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変換なしの雑食夢

ran

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死屍累々 6

「漸く、ご本復ですね」
「これも奥方のお陰よな。しかし」
「!」
「ぬしの顔は未だよな」
「別に気になさいますな。別段どうということではありません」
「…」
「これで私のお役御免でございます。」
「これで部屋に帰れるなぁ」
「帰る部屋がございません」
「は?」
「…」
「西の。ぬしの部屋があろう?」
「冗談で御座いますよ」







大谷様も知らなかったのだろう。あの後五島に部屋を下賜して私の荷物は北の離れに押し込まれてしまっていることを。私自身まだ聞いていないから致し方ない。此の儘元部屋に帰って仕舞えば五島が可哀想だ。取り敢えず北に向かおうかと思っていたら、島様が困った顔をしてこちらに来られる。




「痛そうっすね」
「見た目ほどではありません」
「あの」
「北に行けばよろしいですか?」
「!」
「貴方様が気を重く持つ必要はございません。」
「止めたんっすけど」
「聞く耳を持つ方ではないでしょうに…殿下たちには?」
「流石に」
「言わないほうが良いかもしれませんが…大谷様に任せましょう」
「奥方様は良いんっすか?!」
「良いも悪いも。」
「五島って奴正室見てぇな顔を」
「島様」
「!」
「本当にご正室になるやしれませんから悪言はおよしなさいませ」
「奥方様が言えば良いんっすよ!」
「…」
「?」
「悪言も恨みも何もかも。願望があるから起こるのですよ」
「…奥方様にはないんっすか?」
「さぁ。遠い昔に無くしたのかもしれません」











死屍累々 6







「どういうことぞ」
「五島を抱くのに便利だからだ」
「…主らしくない。如何した?乱痴に走るぬしではあるまい」
「…」
「確かに無表情な奥方よ。ただ、中身は良い女子だ。我だけではなく太閤も賢人も一致しておる。ぬしだけ目の敵にしておるのは…些か合点がいかぬ」
「私はあれが好かん」
「…」
「好みで、ない」
「旦那様、大谷様」
「「?!」」
「失礼致します」
「奥…」
「やれ奥方。何時からおった!」
「先程でございますが?荷物を取りに参りましたので…そのままお暇しようと思いましたら五島に挨拶に行くよう言われましたので」
「何故五島が?ぬしの侍女よな」
「今は旦那様の寵妃ですから。それでは失礼致します」
「おい!」
「?」
「怪我」
「ああ、見た目ほどで走るございません」
「…」
「旦那様?」
「跡になるか?」
「大丈夫で御座いましょう」
「…毛利とは」
「十年ぶりに会った幼馴染で御座います。」
「内通など」
「…」
「やれ三成!」
「内通など…私のようなものには不可能でございます。それに手紙など里にすら書いてはおりませぬから…私は嫁いでこの方ここのもの以外口を聞いておりませぬ。あの日あの時御前で毛利様と長曾我部様と話したのみで御座います」
「…」
「それでは失礼致します」

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死屍累々 5

「やれ来よったか」
「通夜と聞いたがな」
「貴様!!!」
「毛利!お前言っていいことと悪い事を考えて言えよ!石田も!落ち着けって」
「ふん!」
「ひひひっ。して何用よ?」
「竹中に呼ばれたついでだ。」
「これは俺から。しっかり食えよ?大阪の奴らはくわねぇからな」
「こんなに大量の魚!どうしろというのだ!」
「奥方が良きようにしてくれよう」
「あ!そういや、結婚したんだてな」
「こんな輩に嫁ぐとは…物好きか人柱だな」
「黙れ!恐れ多くも秀吉様のご命令だ。無表情の辛気臭い女だ」
「やれ、三成。」
「あんたに言われちゃお終いだな」
「それは誠人間か?」
「知らん!」
「確かに表情はないが良い女子よ。今は我の看病をしておる…来たか」
「失礼致します」
「お茶を」
「姫…?」
「…松寿丸様?」







ガチャンという音で私は松寿丸に抱きすくめられていることに気がつく。危ないですよと言うものの腕を退けてくれる気はないらしい。
どうしたものかと思案していたら肩越しに大谷様が見える。この世の終わりと言わんばかりな表情をして、何度も瞬いた後急いで旦那様を見ていた。唖然とした表情は初めて見た。




「姫和子?」
「姫か…?まさかおい!こんな所で会うだなんてな。」
「ようやく殿方になれたのですね。ようございました」
「おい!言うに事欠いてなんつーこと言うんだよ!」
「私の後ろに妹と二人でびーびー泣いていたのが嘘のよう」
「ぐ…」
「松寿丸様も。お元気そうで。」
「姫!」
「取り敢えず、御退き下さいませ。足元危のうございますゆえ」
「こんな所で…漸く」
「あの毛利が泣く?!」
「杉様は御変わりありませぬか?」
「元気だ。お前を見たら喜ぶであろう」
「それはようございます」
「そして、私の正室に」
「こら!毛利!!!お前さん嫁貰ったばっかりだろう!」
「それは姫が死んでしまったと思ったからだ!生きているのなら話は違う!!!」
「松寿丸様」
「さあ、支度をしろ」
「私、嫁ぎました」
「…は?」
「まじかよ!三国一幸せな花婿だな!どこのどいつだ?」
「…さん」
「?」
「許さん!お前は私の正室と決まっておるわ!どの捨て駒よ!我が直々」
「彼方で話についていけぬ、石田様です」
「…」
「まじかよ」
「お茶を入れ直してまいります。」
「姫!」
「冗談でも懐かしい話を聞けてようございました。それでは」





