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変換なしの雑食夢

ran

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花のない実

私は知っている。優しい笑みを柔らかな声を。
私は知っている。それは私ではなく妹に向けられていることを。

母もそうだったなとふと思う。母も妹に至極甘い人だった。父は平等という名の無関心。時より思い出したかのようになにかを与えてくれる。飼い犬でももう少し気をかけてくれるだろうと言いたい頻度で。


愛される妹は難攻不落と言われた三成を恋に落とした。


私のようにバサラものでない妹は事あるごとに熱を出したりしていた。天真爛漫な笑顔で見舞いの三成を迎え入れるための支度から案内まで面倒を見ていたのが許嫁の私だった。

社会性や一般常識から程遠い男は許嫁の私がいても変わらず妹を愛し私を友として位置付けた。妻ではなく友。秀吉様の許可さえ降りればすぐさま実現さしていただろう。





私は保険だった。





我が家と石田家を繋ぐ保険。妹に子が生まれればそれはそれでいいし。わたしに跡取りが生まれればそれでもよし。妹は三成から三成は妹から離れるわけがないから良いとして家と家同士はそうはいかないからねといったのは半兵衛様。任務だと思ってくれればいいよといつもと変わらない美しい笑みを浮かべて彼はおっしゃる。彼の中でも私は男でありどうでも良い輩だったのだろう。
家政が取りしきれぬ妹の代わりに妹のふりをして家政を取り仕切り、両家の部下に目を配る。いつの間にやら体はガタついていたらしい。寝込むことも多くなったが刑部以外に気がつくものはいなかっただろう。




「何時も刑部だけね」
「ん?」
「私が熱出したりした時に気がつくの」
「主は辛抱する故こうなるまで我にもわからぬ」
「ふふふ」
「?」
「ごめんね」
「???」
「仕事。押し付けちゃてるでしょ?」
「構わんよ。主よりちと手は抜いておる故」
「嘘つき」
「ひひひ」
「私さ」
「?」
「もう長くないのよ」
「何を」
「これは本当。お産が持つかな?ってところ。意地でももたすけど」
「三成は?」
「知ってるよ。いちいち言わなくていいから。」
「しかし」
「もう手遅れだし。それよりさ。」
「…」
「私の死んだ後の話をしよう」
「好かん!」
「しとかないと!成仏できない」
「…」
「勝手に話すよ?秀吉様と半兵衛様に文を書いてあの子を継室にしてもらう。でも家政できないから。私の腹心の名を書いてあるから。よく見てあげて。」
「聞かぬ」
「軍は刑部にお願いする」
「だから」
「お願い」
「…」
「一番信頼してるもの」
「よく寝らしゃれ。戯言と笑うてやる故」
「ふふふ」






ごめんね刑部。戯言にはならないの。






花のない実


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歌う花

「ごめん」といつも妻は言う。妻は妻であり、元々は武家のでの勇猛な武将だった。幼馴染だった。私の愛した女の姉だった。

彼女は体が弱く世継ぎを望めなかった。嫁ぐのではなく侍女として家裁を取り仕切っている。そして私の側室でもあり、寵妃でもある。月のように儚い女を私は知らない。





「どう言う意味だ」
「いや、さ。懐妊したらよう無しなのに。見舞い来てくれて」
「減らず口をきくな。妻を見舞うのに謝罪はいらん」
「ん」
「長の行軍が堪えたのだろう。少し休めば良くなる。しっかり寝ろ。子は乳母が見ている」
「妹もでしょ?」
「当たり前だ。」
「そう…ね、三成」
「?」
「私をさ、死んじゃったことにしなよ」
「…は?」
「有難いかな跡取り生まれたし。半兵衛様も許してくれるって。側室持ってさ…なんなら私と妹が入れ替わって。」
「馬鹿を言うな」
「最後のチャンスかもよ」
「何がだ」
「妹と公然に夫婦になれる。」
「…」



ほら、望んでるじゃないと言って布団の中の妻は笑う。結婚してからは昔のように笑わなくなった彼女は事あるごとにそう唆す。私もすぐに否定するもののその甘い話は惹かれるものを感じる。


