金茶 三成 戦国 長編終 2016年01月09日 「ヌシの初陣の頃、よく笑う女童がいたのを覚えているか?」「…?」「何時もニコニコ笑っておってなぁ。良く道場横の楠にやって来ていた」「ああ!あの姦しい童か。道場横で小鳥を呼んでは歌を歌っていた」「其れが奥よ」「…は?」「あれが奥よ」「…」「煩いと小突き、姦しいと殴り。鳥に至っては稽古の邪魔と斬り伏せ。弱いお前が豊臣に居る理由を言えと恐喝し」「刑部」「その内笑わなくなった女童が局に移動して。裳着の後美しい女になっただけよな。」「もう良い」「確か裳着の儀も散々暴言を吐いていた。当然奥は聞き及んでおられるか。いつ懸想したかは知らぬがな」「…」「我もヌシの気持ちがわかった折よりは特にだが…ヌシの言を訂正していたが…ヌシの一味になってしまった。」「私はどうすれば良い?」「知らぬ。此処まで拗れてしまったら我とて知らぬ」「…」「やれどこに行く?」「奥の元へ。会えぬとも良い。」「左様か」花を見てため息をつく。花と安直に考えていたが確か…手折るのを嫌っておられた。食べ物も好みがわからない。衣装も。「奥方様」「はい」「起きられて大丈夫ですか?」「いえ、だって」「…あら」「殿が、さきほど、から。右を左をされ、て」「奥方様、笑い過ぎで御座います」「だって、云々唸りながら庭に入ってこられて。やれ花では無い。甘味でも無いと。念仏の様に」「其れはまた禍々しい念仏です事。殿」「…?何故貴様が此処、に?!」「此処は離れで御座いますゆえ。私がいてもおかしく有りますまい」「奥?!いや、すまない。考え事をしていてだな、わざとでは無い」「いえ…」「すぐに…」「殿?」「いや、」「?」「久方振りに貴方の笑った顔を見る」「あ…松」「っそう隠さなくて良い。すまない。勝手に入ってきてしまった。」「い、え」「それと」「はい?」「私は貴方のその微笑みを見るのがとても、好きでした」「…え?」「ただ、それだけです。失礼いたします」急いでその場を立ち去ると刑部がいて驚く。どうしたと尋ねれば笑うだけ笑って不器用よなと言われてしまう。いつからかはわからない。ただ漠然と好きになったわけでも無い。「これを弱さとおっしゃるのか」「さてなぁ。だがヌシがまともに奥を愛したのなら…弱さ以外の何かを知りうるかもしれぬなぁ。」「?」金茶「やれ、三成。」「なんだ?」「そう唸った頃で何も出来ぬ。」「しかし」「薬も医師も用意できる最良を用意した。傷も良くなってきて、床からも上がれる様になってきた。」「何か奥が喜ぶ様なものは」「女の好むものか…」「甘味は」「日々用意せよと言ったのを忘れたか」「小動物は」「ヌシのせいよな」「花も手折るのを厭われる…刑部!」「難題よな。なんだい。そうよな。手紙を再開してはどうか」「だが」「直接聞くにはそれしかあるまい」「…」「返事が来ねばまた考える。」「わかった」 PR