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変換なしの雑食夢

ran

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喜ぶ三成

「塩梅はいかがか?」
「奥方様はお会いできる状況ではございません。どうぞお許しくださいませ」
「昨日もそう言っておった。が、赤子の乳はやれておる様よ。実際」
「命を削っておいでです」
「は?」
「赤子が泣けば起きられるのです。それ以外はずっと…」
「…」
「奥方様は…もう」
「何を言う!なれば三成が如何なろうか、主はわかっておるのか!」
「ですが…難産の末、後産も何とかという現状。水を飲むのがやっとの状況でございます。」
「ぬ…」
「あのまま亡くなっていてもおかしくなかったのです。現に…赤子の声で生き返った様なもでございます。」
「聞いた。だが…」
「お寂しそうになさっておいででした。何も言わず、何も言われず。いるのかいないのかわからない様な人生だったと。」
「左様か」
「殿は…」
「あれは今は太閤と賢人の相手をしている。子が出来て喜んでいるだけよ。」
「では知らないのですね。」
「ああ」
「なんと酷な」
「言うてくれるな。」
「ですが…いいえ。出過ぎた真似をいたしました。失礼いたします。」
「奥に目どおりが叶うなら。頼んではもらえないか?」
「…」
「頼む」
「一応、聞いてみましょう。が、期待なさらないでください」





そう言って部屋に入ると珍しく奥方様の声が聞こえる。穏やかな声。ただ、小さくて弱々しい。聞いていましたよと言って笑うと刑部様を中に入れる様におっしゃられる。





「奥」
「ご無礼を。」
「お声が出にくいのです。どうぞ側に」
「ああ。ああ。なんという事よ」
「ふふふ。この子の名は決まりましたか?」
「また三成がいいに来よう。その時に」
「いいえ、刑部様。お教え下さい。その時まで私が私であれるかわかりませんから」
「…佐吉にする」
「殿の幼名ですか。」
「ああ」
「そう。佐吉。貴方は佐吉と言うのですよ」
「…奥」
「ああ、これで思い残すことも無くなりました」
「は?」
「この子は乳母に。もう私の乳は出ていない様です。良い乳母を見つけてきております。」
「ま、またしゃれ。」
「私の仕事は終えましたよ。刑部殿。願わくば文の一つも書きたかったのですが無理の様です。」
「何をいわしゃる。主はまだ、」
「豊臣の礎となり、叔父の血を尽かさず旦那様と交わらさせ。男の子を産むこと。それが私の」
「違う違う。主は子を養育させ、三成と睦まじく」
「殿にも太閤殿下にも半兵衛にも言わないでくださいませ」
「奥」
「あの方達にとって私は一つの媒体でございます。死して憂いがなくとも…御不快にだけはなりたくないのです」
「媒体などではない!」
「刑部様」
「そのような事あるはずがない」
「あの後より一度も旦那様にお会いしておりません」
「…」
「太閤殿下も半兵衛も。佐吉の事を連れて行き、それで終い」
「それは」
「そういうものでしょう。そういうものです。だから、私は」
「奥よ」
「誰にも看取られるる事なく、死にたいのです」
「…」
「嗚呼、眠い。」
「奥?」
「すぅ…」
「?!」





驚く刑部様に御安心下さいませ。お眠り遊ばせただけですと言う。
きっと近いうちに現実になってしまう悲劇を目の当たりにしてこの人は何を思うのだろうかと思いながら奥方様に布団をかけるのだった。









喜ぶ三成












そうなる日は突然であの日より10日もせぬ内に奥方様はお亡くなりあそばした。本当にお休みになっていらっしゃるようなのに、あの、美しい四肢はやせ衰えておいでで殿方が思うよりひどい状況だった事を如実に伝えてくる。




「お、く」
「…」
「おい、起きろ。なぜだ?何故寝ている…」
「三成」
「起きろ。目を覚ませてくれ。私は!」
「…」
「貴方に言いたい事が沢山あったのだ。それを!何一つ伝えていない!!!」
「三成!」
「これは夢か!何故こんな夢を見る…奥が、私の奥が!!!」
「もうよさぬか!」
「刑部!!!」
「奥は死んだ。子を産むのに耐えれぬほどの奥が子を成した事すら奇跡に近い!主は知っていたはずだ。」
「だが!奥は秀吉様と」
「奥は太閤ではない。ただの人間よ。酷な事よ。」
「…」
「赤子は唯一の遺児よ。大切にしりゃれ」
「…っ!うう」
「三成」
「あああああああ!!!」

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