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変換なしの雑食夢

ran

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唐紅

「奥?」
「…」
「?!」




目を覚ますと眼前に奥がいて思わず飛び起きる。美しい寝顔だと思う反面、手を出してはならんという戒める。にしてもと己の出で立ちと奥の出で立ちを見てため息ともつかない息を吐く。昨日、結局の所私の腕中で寝てしまった奥を離すこともできず私自身寝てしまったらしい。
いつぶりか分からない程度に熟睡した。




(美しい髪だ)





髪を撫でるとすり寄って来られる。愛しさが自然とこみ上げてくる。
以前前後不覚に陥って手酷く抱いた時には気がつかなかった。華奢な肩にも丸みと柔らかさがある。私とは違う体。いや、それよりも


不味い




雑念を捨てなくてはならない。このままでは折角手を取れたのに再び嫌われてしまう。





「ん…」
「お、く?」
「との?」





掠れた声、潤んだ瞳。肌けた襟元。
どれ一つとっても私の理性を断ち切るには十分すぎる




「奥」
「…おはようございます」
「あ、ああ」
「殿?」
「すまん。理性が持ちそうにない。離れてくれ」
「?」
「貴方が怖がることはしたくないが…そのだ」
「っ?!」
「す、すまない」
「殿?」
「一度自室に帰る」
「?!」
「奥?」
「自室に帰って他の女を呼ぶのですか?」
「は?」
「…それならば。殿が嫌でなければ…」
「…は?」
「私以外に殿を渡したくない、です」
「…」
「はしたなくて申し訳ありません」
「寝ぼけているわけでは」
「ないです」
「…途中で止まらぬかもしれんがいいのか?」
「い、以前みたいなのは。痛いのは」
「それは!勿論だ。できるだけ優しくする」
「…なら」
「奥」
「…貴方様の御心のままに」






唐紅









「しばし待っていろ」
「え?」
「おい!誰か」
「はい…何かお呼びですか?」
「床の支度と刑部に今日は」
「御やすみ遊ばすと伝えておきます。取り敢えず、人払も。」
「あ、ああ。頼む」
「無理をなさらず。怖がらせませぬように」
「わかっている」
「…ようございました」

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薔薇色

「奥が大阪に帰りゃれるそうだ」
「何?!」
「ぬしの余所余所しさと花街の馴染みとがあいまって嫌になったそうよ」
「?!」
「刑部様」
「三成の不器用さもいかぬがぬしの言わなささもよろしくない。決裂するもしないも話しあってからにしりゃれ。何我もここにおるでな。このあいだの様な事はさせぬ」
「…殿」
「馴染みなどはいない。ただ、貴方を眼前に邪な事を考えてはならないので…」
「っ」
「そのだ。あなたを傷つけたのだからもう二度と触れぬつもりでいる。…貴方がいいというまでは。だが一度の触れてしまったので他の女を触れたいとは思わないのだが…浅ましい限りで言いたくはなかった」
「???」
「要約すると一度ぬしを抱いたので他の女は抱きたくないが、抱いて適度に欲を出さぬとまた理性が切れて傷つけるのが恐ろしいのだと言っている」
「え?!」
「ひひひ。そう言う初心なところがいかぬのだろう」
「…貴方を守ると誓ったのに。」
「目を合わせられぬもその所為よな」
「刑部!」
「言わず去られるよりよかろう」
「ぐ…ああそうだ!私は貴方をお慕いしている。抱きたい欲と守りたい欲が拮抗しているのが事実なのだ。ふいに目を合わせてしまったら…理性が保てる自信がない」
「…」
「奥」
「はい」
「私は貴方が如何思おうが貴方の事を慕っています。」
「?!」
「愛でて寄り添い、生涯共に生きていただきたい」
「あ、の」
「もう我は邪魔よの」
「手を、離して。刑部様!」
「ぬしも素直にならしゃれ。いい加減面倒よなぁ」
「奥」
「…」
「私は貴方にとって酷い男である事至らないところばかりなのもわかっている。だからこそ言ってほしい。私は貴方を愛している。笑っていて欲しい。何か私に至らぬ点はないか」
「…私は」
「…」
「弱き女です。貴方にとって何の役にもたちはいたしませぬ。今、私が離れ、強き女を室に入れるのなれば」
「私の室は貴方以外にいない」
「ですが」
「妹御なれば断っていました。私には戦さ場にかける両腕があります。戦さ場をかける室が欲しいのではないのです。貴方が、」
「御前様?」
「貴方が私の室になってくださればとどれほど願ったか…室になった折どれほど嬉しかったか」
「っ」
「言ってくれ貴方の望みを」
「望み?」
「生きている事が辛く悲しいものではなく、楽しいもので…あの、笑みを」
「…」
「奥」
「私は」
「はい」
「家族が欲しいのです。半兵衛に言われた豊臣の為の縁ではなくて…立場上無理な事とは知っています。貴方にとって家族など必要ないともわかっています」
「…」
「私は弱いです。捨て石に人形にならない事もわかっています。けれども。縁あって夫婦になったのです。愛されたいし愛したいと…殿?」
「…」
「申し訳ありません。私みたいなものが望んではならない事を」
「奥!」
「っ」
「私は貴方の理想の夫ではないかもしれません。短慮で貴方を傷つけてばかりです。ですが、貴方の家族になりたい切に願っています」
「は」
「秀吉様とも半兵衛様とも違う。これは弱さなのかもしれない。お二人の意に反するかもしれませんが私も貴方と同じことを願っています」
「貴方様も兄上が好きでしょう?」
「畏怖、忠誠の念であれば。それは一兵卒としてです」
「一兵卒」
「一人の男としては貴方以外は愛していません」
「なら」
「?」
「兄上や半兵衛に向ける視線の一雫を私には下さいますか」
「はい」
「っ」
「愛しています。嘘偽りなく。私の唯一の妻になってくれ」
「…はい」










