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変換なしの雑食夢

ran

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鍼色

明確な拒絶とあの涙を見て数日が経つ。姫様は矢張りお厭いなのだろう。私の様な無骨で恐ろしい武人にはあの方の夫となる資格がない。手紙を書いてもあの方の心を慰める事は出来ないどころか、御不快に思われているのだから。苦しい。姫様の顔を垣間からでもいい。御拝見したい。涙をお拭いしたい、抱き締めてお慰め遊ばしたい、この世の憂いから守って差し上げたいと思っているのに。全ては一方的な感情であると突きつけられてしまったのだから。

「やれ、三成」
「どうした刑部」
「結納の日和が決まった。」
「…ああ」
「つれない返事よの。嬉しくないか?」
「苦しさが勝る。姫様は何と?」
「我はぬしの世話役故わからぬが賢人は問題ないと」
「そうか」
「…ぬしは良いのか?」
「婚儀の後佐和山にて居住を移すとあるが」
「其れは、そうよの。夫婦となればな」
「…」
「ほんに。如何した?主らしくもない」
「少し出る」
「?」
「書類は済んでいる。半兵衛様にお会いして直にお伺いしたいことがある」
「ぬ…」

我も行こうと障子を開けた瞬間、姫様付きの侍女頭が表れて驚く。何の用だと尋ねると苦虫を噛み潰した様な顔をして佐和山に持っていく調度品の目録を持ってきたという。



「おい」
「…何か?」
「姫様は如何お過ごしか?」
「今は家財の整理と仕えていたものの整理をしておりますので日々慌ただしくお過ごしです」
「そう、か…」
「どうしたのですか?」
「姫のお加減が悪いかと心配していたのよ。」
「そうですか。其れでしたら安心してくださいませ。姫様はお健やかにお過ごしです。」
「こちらの目録だ」
「お預かり致します。そう言えば」
「何だ?」
「お便りは良いのですか?何日も滞っておりますが」
「いい」
「…では失礼いたします」
「やれ、三成」
「如何した?」
「本に手紙は如何した?」
「姫様に拒否された。」
「!」
「行くぞ。刑部」
「やれ、面倒。めんどう」





鍼色






「箏?」
「姫か?彼方は局故」
「…」
「ぬしは姫がやはり好きか?」
「わからない。ただ、今はとても苦しい」
「左様か」
「刑部」
「何ぞ」
「…此の侭では為らぬのだろうか?」
「は?」
「私が御前に行くと彼の方は厭がる。だから」
「為らぬ、な。今は無理矢理でもいい。形を整えねばぬしが」
「私は、いや。すまない。行こう」

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水色

「今日もまた」
「あら、美しい撫子ですこと。」
「手紙に添えるのには可憐で御座いますが」
「これ!姫様がお優しいからといってあなた方が出しゃばりますな!」
「良いのよ。松。竹に梅。花差しを。このままでは余りにも可哀想ですから」
「はい」
「織部が良いわ。」
「玻璃は?華奢だから似合うと思うの」
「そうね。」
「早くおし!!!」
「きゃー怖い。」
「早く参りましょう、松様の雷が落ちてしまうわ」



ぱたぱたと出て行くのを忌々しげに見つめるので私は苦笑してしまう。養育を間違えたと育ての母が言うのだから仕方がない。私はくすくす笑って健やかで天真爛漫な二人が好きよと答えて文に目をやる。
鮮やかで繊細な和紙に書かれている治部の文字は彼の姿に似合て繊細だ。美しい羅列を見て松ですら感嘆したのだから。代筆、かもしれませんねと仇を見るかの如く付け加えたのが彼女らしいところでもある。
代筆、なのだろうか?そうかも知れないし、祐筆に書かせているのかも知れない。私は治部の手を知らないから是非がつかないのだ。




「今日は何と?」
「花の礼に贈った織物を褒めてくださってます。ふふふ。今日は其れだけ」
「懲りずに。結納の日取りが決まらないものだから焦っておいでなのです」
「ふふふ。松の治部嫌いも此処までくれば大したものね。筆を。返事を書きます」
「はい」



