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変換なしの雑食夢

ran

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死屍累々 11

「三成とあれはどうだ?」
「んー…知らないみたいなんだよね。説明したと思ってたけど忘れてたかな?」
「そうか」
「別にそれはそれで良いけど…なんだかね」
「如何した?」
「何でもないさ。…思い過ごしだろうからね」



庭に出て花を摘むと旦那様が現れる。明らさまに嫌そうな顔をして、歯ぎしりをして。そこまで嫌ならこっちに来なきゃ良いのに。そう思いながら私は一礼してその場立ち去ろうとするものの腕を掴まれてしまう。振りほどさずにいればあからさまにホッとした顔をされるので私は少しイラっとして掴まれた腕を見る。この人は何がしたいのだろうか


「離してください」
「…だな」
「?」
「食べてないそうだな!」
「貴方様も。」
「私は良い!だが、貴様は病み上がりだろう!倒れるぞ!!!」
「大丈夫です」
「何を根拠に…」
「旦那様?」
「毛利が居ないからか?」
「何故そこに松寿丸様の名前が出て来るのですか」
「あいつがいた時には食べていたからだ!」
「言うほど食べておりませんでしたよ。」
「嘘をつくな!」
「偽りを申して如何するのですか」
「貴様は、嘘をつくからな!」
「あなた様は何をおっしゃりたいのですか」
「…貴様は私にではなくあれに嫁したかったのだろう。」
「好いた腫れたで正室は嫁げません」
「其れで…。仕方なく私の元に来たのだろう」
「…」
「何か言え」
「仮に、そうだとして何か問題でも?」
「なっ!ない!問題など無い!!!」
「ならば良いではありませんか」
「そういう話ではない!」
「貴方様も」
「私がなんだ!」
「惚れた腫れたで私を娶ったわけではないでしょう」
「!」
「例え、昔の初恋に怒られようとも私はここに嫁いでこの方貞節を守ってきております。」
「おい」
「そんなにお嫌いならば郷にお返しください」
「貴様は!恐れ多くも秀吉様から命じられて娶った妻だ!私情で別れられるか!」
「…命じられたから、ですか」
「!?」
「わかっております。あの誓約もなにもかも私情がひとかけらも入っていない事を」
「泣い、て」
「私は」
「!」
「確かに無表情ですが、心がないわけではありません。泣きますし怒りますし、嫌うこともあります」
「…」
「一々言わなくともわかっております。私は正室としての務めを果たしますれば、安心してくださいませ。側室も太閤殿下の許可がおりましたらお好きにしてくださいませ。」
「側室など!」
「以前仰った話は聞かなかったことに致します。一時の気の迷いを言質にする事はありません故御心配致しませぬように」
「何故だ!何故」
「…」
「私は貴様でなくてはならないと言ったはずだ!何故…私を裏切るのか!!!」
「失礼いたします」
「奥!」








死屍累々 11







『本当にこの子が男だったら』
『致し方ない。ただの家ではないからこそ女子のこれにも活路がある』
『にしても、殿様があまりに熱心で御座いますから顔が…』
『ああ、それなら他の姉妹をつければ良い。幸い器量は良いが才能が褥しかないのがいたはずだ。それを侍女にしておいて後に側にしてもらえば良い』
『良いですか?父上に言われた通りなさいなさい。我らはこうして今の世を生き抜いているのですから』





如何言って笑う母の顔が歪む。
夢、だったのかと思ったのは飛び起きて後で、冷や汗で濡れた寝着が肌張り付いて気持ちが悪い。着替えるかと床を離れた瞬間声が聞こえてくるのでそちらに顔を向ける。旦那様と五島の声。帰ってきた途端なのだから仲の良い事だと思う

