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変換なしの雑食夢

ran

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薔薇色

「奥が大阪に帰りゃれるそうだ」
「何?!」
「ぬしの余所余所しさと花街の馴染みとがあいまって嫌になったそうよ」
「?!」
「刑部様」
「三成の不器用さもいかぬがぬしの言わなささもよろしくない。決裂するもしないも話しあってからにしりゃれ。何我もここにおるでな。このあいだの様な事はさせぬ」
「…殿」
「馴染みなどはいない。ただ、貴方を眼前に邪な事を考えてはならないので…」
「っ」
「そのだ。あなたを傷つけたのだからもう二度と触れぬつもりでいる。…貴方がいいというまでは。だが一度の触れてしまったので他の女を触れたいとは思わないのだが…浅ましい限りで言いたくはなかった」
「???」
「要約すると一度ぬしを抱いたので他の女は抱きたくないが、抱いて適度に欲を出さぬとまた理性が切れて傷つけるのが恐ろしいのだと言っている」
「え?!」
「ひひひ。そう言う初心なところがいかぬのだろう」
「…貴方を守ると誓ったのに。」
「目を合わせられぬもその所為よな」
「刑部!」
「言わず去られるよりよかろう」
「ぐ…ああそうだ!私は貴方をお慕いしている。抱きたい欲と守りたい欲が拮抗しているのが事実なのだ。ふいに目を合わせてしまったら…理性が保てる自信がない」
「…」
「奥」
「はい」
「私は貴方が如何思おうが貴方の事を慕っています。」
「?!」
「愛でて寄り添い、生涯共に生きていただきたい」
「あ、の」
「もう我は邪魔よの」
「手を、離して。刑部様!」
「ぬしも素直にならしゃれ。いい加減面倒よなぁ」
「奥」
「…」
「私は貴方にとって酷い男である事至らないところばかりなのもわかっている。だからこそ言ってほしい。私は貴方を愛している。笑っていて欲しい。何か私に至らぬ点はないか」
「…私は」
「…」
「弱き女です。貴方にとって何の役にもたちはいたしませぬ。今、私が離れ、強き女を室に入れるのなれば」
「私の室は貴方以外にいない」
「ですが」
「妹御なれば断っていました。私には戦さ場にかける両腕があります。戦さ場をかける室が欲しいのではないのです。貴方が、」
「御前様?」
「貴方が私の室になってくださればとどれほど願ったか…室になった折どれほど嬉しかったか」
「っ」
「言ってくれ貴方の望みを」
「望み?」
「生きている事が辛く悲しいものではなく、楽しいもので…あの、笑みを」
「…」
「奥」
「私は」
「はい」
「家族が欲しいのです。半兵衛に言われた豊臣の為の縁ではなくて…立場上無理な事とは知っています。貴方にとって家族など必要ないともわかっています」
「…」
「私は弱いです。捨て石に人形にならない事もわかっています。けれども。縁あって夫婦になったのです。愛されたいし愛したいと…殿?」
「…」
「申し訳ありません。私みたいなものが望んではならない事を」
「奥!」
「っ」
「私は貴方の理想の夫ではないかもしれません。短慮で貴方を傷つけてばかりです。ですが、貴方の家族になりたい切に願っています」
「は」
「秀吉様とも半兵衛様とも違う。これは弱さなのかもしれない。お二人の意に反するかもしれませんが私も貴方と同じことを願っています」
「貴方様も兄上が好きでしょう?」
「畏怖、忠誠の念であれば。それは一兵卒としてです」
「一兵卒」
「一人の男としては貴方以外は愛していません」
「なら」
「?」
「兄上や半兵衛に向ける視線の一雫を私には下さいますか」
「はい」
「っ」
「愛しています。嘘偽りなく。私の唯一の妻になってくれ」
「…はい」










薔薇色











「…」
「御前様?」
「嘘偽りなく?」
「貴方様がそうであるならば」
「奥!」
「きゃ」
「此の暖かさをどれほど欲していたか」
「っ」
「耳まで赤い」
「私は慣れておりませんので」
「…震えているな。やはり怖いか?」
「少し」
「…」
「ですが離れるのは嫌です」
「っ」
「御前様?」

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