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変換なしの雑食夢

ran

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桃色

「奥方様」
「はい」
「殿が御目通りを」
「え?あの…」
「事を急ぐそうなので」
「なれば」



御簾を下ろす様にと言えば松にもう良いでしょうと投げやりに言われる。だけれどもと言い訳する頃には殿は直ぐ近くまで来られていて障子に影がうつる。



「奥?!すまない。御簾が」
「い、え。ご不快でなければ」
「いや。そのだ…衣装が」
「あ」
「御簾があるものとばかり。申し訳ない」
「…戦でございますか?」
「あ、ああ。一月ほど留守にするので」
「大阪にも?」
「そのつもりだが」
「?」
「貴方も大阪に?」
「?!」
「?」
「何時でしょうか?」
「え?明日ですが進軍を終えた後になりますので詳細は」
「では早めに荷物をまとめておきます」
「は?」
「?」
「小旅行程度ですので…荷物を…?!」
「御前様?」
「違います!奥を大阪に連れて参るのは気分転換の様なもので身命を賭して違います。お返しするつもりは」
「…ふふふ」
「っ」
「私などに身命を賭さないで下さいませ。兄上にも道具とと」
「言われましたが…やはり見る事は出来ませんでした。」
「え?」
「入っても?」
「…はい」





静かに入ってこられるのはあの時の姿で思わず身構える。それを見て困った様な顔をしてやはりというので私は構いませんとだけ告げる。
手が強張る。




「矢張り、良くない」
「いいえ」
「奥は私が憎くないのか?」
「?」
「あの様な無体…まだ痣も消え切っていないし…何より私のせいで貴方を母親に」
「憎いというのはわかりません。私は人形の様なものですから…もし御前様が壊そうが捨てようが」
「私は貴方を人形だと思った事はありません」
「は?」
「人として聞いているのです」
「…人として」
「はい」
「憎くはありません。どこに嫁いだとしてもあり得る話ですし。何より弱い私がいけないのですから…ただ」
「ただ?」
「恐ろしいのかもしれません」
「…そうですか」
「申し訳ありません。」
「あの様な非道を行ったのに貴方が会って下さるのはそういうことなのですね」
「え?」
「再びあの様な目に合わぬ様にと」
「違います!」
「何が違う?!」
「っ」
「あ、いや。…すまない。」
「…御前様」
「泣かせるつもりではなく。ただ、挨拶に来ただけだったのが」
「ごめんなさい」
「もう、行かなくてはいけない」
「?!待って下さい」
「奥方様?!じっとなさってください!まだ安静なのですよ」
「ですが、この様な別れは嫌です」
「は?」
「童の内より貴方が私を厭うていたことは知っておましたし、その最中の非道仕打ちも身に染みております。止めはあの所業としたとしても。私は」
「…」
「貴方様の妻であるうちは貴方に健やかでいて頂きたいのです。」
「は?」
「嫁いだ折より役に立たない妻でした。何より、貴方様のために何もできませんでした。」
「その様な」
「ですからただ無事を願うしか私には出来ないのです」
「…は?」
「?」
「私の無事を?」
「他の誰の無事を妻として願うのですか」
「っ!?」
「本当ですよ。奥方様は仏間で懇ろにお願いしたりしております。許可が下りれば神社仏閣に参るつもりですよ」
「本当ですか?」
「はい」
「…」
「恐ろしいのはお許しください。ただそれだけの感情ではないのですが…それ以外の言葉を知らないのです。ですが憎しみはありません。貴方が私を厭うゆえの所業と」
「厭うたことはない!」
「は?」
「私は」
「三成様ー!早くしないとやばいっすよ…てありゃ?」
「間の悪い!」
「左近んんんんんんん!!!!貴様!!!!!」
「ひっ?!」
「殿!」
「…」
「?」
「いい。行ってくる」
「はい」
「…近づいてもいいから?」
「え?」