松は治部が嫌いらしい。理由は剣があるかららしく何でも過ぎたることは毒と同じですなと言うのが初めて会った時の感想。私としては親子かと思う程度に似ていると思うのだけど。



「書けました」
「持って行っておきます」
「お願いね。ねぇ梅」
「はい?」
「私が此処を去ると此の局には誰か入るのかしら」
「さぁ。私には存じ上げません」
「そう、ね。…あなたもあの二人も此処に残るのだから寂しくなるわね」






脇息から離れて庭に出ますと私は言う。供は入りませんという。
誰にもついてきてほしくない。少し考えたい。

治部の事。


私を娶り後継者になる夢が潰えたと思ったのだろうか?結納の事も先のことが決まらないのは半兵衛が時をよんでいるからだろう。私にはよくわからない時節の変化というものを。きっと治部は待てと言われればずっと待つ。兄上の命なら尚更だ。私もそう。似た者同士なのかも知れない。其れが此処まで違うのは偏に。私が弱いからなのだろう。



「あら。此処は半兵衛庭。」
「やれ、賢人よ」
「何だい吉継君」
「結納の件、ぬしは如何考えている?」
「二人を添わせて。後継者としての地位を絶対にしないと。その為の結婚だよ。美人の側室も見つけたし。そろそろ動かないと」
「ひひひ。姫も哀れよの」
「知らないさ。彼女の役割は其れだからね。例え嫌がろうとも無理矢理だ。その分今まで贅沢に暮らしただろうと。もし拒否すればあの子の身の回りのものを殺していく。多分一人目くらいで根を上げるよ。まぁ。出家がしたいと言われた時には焦ったけど」
「そうよな」
「三成君も例え醜女だろうが命なら逆らわないからね。…まぁああいう性格の子だから姫も生傷絶えないかも知れないね」
「ふむ。獣に人を嫁がせるか。あれは手酷く抱く故姫は喰い殺されよう」
「其れも承知の上だ。」
「ひひひ。と言いながら…ん?」
「誰だい?!」
「あ…」
「姫?!」
「…やれ、聞いておったのか?」
「…」
「これはだね。」
「知っておりましたの、で。ご安心を」
「え?」
「これ。姫」
「私は私には価値がないことを一番よく知っております。ので、盾にされようが人柱にされようが致し方ないと…知って、」
「待って!」
「…失礼いたします」




泣いてしまってはいけない。ずっと堪えていたものを、湧き出て来るこれを止めなくてはならない。必死に走って私の局に戻ろう。
今は泣かないから。お願いします。誰にも会いませぬようにと駆けていく。のに





「姫様?」
「じ、ぶ?」
「なっ?!」
「っ」




なぜこうまで会いたくない人に会ってしまうのだろう





水色





「じ、ぶ?」




半兵衛様と姫様の庭園を分けるかのようにある小道を歩く。
刑部に呼ばれてだがきっとお叱りを受けるのだろう。気がそぞろだ。姫様に柔らかい拒絶を受けた折より。

がさりと庭木が揺れる。突然の事で柄に手を掛けた瞬間、菫色の打ち掛けが見える。

姫様は驚いたようにこちらを見ている。其れは私も同じだろう
何時もは纏められている髪も乱れ、少し汗ばんだ肌。今まで見た何よりも美しく清らかなのだ。なのに、

「何があったのですか?!何故」
「治部」
「泣かれておいでなのですか?」
「何でもありません」
「ですが…」
「姫!何処だい?話をさせてくれ」
「半兵衛様?」
「っ」
「待って下さい!」
「触らないで!」
「っ」
「私を一人にして…」
「姫、様?」
「花も手紙ももう要りません。だから私に構わないで。」




そう言うと踵を返してご自分の庭に走っていかれる。



「触らないで」



明確な拒絶を受けたのは初めてかも知れない。その台詞に身を固め掴めずにいた不甲斐なさを恥じ入るのだった


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浅黄色

「ほら彼方に」
「まあ、ご覧ください」
「お美しいわ」
「姫様、今舞われておられるのは石田様ですよ」
「折角ですのに。御座に上がられればようございましょうに」
「ああ。本に美しい。徳川様と二人並ぶと光君と中将。匂と薫と思わんばかりでございます。」
「本当に」
「徳川様はまだしも、石田様は激しい御気性。もう少し柔和なれば」
「いいえあの清廉潔白な御性根が美しいのではありませぬか。例えるなれば」
「雪に咲く梅ですわ」



