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変換なしの雑食夢

ran

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不如帰と三成

「はいるぞ」
「みつ、な、」
「話すな…相も変わらず良くならんのか?」
「…くる、しい」
「すまん。水だ」
「ん…」
「水を飲んでも咳き込むか」
「戸…」
「あ?ああ。すまん。閉めた。大丈夫か?」
「あんまり。…でも咳は落ち着いたわ。」
「そうか」




今日の外は暖かい?と聞けば昨日と変わらんと素っ気ない返事が返ってくる。無愛想な奴だ。だが義理深い男だという事も知っている。一線で働いていた時が嘘のよう。いつも口煩かった男でよく喧嘩していたのに。
訪れる客のない私の部屋に足繁く通ってくるのはこの男と吉継のみだ。ただ、吉継は体が弱いし何かあったら困るからと言って面会はしていない。時折三成が持ってくる手紙でやり取りしているくらいだ。だから実質的にはこの部屋に訪れるのは三成だけなのだ。





「何だ?」
「忙しいでしょ?」
「それなりだ。」
「無理してこなくていいよ。うつしたらいけないし。」
「無理などしていない。茶だ。口を開けろ。」
「ありがとう。」



匙にひと掬いのお茶を啜ると安心しなように息を吐いて咳きこまなかったなと言う。大丈夫よと言ってもうひと匙所望すると少し冷まして飲ませてくれる。親鳥のようねと言うと至極嫌そうに眉間にしわを寄せるから少し笑っておどけてみせた。



「ふふふ」
「おい」
「もうひと掬いもらっても良い?」
「それは構わんが…私はお前の親鳥ではない」
「?」
「番だ」
「え?」
「そうなる」
「…面白い事言うわね」
「そうか?ずっとそう思っていた」
「そう」
「まだ飲むか?」
「うん」
「半兵衛様がだ」
「半兵衛様が?」
「そと国から薬を取り寄せて下さった。」
「お礼言わないと」
「ああ」
「三成」
「早く良くなれ」
「無理言わないで」
「祝言が挙げられん」
「祝言かぁ」
「?」
「吉継が面倒ごとが増えるって言いそう」
「言っていた」
「でもそれ以上に喜んでくれそう」
「そうだな」
「秀吉様と半兵衛様は許可してくれるかな?」
「して下さる。」
「そっかー…」
「青海?」
「…ごほっ!ごほごほ」
「おい!大丈夫、か?!」
「あはは、は」
「…いつからだ。いつから血を吐いている?」
「三成達が、戦に行く…前から」
「落ち着け。ゆっくり横向きになれ。そうだ。手拭い」
「ダメ…」
「おい!」
「血に、触っちゃダメ。うつしたら」
「馬鹿者!そんな心配…青海」
「なぁ、に?」
「お前は何時、治る?」
「もう、治らないよ」
「馬鹿を言うな…馬鹿を」
「血を吐く量が、多くてね。あんまり保たないかな?」
「青海!」
「吃驚させてゴメン。」
「嘘を…偽りを」
「三成」
「?!」
「幼い時からありがとう。番って言わず夫婦って言って欲しかったけど凄く嬉しかったよ」
「何を…言っている!お前は私の妻だ!すぐ治して祝言を!」
「御免ね」
「青海!」
「御免。本当に御免。御免なさい…私なんかじゃなくて良いひと見つけて長生きしっかりして…」
「馬鹿を言うな!お前以外の誰と!」
「ごほっ!」
「青海…」
「御免ね。…三成を置いていくのが一番辛い。けどね、三成はまだ生きる人間なんだよ。」
「じっとしていろ!誰か!」
「呼んでも意味ないよ。何にもならないもの。三成」
「私を置いていくのか?」
「私の分までしっかりと生きてね」
「許可しない!!!!」
「話聞いてよ。馬鹿。…もう、少し休むわ」
「?!」
「ねむ、たいの」







不如帰と三成







青海が死んだ。
血を大量に吐いて、それを詰まらせて誰にも看取られず青海が死んだ。


眼前で横たわる彼女は思いの外顔色が良く赤みをさして見える。生きているのだろう?と座して聞けば死化粧を施したと誰かが言った。美しく聡明で健やかな青海様には痩せた青い顔など似合いはせぬからと続けて紡ぐ。
青海は、私の愛した女は誰よりも笑う太陽の様な女だった。



「やれ、三成」
「暫時一人にしてくれ」
「ぬ…」
「刑部」
「まさか主。滅多なことなど」
「考えておらん。…何より青海にしっかりと生きろと言われている。」
「なれば、いいが。少し間よ。時期太閤がきりゃる」
「ああ」


ぱたりと閉まる障子の音とともになみだが溢れてくる。
名前を何度も呼んだのに返事が返ってこないことがこんなにも虚しいことなのだと痛感する。


頬を撫でる。


「お前に会った時から気になっていた。私と互角に殺り合う剣の使い手のくせに何処かぬけていて、危なっかしいお前に色々言い過ぎた時もあった」





『三成!御饅頭貰ったの吉継呼んで食べるからお茶入れて』
『何故私が!』
『三成のお茶が一番好きだもの』
『?!』





「愛しくて怪我一つしてしくないのにお前は戦場を駆けるのだ。私がどれだけ心配したかお前は知っているか?」



『…刑部さん。三成様、めっちゃくちゃ恐ろしいんっすけど』
『ひひひっ。青海の軍が先陣故なぁ。』
『げ!?そりゃ三成様の機嫌最悪っすよ』
『本に。あれよりアレに蹂躙される敵の方が哀れよ、あわれ』
『まぁ仕方ないっすよね。青海様は特別ですからね』
『ただいま〜』
『噂をすれば』
『青海様おかえりなさい。…相も変わらずすげぇ首の数っすね』
『遅い!!!!』
『遅くないよ〜。三成と交代!頑張って』
『当たり前…何だその傷』
『えー?ああこれ?少し切られちゃった』
『…』
『でも大丈夫!もう血も止まってるし』
『手当てしろ!良いな!…刑部!!!左近!!!』
『うへぇ〜奴さんら全滅決定っすね』
『あわれよあわれ』




「だから貴様が病で療養する聞いた時、私は愚かにも良かったと思った」




『…きちんと寝ていろ。』
『暇だもの』
『書物を持ってきた』
『ありがとう。…みんな元気?』
『ああ。』
『早く治ってみんなの所行きたいなぁ』
『…私としてはこれで良いと思っている』
『?!』
『戦さ場で心配しなくて済む』
『そっちか!』
『?』
『いや、死んでしまえ的な?』
『何故貴様にそう思わなくてはいけない?しっかり養生うして早く治せ。治ったら言いたいことがある』
『?』
『また来る。良いな?絶対だぞ』





「青海」





『しっかりと生きてね』






「お前がそう言うから、私は生きる。ただ、お前以外の者と番にはならん。どれくらいで行けるかわからんがそちらに着いたら言いたいことがある。必ず待っていてくれ」






そう言って唇に触れるだけの口付けをする。





最初でこの世では最後のそれが血の味がして悲しくてもう一度青海と名を呼んで泣いた。

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