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変換なしの雑食夢

ran

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野菊と荊棘

「hey!弥左衛門。何してんだぁ?こんな処で」
「殿!!!」
「ああ、いいって。座っていろ。甘いものでも食うか?」
「…」
「ok。母上には俺からいう」
「あの…」
「小十郎は母上が言えばお咎めはないだろ?」
「ですが」
「口開けろ」
「っ」
「ガキは餓鬼らしくしてればいいんだ」




そう言って横に座ると弥左衛門がにこりと笑って礼を言う。しつけが行き届きすぎだろ?と思いながら頭を撫でてやると嬉しそうに笑うものだから可愛くていけない。成美がいくら年下といっても1年違いなためこう言った弟分には恵まれなかったなと思う。



「で、母上は?」
「寝ております」
「…ha?おい待て。あいつが?」
「今日は体調が悪かったそうで…気がつけなかった私がいけないのです」
「いや、そうじゃなくてだな。大体あいつはあの喜多ですら欺いて仕事するやつだったからな…普通はわからないぞ」
「ですが父上が直ぐにお気づきになられて。」
「…そうか」
「?」
「寝させているんだな」
「はい」
「…」
「殿?」
「hey弥左衛門。」
「はい」
「城下にいかねぇか?」
「は?」
「美味い甘味どころがある。行くか?」



ですがやあのと言いながら目はキラキラしてやがると笑って抱きかかえる。叱られるのは俺だから安心しなといえば嬉しそうにギュウギュウと抱きついてくるのだから可愛くて仕方がない。
成美あたりを生贄にしてと思いながら歩いていると篠笛の音が聞こえる。きっと小十郎のやつだろうと執務室に目をやれば、傍に彼女を寝させて笛を吹いているらしい。
鬼の霍乱だなと笑いながら、弥左衛門を見る。嬉しそうに笑うので思わず頬が緩んでしまうのだった



小菊と独眼竜




「…」
「如何致しました?」
「いや、政宗様が逃げられたらしい。」
「あら。」
「弥左衛門を連れて城下に行かれるのだろう」
「ふふふ。弟分が出来てお喜びなのはあの方ですね。」
「…」
「小十郎様?」
「ん」
「私の事は御案じ召されますな。」
「いや、いい」
「ですが」



そういうと小十郎様は頬を撫でて静かに笑う。
ああ、いつ言おうかしらと思案しながらその手に甘えるのだった。

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野菊と荊棘

香炉を見てそっと近ずく。寝転ぶ片倉様を見て横に腰掛ける。
寝たのだろうと彼人の髪を撫でる。馬鹿げた。でもそれ以上に辛い時間だった。死者には声はいらないと自ら決めたのにと自重したところで変わりはしない。声を出して言いたいこともたくさんあった。でも言えるわけがない。何より、こんな茶番。今日で終いだ。


「貴方がただの嫌な殿方でしたらどれほどに楽だったでしょうか?」



眠る姿はあどけないと思う。眉間にしわを寄せて威嚇するような顔しか見たことのない私にとってこの顔は別人のようだと思う。それ程、穏やかで何処と無く息子に似ている。



「息子は穏やかな優しい子に育ちましたが、矢張り貴方の子です。あの歳で漢詩を諳んじておりますし、木刀もお気に入りのおもちゃです。」



ふふふ笑って頬を撫でる。そろそろ退室したほうがいいだろう。院主様にお声をかけないとと思った瞬間、腕を取られる。



時間が、止まったかと思った。



私の腕を掴んでいるのは間違いなく片倉様で頭を抱えて起き上がって居るのだから。まだこちらを見ていないその目はきっと怒りに満ちているのだろうと、ぞくりとする。




「っち。お高のやつ。なに混ぜやがった…」
「…」
「着付け薬を仕込んでいて正解だった」




そう言って眉間を押すと顔を上げる。
刀をお持ちだったはずだ。最悪の場合を考えなくてはならない。あの子は逃がしてもらわなくてはならないと思案して眼前の人を見ると、怒りも何もない。片倉様の顔で私は唖然とする。




「…本当に」
「…」
「生きているんだな」
「…」
「…っ」
「え?」




良かったと絞り出された声とともに静かに抱きしめられる。
離してくださいといえば無理だと言われ、髪をすかれるものだからどうすればいいのか硬直してしまう。どうすればいいのだろうかと思いながら背中に腕を回すとびくりと体を震わされたので思わず手を引っ込めようとすればそのままがいいとの事。如何したのだろうとおずおずと背にまわす。