風の様に近づいて来られて私の眼前に御前様はいる。どういうことかと焦っていると静かに、考えられないほど優しく額に口付けを落とされる。





「御前様?!」
「帰って話す。」
「う…あ」
「それまで良く…どうした?」
「そ、の」
「無理をするな。手が震えている」
「…あの」
「奥?」
「早く、帰ってきて、下さい」
「っ」
「私はここでずっと待っています、から」











桃色









「如何した半兵衛」
「いや、ね。三成くんのところ。良い動きだなと思って」
「ああ」
「功も焦ってないし。それでいて疾風の様だね。うん。興味深い」
「我とは違う強さを得るか?」
「かも、しれないね」

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桜色

「松」
「はい」
「殿の、手紙ですか?」
「はい」
「…」
「なんて書かれていますか?」
「桃の花が咲いたそうです」
「もうそんな時期ですか」
「ええ。その様ですね」
「手紙を読まれるのも苦ではなくなりましたか?」
「…少し」
「左様ですか」
「松?!」
「あの時の字と同じですね」
「きっと同じ祐筆に書かせていらっしゃるのね」
「…」
「?」
「誰か島殿を」
「は?」
「如何かしましたか?」
「いえ。何故…島様を?私はあまり話したありませんが…」
「刑部様は駆け引きに長けた方ですから。尋問は素直な若人がちょうど良いのですよ」
「松」





という事で刑部さんにいらぬ事を言うなと釘を刺され、三成様には禍々しいまでの視線を頂き。不肖島左近。奥方様の御前にいます。が、何故か松様が恐ろしい顔をなさっている。いや、違う。悪巧みを考える刑部さんにそっくりな顔だ。





「今、失礼な事を思っていたでしょう?」
「いやいやいや!そんな恐ろしい事!」
「…ならいいですが。今から訪ね聞く事に素直に答えなさい」
「はひっ」
「でなくば」
「…いくらなんでも女に手をあげるのは無理っすからね」
「何故私が貴方と腕力で話さなくてはならない?」
「へ?」
「もし噓いつわりを申したら」
「私が泣けば良いのですね。松」
「大きな声で島殿のご乱心を告げますれば叩かれたと叫ぶのですよ」
「殺されますって!!!絶対嘘言いません!!!だからそれだけは!!!」