あれと夫婦になる。子も出来ている。何も咎められない。



その魔を妻は汲み取っていたのだろうか。今となってはわからない。ふふふと笑って私も協力するよと言う言葉を吐く彼女の顔を私は一度も見たことがなかった。






「やれ、三成」
「どうした、刑部」
「主の愛妾が来ておる」
「あれがか?…珍しい」
「急いでおるようよ。今左近が対応しておる。」
「…行ってくる」
「我も行こう」
「?」
「何やら不幸が燦ざめく気配よ」
「どう言うことだ?」
「三成様!」
「左近!騒がしいぞ!!!」
「それどころじゃないっす!奥方様が!!!」
「?」
「姉様が自害を!!!!!」
「…は?」





為任務終了、御役御免候。





そう書き遺して彼女はこの世から居なくなってしまった。



傍に置いていた文箱からは秀吉様、半兵衛様。そして刑部宛の文があり私に子にもは何も残してはいなかった。

太陽のように明るくいつも笑っていた彼女との決別はあまりに突然で。それこそ。土に還したのちでも頭は理解していなかった。



何故、とは言わない。あの言葉が全てなのだろう。







「ちと食べやれ」
「いらん」
「寝ても居らぬようよな」
「眠くない」
「左様か」
「…」
「あれも黄泉路に迷うなぁ」
「?!」
「ひひひ。なれば幸せにならしゃれ」
「馬鹿を言うな」
「跡取りはある。最愛が妻になった。何を苦しむ必要がある」
「それは…」
「我は言うたぞ、三成。我は言うた」
「?」
「あれは主が思う以上に儚くボロボロよ、と」
「だが」
「何にせよ。後はもうない故の凶事…?」
「どう言う意味だ?」
「あれはお産に持たぬ体よと何度も…主は聞いておらなんだか」
「…」
「昔からちっとも変わらぬなぁ。我らの幼馴染は」








歌う花

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優しい三成

「あー」
「どうした?」
「んー?」
「おい」
「吉継」
「?」
「ごめん。風邪ひいた。」
「ひひひ。我の心配などいらぬいらぬ。よく効く薬を運ばず故暫し寝りゃれ」
「そうする。三成」
「なんだ?!」
「吉継をお願い。もしうつってたら即医者に診せて。隠すから」
「あ、ああ。いや、待て」
「?」
「お前はどうする気だ?」
「寝る」
「は?」
「一に睡眠というからなぁ。」





寝てれば治るよと言って部屋を出たのは何時時だったか。ぼんやりとした思考で周りを見ると吉継の手配してくれただろう薬瓶が見える。あれを火にかけたら良いのだろうなぁと思いながら起き上がる。水も着替えも完備だわ。さすが吉継。




「熱あがってるわ…」
「おい」
「…なんで三成いるのよ」
「先ほどきたら寝ていたからな。見に来た」
「そう」
「顔が赤い」
「本当にねぇ。あー…寒い」
「着替えろ」
「んー…」
「おい」
「面倒臭い」
「おい!」
「着替えさせて」
「わかった」
「優しい」
「私はいつも貴様には優しくしている」
「吉継に言われて?」
「違う。秀吉様だ」
「ふふふ。それでもありがとう」
「ふん」




手慣れた具合で服を脱がせて体を拭き再び服を着せてくれる。至れり尽くせりね言えばいつもしてやっているだろうと帰ってくる。うん。抱き潰すあんたが悪い。そう思いつつも力が入らない私はくたりと三成に凭れかかる



「熱いな」
「暑い?寒いよ」
「そちらの暑いではない。体温が高い」
「ああ。熱いか」
「横になれ」
「ん」
「座っている方が楽か?」
「三成と居たいだけ」
「…」
「?」
「刑部が言っていた」
「そうだ!なんでこんなところにいるのよ?吉継の見張り!」
「はぁ」
「野猿のような私より吉継!」
「その刑部よりも先に熱を出す奴が野猿なら私はどうなる。」
「だって。吉継すぐ無理するもん。熱出てても隠すもん」
「お前よりわかりやすい。…刑部はまた後で見に行く。落ち着け」
「本当?」
「では聞くが」
「?」
「私がいなくても良いのか?」
「…嫌だけど。吉継がまた倒れる方が嫌」
「この頑固者が」
「わっ!」
「刑部がお前を致命的な甘え下手と言っていた」
「酷!」
「それに対しての私の返答を聞きたいか?」
「どうせ頑固者と言ったのでしょ?」
「違う」
「?」





