い縁だと思うよ」
「本当に!?」
「あ、ああ。けど」
「?」
「君は良いのかな?」
「半兵衛様?」
「良いんです。三成が幸せで秀吉様の御代が安寧なら」
「そうか…では藤君。君のお願いを言ってごらん」
「三成にうた様を娶らせてください」
「三成君は?」
「願うことなれば…そう望みます。半兵衛様…御許可を」
「わかったよ。」
「!」
「やった!三成よかったね!」
「ああ」
「ほらうた様に言っておいでよ!」
「だが」
「良いよ。行っておいで。大谷君には僕から話を通しておくよ」
「では。藤」
「ん?」
「礼を言う。」
「うん!ほら行っておいで!」
「失礼します」







「行っちゃったね」
「はい」
「こっちにおいでよ」
「半兵衛様ぁ」
「うん。良く辛抱してくれたね」
「はい…」
「小さい時から好きだったものね」
「は、い…」
「君はとても賢くて偉くて…自慢の部下だよ」
「半兵衛様!」
「ふふふ。泣き虫が治ったと思ったのにね。まぁ、仕方ないか。それにうた君か…まぁ彼の短気には彼女位おっとりとしてる方が良いかもしれないけどね」
「うう」
「藤君?そう擦らないの。」
「もう、泣きませんから」
「ん?」
「…お祝い事なのに、泣いちゃダメでしょ?」
「本当に良い女になったね」
「もっと良い男見つけてやる」
「その意気だよ」
「ひひひ、仲の良い事よのぅ」
「大谷君」
「吉継ぅ!」
「やれ如何した?」
「褒美を三成君とうたの結婚に使ったんだよ」
「左様か」
「吉継!」
「藤は良い子よ。良い子。ありがとうなぁ」
「うぅ」
「おや?」
「さんざん泣いて寝てしもうたか。」
「寝てない!」
「なら蹲りゃるな。」
「なんで」
「顔を拭うてやる」
「ん…」
「失恋した分きれいになりゃれ。三成を見返してやれ」
「うん!」
「おや?三成君贔屓な君にしては珍しい」
「ひひひ。」
「吉継!」
「よしよし、何か好きなもの買うてやろうなぁ。輿に乗りゃれ。」
「うん」





失恋女と三成





「…藤?」
「ん?」
「何故避ける!」
「当たり前でしょ?ほら!」
「うた…ぐ…」
「二人きりになったら視線で殺される!」
「だ、が」
「何よ」
「…いや」
「?あ!吉継!」
「刑部!」
「何か?…藤、この間言った菓子を取り寄せた。きりゃれ」
「わーい!」
「な?!おい!」
「三成様」
「う、」
「じゃあね!」





(執念が深いのよ)
(嫉妬深いしね。まぁいいか。あっちは幸せになるかもね)


「美味し!」
「左様か」

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不如帰と三成

「はいるぞ」
「みつ、な、」
「話すな…相も変わらず良くならんのか?」
「…くる、しい」
「すまん。水だ」
「ん…」
「水を飲んでも咳き込むか」
「戸…」
「あ?ああ。すまん。閉めた。大丈夫か?」
「あんまり。…でも咳は落ち着いたわ。」
「そうか」




今日の外は暖かい?と聞けば昨日と変わらんと素っ気ない返事が返ってくる。無愛想な奴だ。だが義理深い男だという事も知っている。一線で働いていた時が嘘のよう。いつも口煩かった男でよく喧嘩していたのに。
訪れる客のない私の部屋に足繁く通ってくるのはこの男と吉継のみだ。ただ、吉継は体が弱いし何かあったら困るからと言って面会はしていない。時折三成が持ってくる手紙でやり取りしているくらいだ。だから実質的にはこの部屋に訪れるのは三成だけなのだ。





「何だ?」
「忙しいでしょ?」
「それなりだ。」
「無理してこなくていいよ。うつしたらいけないし。」
「無理などしていない。茶だ。口を開けろ。」
「ありがとう。」