ニヤリと笑ってよろしいという姿は絶対刑部さんに似てる。






「まず、この文は誰が書かれたものか」
「?これは三成様っすよ」
「島様。祐筆では無いのですか?」
「違いますって。あの人箆棒に事務処理能力高くって。誰もついていけないんっすよ。一度怪我の折代筆を頼んだら遅い汚いって暴れて。まぁスラスラ書いちまうし言ってくれないしで石田軍に祐筆はいないっすね。」
「…直筆なのですね」
「大体これは奥方様宛っしょ?すっげえ気を使って書いてるんっすよ。」
「そうなのですか?」
「昔、奥方様が手折った花を嫌った時とか何を口実に手紙を贈ろうかと真剣に考えてたんすよ。あーでも無いこーでも無いって。紙なんかも。秀吉様とか半兵衛様には特別な白い紙っす」
「そう」
「あ、勘違いしてるでしょ?」
「?」
「刑部さんもその白い紙。俺らとかには普通の紙。奥方様だけなんすよね。」
「私だけ?」
「そうっすよ。薄い藤色の特別な紙」
「そういえばいつもこの紙ですね」
「この色。三成様の色なんすよ。」
「え?」
「直ぐに自分とわかる様に。何より、少しでも思い出してもらえる様に。奥方様が姫様の時からずっとこの紙は貴方だけのものなんすよ」
「…」
「すっごく不器用で女の扱いなんて知らない人ですけど奥方様にはずっと笑って欲しいって言ってました。だから嫌われている自分が結婚しても良いのかって考えてはヘタを打ち。戦さ場に行っても奥方様は息災かって心配しては後手に回り。姫様ん時からずっとそんな感じっすね。ベタ惚れなんっすよ。でも失敗続きで自己嫌悪に陥ってるっすね」
「でも」
「まーあんな人だから信じれないのも仕方ないっすけど。」
「…兄上との関係で演じているって事はありませんか?」
「誰がっすか?」
「殿が」
「…もし、三成様が演じる事ができる人ならもっと楽に生きてますよ。奥方様にも上手く言って夫婦円満を装って。他の人との軋轢もなくて。でもそれが出来ないから三成様なんっすよね。」
「…その通りですね」
「ね!」
「島様は本当に殿が好きなのですね」
「はい。いやー本当に奥方様が好きなんっすよ。あ。三成様の話っすよ。踊りを見た後のベタ褒め感とか琴の音が聞こえたらすごく良い顔して聞かれるんっすよ。これは言いたかったんすけどようやく許可頂いたんでお教えします。それに実はっすね」
「?」
「元々奥方様の部屋にって思ってたところは実は三成様の政務室の直ぐ近くで、何かあったらお守りできるのと近くにいたいのとでそこにしたんっすよ。勿論今でも誰にも使わせて無いんですけど。あの風流に無頓着な三成様が奥方様が喜ぶだろうって庭をちゃんと整備してるんっすよ。」
「そうなのですか」
「少しでも過ごしやすい様にって。色々考えてたんっすけど。今はすっごい悩んでます。奥方様を守るって言った自分が傷つけてしまったと。」
「…」
「ああいう人っすから。言葉に出して言ったりしないっすし態度も悪いですけど。確かに奥方様を大切に思ってますよ」
「あの、ですね」
「何っすか?」
「…言いませんか?」
「(きっと横にいるけど気づいてないんだろうな)言わないっす!」
「松」
「(隣に居るけど荒療治で良いか)言いませんよ」
「殿はいつも目を合わしてくれないのです」
「あー…」
「披露宴の時も。皆はそう言ってくださいますが。きっと嫌われているのですね」
「(刑部さん。取り押さえて下さいよ!!!島左近!頑張ります)奥方様は三成様が好きなんっすか?」
「…」
「(そう来たか)私たちだけなのですから。言っておしまいなさい」
「…私が童の折酷い近習の方だと思いました。色々ありましたし。いつも怖い顔をしている様な方で。髪を上げた折半兵衛に許嫁の様なものだと言われた時どうしようかと思いましたもの。鬼に嫁ぐ様な心地で」
「(絶体いま大変なことになってるわ)へ、へー」
「ですが」
「?」
「…一度微笑まれたのを見てしまって」
「あの、三成様が?!」
「人違いでは?」
「私は皆様の様に身体能力が高くありませんので…何か折縁から落ちそうになった事がありました。髪を上げた後直ぐのことです。すごく怒られたのですが…怪我がなくよかったと不意に微笑まれて。あれからは一度も見ていないので…あの時から兄上や半兵衛に向けられるその視線の一雫でも私に向けられればと。ですが…取り留めて才覚のあるわけでもなく。歯牙にもかけていただけませんでしたから」
「(両思い!)三成様は物凄く不器用な方なんっすよ!」
「え?」
「嫌いな人なら落ちるの助けないし。微笑みませんって。それに…これ言って命あるかな、俺」
「言っても言わなくても同じですよ。言いなさい」
「?」
「実は奥方様が知らないだけで三成様もずっと奥方様見てんっすよ。あっ気持ち悪い感じじゃなくて」
「…」
「披露宴の時も。じっと見ては恥ずかしくて目を逸らしの繰り返しで。真っ赤だったんすよ」
「…」
「すっごい好きで惚れ切ってるから、こんなことになっちまったんすけど奥方様」
「は、い」
「三成様は貴方のこと本気で好きっすよ。あの人は地位とか名誉とか外聞とかそういうのどっちでも良くて。そういうもので左右されるくらいなら刑部さんも困りませんから」
「…島様」
「?」
「ありがとうございます。少し考えてみます」
「そうしてください!」









桜色









「というわけで文を頂いてきました」
「良くやりおったなぁ。ひひひ。使い様よな」
「なんか含みがすごいっすね」
「…」
「やれ三成」
「聞いてくれ刑部!又、文を書くと」
「良かった良かった」

