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変換なしの雑食夢

ran

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侍女と三成 2

武家の出と言っても下流武家の出の娘である私はそう、意義のある命ではない事をよく理解している。人質にやる価値もなくかと言って家政や畑仕事をして家にいる価値もない。程のいい口減しにお城の奉公に上がったのは5つか6つの時だったか。大阪の侍女頭様のお里だった為、この大阪に奉公に上がって…と考えて止めた。過ぎた日を指折り数えても意味はない。第一、生家のあった場所は乱取りにあって廃墟と化していたのを人づてに聞いた。父も母も死んでしまったのだろう。相手であった敵が憎いとも思わないけれども、大きな虚無感がある。もう私と血を分けたものはどこにもいない。天涯孤独という事実はこの奉仕に上がることで薄れていたものの消え去ることは決してなかった。
そんな事を考えている自分にふと、気がついて自嘲してしまう。

思ったより疲れきっていたのかもしれない。


縛られた所為で出来た痣を見て自然とため息が出る。




治部様に手篭めにされたとはいえ、それ以上でもそれ以下でもない。大体手篭め自体初めてでもないのにと思って痣を摩る。
こういう所で後ろ盾のない女が働くと嫌でもそうなる。今まで子供ができなかっただけありがたい話だろう。






「いた!」
「如何致しましたか?」
「出かけてなくてよかったわ。」
「?」
「治部様が貴方をお呼びなの。用意して直ぐにお伺いしてくれる?」
「…」
「何か用があるの?」
「いえ」
「あ、髪紐?買えなかった?」
「いえ。予備のものがありましたから」
「そう。なら直ぐに行けるわね」
「はい」









失礼いたしますと言って私は部屋に入る。いつも通り、自然と。
唯、視線を合わせる事は出来なかった。




「お茶をお持ち致しました」
「あ、ああ」
「…お呼びとか」
「その、だ」
「はい」
「此れは、お前のものか?」
「え?」
「朝起きたら此れがあった。偽りを言うな。此れはお前のものか?」
「私の髪紐でございます…ありがとうございます。」
「あと、だ」
「?」
「私はお前に何をした?」
「っ?!」
「…そういう事を」
「い、え…あの」
「?!」
「治部様?」
「おい」
「?」
「その腕」
「え?!あ…」
「痣、か」
「っ!」
「…」
「も、申し訳ありません。私」
「待て!」
「っ?!」
「すまない。私は」
「お、はなしください」
「それは…すまん。無理だ」
「?!」
「私はお前に何をした?…痣まで作ってしまった。」
「それは、その」
「何をして償えばいい?言ってくれ!」
「…じ、ぶ様」
「こんな、醜聞…許しがたい!」
「…醜聞」
「言ってくれ!」
「…」
「お気になさらないで下さい」
「?!」
「治部様は何もなさっておりません。ですからご心配遊ばす事は何もありません」
「何?!」
「醜聞も何も…誰も知らない事です。貴方様ですら」
「っ!」
「私もそう思っておりますゆえ。ご安心下さい」
「…」
「では失礼致します」
「おい」
「っ?!」
「な?!」
「申し訳御座いません」
「ま?!っくそ!」










侍女と三成 2








井戸の側に蹲って泣いてしまう。
私は本当に価値のない人間だと言う事実を突き付けられて子供のように泣いてしまう。

愚かだと思うのに涙を止める事ができなくてぐずぐずと泣いてしまうのだ。




「おいっ!」
「っ?!」
「此処にいたのか!」
「治部様?」
「っち!」
「…」
「泣くな」
「お離し下さい」
「少しじっとしていろ」
「…」
「まだ、溢れているな」
「申し訳ありません…」
「謝るな」
「…」
「…」
「…」
「…すまない」
「?」
「私のいい口の何が悪かったのか?」
「い、いいえ」
「では何故泣いた?!」
「そ、の…あ」
「何だ?!」
「申し訳ありません」
「謝るな!」
「う…」
「っ!泣くな!怒っていない!」
「ですが…」
「…」
「治部様…」
「っ!」
「汗」
「それはっ!…お前がいなくなる、からだ」
「!」
「その、だ。…何故泣いた?」
「…」
「言え」
「…私は天涯孤独でございますし、その。価値ある女と思った事はありません」
「?!」
「程の良い口減しにお城に上がったようなものですし…治部様が醜聞と仰るのも」
「誰が言った!」
「え?」
「誰が」
「その、治部様が」
「違う!」
「?」
「価値がないと言ったのは誰だ!」
「…一般論としてです」
「そう言うのは知らん!」
「え?!あ、の」
「私は私の行いが醜聞であってお前の事を指したわけではない」
「?」
「酔いに任せてお前を好きにするつもりは無かった…私はお前を好いている」
「?!」
「…力にものを言わせてそう言う関係になりたかったのではない。ん?」
「…」
「顔が、赤い」
「どうでもいいから手篭めにしたのでは」
「違う!」
「他の殿方のように後腐れないから」
「ちが…ん?」
「そう、思っていました」
「おい、待て」
「?」
「手篭めにされた事があるのか?」
「…後ろ盾のない身分の低い女ですから」
「…」
「ひっ?!」
「良いか?これからは私の周りに侍れ」
「え?!あの」
「どこのどいつか知らんが償いはさせる。私は私の好いたものに手を出されても気にしない寛容な性格ではない」
「は、い」
「いいな!これからは私の部屋でいろ!」

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