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変換なしの雑食夢

ran

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浅黄色

「ほら彼方に」
「まあ、ご覧ください」
「お美しいわ」
「姫様、今舞われておられるのは石田様ですよ」
「折角ですのに。御座に上がられればようございましょうに」
「ああ。本に美しい。徳川様と二人並ぶと光君と中将。匂と薫と思わんばかりでございます。」
「本当に」
「徳川様はまだしも、石田様は激しい御気性。もう少し柔和なれば」
「いいえあの清廉潔白な御性根が美しいのではありませぬか。例えるなれば」
「雪に咲く梅ですわ」



成れば徳川様は向日葵のような柔和さがあられますなぁと言った瞬間私は視線を感じる。不意に顔をそちらに向けるといつの間にか舞終わっていた治部がこちらを見ている。
自然、目が会う。

背けてしまったのは私か治部か。



あの目が私は恐ろしい。その気質でも言動でもなくあの純心な瞳が。私のうちにある全てを暴いてしまいそうで。弱く実のない私の内を見透かされていそうで。






「やれ、三成」
「なんだ刑部」
「あの様な目で姫を見りゃるな」
「…」
「主の恋慕の情は姫にとっては重く恐ろしいものになってしまっては元も子もない。少しは遠慮しりゃれ」
「ふん」
「ほれ、能を見れば良かろう?何処ぞの倅の舞よ。ぬしの後では見栄えせぬが」
「知らん。見るに能わんものを見る程の苦痛はない。刑部。貴様も同じだろう」
「左様か。我もつまらぬと思っておったが姫の侍女たちは違う様よな。ぬしの舞の時もちと騒がしい」
「…姫様もお困りの様だ。彼の方の侍女ではなくば!この場で真っ二つに」
「これ、よさぬか」
「だが…半兵衛様?」




「姫。君の侍女達は少し黙って見れないのかな?」
「申し訳ございません。侍女かしらの私の失態でございます。」
「君は今来たところだろう?姫の監督不行き届きだ」
「申し訳ございません。新沼も。治部も。余りにも優雅で侍女達も今業平今源氏と浮き足立ってしまい…さぞやご不快でございましたでしょう。」
「いえ!その様な。其れに某の拙い舞をそう評して頂きまして逆に有難く。」
「ありがとうございます。新沼。治部ももうしわけなくおもいます」
「いえ、姫様の性ではございません!」
「そう言っていただくと私の心も軽くなります。兄上、半兵衛」
「んー…そうだね。二人が良いというのならいいと良いよと言ってあげたいけど。秀吉」
「場に礼を欠くのは無礼としれ。姫」
「はい」
「貴様も何か一座持て」
「私もですか?舞に楽。どちらがよろしいでしょうか?」
「では舞で」
「僕は君の静が見たいなぁ」
「では支度をして参ります」






そう言って手をつくと半兵衛が嫌がらないのと聞いてくるのでこれ以上の非礼を重ねるるのは私の本意ではないと返す。苦笑されたものの致し方ない。私はそういう風にしか生きてこれないのだから。
侍女達を窘めればよかったと後悔してももう遅い。後は侍女頭に任せておこうと思案して席を離れる。此処で舞うのも今日で終だろう。嫁げばそう簡単には帰ってこれなくなるだろうから。








浅黄色






「…三成」
「見たか、刑部。さすが姫様。あの様に美しく舞われるお方はこの世に二人とおられん。」
「ひひひ」
「どうかしたか」
「いや、何。ぬしは気づかなんだよの。舞を見る間の顔が、まるで恋人を見りゃる其れよ」
「何を」
「嫉妬も含まれておったのでな。ちと禍々しい」
「…」
「行かぬのか?」
「いや」
「?如何した?ぬしらしくない」
「謝罪を頂いたのだ。」
「姫にか?」
「ああ。この婚約は姫にとって苦痛なのだろうか、と」
「本当に主らしくない」
「姫様には健やかに。少しでも笑みを深く美しいものにしていただきたい。私が目障りなのなら」
「いや。」
「側を同時にあげると。三国一の美人だそうだ。姫以外…いるものか」

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