薔薇色











「…」
「御前様?」
「嘘偽りなく?」
「貴方様がそうであるならば」
「奥!」
「きゃ」
「此の暖かさをどれほど欲していたか」
「っ」
「耳まで赤い」
「私は慣れておりませんので」
「…震えているな。やはり怖いか?」
「少し」
「…」
「ですが離れるのは嫌です」
「っ」
「御前様?」

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土色

「奥は?」
「今、お召し替え中でございます」
「ならば、」
「三成様ー!」
「ご用意が…御用がお出来あそばしたとお伝えしておきます」


「奥!」
「今、賄い方に。」
「何故その様なところに?!」
「お礼をと…時々参っているのですよ」
「…また後で来る」



「奥!!!」
「今、うたた寝て」
「ぐぅ…起きたら呼びに来てくれ」



「殿は?」
「おお、松殿。三成は城下に行ったが?」
「奥方様が起きられたので呼びに来たのですが」
「此の所間が悪いが…わざとか?」
「私がそう思っていた所です」
「左様か」





「奥…」
「待っておいでだったのですが…おやすみ遊ばしておいでです。」
「…」
「とりあえず、紅と白粉の匂いを落としておいでください」
「う…此れは」
「側がおらず、奥方様に怯えられるから致し方ないのはわかっておりますが…やるならばれぬ様になさいませ」







一週間会えていないという三成は端から見ても腫れものだ。







「やれ、三成」
「なんだ」
「主に客よ」
「今忙しい!秀吉様と半兵衛様の件以外は送り返せ!!!」
「しかし」
「諄い!他のものに会う間など」
「…刑部様。また後で参ります」
「お、奥?」
「お忙しい様でしたので…此れは合間で召し上がってくださいませ」
「ま、」
「では失礼します」
「…」
「相手を確認してから叫ばりゃれ。」
「ぐ…」
「ほんに主は致命的に言葉が足りぬ」
「…」
「こと奥に関しては」
「わかっている。」
「せっかく歩み寄ったかと思えば…主は如何でもない女と添った方が上手くいくのかもしれぬなぁ」
「…」
「一層妹御を頂き直すか?」
「それは…ん?」
「如何した?…奥?!」
「お茶もと思ってきただけですから。お気になさらず。」
「いや、今のは」
「婚前にもありましたな」
「脅しの様なものよ」
「では失礼致します」