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金茶

「ヌシの初陣の頃、よく笑う女童がいたのを覚えているか?」
「…?」
「何時もニコニコ笑っておってなぁ。良く道場横の楠にやって来ていた」
「ああ!あの姦しい童か。道場横で小鳥を呼んでは歌を歌っていた」
「其れが奥よ」
「…は?」
「あれが奥よ」
「…」
「煩いと小突き、姦しいと殴り。鳥に至っては稽古の邪魔と斬り伏せ。弱いお前が豊臣に居る理由を言えと恐喝し」
「刑部」
「その内笑わなくなった女童が局に移動して。裳着の後美しい女になっただけよな。」
「もう良い」
「確か裳着の儀も散々暴言を吐いていた。当然奥は聞き及んでおられるか。いつ懸想したかは知らぬがな」
「…」
「我もヌシの気持ちがわかった折よりは特にだが…ヌシの言を訂正していたが…ヌシの一味になってしまった。」
「私はどうすれば良い?」
「知らぬ。此処まで拗れてしまったら我とて知らぬ」
「…」
「やれどこに行く?」
「奥の元へ。会えぬとも良い。」
「左様か」





花を見てため息をつく。花と安直に考えていたが確か…手折るのを嫌っておられた。食べ物も好みがわからない。衣装も。





「奥方様」
「はい」
「起きられて大丈夫ですか?」
「いえ、だって」
「…あら」
「殿が、さきほど、から。右を左をされ、て」
「奥方様、笑い過ぎで御座います」
「だって、云々唸りながら庭に入ってこられて。やれ花では無い。甘味でも無いと。念仏の様に」
「其れはまた禍々しい念仏です事。殿」
「…?何故貴様が此処、に?!」
「此処は離れで御座いますゆえ。私がいてもおかしく有りますまい」
「奥?!いや、すまない。考え事をしていてだな、わざとでは無い」
「いえ…」
「すぐに…」
「殿?」
「いや、」
「?」
「久方振りに貴方の笑った顔を見る」
「あ…松」
「っそう隠さなくて良い。すまない。勝手に入ってきてしまった。」
「い、え」
「それと」
「はい?」
「私は貴方のその微笑みを見るのがとても、好きでした」
「…え?」
「ただ、それだけです。失礼いたします」







急いでその場を立ち去ると刑部がいて驚く。どうしたと尋ねれば笑うだけ笑って不器用よなと言われてしまう。



いつからかはわからない。ただ漠然と好きになったわけでも無い。




「これを弱さとおっしゃるのか」
「さてなぁ。だがヌシがまともに奥を愛したのなら…弱さ以外の何かを知りうるかもしれぬなぁ。」
「?」







金茶








「やれ、三成。」
「なんだ?」
「そう唸った頃で何も出来ぬ。」
「しかし」
「薬も医師も用意できる最良を用意した。傷も良くなってきて、床からも上がれる様になってきた。」
「何か奥が喜ぶ様なものは」
「女の好むものか…」
「甘味は」
「日々用意せよと言ったのを忘れたか」
「小動物は」
「ヌシのせいよな」
「花も手折るのを厭われる…刑部!」
「難題よな。なんだい。そうよな。手紙を再開してはどうか」
「だが」
「直接聞くにはそれしかあるまい」
「…」
「返事が来ねばまた考える。」
「わかった」

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浅葱色

「御簾越しで短時間ならばとの事です」
「…すまない」
「どのような場合でも退室は速やかにお願い致します」
「よく、会って下さったな」
「人は悲しい分だけ泣くと腹も括れますゆえ」
「左様か」



からりと開かれた障子の向こうに御簾が見える。きっとその向こうに奥がいるのだろう。姿がわからないもののいる事は気配でわかる。奥、と呼びかけたものの返事はないが確かにそこに彼女がいる。