きっと私は無表情だろう。


五島やほかの姉妹、女子たちの一部でも良いから表情を作れば良いのにと嘆くことがでくたらばどんなに楽だろうか



「着替えよう」



益々大きくなる嬌声。やはり、この部屋は五島にやって私は北へ向かおう、

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死屍累々 10

「奥方は毛利に懸想しておったか?」
「はい」
「…」
「…」
「否定、せぬのか?」
「していかがいたします?信実そうでありましたし、今でも淡い初恋は初恋ですので」
「似合わぬなぁ」
「まだ前髪も上げておりません折の話です」
「左様か。主もそのような時があったか」
「私の赤子でしたし、成長して大人になって老いて死にます。」
「ひひひ。本に今は美しき時か?」
「若いうちが美しいというのは男の勝手で御座いますよ。老成しても美しい人はたくさんおりましょうから」
「主らしい」
「さて大谷様。そんなことより衣装の丈を見せてくださいませ。新しい衣を誂えませんと」
「主も好きよなぁ」
「嫁いだからには出来るだけ安らかにお過ごしいただきたいのですよ」
「我は主の夫ではないがな」
「我が夫とは病の折より会っておりませぬ。またどこぞでなんぞしておられるのでしょう」
「冷や冷た」
「あちらには手紙を書きましたが真っ二つに切って送り返されました。」
「何かの間違え」
「お見せいたしましょうか」
「三成め」
「私の名も出さぬ方がよろしいかと。島様曰くご機嫌がすこぶる悪いとおっしゃっておいででしたからね。それに周りから何も言ってこないところを見るとお元気なのでしょう。なにより、旦那様は私がいない方が宜しいようですので」
「其れはないと言いたいが…」
「お気遣い忝なく思います。松寿丸様の事も内通などはありませんし、ましてやこの私が毛利家に嫁げるはずもない事はあなた様が良くご存知かと」
「何故、そう思わしゃる」
「そう返すからですよ」
「ひひひ」
「平々凡々の我家から此方に嫁げたのは私達の生業のせいで御座います。それを知らぬあなた様ではありますまい」
「さて、なぁ」
「別に良いのですけどね。さぁ、丈は取れましたし直ぐに直しておきます。ああそれと。太閤殿下の命で此れから竹中様のとこに参ります。」
「またか?」
「ここの軍師様方はご自分の体を軽んじられまするから。大谷様も食事をきちんと済ませてくださいませ」
「あい、わかったが…」
「?」
「主もくわしゃれ。痩せてきておる。」
「…あいわかりました」









死屍累々 10








「半兵衛様、お呼びでしょうか?」
「ふふふ、忙しいところ悪いね。」
「いえ…奥?!」
「一昨日より看病してくれてね。少し疲れが出たみたいだね。珍しく寝てしまったよ」
「…」
「あの机の上にある書類を頼むよ」
「は、い」
「内心穏やかではないかな?」
「い、いえ!」
「ふふふ。大切にしなさい。此れはただの女ではないからね」
「は?」
「君の懐刀になるはずだよ」
「???」
「あれ?聞いていないのかい…彼女は」
「…竹中様」
「っ!」
「おっと。時間切かな」
「少し寝てしまいました。申し訳ございません」
「構わないよ。丸2日寝てなかったのだからね」
「…お茶をいれて参ります」
「お、おい!待て!!!」
「っ」
「食べているか?!隈は仕方がなくとも痩せすぎだ」
「…」
「何だ」
「あなた様に言われるとは不覚と思っているのです」
「な?!」
「…失礼します」
「おい!待て!!!」

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死屍累々 9

「…」
「おい」
「はい?」
「調子はどうだ?」
「もう完治してます」
「医師」
「まだまだです!」
「…」
「貴様は!何度言えばわかる!!!」
「飽きたのです」
「貴様!!!!!」
「やれ、はい…何を叫んでおる三成よ」
「刑部!こいつが私に!!!」
「飽きました」
「可愛くねだりしゃれ」
「…」
「…」
「治りました」
「何も変わらん!」
「ひひひ。無理か、無理よな」
「刺繍糸でも頂けたら」
「そうやっているから熱が下がらんのだ!!!学習しろ!」
「…」
「飯も食えずにいるだろう!」
「やれ、奥方。ああ、そうよ。三成。毛利がまた来ているが」
「何?!」
「松寿丸様が?」
「通しゃるか?」
「許可しない!!!!!!」
「…」
「無表情でみりゃるな」
「…」
「な、にかいえ!」
「…」
「黙って寝るな!」
「…」
「っち!好きにしろ」
「良いようよ。」
「姫!」
「松寿丸様」
「労しい…我の元にいたらこんなことにはならない!やはり我のところに」
「風邪がうつりますよ」
「うつるものか!」
「貴方らしい」
「頭か?胃か?」
「…」
「頭だな。おい!大谷、医師に頭痛薬を持って来させろ」
「あいわかった。にしても襷とは何事よ」
「手拭いも…きちんと変えろと言うておるのに。乾いておる」
「面倒で」
「相変わらずよ…水指しはどこだ」
「…」
「貴様ら!!!揃いも揃って何をしている!!!!!」
「黙れ!」
「姫を殺す気か!看病もせずただ見ているだけとは!」
「松寿丸様…落ち着いて」
「姫!我の策に抜かりは無い!早々に治してやろう」
「貴方様も大国の主。そう長々と国元を離れてはなりませぬよ」
「な?!」
「ひひひっ。ぬしが女に尽くすとは」
「姫だ!」
「姫は姫和子と妹ですよ。私は野武士とか護衛と言われていたではありませんか」
「馬鹿を言うな。我は一度も言ってはおらぬ。そなたは我の姫君よ」
「お戯れを」
「…薬を飲んで寝ていろ!不愉快だ!」
「旦那様」
「やれ、三成よ」
「ふん」
「貴様などどうでも良い。姫、味噌汁を作ってきた。」
「あら…懐かしい」
「!!!!!」