「いや、な。」
「はい」
「まさか手を回してくれるとは思いもしなかったから」
「すいません」
「謝って欲しいわけじゃねぇ。喜んでいるだけだ」
「…」
「あったけぇ。」
「はい」
「生きてるんだな」
「…」
「嬉しい」
「は?」
「?」
「お怒りではないのですか?」
「…怒るも何も。この数年お前さんの事をずっと考えてた。生きていたらどんなに幸せだろうと。出なけりゃあの女の胡散臭い香なんてつかわねぇ」
「私は」
「死んでいようがお前さんを見た瞬間どんなに嬉しかったか。たった数度の逢瀬でもいい。…月に一度の満月がどれ程楽しみだったか」
「っ」
「…連れて帰りてぇなぁ。」
「貴方が」
「ん?」
「貴方があの時のまま、最低な人ならどれだけ楽だったか」
「…」
「貴方が、其の儘ならここであの子の成長を見届けて死んで行くつもりでしたのに。何で、」
「すまねぇ」
「優しくするのですか?あの文なんて。私は如何すればいいのですか?」
「最初から慈しめば良かった」
「慈悲も慈愛も。幼き時に欲しかった貴方が眼前に現れたら、如何贖えばいいのですか?」
「贖わなくていい。もう十分だ」
「っ幼い砌、貴方に恋をしていたのですよ。」
「…両思いだったってわけだ」
「なのに意地悪ばかり私にして」
「すまない」
「手酷く抱いて、変な責任で、」
「泣くな。本当にすまねぇ。ただ、抱いた時は」
「?」
「後悔はしなかった。いや、そんな顔で見ないでくれ。手酷く抱きたかったんじゃねぇ。そのだ。箍が外れてだな」
「そんなかわいいものじゃなかったです!」
「な、何年我慢してたと思ってんだ。これで俺のものにできると思ったのにお前さんは…いや、普通そうなるんだが。子が出来た時本気で喜んでだな。婚儀の支度をと思ったら」
「…側と言われましたが」
「あれは!姉上が。何より、姉上も落ち込まれてだな」
「…」
「大嫌いと言われるわ出家されるわ。挙げ句の果てには…死んだと」
「あんまりにも貴方がしつこくて」
「どうせお高の入れ知恵だろうが。すごくだ」
「?」
「堪えた」
「…」
「頼む。後生だ。」
「片倉様?」
「妻になってくれ」




きゅと抱きしめられてそう言われる。
頑なだった心を作ったのがこの御人ならこの心を溶かしたのもまた、この人だ。こちらにいる間じゅう日参し、戦の最中は手紙を送ってきてくれた。事の次第を明かしても怒りもせず涙を流してくれたのは間違い無く、此の方なのだ




「実は」
「あ?」
「もう他に相手が」
「!」
(絶句したの初めて見た)
「誰だ…」
「は?」
「ふふふふ」
「え?!じょ、冗談でございます」
「あ?!」
「いえ、あの。本当にあの、片倉様ですか?」
「…どのかしらねぇが。片倉は間違いなく俺だ」
「呆れた」
「頼むからそういう冗談はやめてくれ」
「はい」
「…わかっているのか?」
「これまでの仕返しはしないとと」
「もう十分だろう」
「それもそうでございますね」
「なぁ」
「はい」
「答えをくれ」
「おいおいに」
「…」
「怒ってもダメです。家柄も考えて」
「そういう外堀は全部俺がする」
「…」
「もう着の身着のままでいい。子供を連れて帰るぞ」
「…はい」
「…」
「片倉様?」
「はいと言ったな」
「え、ええ。」
「妻に、なるんだな」
「はぁ」
「っ!!!」
「えっ?!痛いです!!!」




寄り添う野菊と荊棘





「…父上様ですか?」
「ああ」
「わっ」
「今まですまなかった」
「っ」
「あらあら泣かないの。父上様にお会いできたのですから。」
「これからは一緒にいられますか?」
「ああ」
「っ」
「泣くな。……お前のガキの頃によく似てる」
「そうですか?」
「ああ。よしお高の礼はまたあとで」
「はいはい」
「院主様」
「また何かあったら坊とともに」
「いらん事いうな!」
「…院主様と父上様は知り合いなのですか?」
「「親戚だ」」
「通りで」
「?どういう意味だ」
「笑い方が良く似てらっしゃいます」
「「…」」
「嫌なものを見る目つきも」

