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変換なしの雑食夢

ran

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basara 片倉

「また当分来れない」
「そっちのほうがいいわ。」
「あ?」
「貴方が来るおかげで私の仕事が滞るのよ」
「そりゃ」
「その分美味しい野菜があるから良いんだけど」
「家中のものに伝えている。花と供物は切らさないでやってほしい」
「わかったって」
「あと」
「煩いわね!こっちは本職よ!供養に関して貴方が私に勝てるとお思い?」
「そりゃ…ん?」
「あら。起きたのね。」
「赤ん坊か。」
「ええ。昨日貴方が帰った後産まれたのよ。お母上が其の儘…だからうちで育てるのよ」
「そうか…」
「小十郎ちゃん?」
「あいつが生きていたら俺にも居たのにな」
「そう、ね」
「あれが歩ける程度には帰ってくる。時折手紙を送る。墓前に置いてくれ。」
「わかった」




荊棘と泣き声

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basara 片倉

「呆れた。また来たの?」
「畑の帰りだ。」
「昨日もその前も来たでしょ?」
「野菜だ。お供え物だ」
「彼女はもういないのよ。」
「…知っている。此れを」
「花?」
「墓参りがしてぇ」
「前も言った通り。尼寺の中だからあなたはここまでしか入れないの。」
「此処からは」
「見えないわ。でも方向は彼方。」
「そうか」



そう言って静かに手を合わせるとお高は笑う。それを睨むものの勝てる気がしない。


「本当に好きだったのね。」
「ああ」
「素直に言えばよかったのよ。」
「何度も結婚を申し込んではいた。」
「…へぇ」
「それもあいつにしたら地獄だったのかもしれねぇな。」
「そうかもね。」
「おい」
「女遊びも激しかったらしいし」
「なんで知ってんだよ。」
「地獄耳なの」
「…」
「結婚、ねぇ」

あなたの最高の愛情表現はそれなのかしらと言われて苦笑してしまう。流石に人の一番いてぇところを突くのがうまい女だ



荊棘の墓参り

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basara 片倉

「あら。片倉様。お久しゅう。どうしましたか?この様な城外の寺院まで」
「白々しい台詞はいい。あんたがここに入った時から知ってる者からすりゃそんな嘘くさい台詞を聞きたくてここにきているわけじゃねぇ。」
「では何の御用?」
「荷物を何故送り返してきた」
「必要ないからね。」
「…あいつに」
「彼女に必要ないという事よ。」


ぴりりと身体を走るそれを感じながらどういう事だというとお高は鼻で笑う。


「お高」
「昔の名前で呼ばないで。今は梅高よ。小十郎ちゃん」
「あいつがテメェんとこに入ると聞いた時ゾッとしたが。案の定だ。早くあいつを連れてきてくれ。」
「幼馴染として言ってあげるけど。嫌われて当然ね。私なら刺し殺してるわ」
「あぁ?!」
「その顔で惚れたはったしてどうするの?馬鹿じゃない?」
「てめぇ!」
「優しくしてやれって誰も言わなかったの?あの子がどんな心地で10年耐え忍んでいたのか。わからないの?」
「…」
「慈しんで初めて人は長い間共に居られるのよ。それをしないのが武人の誉れならそんな者と結婚したくないわね。首に縄をつけて無理矢理処刑場に連れて行かれてるみたい。牛馬の方がもっとまともな扱いしてくれているわ。小十郎ちゃんは虐げて苦しめて無理矢理、手篭めにして。そういう夫婦になりたかったの?」
「違う」
「貴方がどういうつもりか知らないけど。あの子はそう感じていたわ。きっと他人が見ても。あの子を不幸にして喜んでいたのね。」
「お高。」
「でもそれはお終いよ。」


そう言ってお高は涙を流す。ぎょっとした。俺が知っているこいつは死んでも泣くような女ではなかったはずだ。
懐から白い紙を取り出してくる。



一房の髪。




「なんの冗談だ」
「あの後すぐに病を得て…だから彼女の贈り物はいらないの。そう、彼女が言っていたから」
「…信じねぇぞ」
「事実は事実よ。大体喜多様も側室って…可哀想に。」
「…」
「だからもうここに来ても意味はないわ。お帰りなさい。」
「おい。」
「後のことは私が責任をもって」
「そうじゃねぇ。」
「…」
「本当か?」
「反省なさい」





大菊と荊棘

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basara 片倉

「来られましたか」
「はい。」
「本当に…」
「ご迷惑でございましたか?」
「貴方の事ではありませぬよ。城の方から阻止の書状がたんと届いて。笑っていたのです」
「笑われたのですか?」
「ええ。貴方のような良き人1人止めることができないなんて。武には長けておいででも人の心を繋ぎとめられない武将など私から言わせれば面白いものです。」
「そうでございますか。」
「貴方は何ひとつ心配せずに。ここにいればいいのですから。」
「はい」