死屍累々 9









「もう安静にしていたら2日3日で完治ですね」と医師に言われてわたしはほっとする。漸く溜まった仕事ができると思いつつ看病して下さった松寿丸様を見る。よかったなと言われるので私も静かに頷く。




「無理は禁物ぞ」
「はい」
「…やはり妻になってほしい」
「奥方様がいらっしゃるでしょう?」
「あれは」
「正室は家と家との結びつきと良く母が言っていました。己の好き嫌いではどうにもならないと」
「…」
「其れが理解できていない貴方様ではありますまい」
「だが…幼き時の約束は忘れたわけではあるまい」
「忘れておりません。…忘れられるはずもありません」
「姫」
「私は其れだけで生きていけます。もう貴方様も私も昔とは違うのですから」
「…」
「もし、ここで死んだとしても私は誰も恨みませぬ」
「石田とは…」
「…良く、わからないのです」
「?」
「厭われておりましたのに…急に側に来られるようになりました。」
「そうか」
「これも嫌がらせの一環か否か、私にはわかりかねます」
「…もし」
「?」
「何かあれば我のところに来い。」
「…はい」
「姫」
「松寿丸様?」
「愛しておる。愛しておったとは 言い辛いが」
「私も」
「このまま安芸に帰る。息災でな」
「貴方様も」

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死屍累々 8

「貴様は!心配してやってきたものへの態度か!」
「夢でなければ貴方様が私と二人きりになりませぬよ」
「ぐ…」
「旦那様」
「何だ!」
「短い婚姻でしたが、ありがとう御座いました」
「?!」
「起きる事があれば、次は里か…良しばんで最北にある座敷牢でございましょう」
「貴様は罪人か」
「あなた様にとっては」
「っち!」
「もう少しでお別れですからお礼だけでも言っておきたかったのです」
「まだ早い。なにより夢で言うな」
「現は貴方に必要以上近づいたり話しかけたりするなと言われておりますから。目障りだと」
「…」
「結婚の儀式の折。些か大きなお声で」
「ああ」
「忘れてなさった」
「知らん」
「夢でも酷い話ですね」
「いちいち覚えきられるか」
「貴方にとって無数ある花の中の一番出来損ないでしょうが私にとって唯一の旦那様ですから」
「…」
「何か?」
「貴様でもそう愁傷なことを言うのだな」
「夢ですから」
「…そうか」
「ええ。そういうものです。ああ、ついでに」
「なんだ?」
「刑部様にお伝えした通り、あの侍女を大事にしてやってくださいませ。貴方様たちの衣食住の癖は伝えてありますから、ご不便をお掛けせずに済むと思います」
「お前がすればいい」
「出来なくなったらの話です。」
「なら無用な話だ」
「死ぬまで勤めはいたしますよ」
「死にたがり屋め!」
「私も死を求めるほど老成しておりません。ああそれと」
「何だ?」
「妹をお願いいたします」
「妹?」
「五島。あれは私の妹です」
「な?!」
「言いましたけどお聞きにならなかったのですね。」
「知らん!」
「そうですね。まともに話した事御座いませんでしたし。父や兄にすればそちらの方が都合が良かったと思います。あれは末娘で大層可愛がられておりましたから。なにより実際、五島は美しいですから…手違いというか何というか私が妻になってしまった方がおかしいのですよ。ですから気にしてはいませんし、そういう事になるだろうなと思っていました」
「…」
「私としても継室が妹なら安心でいけます。ただ、家才はありませぬからしっかりとした侍女をつけてくださいませ。衣食住を保つのも室の仕事ですから。安心していけるように手は打ちましたが…貴方様も頭の隅に」
「おい」
「?」
「死にたいのか?」
「…」
「生きたいか?」
「さて…わかりません」
「後悔、しているのか?」
「本当に夢ですね。貴方様が私にそういう事を言うだなんて」
「答えろ」
「…大変と言えば、大変で。苦しいといえば苦しい人生でした」
「…」
「ですが、楽しい人生でもありました。私としては精一杯生きましたから…ここで生死別として別れたとしても未練はありません。ただ」
「ただ?」
「後悔は…。そうですね。貴方様に申し訳なく思っていることですね」
「何がだ」
「好みでもない。いえ、嫌う女が正室になってしまったことです。本当に申し訳御座いませんでした。もう少しましな嫁でしたら貴方様のお心も安らかでしたでしょうに」
「馬鹿か」
「あら、泣かないでください」
「嫌うていない。」
「あら、優しい夢だ事」
「冷やかすな」
「でも最後の夢としては良い夢ですね。こうして」
「?」
「貴方様とお話ができました」
「此れから沢山にできる」
「怒られるの違いでしょうね」
「おい」
「夢の旦那様、現の旦那様に侍女と妹の事だけ伝えて下さいね」
「知らん!」
「あら、優しくない夢だ事」
「好きに言え!良いな、死ぬ事は許さない!」
「何ですか?これは」
「守り札だ。良いな!気合いで治せ」
「ふふふ。」
「なっ?!」
「本当に優しくない夢だ事」
「きさ、ま!」
「?」
「笑えるのか?」
「笑っておりましたか?」
「…」
「久方ぶりですから、忘れてしまいましたけど…私もまだ笑えるのですね」
「また!!!表情を作れ!!!」
「無理をいう夢ですね。さて、もうそろそろ現に帰ってください」
「な?!」
「こう見えて…些か疲れました」
「熱が高いな」
「昔から倒れるまで実の母でも気がつきませんでしたよ」
「…」
「ねむ、い」
「寝てろ」
「…は、い」
「起きたら、いう事がある」
「里、に帰る?」
「違う」
「?」
「起きた時の楽しみだ」