匙にひと掬いのお茶を啜ると安心しなように息を吐いて咳きこまなかったなと言う。大丈夫よと言ってもうひと匙所望すると少し冷まして飲ませてくれる。親鳥のようねと言うと至極嫌そうに眉間にしわを寄せるから少し笑っておどけてみせた。



「ふふふ」
「おい」
「もうひと掬いもらっても良い?」
「それは構わんが…私はお前の親鳥ではない」
「?」
「番だ」
「え?」
「そうなる」
「…面白い事言うわね」
「そうか?ずっとそう思っていた」
「そう」
「まだ飲むか?」
「うん」
「半兵衛様がだ」
「半兵衛様が?」
「そと国から薬を取り寄せて下さった。」
「お礼言わないと」
「ああ」
「三成」
「早く良くなれ」
「無理言わないで」
「祝言が挙げられん」
「祝言かぁ」
「?」
「吉継が面倒ごとが増えるって言いそう」
「言っていた」
「でもそれ以上に喜んでくれそう」
「そうだな」
「秀吉様と半兵衛様は許可してくれるかな?」
「して下さる。」
「そっかー…」
「青海?」
「…ごほっ!ごほごほ」
「おい!大丈夫、か?!」
「あはは、は」
「…いつからだ。いつから血を吐いている?」
「三成達が、戦に行く…前から」
「落ち着け。ゆっくり横向きになれ。そうだ。手拭い」
「ダメ…」
「おい!」
「血に、触っちゃダメ。うつしたら」
「馬鹿者!そんな心配…青海」
「なぁ、に?」
「お前は何時、治る?」
「もう、治らないよ」
「馬鹿を言うな…馬鹿を」
「血を吐く量が、多くてね。あんまり保たないかな?」
「青海!」
「吃驚させてゴメン。」
「嘘を…偽りを」
「三成」
「?!」
「幼い時からありがとう。番って言わず夫婦って言って欲しかったけど凄く嬉しかったよ」
「何を…言っている!お前は私の妻だ!すぐ治して祝言を!」
「御免ね」
「青海!」
「御免。本当に御免。御免なさい…私なんかじゃなくて良いひと見つけて長生きしっかりして…」
「馬鹿を言うな!お前以外の誰と!」
「ごほっ!」
「青海…」
「御免ね。…三成を置いていくのが一番辛い。けどね、三成はまだ生きる人間なんだよ。」
「じっとしていろ!誰か!」
「呼んでも意味ないよ。何にもならないもの。三成」
「私を置いていくのか?」
「私の分までしっかりと生きてね」
「許可しない!!!!」
「話聞いてよ。馬鹿。…もう、少し休むわ」
「?!」
「ねむ、たいの」







不如帰と三成







青海が死んだ。
血を大量に吐いて、それを詰まらせて誰にも看取られず青海が死んだ。


眼前で横たわる彼女は思いの外顔色が良く赤みをさして見える。生きているのだろう?と座して聞けば死化粧を施したと誰かが言った。美しく聡明で健やかな青海様には痩せた青い顔など似合いはせぬからと続けて紡ぐ。
青海は、私の愛した女は誰よりも笑う太陽の様な女だった。



「やれ、三成」
「暫時一人にしてくれ」
「ぬ…」
「刑部」
「まさか主。滅多なことなど」
「考えておらん。…何より青海にしっかりと生きろと言われている。」
「なれば、いいが。少し間よ。時期太閤がきりゃる」
「ああ」