「優しく辛抱強い良い女だと答えておいた」






「…」
「寝ていろ。刑部も心配している」
「三成」
「こういう時くらい甘えろ」
「…ん」
「早く良くなれ。お前が嫌な様に私達もお前が不調なのは好かん」
「三成」
「なんだ?」
「大好き」
「知っている」
「可愛くない」
「別に構わん」
「ふふ」
「早く良くなれ。」




ありがとうと微睡む意識の中、伝えると三成は優しく笑う。
これは甘え得かなと少し笑って意識を手放すのだ








優しい三成










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捕食者と被食者

「私」
「?」
「やれどうした?」
「昨日さぁ、不運だったらしくて」
「暗のように言うな」
「怪我でもしりゃれたか?」
「いーや。盛ってる男女を二回見た。」
「…」
「何処のどいつだ!この秀吉様の大阪城で!!!万死に当たる!」
「まぁ、思い合ってるならいいじゃない。執務室じゃない、私室付近だから文句はないけど」
「まぁ、夫婦奉公もおるしなぁ。」
「そうなのよね。規律さえ乱さなければ半兵衛様も黙認されてるし。まぁあんまり気持ちのいいものではないからちょっと不幸かと」
「当たり前だ!」
「何で三成がそこまで怒っているの?」
「そ、それは!」
「で」
「ん?」
「言いたい事はそのような陳腐な不幸自慢ではあるまい」
「あは」
「無闇矢鱈に破顔するな」
「仏頂面面よりかはましよな」




いつも通りの昼下がり。執務を終えた私はいつものように三成の部屋に行く。手伝う事ないと言いながらお茶を入れたりうたた寝するのだが未だ嘗て怒られた事ないので許可されているらしい。
そこで先日発見した新しい扉を伝える。「ガタイいい男と小さい女の子(共に成人)の和合は萌える」そう言うと二人はある意味ドン引きしたかような顔をして吉継なんかは心底馬鹿にして阿呆よなと言う。わかっている。ただ、本当に萌えたのだから仕方がないと開きなると何故か真っ青な顔をした三成がお茶を啜る。珍しい事もあるものだとまじまじその姿をみていると吉継が妙に食らいついてくるので意識をそちらにやる。至極悪い顔だ




「萌えない?なんかさ体格差のあるのって。一生懸命腕を回しても回しきれない感じがさ」
「左様か?我には縁遠い話ゆえ」
「私もだよ。細マッチョって言われてるし。柔らかさないしね!あの熊とか狼とウサギみたいなの堪らんです」
「主は背も女子にしては高い故」
「秀吉様くらいになんないとねぇ」
「?!」
「あ!無理なの知ってるから!そういう風に思ってないから!」
「良い反応よなぁ」
「そりゃ、秀吉様の横に私がいたら三成忿怒の塊になって死んでしまうわ。その前に私刺される。何より半兵衛様が恐い。だからあくまで大きさのみです。」
「ひひひっ。左様か」
「あー官兵衛さんとかかな?現実的に」
「?!!?!?!」
「え?!もっとひどい反応になったよ!吉継!三成がブツブツ言って怖い」
「哀れよ。あわれ。暗も不幸よな」
「なにそれ!私はそんなに嫌がられてるの?!」
「主はそのおつむが哀れよ」
「もー。大体!官兵衛さんは優しいから据え膳は哀れんで食らってくれるでしょ!」
「それで良いのか?」
「良かないけど。…三成?」






憤慨していると三成が無言で目の前に立っている。怖い。なんかブツブツ言っているし…。どうしたのと言えば目をかっ開いて睨まれる。すいません、仕事を邪魔して!と早口でまくしたてる。立ち上がって部屋から出ようとすると腕を掴まれた。




「?!」
「何処に行く!」
「痛っ!三成、痛い!!!この!細いくせに!!!いたたたたたたた」
「暗の何処か」
「へ?」
「ひひひ、我は邪魔故ちと賢人のところへ行くなぁ」
「助けてよ!吉継!!!」
「我とて馬に蹴られとうはない」
「は?!痛っ!本当に痛い!」
「おい!」
「何?!」
「暗とお前は…そのだ。恋仲なのか?!」
「は?」
「…」
「えっ?あー…あれはたとえ話で」
「では懸想相手か?」
「え?!それはない。」
「据え膳と言っていた」
「たとえ話でキレないでよ」
「…」
「手、離して」
「…いいのか?」
「?」
「体格の大きな男がいいのか?」
「え?えー…と」
「私は背こそ違えども体格には大差がない」
「待てこら!今さらっと失礼なこと言ったよな!」
「私には抱かれたくないか?」
「…は?」
「…」
「三成、さん?」
「…」
「えーと…あの」
「まぁ、いい」
「?!」