死屍累々 8







「…」
「何だ?」
「…い、え」
「完全に信じていたな」
「…」
「騙された奴が悪い」
「熱のせいでございましょう…はぁ」
「ため息をつくな」
「いえ…目眩がしただけです。」
「おい」
「…」
「話せ。黙らなくて良い」
「ですが」
「散々話した後に何を言っている!話せ!拒否は許さん」
「…はぁ」
「辛いか?」
「医師は?」
「風邪に過労に、栄養失調。よくここまで我慢したと呆れた」
「いつもの事です。寝ていれば…旦那様も感染るといけませんので」
「にしてもこの部屋はひどい」
「…あの」
「日陰しかない」
「話を聞いていただけますか?」
「部屋を戻す」
「は?」
「明日移動だ」
「…」
「何だ?」
「…いえ」
「考えている事は違う。罪人の引き回しではない。あちらの方が都合が良い」
「意味がわかりません」
「貴様の顔を見に通うのには遠い」
「は?」
「正室だろう」
「五島は?」
「姉妹を娶るつもりは無い。有事ならいざ知らず…道に反する故、帰した。貴様の親にもきつく言ってある」
「な!?」
「あれは散財したかったのだろう。部屋いっぱい着物の山だ。どうにかしろ…治ってからだぞ」
「…」
「遊び女も整理した。」
「では側室に?」
「いや、刑部が家才をみて才の無いものは放逐、または縁組をさせた。使えぬものはいらん!」
「…」
「殆ど残らんかった」
「酷い話ですね」
「何がだ」
「お捨て遊ばすのが」
「遊びで終わるより正室の方が良いと皆嬉々として嫁いでいった。」
「…」
「そういう顔も出来るのだな」
「呆れた顔ですが…夜の相手はどうするおつもりですか?」
「貴様の仕事だ」
「…」
「不服か」
「…いえ、色々ありすぎて着いていけませぬ」
「考えを改めた」
「?」
「貴様でなくてはならないらしい」
「…は?」
「その無表情を改めさせる。長曾我部から聞いた。昔はよく笑っていたらしいではないか!」
「そうでしょうか?姫和子ほどではありません」
「…」
「松寿丸様も良く…旦那様、歯ぎしりが!」
「貴様は!毛利が!!!好きなのか!?」
「え?ええ。」
「!!!」
「良き幼馴染…旦那様?!」
「貴様は私のだ!」
「何が何やら…何か悪いものを食したのですか?」
「何?!」
「正反対で…嘘くさいです」
「きさまぁ!!!!」

