忍者ブログ
変換なしの雑食夢

ran

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

桜色

「松」
「はい」
「殿の、手紙ですか?」
「はい」
「…」
「なんて書かれていますか?」
「桃の花が咲いたそうです」
「もうそんな時期ですか」
「ええ。その様ですね」
「手紙を読まれるのも苦ではなくなりましたか?」
「…少し」
「左様ですか」
「松?!」
「あの時の字と同じですね」
「きっと同じ祐筆に書かせていらっしゃるのね」
「…」
「?」
「誰か島殿を」
「は?」
「如何かしましたか?」
「いえ。何故…島様を?私はあまり話したありませんが…」
「刑部様は駆け引きに長けた方ですから。尋問は素直な若人がちょうど良いのですよ」
「松」





という事で刑部さんにいらぬ事を言うなと釘を刺され、三成様には禍々しいまでの視線を頂き。不肖島左近。奥方様の御前にいます。が、何故か松様が恐ろしい顔をなさっている。いや、違う。悪巧みを考える刑部さんにそっくりな顔だ。





「今、失礼な事を思っていたでしょう?」
「いやいやいや!そんな恐ろしい事!」
「…ならいいですが。今から訪ね聞く事に素直に答えなさい」
「はひっ」
「でなくば」
「…いくらなんでも女に手をあげるのは無理っすからね」
「何故私が貴方と腕力で話さなくてはならない?」
「へ?」
「もし噓いつわりを申したら」
「私が泣けば良いのですね。松」
「大きな声で島殿のご乱心を告げますれば叩かれたと叫ぶのですよ」
「殺されますって!!!絶対嘘言いません!!!だからそれだけは!!!」




ニヤリと笑ってよろしいという姿は絶対刑部さんに似てる。






「まず、この文は誰が書かれたものか」
「?これは三成様っすよ」
「島様。祐筆では無いのですか?」
「違いますって。あの人箆棒に事務処理能力高くって。誰もついていけないんっすよ。一度怪我の折代筆を頼んだら遅い汚いって暴れて。まぁスラスラ書いちまうし言ってくれないしで石田軍に祐筆はいないっすね。」
「…直筆なのですね」
「大体これは奥方様宛っしょ?すっげえ気を使って書いてるんっすよ。」
「そうなのですか?」
「昔、奥方様が手折った花を嫌った時とか何を口実に手紙を贈ろうかと真剣に考えてたんすよ。あーでも無いこーでも無いって。紙なんかも。秀吉様とか半兵衛様には特別な白い紙っす」
「そう」
「あ、勘違いしてるでしょ?」
「?」
「刑部さんもその白い紙。俺らとかには普通の紙。奥方様だけなんすよね。」
「私だけ?」
「そうっすよ。薄い藤色の特別な紙」
「そういえばいつもこの紙ですね」
「この色。三成様の色なんすよ。」
「え?」
「直ぐに自分とわかる様に。何より、少しでも思い出してもらえる様に。奥方様が姫様の時からずっとこの紙は貴方だけのものなんすよ」
「…」
「すっごく不器用で女の扱いなんて知らない人ですけど奥方様にはずっと笑って欲しいって言ってました。だから嫌われている自分が結婚しても良いのかって考えてはヘタを打ち。戦さ場に行っても奥方様は息災かって心配しては後手に回り。姫様ん時からずっとそんな感じっすね。ベタ惚れなんっすよ。でも失敗続きで自己嫌悪に陥ってるっすね」
「でも」
「まーあんな人だから信じれないのも仕方ないっすけど。」
「…兄上との関係で演じているって事はありませんか?」
「誰がっすか?」
「殿が」
「…もし、三成様が演じる事ができる人ならもっと楽に生きてますよ。奥方様にも上手く言って夫婦円満を装って。他の人との軋轢もなくて。でもそれが出来ないから三成様なんっすよね。」
「…その通りですね」
「ね!」
「島様は本当に殿が好きなのですね」
「はい。いやー本当に奥方様が好きなんっすよ。あ。三成様の話っすよ。踊りを見た後のベタ褒め感とか琴の音が聞こえたらすごく良い顔して聞かれるんっすよ。これは言いたかったんすけどようやく許可頂いたんでお教えします。それに実はっすね」
「?」
「元々奥方様の部屋にって思ってたところは実は三成様の政務室の直ぐ近くで、何かあったらお守りできるのと近くにいたいのとでそこにしたんっすよ。勿論今でも誰にも使わせて無いんですけど。あの風流に無頓着な三成様が奥方様が喜ぶだろうって庭をちゃんと整備してるんっすよ。」
「そうなのですか」
「少しでも過ごしやすい様にって。色々考えてたんっすけど。今はすっごい悩んでます。奥方様を守るって言った自分が傷つけてしまったと。」
「…」
「ああいう人っすから。言葉に出して言ったりしないっすし態度も悪いですけど。確かに奥方様を大切に思ってますよ」
「あの、ですね」
「何っすか?」
「…言いませんか?」
「(きっと横にいるけど気づいてないんだろうな)言わないっす!」
「松」
「(隣に居るけど荒療治で良いか)言いませんよ」
「殿はいつも目を合わしてくれないのです」
「あー…」
「披露宴の時も。皆はそう言ってくださいますが。きっと嫌われているのですね」
「(刑部さん。取り押さえて下さいよ!!!島左近!頑張ります)奥方様は三成様が好きなんっすか?」
「…」
「(そう来たか)私たちだけなのですから。言っておしまいなさい」
「…私が童の折酷い近習の方だと思いました。色々ありましたし。いつも怖い顔をしている様な方で。髪を上げた折半兵衛に許嫁の様なものだと言われた時どうしようかと思いましたもの。鬼に嫁ぐ様な心地で」
「(絶体いま大変なことになってるわ)へ、へー」
「ですが」
「?」
「…一度微笑まれたのを見てしまって」
「あの、三成様が?!」
「人違いでは?」
「私は皆様の様に身体能力が高くありませんので…何か折縁から落ちそうになった事がありました。髪を上げた後直ぐのことです。すごく怒られたのですが…怪我がなくよかったと不意に微笑まれて。あれからは一度も見ていないので…あの時から兄上や半兵衛に向けられるその視線の一雫でも私に向けられればと。ですが…取り留めて才覚のあるわけでもなく。歯牙にもかけていただけませんでしたから」
「(両思い!)三成様は物凄く不器用な方なんっすよ!」
「え?」
「嫌いな人なら落ちるの助けないし。微笑みませんって。それに…これ言って命あるかな、俺」
「言っても言わなくても同じですよ。言いなさい」
「?」
「実は奥方様が知らないだけで三成様もずっと奥方様見てんっすよ。あっ気持ち悪い感じじゃなくて」
「…」
「披露宴の時も。じっと見ては恥ずかしくて目を逸らしの繰り返しで。真っ赤だったんすよ」
「…」
「すっごい好きで惚れ切ってるから、こんなことになっちまったんすけど奥方様」
「は、い」
「三成様は貴方のこと本気で好きっすよ。あの人は地位とか名誉とか外聞とかそういうのどっちでも良くて。そういうもので左右されるくらいなら刑部さんも困りませんから」
「…島様」
「?」
「ありがとうございます。少し考えてみます」
「そうしてください!」









桜色









「というわけで文を頂いてきました」
「良くやりおったなぁ。ひひひ。使い様よな」
「なんか含みがすごいっすね」
「…」
「やれ三成」
「聞いてくれ刑部!又、文を書くと」
「良かった良かった」

拍手

PR