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変換なしの雑食夢

ran

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胃袋以上に掴まれた三成

「(また来てますね)」
「(寝てる…スゲェな。あの萩さんの怒声を聞きながら寝るって)」
「(行ったことねぇけど戦さ場ってこういう感じなのかね)」
「三次!笊!碗を出しとけ!話してる暇なんてないよ!」
「へい!」
「柿沼!強物の支度は?」
「もう少しです!」
「遅い!」
「萩さん」
「ん?」
「石田様…気づいてます?」
「石田様?膳の支度も侍童も…」
「…」
「いつの間に。また寝てる…誰か掛物」
「へい!」
「最近ここでよく寝られるな。お疲れなのだろう。そっとしてさしあげろ!其れより!膳!!!」








あれから何故か石田様は賄い方の囲炉裏で転寝することが多くなった。死ぬほど珍しいことらしく半兵衛様どころか殿下までこそりと見に来られたのだから本当にそうなのだろう。ただ、今となっては日常化しているので何とも言えない。喧騒の中で寝るほうが寝やすい気持ちはわからないでもない。
掛物をかけてじっと見てみても熟睡しているようだし…まぁ良いか。何より邪魔せず静かなので無碍にもできない。




「ふー…」
「終わりやしたね」
「公家から食事に呼ばれているらしくてな、皆昼から明後日の昼まで休みだよ。片付けしてとっとと休みな」
「でも大谷様と石田様の分は?」
「簡単なものが良いらしい。大谷様から食べたいものの書付を貰った。これなら私一人で十分だから」
「きちんと休んでくださいよ」
「はいはい。石田様も寝てるし…其れ終わったら休ませてもらう」
「なら…」
「ほら休める時に休みなさいよ」
「はい」



一人一人といなくなるのを見届けて私は菜物を検める。今日は良い菜物が多い。惜しいなぁと思いながら塩をふる。漬物にしておくものと煮浸しにするもの。取り敢えず刑部様の書付を見るとあまりにも量が足りない。



「…ん」
「良い魚があったな。確か…ああそうだった。漬けとかないと傷んでしまう。」
「…」
「出汁もあるし。…治部様達は少食だな。甘味は食すかな?」
「…」
「葛があった筈。体にも良いし…あら」
「…すまん」
「起きていらっしゃるなら声をかけてください」
「いや…そのだ」
「昼餉は食べられそうですか?」
「ああ。…いただく」
「直ぐに用意いたします」
「ん」
「(ずいぶん眠そうだな)…あ」
「?」
「折角ですから温かいものを賞味くださいませ」
「いや…」
「ふふふ。少しお待ちくださいよ」
「あ…」
「治部様?」
「楽しそうだな」
「ええ。もともと作るの好きなんですよ」
「そうか」
「膳は冷えてしまいますから」
「然し美味い」
「!」
「…」
「嬉しい」
「あ、う…」
「ほら出来ました」
「あ、りがとう」
「ふふふ」






胃袋以上に掴まれる三成





「…やれ」
「寝ておられますよ」
「の、様よ」
「葛湯飲まれますか?」
「ああ。にしてもすまぬ」
「?」
「ぬしも休めまい」
「私はもう此処何年もこの囲炉裏前で雑魚寝ですから」
「?!」
「いや〜…一介の賄方に部屋などありませんし。私が行くと皆緊張しますから」
「まぁ男ばかり故」
「そうですね。」
「ひひひ」
「でも半兵衛様が横に寝床構えてくださいましたから。これ以上は」
「左様か?然しなぁ」
「?」
「いつか体を壊そう」
「一下僕ですから。そうなっても困らぬ様にはしておりますよ」
「そういう訳では」
「…刑部?」
「ん?起きてしもうたか?」
「ああ…すまん」
「寝ぬぬしの方がいかぬよの。」
「そうか?…藤殿辱い」
「いえ。…葛湯飲まれますか?」
「頂く」
「…」
「美味い」
「…ふふ」
「仲が良いなぁ」
「?!」
「そうでございますか?」
「!?」
「三成が此処まで懐かれるのは珍しい」
「…ふふ」
「ん?」
「いえ、」
「?」
「美味しいと半兵衛様もよく言ってくださいます。元々半兵衛様の推挙でしたから。」
「そうなのか?」
「ええ。焼き場の時に厨房につまみ食いに来られて」
「ひひひ。賢人はよく食らうからなぁ」
「ええ。お褒めいただき身にあまる光栄なのですけど。…治部様に褒めて頂くと」
「私か?」
「凄く嬉しいですね」
「!」
「ひひひ」
「身分違いなのに申し訳ありません。あ、芋菓子を作るので召し上がってください。」
「あいあい。すまぬなぁ」





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