完全にふりだしよりより前に戻ってしまった










土色








「奥!」
「今はおられますよ…と言っても刑部様ですか」
「入るぞ!」
「っ?!」
「すまぬすまぬ。またぬしを泣かせてしまった」
「泣いてなど」
「強がられるな」
「私は大阪に帰ります、兄上に」
「ならぬよ。奥、少しおちつきゃれ」
「私は…いえすいません。私にその様なことを言うことはできませんのに。」
「奥」
「…矢張り殿には側が必要でございます。」
「またいわしゃるか。あれは三成自身が決めた事」
「ですが…良い方が花街にお有りですので」
「は?」
「側を持てる立場のあの方をわざわざ」
「ヌシとしては聞きたくないかもしれぬが男としての生理現象よ」
「だからこそ」
「ぬしを抱きさえすれば万事解決よな」
「それ、は」
「あれは可哀想な男よ。愛しい事を上手く伝えられぬ」
「皆様そう言って私を謀ります」
「謀ってはおらんよ。本にあれは」
「奥!!!!!」
「常軌を期す程度に不器用なのよ」

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翡翠色

「奥」
「はい」
「今日は天気がいいな」
「はい」
「三成様ー!雑賀の御使者です。刑部さんが呼んでますよ」
「今、行く。」





そう言うとそそくさと部屋を出て行かれるので私は苦笑する。不器用なんっすよという島様の言葉を聞きながら。もう、それすら苦笑してしまう。




「奥方様も少し散歩でもなさったら如何っすか?」
「散歩?」
「俺お供するっすよ。気晴らしになるし」
「そう、ね。」
「松も参ります。」
「あ、良いっすね!」
「お時間は?大丈夫ですか?」
「大丈夫ですって!行きましょうよ!」
「なら」





久し振りに庭に出る。ここのと言うのでは本当に初めてだ。
庭木が大阪と違う。あちらは半兵衛が作っていたから麗美だったがこちらは素朴だ。



「此処は三成様が婚約が決まって作ったとこっすよ」
「そう」
「元気ないっすね」
「ふふふ。そうかしら?」
「三成様も心配してたっすよ。めっきり表情が変わってしまって。何より、喋らなくなったって」
「昔からこの様なものよ」
「そっすかねぇ。あ!今度琵琶湖行きましょうよ!此処からも見えますけど。大阪から来た時だけっしょ?ゆっくり温泉に入って美味しいもの食べて!ね?」
「本当に楽しそうですね」
「じゃ決まりっすよ!…ん?」
「あら…」
「島殿!」
「いや、わざとじゃ無くて!!!…奥方様?」
「本に私以外ですね」
「(あちゃー…)そんなことないっすよ!」
「良いのですよ。」
「奥方様?」
「一喜一憂してはならないとよくわかったのですから。松」
「はい。」
「部屋に帰りましょう。少し気分が悪いと当分人払いを」
「はい」
「はいって?!松さんも!」





部屋に帰って私は打掛を松に渡す。寝着に変えますかと聞かれるので曖昧に答える。綺麗な人だった。あれが噂の雑賀の棟梁なのだろう。美しくて強い女性。



「松」
「はい」
「貴方も少しやすみなさい。私は大丈夫ですから」
「…ですが」
「良いですね」
「…はい」




あの人と肩を並べられる女性なら良かったのに。矢張り、私の位置は人質で人形なのだろう。あれだけの事を言っていただいて、何も変わらない程度の。




「奥方様はお休みになられています。」
「では見舞いを」
「やっと寝たところで御座いますので…起きてしまってはことですから」
「そう、か 。」
「時に先ほどの方は?」
「孫市だ」
「随分と親しげな」
「よく働く。潔く誇り高い。裏切らない女だ。」
「そうですか」
「?」
「奥方様の前では言いませぬ様」
「何故だ」
「あの方は何より己が家族を欲しておりましたので」
「は?」









翡翠色







「はぁ。本に間が悪く達が悪い」
「奥方様は如何する気っすかね。あ!三成様」
「…やれ三成。早々の帰りとは珍しいの」
「寝ていたので会えなかった」
「左様か」
「刑部」
「よき様に回ったかと思うたが…此れは骨の折れる話よな」
「??」
「ヌシもとっとと目をあわしゃれ。何ずっとみよというわけでもない。それに着物もきなしゃれ。」
「汚れてはいかん!」
「後生大事に持っていたとして何になる。奥にすれば来てもらえぬと嘆いておるやも知れぬわ」

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若木色

「奥帰った!」
「御前様?」
「帰ったぞ!」
「…」
「?」
「お帰りなさいませ」
「っ」
「お召し物をおときくださいませ」
「あ。ああ」
「お手伝い」
「いらん!」
「…」
「左近!手伝え!!!」
「ではお茶の」
「いい!」
「…」
「奥」
「はい」
「顔色が良くなった。」
「!?」
「じっとしてろ。着替えたらすぐ来る。」
「は、い」