「体格差などではなく本能で教えてやろう」
「ぎゃ?!」
「捕食者と被食者の差を」
「え?!ま!!!何脱がし?!えっー!!!!っん!」
「少し黙れ」
「あーーーーー!!!!」












捕食者と被食者









「…ん」
「起きたか?」
「…」
「おい」
「…たい」
「?」
「…消えて無くなりたい」
「???」
「なんであんなに力強いのよ」
「貴様と同じにするな」
「長いし」
「…」
「意味わかんない」
「他の男に抱かれたいなどというからだ」
「へ?」
「…」
「三成?」
「何だ?」
「ふふふ」
「!?」
「三成、素直じゃない」
「…黙れ」
「うひひ」
「はぁ」
「そう言えば」
「?」
「吉継は?」
「…任せていればいい」
「???」







「既成事実はある故」
「意外と長い時間かかるものだね。まぁ三成君が大事にしていたからね」
「式は」
「大阪でしなよ」
「ひひひ。あの阿呆が目を向く内容にせねばなぁ」

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両片思い 成就編

三成と呼ばれて顔を上げる。女にしては少し低く落ち着いた声。どうしたと言えば困った様にはにかんでご飯食べないとと言う。ああ、そうか。またやってしまったかと顔を手で覆う。
気分が悪くなったと勘違いしたのだろう。一層声が震えて大丈夫と聞いてくるものだから居た堪れない。

「大丈夫だ」
「そう言って空腹で倒れたこと忘れてる」
「…」
「吉継がね。心配してた」
「そう、か」
「ご飯食べよう」




否とは言えない相手を選んだなと内心舌打ちをする。私にこれが私事を願うと言うことはまずありえない。その上での「お願い」なのだ。否、とは言えない。致し方ないと筆を置く破顔した顔が愛らしいとは口からつくはずはなく、私は言われるままに席に着く。



「三成」
「?」
「ちゃんと食べてね」
「必要な分は」
「もう」
「…賄いを代えたか?」
「…美味しくない?」
「懐かしい味がする」
「そう」
「?」
「美味しくなかったら言ってね」
「素朴で懐かしい。嫌いではない」
「!」
「どう、した?」
「私が作ったの」
「は?」
「美味しくなかったらどうしようかと」
「お前が?」
「ん」
「…」
「三成?」
「今まで食したものの中で一番だ」
「ふふふ。大袈裟」
「嘘は言わん…おい」
「ん?」
「嫁ぎ先でも決まったのか?」
「え?!」
「いや、急に」
「嫁ぎ先は決まらないよ。これはその…吉継が」
「刑部が?」
「たまには私が作ってやればいいって言うし。」
「そう、か」
「うん」
「三成以外には作らないよ」
「?!」
「うん。作らない」
「そう、か」
「うん」
「なら」



そう言って顔を見る。思いのほか顔が赤いのだろう。心配げな顔をするもののお互い様だと言ってやりたい。頬をふにふに触るとにこりと笑う。



「愛しい」
「?!」
「好を」
「え?」
「結んで欲しい。」
「!」
「おい」
「い、や。三成」
「そう不安げにするな。本心だ。」
「吉継が噛んでるってことは?」
「ないな…おい」
「は、い」
「私の奥になれ」
「…秀吉様が許しいただけるのなら」
「!」
「私はあなたのものになります」








両片思い 成就編








「全く初々しい夫婦だね」
「ああ」
「いいの?」
「何がだ」
「親離れ」
「吾はもろうた方よ。半兵衛こそ」
「…少し寂しいかな」
「そうか」
「可愛い二人だから。許せるけどね」
「ああ」




「秀吉様」
「半兵衛様」
「やれ、太閤。賢人」





「吉継君が珍しく嬉々としているね」
「ああ」
「あの二人なら大丈夫かな」
「そうよな」

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