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死屍累々 7

「あの!」
「ん?」
「私は奥方様の侍女です!」
「え?ああ。如何したの?そんな切羽詰まって」
「お手打ち…覚悟で申し上げます」
「何それ!スゲッ!物騒」
「奥方様に医師を」
「は?え!!奥方様調子悪いの?!」
「一昨日より何も食されていないのです。咳もひどく…でも医師は要らないの一点張りで」
「ちょ、待ってな!刑部さんに言ってやるから!」
「はい」






「暗いのう」
「…あら」
「気がついたか?」
「大谷様?」
「もうちと驚きゃれ。我は主が危篤と聞いて馳せたのよ」
「まあ」
「賢人と太閤も見舞っておった。3日よ。昏睡しておった」
「あらまあ」
「三成も来ておったが」
「大谷様」
「ん?」
「いくら優しい嘘でも嘘はいけませんよ」
「ひひひ」
「五島と睦まじいですか?」
「あれが睦まじいというのならな。あれは子供よ。哀れな子供。己の感情に振り回されておるだけよ」
「また優しい嘘を」
「ちと寝りゃれ。まだ熱が高い」
「…」
「ぬしに看病してもろた恩を介さぬ間に儚くならしゃるな」
「ならば」
「?」
「そこの」
「?」
「行李を」
「5つほどあるが…どれぞ」
「右から、殿下、竹中様、旦那様、刑部様の衣装の直し。左端は皆様の単衣です」
「…また、主のする仕事では」
「侍女を家柄と顔で選んだ弊害ですよ。皆、針仕事が…」
「左様か」
「私が居なくなったら、この部屋の外に控えている侍女に。あの子は上手くしてくれます。全て伝えております」
「主がすれば良い」
「さて、もてばいいのですが」
「これだけ喋れれば、大丈夫、大丈夫。主は体を愛いしゃれ」
「ありがとうございます」
「ぬしの笑みを見るまでは死なせぬよ」
「それはまぁ。無理難題ですね」




そういうと奥方は少しだけ瞬いて「治るまでは見舞いの方にうつすといけませぬ故結構ですとお伝えください」と言って瞳を閉じる。顔色が悪く、息が浅い姿を除けば一寸も変わらない。それは憎らしいまでに




「三成」
「寝たか」
「起きて居る間にいかしゃれ。ちと、まずい」
「まずいものか。あれはずっとあのままだろう。」
「死の凶星がか?」
「は?」
「死に支度をしておる様よ。」
「何を言っている?!」
「ぬしも見舞いしゃれ」






あの日。目の前に座した瞬間から憎からず思っていただろうにとは言ってやったほうがいいのかもしれない。欲を彼女に向けず四散したとて満たされる筈はないと。己の知らぬ彼女を知り、剰え抱きしめた時に起きたその感情こそ嫉妬である事を。

それを知らぬほど主は子供である事を




「出る」
「左様か」
「…悪いのか?」
「運よければ生きれるが、実際綱渡りよ」
「そうか」
「見舞いも看病も要らぬとてなぁ。医師が日に一度参るのみよ。」
「何故だ?!」
「看病の出来ぬものばかりらしい。唯一できるものは、自分がもしもの時にいなければ立ち行かぬからとてな。」
「馬鹿か!此処には数十の侍女が」
「主は奥方以外に衣類を整え、部屋を整え、食事を整えているものを見たことがあるか?」
「…」
「顔と家柄で決めたのがまずかった。と言っても急に召抱えると間者が入る。故に何かあれば奥方していたと、我も今気がついた」
「しかし」
「三成」
「っ」
「我の口は嘘を紡ぐ。しかし、ぬしには紡ぐことは無い。我は今より医師の元へ行く。ぬしもいかしゃれ」










死屍累々 7






今何時かしらと目覚めて初めに思う。随分と寝込んでしまった。食事も喉を通らないほどの病は未だかつてない。困ったと思う反面、これで良かったとも思う。これで色々と解放されるだろう




ただ、障子をあけて月が見たかった。月でも星でも太陽でも。この天井以外の何かが見たかった。


死ぬのが怖いのか?いや、辛いのか?




私にはそれすらわからないし、考えることもできない。





「おい」





声のする方を見る。思わず声が出そうになったものの表情は変わっていないのだろう。舌打ちをされた





「少しは驚け」
「…」
「これは、夢だ」
「ゆ、め?」
「一々黙るな」
「旦那様が夢に立つのですから…いよいよ危ないのですね」
「おい」




そう言って憮然の表情で座るのだ。成る程




「本当に夢の様ですね」

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