成れば徳川様は向日葵のような柔和さがあられますなぁと言った瞬間私は視線を感じる。不意に顔をそちらに向けるといつの間にか舞終わっていた治部がこちらを見ている。
自然、目が会う。

背けてしまったのは私か治部か。



あの目が私は恐ろしい。その気質でも言動でもなくあの純心な瞳が。私のうちにある全てを暴いてしまいそうで。弱く実のない私の内を見透かされていそうで。






「やれ、三成」
「なんだ刑部」
「あの様な目で姫を見りゃるな」
「…」
「主の恋慕の情は姫にとっては重く恐ろしいものになってしまっては元も子もない。少しは遠慮しりゃれ」
「ふん」
「ほれ、能を見れば良かろう?何処ぞの倅の舞よ。ぬしの後では見栄えせぬが」
「知らん。見るに能わんものを見る程の苦痛はない。刑部。貴様も同じだろう」
「左様か。我もつまらぬと思っておったが姫の侍女たちは違う様よな。ぬしの舞の時もちと騒がしい」
「…姫様もお困りの様だ。彼の方の侍女ではなくば!この場で真っ二つに」
「これ、よさぬか」
「だが…半兵衛様?」




「姫。君の侍女達は少し黙って見れないのかな?」
「申し訳ございません。侍女かしらの私の失態でございます。」
「君は今来たところだろう?姫の監督不行き届きだ」
「申し訳ございません。新沼も。治部も。余りにも優雅で侍女達も今業平今源氏と浮き足立ってしまい…さぞやご不快でございましたでしょう。」
「いえ!その様な。其れに某の拙い舞をそう評して頂きまして逆に有難く。」
「ありがとうございます。新沼。治部ももうしわけなくおもいます」
「いえ、姫様の性ではございません!」
「そう言っていただくと私の心も軽くなります。兄上、半兵衛」
「んー…そうだね。二人が良いというのならいいと良いよと言ってあげたいけど。秀吉」
「場に礼を欠くのは無礼としれ。姫」
「はい」
「貴様も何か一座持て」
「私もですか?舞に楽。どちらがよろしいでしょうか?」
「では舞で」
「僕は君の静が見たいなぁ」
「では支度をして参ります」






そう言って手をつくと半兵衛が嫌がらないのと聞いてくるのでこれ以上の非礼を重ねるるのは私の本意ではないと返す。苦笑されたものの致し方ない。私はそういう風にしか生きてこれないのだから。
侍女達を窘めればよかったと後悔してももう遅い。後は侍女頭に任せておこうと思案して席を離れる。此処で舞うのも今日で終だろう。嫁げばそう簡単には帰ってこれなくなるだろうから。








浅黄色






「…三成」
「見たか、刑部。さすが姫様。あの様に美しく舞われるお方はこの世に二人とおられん。」
「ひひひ」
「どうかしたか」
「いや、何。ぬしは気づかなんだよの。舞を見る間の顔が、まるで恋人を見りゃる其れよ」
「何を」
「嫉妬も含まれておったのでな。ちと禍々しい」
「…」
「行かぬのか?」
「いや」
「?如何した?ぬしらしくない」
「謝罪を頂いたのだ。」
「姫にか?」
「ああ。この婚約は姫にとって苦痛なのだろうか、と」
「本当に主らしくない」
「姫様には健やかに。少しでも笑みを深く美しいものにしていただきたい。私が目障りなのなら」
「いや。」
「側を同時にあげると。三国一の美人だそうだ。姫以外…いるものか」

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白濁色

パタリと締められた障子を見届けて私は姫様よりお送り頂いた箱を踏み机に置く。黒地の漆に銀で花の紋様を入れた箱は姫様のお好みの其れだ。美しいといつも思う。大輪の花の様に美しく、野の花の様に可憐で、月の様に朧げなのだ。私にとって姫様は垣間見えただけで心より慕い庇護欲に駆られる存在だ。兄上の秀吉様とは全く違うこの思いを何というのだろうか。左近の言う様に不埒な感情なのだろうか?