「申し訳御座いませんでした」
「…」
「私の浅はかさと短慮の所為で貴方を傷付けてしまいました」
「…」
「どの様な弁解も御座いません。許されない事とわかっております。それでも私は貴方の側にいたいのです。」
「…」
「奥」
「…貴方様は」
「?!」
「誰に謝って居られるのでしょうか?」
「は?」
「子を成せぬ石女と豊臣にお返しくだされば全て丸く収まりまする」
「収まりません!私は貴方以外の女に興味はありません」
「…」
「貴方様はどう、お思いか存じ上げませんが私は貴方様をお慕いしておりました。」
「は?」
「ですからこの婚礼が決まりました折、天にも昇る心地でございました。あなた様の意思は関係ございませんでしたが…私としては本当にそうだったのです」
「それは…兄上と」
「たとえ秀吉様の妹御で無かったとしても。いいえ。私は秀吉様の忠実な一兵卒で御座います。其れは地位や立場など関係ございません。あの方のために戦い傍で死するのか私の望みでした。」
「…」
「貴方がお上り遊ばす以前にも縁談はございました。ですが…全てお断りしております。私は」
「初めて登城した折、弱き童はいらぬと貴方は仰いました」
「は?」
「一月後。私が餌付けしていた鳥たちは姦しいの一言で貴方の剣の露と成り果てました」
「何、を」
「箏は今でこそお聞きなられますが、あの折は騒音と」
「???」
「いちいち言い始めるときりがありません。が、私自身そうである様に梅の様に命を落とした者もおりまする。私がそこにあるが故に傷付き悲しみ命を落とすものがあの城に上がってどれ程居たか」
「奥」
「貴方にはわかりますまい」
「…」
「貴方の真心は私にとって凶器に等しい。」
「は?」
「その言には真実が無い」
「…」
「お気に召さぬなら切って捨ててください。あの時の様に、私を蹂躙し殺そうとした時の様に」
「殺そうとなど!」
「怠惰で下種な女」
「!」
「貴方の中の私の位置がよくわかりました」
「ちがっ」
「私を殺してくださいませ」
「っ!それは」
「生きていても何も楽しくは無かった。笑う事も泣く事も煩わしいと貴方がおっしゃったのですから」
「奥」
「松」
「お約束で御座います」
「だが」
「今は」
「…わかった。だが奥」
「…はい」
「私は貴方以外と添う気は無い。側も解散させた。」
「は?」
「…また来る」









浅葱色









「…刑部」
「全て真実よな」
「私は嫌われていたのだな」
「まぁ。致し方無い話よな」
「…」
「と言ったところで離れる事も無理ならば致し方あるまいに」
「ああ」こ

拍手

瓶覗色

「刑部」
「やれ、三成」
「奥は?」
「今寝ているらしいが当分は動かぬとの事。」
「そう、か」
「真逆ぬしとて手練た女と処女を同列に扱うとは…子の事は?」
「聞いた」
「…三成」
「なんだ?」
「奥を大阪にもどしゃれ」
「何?!」
「豊臣の後継者として子を成すのが責務よ。」
「故に奥を大阪に戻せと?くだらん」
「しかし太閤の命とすれば如何する」
「…」
「我とて不本意よ。だがよくよく考えならしゃれ」
「私は」
「ん?」
「あの男が私の知らぬ奥を知っているかと思うと…どうすることもできなかった。声、表情。私の知らぬ奥を知っていることに苛立ちを感じた。だが…全ては私の短慮のせいだ」
「…」
「奥には笑っていてもらいたい。普通とは言えないが夫婦としてあの方を幸せにしたい。時をいくら費やしてもいい。私はあの方と共にありたいのだと再認識した」
「左様か」
「例え秀吉様の命としても其れだけは嘆願する。あれ以外いらん。もし離縁するのであれば今後一切誰とも添うつもりはない。側も。私には必要ない。侍女も一新する。」
「あいわかった」
「…怒らんのか?」
「ぬしが決めたことよ。我は従うだけよの」
「すまない」







瓶覗色







「奥方様」
「?」
「殿が来ていますが」
「と、のが」
「如何致しますか?」
「まだ身支度もできていませんので…お許し下さいと」
「では御簾越しでよろしいでしょう」
「梅?!」
「お加減が悪くなるとすぐにお帰り遊ばすとのことですから…いつまでもこのままという訳には参りませんよ」

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