ぱたりと閉まる障子の音とともになみだが溢れてくる。
名前を何度も呼んだのに返事が返ってこないことがこんなにも虚しいことなのだと痛感する。


頬を撫でる。


「お前に会った時から気になっていた。私と互角に殺り合う剣の使い手のくせに何処かぬけていて、危なっかしいお前に色々言い過ぎた時もあった」





『三成!御饅頭貰ったの吉継呼んで食べるからお茶入れて』
『何故私が!』
『三成のお茶が一番好きだもの』
『?!』





「愛しくて怪我一つしてしくないのにお前は戦場を駆けるのだ。私がどれだけ心配したかお前は知っているか?」



『…刑部さん。三成様、めっちゃくちゃ恐ろしいんっすけど』
『ひひひっ。青海の軍が先陣故なぁ。』
『げ!?そりゃ三成様の機嫌最悪っすよ』
『本に。あれよりアレに蹂躙される敵の方が哀れよ、あわれ』
『まぁ仕方ないっすよね。青海様は特別ですからね』
『ただいま〜』
『噂をすれば』
『青海様おかえりなさい。…相も変わらずすげぇ首の数っすね』
『遅い!!!!』
『遅くないよ〜。三成と交代!頑張って』
『当たり前…何だその傷』
『えー?ああこれ?少し切られちゃった』
『…』
『でも大丈夫!もう血も止まってるし』
『手当てしろ!良いな!…刑部!!!左近!!!』
『うへぇ〜奴さんら全滅決定っすね』
『あわれよあわれ』




「だから貴様が病で療養する聞いた時、私は愚かにも良かったと思った」




『…きちんと寝ていろ。』
『暇だもの』
『書物を持ってきた』
『ありがとう。…みんな元気?』
『ああ。』
『早く治ってみんなの所行きたいなぁ』
『…私としてはこれで良いと思っている』
『?!』
『戦さ場で心配しなくて済む』
『そっちか!』
『?』
『いや、死んでしまえ的な?』
『何故貴様にそう思わなくてはいけない?しっかり養生うして早く治せ。治ったら言いたいことがある』
『?』
『また来る。良いな?絶対だぞ』





「青海」





『しっかりと生きてね』






「お前がそう言うから、私は生きる。ただ、お前以外の者と番にはならん。どれくらいで行けるかわからんがそちらに着いたら言いたいことがある。必ず待っていてくれ」






そう言って唇に触れるだけの口付けをする。





最初でこの世では最後のそれが血の味がして悲しくてもう一度青海と名を呼んで泣いた。

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侍女と三成 2

武家の出と言っても下流武家の出の娘である私はそう、意義のある命ではない事をよく理解している。人質にやる価値もなくかと言って家政や畑仕事をして家にいる価値もない。程のいい口減しにお城の奉公に上がったのは5つか6つの時だったか。大阪の侍女頭様のお里だった為、この大阪に奉公に上がって…と考えて止めた。過ぎた日を指折り数えても意味はない。第一、生家のあった場所は乱取りにあって廃墟と化していたのを人づてに聞いた。父も母も死んでしまったのだろう。相手であった敵が憎いとも思わないけれども、大きな虚無感がある。もう私と血を分けたものはどこにもいない。天涯孤独という事実はこの奉仕に上がることで薄れていたものの消え去ることは決してなかった。
そんな事を考えている自分にふと、気がついて自嘲してしまう。

思ったより疲れきっていたのかもしれない。


縛られた所為で出来た痣を見て自然とため息が出る。




治部様に手篭めにされたとはいえ、それ以上でもそれ以下でもない。大体手篭め自体初めてでもないのにと思って痣を摩る。
こういう所で後ろ盾のない女が働くと嫌でもそうなる。今まで子供ができなかっただけありがたい話だろう。






「いた!」
「如何致しましたか?」
「出かけてなくてよかったわ。」
「?」
「治部様が貴方をお呼びなの。用意して直ぐにお伺いしてくれる?」
「…」
「何か用があるの?」
「いえ」
「あ、髪紐?買えなかった?」
「いえ。予備のものがありましたから」
「そう。なら直ぐに行けるわね」
「はい」