蓋を開けると甘い、香りがする。柔らかい文字に彩られた手紙と香りは姫様そのものだ。美しく繊細で可憐な。




『治部』




先ほどの感覚が蘇る。柔かい肩。艶やかな髪に潤んだ瞳。小さな品の良い口から私の名を呼ばれる。


薄く白い寝着と肌膚けた胸元。







「くそっ」




欲が、溢れる。此の儘抱きすくめたいという。我がものにしたいという穢れた欲が私の思考を埋め尽くす。より濃く、鮮明に。手篭めにしてその美しい声で啼かせたい。私の名前を呼んで頂きたい。艶やかなその声は何にも替え難い美声だろう。そして、白い指で私に縋らせたい。何より、その瞳を、意思を。総てを私のものにしてしまいたい。
食らい尽くして、あの方を傷付け怖がらせるだろう悪魔の所業としても。私は贖うことはできないだろう。甘美で悍ましいこの欲に。


「姫、様」






美しい姫様。私の、私だけの姫様。畏れ多くも許嫁となったのに。
何故あの様な事を仰るのか私にはわからない。美しく聡明な姫様が何をお考えの上で仰ったのか。私には分からない。天にも昇る心地だったのだ。姫様と夫婦になれると知ったあの日より。なのに、何故。分からない。私には分からない。





「お慕い申し上げております」








呟いた其れがあの方の耳に届くはずもない。そう、なのだと嘆いて私は静かに泣くのだった。





白濁色








「んー…気に入らないの?」
「いいえ」
「もう少し可愛い顔したら?」
「緊張、しています」
「そう?ならいいけど。如何かな?秀吉」
「良く、似合っているぞ。」
「ありがとうございます」
「姫」
「はい?」
「三成を頼む。」
「治部はとても優れた方です。良き友に部下に恵まれておいでです。私など何のお手伝いも出来ないでしょうが…微力ながら兄上の為、治部の為心血を注ぎます」
「…」
「そういう意味ではないのだよ。妻として」
「そう言えば」
「何?」
「よく方は見繕えましたか?」
「…覚えていたの?」
「ええ。条件でしたから」
「姫」
「きっと三国一の才女と美女をお見つけくださいませ。其れがお慰みになられますでしょうから」
「…そう。うん、わかっているよ」

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柿渋色

あれから治部を見かける度走って逃げられる。文字通り。風の様に。そんな彼を追い掛けるどころか話す事すらままならない。そう言うと刑部が面白そうに笑う。私としてはその対応が想定内のことなので苦笑してしまう。

「ところで」
「何かえ?」
「美しい方は見繕えましたか?」
「犬の子や猫の子ではなくてなぁ。中々」
「そうですか」
「姫はほんに良いのか?」
「何がです?」
「この婚姻よ」
「兄上に此処へ置かれた瞬間から諦めはついています。ですが…其れに巻き込まれる治部が哀れでなりません。私の様なものを押し付けられるのですから」
「其れはなかろう?主は立派な」
「力なく、豊臣のお役に立てないのです。此処では私の様なものより力がある者が良いのですよ。」
「ぬ」
「ですから。私が唯一お役に立てるのはこの様な事だけでしょう。十分に豪華な暮らしをさせて頂きました。其れもこれもこの日のため。」
「姫」
「勘違いなさらないで。悲観や絶望でもなく。況してや治部の事をどうこう言っているわけではないのですよ。あの方にはもっと美しく聡明な、そんな方を添わした方が幸せでしたのに…私のせいですね」
「…」
「刑部」
「何、三成は愚直なまでに真っ直ぐなやつよ。」
「だから…いえ」
「姫?」
「少し頭痛がします。」
「…なれば我は退室しよう」




パタリと閉じた障子を見て私は侍女に休みますと告げる。少しだけ疲れた。本当に。婚姻にしても何にしても。出家したかったのにと脇息にしな垂れる。頭を変に回しすぎたのだろう。頭痛が酷くなる。
治部は、この婚儀を如何思っているのだろうと思案して馬鹿馬鹿しくなる。あの人は、私ではなく兄上の血縁と結婚するのだ。