そういうと住職はくすりと笑う。笑って、茶を飲むとにしてもと言葉を続ける。



「何時から嫌いなのかしら?」
「え?」
「片倉様のことです。」
「…」
「?」
「私が悪いのですが、幼子の折城外へ視察に行く大人たちは何かしら城内の子供にお土産を渡していたのです。人によっては菓子だったり、花だったり。話しだったりと色々ございました。今は亡き大殿はよく菓子を下さいました。子供心にすごく嬉しかったのを今でも覚えています。量は差があれど必ず皆に行き届くようにして下さりました。ただ」
「片倉様はして下さらなかったの?」
「…ある日見かねた友が私の分を言ってくれました。何故やらないかと。他の者は必ずくれると。すると片倉様、見る見る間にお怒りになってやらぬと叫ばれたのです。恐ろしいやら悲しいやらで泣いてしまって。すると泣くなとまた一喝されました。」
「あらあら」
「それからはどんな事があろうとも帰られた時は席を外しました。片倉様、凄く笛がお上手で。一度殿にお吹き遊ばしているさい、所用でお伺いした事が有るのです。私にお気付きになった途端」
「弾かなかったのね。」
「いくら殿がご所望しても。居なくなれば再び吹いていたそうです。」
「そう。」


前髪を上げてからは御存知の通りいえば難しい顔になる。そして立ち上がって文を書き始めると尼僧を呼ぶ。


「い、如何致しましたか?」
「話しを聞いて腹が立ちました。実はね、貴方が困らない様にと色々な方から贈り物が届いていましたの。ですが、全て送り返します。」
「は?」
「向こう言い分を加味しつつも、と思いましたがこんな面倒な男とは早々に手を切るのが一番だわ。」
「…」
「裕福とまで無理でも安心なさい。私がぎゃふんと言わしてあげましょう」
「…愉しんでいらっしゃてませんか?」
「ふふふ」



企む大菊と出てきた野菊

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basara 片倉

「意外としつこいですね。」
「…」
「知りませんでした。」
「其のだ。」
「今日はお話がありまして。喜多様ももう少しで参られます。」
「話?」
「…」

そういってついと外を見る。チラチラと雪が降り始めて庭の緑を消していく。私は月が変わる前に此処を出て行くのだ。尼寺に入る予定だった。ただ些か事情が変わったのだ。尼としては入れない。最初は寄宿人という形で入るととなる。其の事情に関係している眼前の男とはもう二度と会うつもりがなかったのに。


「おい」
「何か?」
「顔色が良くねぇ。」
「貴方様と一緒にいるからです」
「…そうじゃねぇ。そう言う意味じゃなくてだな。仕事してても辛そうだから。」
「そうですか?」
「無理をするな。体が辛かったら次ぎの間で寛いでいればいい。姉上が来たら」
「又、魔が入るといけませんから。結構です」
「っ」


そう言って戸外を見る。迎えの通路に喜多様の影が見えるのでホッとしているといつの間にか距離を縮めていた片倉様が眼前にいらっしゃって喉が鳴る。


「熱はねぇな」
「やめてください」
「だが」
「小十郎!貴方また何をしようと!」
「姉上!?彼女の顔色が良くありませんでしたから」
「あら。本当に」
「大丈夫です。」


ならと言いながら上座に座る喜多様を見て片倉様も席に戻る。もう少しねという喜多様に寂しさを覚えつつも私は静かにうなづく。



「あと10日もありませんね。」
「喜多様には両親と死別した私に一から勉学に礼儀作法にと教えていただき、どの様な言葉を並べても…」
「いいのですよ。貴方が私の跡を継いでくれると思いましたが…仕方がありません。」
「それと」
「?」
「今日はそれだけではないのです。」
「?」
「出家の予定でございましたが、何年かは下女として働く予定です。」
「は?」
「如何言う事だ」
「すぐに分かる事ですから。」
「「?」」


赤子が出来ましたと言って私は2人を見る。何か言いそうな喜多様を制して私は首を横に振る。喜多様の言いたい事ではないのです。といえば名前を叫ばれる。



「何を言っているのですか。その子は片倉の」
「喜多様」
「貴方も正室は無理としても側として」
「あ、姉上?!私は彼女と結婚するのなら室として」
「家柄が釣り合わないでしょ?大体…貴方も少しは考えて話しなさい!」
「いくら姉上といえども!」
「分かっています。」
「「!」」
「片倉様に言われると思いましたが…そんな事露にも思っておりませんのでご安心を。片倉様はご自身の事他言無用でお願いしたかったのですが心配無用でございましたね。…私の子として育てる為、ご住職と相談したところ、お寺で一緒に育てて下さる事になりました。ですので数年は下女として働くのです。何より、今までためていた給金もありますから。当分は大丈夫です。ですので」
「…」
「子が生まれましても、誰に何と言われようとも。片倉様には関係のない事と。喜多様もその様にお考えください。」
「あ、のね。そういうつもりではないのよ。」
「いいえ。寄る辺のない私が片倉様と夫婦に成ろうとなど考えた事も御ざいませんので。喜多様安心下さい。先に言いました通り御恩深い貴方様にご迷惑をかけるつもりなど毛頭ございません。」
「聞いてちょうだい」


いいえと言って私は頭を垂れる。ぽつりと落ちる涙を面前の2人に晒すなど惨めすぎる。片倉様は嫌いだった。怖かった。私を心底嫌っておいでだったから。ただ、喜多様は違っていたのだ。姉の様に慕っていたのだから。それも如何に一方通行かよくわかった。
袖で涙を拭う。できるだけ美しく笑うのだ。


「では無用な事でお呼び出しして申し訳ございません。これにて」
「まっ」




パタンと閉じた障子。溢れそうな涙を堪えて歩くのだった。




嘆く野菊

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