失礼いたしますと言って私は部屋に入る。いつも通り、自然と。
唯、視線を合わせる事は出来なかった。




「お茶をお持ち致しました」
「あ、ああ」
「…お呼びとか」
「その、だ」
「はい」
「此れは、お前のものか?」
「え?」
「朝起きたら此れがあった。偽りを言うな。此れはお前のものか?」
「私の髪紐でございます…ありがとうございます。」
「あと、だ」
「?」
「私はお前に何をした?」
「っ?!」
「…そういう事を」
「い、え…あの」
「?!」
「治部様?」
「おい」
「?」
「その腕」
「え?!あ…」
「痣、か」
「っ!」
「…」
「も、申し訳ありません。私」
「待て!」
「っ?!」
「すまない。私は」
「お、はなしください」
「それは…すまん。無理だ」
「?!」
「私はお前に何をした?…痣まで作ってしまった。」
「それは、その」
「何をして償えばいい?言ってくれ!」
「…じ、ぶ様」
「こんな、醜聞…許しがたい!」
「…醜聞」
「言ってくれ!」
「…」
「お気になさらないで下さい」
「?!」
「治部様は何もなさっておりません。ですからご心配遊ばす事は何もありません」
「何?!」
「醜聞も何も…誰も知らない事です。貴方様ですら」
「っ!」
「私もそう思っておりますゆえ。ご安心下さい」
「…」
「では失礼致します」
「おい」
「っ?!」
「な?!」
「申し訳御座いません」
「ま?!っくそ!」










侍女と三成 2








井戸の側に蹲って泣いてしまう。
私は本当に価値のない人間だと言う事実を突き付けられて子供のように泣いてしまう。

愚かだと思うのに涙を止める事ができなくてぐずぐずと泣いてしまうのだ。




「おいっ!」
「っ?!」
「此処にいたのか!」
「治部様?」
「っち!」
「…」
「泣くな」
「お離し下さい」
「少しじっとしていろ」
「…」
「まだ、溢れているな」
「申し訳ありません…」
「謝るな」
「…」
「…」
「…」
「…すまない」
「?」
「私のいい口の何が悪かったのか?」
「い、いいえ」
「では何故泣いた?!」
「そ、の…あ」
「何だ?!」
「申し訳ありません」
「謝るな!」
「う…」
「っ!泣くな!怒っていない!」
「ですが…」
「…」
「治部様…」
「っ!」
「汗」
「それはっ!…お前がいなくなる、からだ」
「!」
「その、だ。…何故泣いた?」
「…」
「言え」
「…私は天涯孤独でございますし、その。価値ある女と思った事はありません」
「?!」
「程の良い口減しにお城に上がったようなものですし…治部様が醜聞と仰るのも」
「誰が言った!」
「え?」
「誰が」
「その、治部様が」
「違う!」
「?」
「価値がないと言ったのは誰だ!」
「…一般論としてです」
「そう言うのは知らん!」
「え?!あ、の」
「私は私の行いが醜聞であってお前の事を指したわけではない」
「?」
「酔いに任せてお前を好きにするつもりは無かった…私はお前を好いている」
「?!」
「…力にものを言わせてそう言う関係になりたかったのではない。ん?」
「…」
「顔が、赤い」
「どうでもいいから手篭めにしたのでは」
「違う!」
「他の殿方のように後腐れないから」
「ちが…ん?」
「そう、思っていました」
「おい、待て」
「?」
「手篭めにされた事があるのか?」
「…後ろ盾のない身分の低い女ですから」
「…」
「ひっ?!」
「良いか?これからは私の周りに侍れ」
「え?!あの」
「どこのどいつか知らんが償いはさせる。私は私の好いたものに手を出されても気にしない寛容な性格ではない」
「は、い」
「いいな!これからは私の部屋でいろ!」

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侍女と三成

良く、憶えていないのだ。何故そうなってしまったか。
裸の体を抱きしめられながら私はそう思う。目の前にある痩躯は思ったより殿方のそれで目眩がする。残る傷に汗ばむ肌に私の意思は思った以上に凌辱されているのだろう。嫌でたまらないのにこの方の苦しみを知っているからこそ否定できはしない。両極の意思の中で私の心はぐちゃぐちゃになる。