私を見てくれる人はいないのかもしれない。






「姫様」
「…ん」
「御床の準備ができました」
「ありがとう」



そう言って微睡みから覚めると肩に掛かった其れに驚く。銀と藤の羽織。 はらりと落ちて藤の紋が目に入る。
驚いて侍女を見ると石田様が来られていたのですとだけつれなく返される。




「治部が?」
「菓子と花を持参されて、御通しいたしましたら姫様がお休みだったので。お預かりしております」
「あ、はい」
「脇息でお休みになられませんよう。急な来客もありますから」
「…ごめんなさい」
「お衣を替えましょう」
「ええ」
「医師を呼びまして、薬を用意いたしました。口直しにお召しあがりますか?」
「いえ」
「?」
「後で食べます。枕元に置いておいても?」
「構いませんが」
「ではそのように」
「…少し休みますので人払いを」
「はい」




パタリと締められた障子の向こうに人払いをしても誰かが付く。雑兵にすら勝てない私はこうやって誰かの手を煩わせて生きなければならない。息が、苦しくなる。籠で飼われた鳥の様だと笑った所で私の声は聞こえない。今までもこれからも。私は兄のために生きて駒として死んでいくのだろうか?愛のある結婚を求める以前に私を見てくれる人は居るのだろうか。半兵衛と治部が兄を見つめる眼差しや刑部や左近が治部を見つめる眼差しまではい求めない。その一雫でいいから私を見て聞いてくれる人は居ないのだろうか。苦しいのだ。宙に消える私の言葉も意思も全てが限界なのだ。
「苦しい」と一言吐いたこのいつもの言葉は頭痛のせいか心中ではなく声に出してしまった。急いで口を押さえたものの、誰も心配なんてしないわねと自嘲してしまう。小さな声。きっと畳と障子に吸われて行ったのだろうと、おもったのに






「姫様?!」
「え?」
「お苦しいのですか?今、医師を」
「…治部?」
「…」
「?」
「っ!!!?申し訳ありません!お休み中に…私のようなものが…」
「え?あの。」
「医師をすぐに呼びます。お待ちになってください。其れまで、私の羽織を…」
「待って」
「…ですが」
「声」
「?」
「貴方には聞こえましたか?」
「姫様のお声を聞き逃すはずはありません。」
「そう、なの?」
「はい!」
「治部には私の声が聞こえていますか?」
「勿論です」
「…羽織」
「?!申し訳ございません!私物など姫様にお掛けするにはご無礼」
「ありがとうございます。先ほども」
「あ…」
「掛けて頂きました。重ねて礼を申します」
「そんな、恐れ多い!剰え勝手に御部屋に入る愚行を犯してしまい…」
「治部」
「…」
「ありがとう。」
「秀吉様の妹君であられる姫様に忠誠を誓うのは至極当然なことです」
「妹…そうね」
「姫様?」
「いえ、いいの。治部に謝らないと」
「私に、ですか?」
「ええ」
「?」
「兄上と半兵衛の言い付けとはいえ私の様なものと縁を結ばなくてはならないなんて…本当にごめんなさい」
「は?」
「私の様に取り柄もなく役に立たないものを押し付けられて本当に申し訳ないと思っているのです」
「何を仰せになられますか。姫様は秀吉様の妹君!尊い方なのでございます」
「私から兄上との縁を取ればただの女です。」
「その様な!」
「治部。貴方には三国一の美女で才女を側に。婚礼の時に連れてまいります。兄上には半兵衛から伝わっておりますので。…其れに貴方の本当に愛した方が出来たら仰って。側にしか無理でしょうが近くに」
「姫様!」
「…やはり頭痛がするわ。治部。下がって頂けますか?」
「ですが…私は!」
「治部」
「っ」
「羽織は後で持って行かせます。部屋の前の守りは他のものと変わって少し休んで」
「…あい、わかりました」









柿渋色








「石田様」
「貴様は姫様付きの。ご容態は如何だ?」
「少しお風邪を召した様です。熱はないのですが…頭痛がひどい様で。これは石田様へと姫様が」
「…」
「羽織でございます。あと、文もお入れ遊ばしているとのことです」
「あいわかった。」



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