一週間後の御帰城でしたのにと言いながら松が打掛を持ってくる。その顔は本当に面倒臭そうでおもわず笑ってしまった。




「奥!」
「あら。御前様。早かったですね」
「あ、ああ。」
「?」
「座っても」
「ええ。殿のお屋敷で」
「そちらではなく。貴方が」
「私が?」
「座っても大事ないか?」
「ええ。」
「よかった」
「…矢張りお茶を入れてもよろしいですか?」
「だが」
「だって」
「?」
「御前様の無事の姿を御拝顔して私もホッとしているのです」
「本当か?!」
「ええ。ですから」
「では頂く」
「勝ち戦とのことおめでとうございます」
「私は何も。ただ秀吉様のお陰だ」
「戦のことは良くわかりませんが半兵衛が文を」
「半兵衛様が?!」
「お読み遊ばしますか?」
「い、いや。それは貴方」
「?」
「読んでも良いのだろうか」
「はい」
「…」





手紙を読んでいる間にお茶を入れる。時節の挨拶を送っただけだ。静かに読み終えた殿が嬉しそうな顔をなさる。本当に兄上や半兵衛が好きだなと。この間の武功を終えた2人でお褒めになったという言葉は何よりもこの人を喜ばせるのだろう…ああまた。目を逸らされる。致し方ないと思うもののやはり島様の言は客観性に足りなかったのだろう。
お茶をと勧めたところ丁寧にお礼を言って頂く。





「宜しかったですね半兵衛も喜んでいる様ですし」
「…」
「?如何致しました?」
「なぜ半兵衛様を呼び捨てになさるのか?」
「あ申し訳ありません。婚礼の後に様と呼んでいましたし、手紙にもそう書いていたのですが怒られてしまいました。」
「…」
「御前様?」
「…良く、手紙のやり取りを?」
「はい。一時期は兄上と半兵衛に育てて頂きましたから。童の折は無礼にも呼び捨てにしか出来なくて…その名残です」
「育てて?!」
「は、はぁ。私を姫と育てて何所ぞに嫁すのが半兵衛の目的だったのでしょうから」
「そう、か」
「?」
「貴方と半兵衛様が婚約していたと聞いたことがあった」
「事実です」
「?!」
「少し、強引な方が居まして。最後には拐かされそうになりました。城に、上がる前ですが。それでしょうがなく。」
「そうか」
「城に上がってほどなく解消しています。私は半兵衛を兄とは違う…なんといえばいいのでしょうか。家族と思っていますしあちらはあちらで。ですから様は嫌だと。…お耳苦しいのでしたら」
「いや、そうでは無く」
「?」
「貴方が半兵衛様を思っているのではと」
「家族の念で御座いますれば。彼の方も兄上しか見ておりませんよ」
「も?」
「お茶が冷めてしまいます。」
「…ああ」
「松」
「はいはい」
「?」
「此れを殿に」



松から手渡された風呂敷をお渡しすると少し困った様な顔をされて受け取られる。開けてもと丁寧に断りを入れていただくので私もどうぞとしか言えなくなる。
存外私は喋りだ。此れを作っている最中も松に叱られる程度には。だが殿の前では喋れなくなる。自分がいかに愚かかを突きつけられている様で。居た堪れなくなるのだ。






「着物?」
「はい」
「私にですか」
「ここの縫い方に聞いて縫ってみたのですが…」
「ありがとう、ございます」





笑顔無理にしても、少しは綻ぶかと思った。何より少しでもこちらを見てくれるかと思ったのに




『貴方のことをお慕いしています』
『三成様は貴方のこと本気で好きっすよ。』





こんな険しい顔になられるとは思わなかった。本当に、自分の愚かさに泣きたくなる。一度の接吻。額のそれに踊らされてしまったのだから。

普通の夫婦になれるかもと思ってしまったのだから。



「有難く」
「いえ。殿もお時間大丈夫ですか?」
「え?…ああ。長居しすぎた。すまない。又、後で」










若木色










「…やれ三成。如何したその様な顔をして」
「奥、が」
「離別でも言われたか?」
「違う!私に着物を!手ずから」
「…で、その顔か。」
「?」
「で、目は合わせられたか?」
「…」
「無理か。やれ、また拗れるなぁ」
「?!」

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