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basara 片倉

「聞きたかったんだが」
「?」
「俺たちの子供は如何してる?」
「…」
「男か?」
「…」
「そうか。生まれてきていたら、立派な後継だったな。生きていたら3つくらいか?やんちゃ盛りだ。」
「…」
「…」
「?」
「いや、まさか俺にそんな顔をするとは」
「…」
「すまん。つい、嬉しくてだな」
「…」
「生きている間にこういう話ができていれば、よかったのにな」
「…」
「そういう顔をしないでくれ。やはり、笑った顔がよく似合う。」



そういうと彼女は困ったような顔をして手を取る。そして、掌につらつらと文字を綴る。


『解りますか?』
「ああ」
『沢山の供物、ありがとうございました。』
「届いたか?」
『貴方は、何故。私なのですが?』
「何故か。お前にしたら迷惑な話だな。」
「…」
「一言でいや、一目惚れだ。」
「?!」
「そう言ってただろう?」
『貴方ほどの方が…』
「どれほどの物かしらねぇがな。そうらしい」
『なら、一層。』
「ん?」
『嫌な殿方のままでいて欲しかった』
「お、い?」
『時間のようですね。』
「待て!」
『ゆっくりお休み下さい』




触れる野菊





「っ!」
「…流石というか。あと1日寝ていても不思議ないのに」
「あ?!」
「そろそろ見切りつけなさいな」
「…聞きたいことがある」
「何?」
「本当にあいつは」
「ふふふ」
「おい!」
「まぁ頑張って!」
「…」

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basara 片倉

「反魂香?」
「会えるかどうか分からないけど。試してみる?」
「…ああ」
「なら次の満月。」


その日、通された部屋は静かで満月が静かに輝いている。
ふわりと薫香が其れなのだろうかと思いながら庭を見る。



ぼうっと光る其れを見かけた時条件反射で刀を持つ。
敵が、此処に迷い込んだことはないだろう。悲しいサガだと思いながら誰だと尋ねると、深淵の底から光とともに白いモノが浮き出てくる。ぞくりとする。哀しそうに立っているのは最後に見た彼女の姿だ。



「…」
「まっ!違う。」
「…」
「何か迷い込んだのかと思っただけだ」
「…」



そう言えばほうっとため息をつくものの近づくことはない。その距離が焦れったくてちかっいて良いかと尋ねる。無言で頭を横に降る。まぁそりゃそうか



「嫌われてたな。」
「…」
「…声が出ないのか?」
「…」
「そうか。お前さんに会えただけで十分だ。…愛してる」
「…」
「8歳のガキのお前を見た瞬間、こいつだと思ったのだがな。なんせ若かった。幼女趣味なんて頂けねぇって思ってたから冷たく当たっちまっていた。」
「…」
「なのにお前さんはどんどん綺麗になって行きやがるし。如何したものかと本気で考えた時にさっきの言葉を言えばよかったな。莫迦みてぇにお前が好きなのにガキみてぇに…すまねぇ。お前の言う通りだった」
「…」
「死んだと聞いた瞬間、頭ん中が真っ白になったよ。いつかわかってもらえると思っていたのが愚かだったと。姉上もあれから気落ちされてな。」
「…」
「お前の不信感の絶望も何もかも嫌なことは俺が与えてしまっていたな。もし、来世巡り会えたら、喜びと幸せだけでお前の人生を満たしてやりたい。」
「…」
「困った顔をしているな。俺が知っているのはそれと泣き顔と絶望に満ちた顔だけだな。」
「…」
「ああ、すまねぇ。」
「…」
「死んでもお前の手は暖かいな」
「…」
「触れてくれるか?嬉しいな。」
「…」
「ああ、お前の声が、きき、てぇ」





野菊と荊棘と反魂香






「あら、いい夢観れた?」
「目覚めがテメェじゃなければな」
「あの子には会えたのね」
「…まだ嫌われてるみてぇだがな」
「それでも会いたいんでしょう?」
「まだあるのか?」
「あと2回。まぁでも城は今頃びっくりしていることでしょうよ」
「?」
「貴方あのまま2日間寝てたのよ。」
「は?」
「覚悟があったらまたいらっしゃいな」
「次の満月の日にな」

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basara 片倉

「住職様」
「ん?」
「片倉様御家中の方が」
「花と供物ね。後…すごい量の手紙ね。」
「はい」
「馬鹿な男ね」
「如何致しましょうか?」
「いつも通り。手紙も」
「はい」


もう少し賢い男かと思ったら、昔変わらないわねと笑ってしまう。
最初からこうしておけば拗れる事も無かっただろうにと思いながら手紙の束に目をやる。読まれるわけないのに律儀に書かれたそれの中身を私は知らない。贖罪か。それすら無意味だと言うのに。





荊棘の手紙


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