珍らしく深酒をされた治部様に御酒をと呼ばれてあれよあれよと服を剥ぎ取られる。縛られた手首が痛い。早急に、そして一方的に触れられる其れが苦しい。求められているのはきっと体のみなのだろうと唇を噛み締めるのに漏れる声が忌々しい。涙を見せぬように硬く瞑って布団に押し付けても、この方の気分でそれを阻止されてしまう。目を開けろと言われなかったのが救いだ。目など開けていられない。己を失わないように縋るのだ。手の触れるものに。…それがなんであろうとも。

この方が私を求めているわけでは無い。決してそれは無い事を知っている。彼は誰でも良いのだ。肌の温もりを感じられれば、それで。現にこのようになった女を何人か知っている。分を過ぎたふるまいをすれば此処から出て行かなくてはならないだけだ。ただの気まぐれ。それだけなのだから私もそこさえわきまえればいい。
この腕を退けて、治部様が起きる前に出て行かなくては。


あの方のあの目はもう二度と見てはならない





「…」
「(頼みますから。後生ですから起きないで)」
「…」
「(良かった。着物…髪紐…)」
「…ん」
「(髪紐がない…何処?)」
「…っあ!」
「?!」
「おの、れ。いえ、やす」
「…」
「な、ぜだ!なぜ…」
「(だめ。いか、ないと)」



このまま起きてしまってはいけない。そう思って私は肌着を着て荷物を持つ。髪紐は仕方がない。きっと切れてしまったのだろう。見つかったとしても言い逃れが出来る。はたまたこの荷物の中に入っているはずだ。急いで部屋を出る。起きてしまわないよう細心の注意を払って。
思ったより夜は明けていない。近くの部屋に急いで入っては身支度をすませる。これは夢なのだ。悪い夢。

そう思って明日からいつも通りに過ごせばいい。








「夜勤お疲れ様」
「お疲れ様です」
「治部様おやすみになられていましたか?」
「え、あ…はい。」
「最近休まれていらっしゃらなかったからそれは良かった。貴方も自室に控えてお休みなさい。明日はお休みでしょ?」
「はい」
「この所忙しかったからゆっくり羽を伸ばしてきなさい。」
「ありがとうございます」
「あら?」
「?」
「貴方髪紐落としたの?」
「え?!ああ。そうみたいですね。」
「良くしていたから切れたのかしら?」
「そうかもしれません。」
「少し探してみるわ。」
「いえ」
「そう?あ、小間物屋が朝食の後に来ると言っていたわ。覗いてみたら?」
「ええ。では失礼いたします」
「おやすみなさい」





食事も取りたくない。髪紐も予備がある。横になりたい欲求が一番だ。


生娘でもあるまいし。良くある話だ。一々上の殿方の気分地振り回されては身が持たないと皆言うけれども本当にそうかもしれない。



何にせよ、眠たい。








侍女と三成








「やれ」
「…刑部、か?」
「ひひひ。よう寝ておったなぁ。」
「今、何時だ?」
「もう昼過ぎよ」
「?!」
「また深酒か…体に悪かろう。太閤たちにも言われておるがあと半月は療養よ。まずは体力を回復しりゃれ。」
「もう治った」
「まぁそう言う建前よ。にしても」
「何だ?」
「また酔いにかまけて女を喰ろうたか。」
「…かもしれん」
「ん?」
「まぁ、夢だろう。」
「?」
「…何だ?」
「いや、主には珍らしく恋待ち顔よ。」
「くだらん」
「左様か。まぁ我らとすれば何でも良いから主の子を見てみたいものよ。」
「ふん!」
「何が気に入らぬか知らぬが小姓のように女を抱かしゃるな。よからぬ噂ばかりよ。」
「気に入らん女と血を分けた我が子が要らぬだけだ。」
「ならばあれはどうよ?主のお気に入りの…侍女の。ほれ何というたか」
「…椿だ」
「それなら如何か?」
「あれにそう言う劣情は抱かん。…無体は出来ん」
「主のそいう所は面白い。で、その女は?」
「今日は見ていない」
「左様か…ん?」
「?」
「この髪紐は?」
「それは…」
「昨日の無体の相手か。…如何した三成。顔色が悪い」
「…椿のものだ」
「…」
「…」
「それは。御愁傷な事よ」

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