取り敢えず部屋を出るとう叫び声が聞こえる。何をそんなに怒っているのだろうと思いつつお茶を入れていると凄い足音がこちらに近づいて来るので顔を上げる。途端、頬に痛みが走り叩かれたことを知る。




「このっ!」
「三成!」
「貴様…許さんぞ!!!」
「毛利!抑えろ!」
「淫婦め!」
「っ」
「その辛気臭さで何人の男を!!!」
「…」
「申し開きがあれば聞く!」
「申し訳ございません」
「っ!」
「奥方!三成止めりゃれ!!!」
「いい覚悟だ。頭を垂れろ!その首叩き落としてやる!」










死屍累々 5








「痛いです」
「そこも無表情よな。」
「旦那様は?」
「太閤と賢人に絞られておるわ。」
「首を落としてくだされば良かったのに」
「やれ、冗談にしてはタチが悪い」
「…そうですか」
「ぬしは…いや、ぬしとて寝耳に水よの。」
「まぁ私のことは良いのです。大谷様」
「ん?」
「熱は?申し訳ありませんでした」
「今はぬしが大惨事よ」
「私の顔が歪もうとも大したことではありませんよ。さ、もう御休みください」
「そうもいくまい」
「自分で冷やす事くらい出来ますよ」
「はてさて…ではきちんと冷やしゃれ」
「はい」




そう言って私は手ぬぐいを濡らす。大谷様の額に乗せると少し目を細めて閉じられる。少ししたら寝息が聞こえてくるので私は席を立つ。
台所に布団を引いて休む支度をすると徐々に痛みが増してくる。明日腫れることだろう。致し方ないと思いながら軟膏を塗る。



「疲れた」





そう言って布団にはいるとどっと体が重くなる。明日からは出来るだけ御前に行かないようにしようと思いながら頬に伝う涙を無視して私は眠るのだった

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死屍累々 4

「包帯まで洗うたか」
「それが?いけませんでしたか?」
「…」
「なんですか?」
「…」
「大谷様?ご気分が優れませんか?」
「ぬしは」
「?」
「もうちと笑えば見れたものよの」
「取り立てて必要なことではありませんね。」
「左様か」
「私は貴方様に嫁いだわけではありませんし、旦那様にもご寵愛たれたいわけではありませんから。薬は飲まれましたか?」
「いつもながらにまずい」
「そう言うものです。あら?」
「刑部!」
「三成?」
「医師から許可を得てきた!文句はあるまい」
「…」
「おい!っち!また話さぬ気か!あの女」
「洗濯を干しに行ったのであろう。ひひひっ。すまぬな、ぬしの妻を」
「知らん!半兵衛様の采配だ!役に立っているか?」
「とてもなぁ」
「なら、いい」
「ぬしはあれが好かぬのか?」
「好きも嫌いもない。秀吉様のご命令で貴様と半兵衛様が決めたのだろう?」
「それはそうよの」
「無口で表情の乏しい女だ。正室には丁度いいのだろう?」
「故に伽をさせぬのか?」
「聞いたのか?」
「ひひひ。ぬしの乱痴騒ぎが聞こえてきたのでなぁ」
「あれは女子というより、正室だ。」
「それは役割よの」
「その役割をする人間だと言っている」
「左様か…ん?」
「失礼致します。」
「奥方?」
「…お茶とお菓子を置いておきます。積もる話もありましょう。私は夕食の支度をしておりますので。何かありましたら」
「ふん!」
「…」








ぱたりと閉めて私は台所へ向かう。女でもない、か。それはそれでいいのかもしれない。私に向いている気がする。
今日の夕食は何にしようかと思っていたら竹中様が框に座っていて思わず目を見開く。この方は神出鬼没だ。なぜここにと尋ねたところで意味をなさらないだろうからご用件はとだけ聞いておく。するともっと驚いてくれてもいいのにねと言われるので、十分驚いていることを伝えておく。




「にしても表情が」
「お茶とお菓子です。体調は如何ですか?」
「今はいいよ。…これは何?」
「旦那様の衣装でございます。今のうちと思ったのですが」
「このお菓子おいしいね」
「ありがとうございます」
「君、無駄に能力高いのにどうしてそう表情だけないかなぁ?少し笑えばいいと思うんだけど」
「今日大谷様にも言われました」
「はは。何て答えたの?」
「私は貴方様に嫁いだわけではありませんし、旦那様にもご寵愛たれたいわけではありませんから。と」
「君らしいね。三成君も三成君だ。君をほったらかして」
「私は正室という役割の人間ですから。」
「彼らしいね。」
「その通りだと思います。何を好んで私など」
「まーねー…あ、漬物をもらいに来たんだよ。」
「漬物ですか?」
「君のが美味しくてね。秀吉も欲しいそうだ。あるかい?」
「あちらの甕ごとお持ち下さい。」
「助かるよ。それと」
「?」
「夕食の前に来客があるから茶菓子の準備を頼めるかい?見舞いが来ているからね」
「はい」
「夕餉はこちらで用意するよ。…さてと。吉継君を見て僕もお暇するよ。」




甕を担いで出て行くのだから目的はこれなのだろう。自由な殿方であり姑殿だ。
来客の支度をしなくては。明日にと羊羹を作っておいたからあれを出そう。洗濯物も取り込んでおかなくてはならない。そう思いながら私は外に出るのだった








死屍累々 4









「何とか乾いた」
「やれ、奥方」
「?!寝ていなければ熱が上がりますよ」
「ひひひ。厠ついでよ。その客の話よ」
「?」
「少々面倒な男ゆえ最低限の会話にしりゃれ」
「心得ました」
「もうじききりゃる。三成も暴れてはならぬゆえ…茶を出した後、こちらに引っ込んでおれ。危ないゆえなぁ」
「はい」
「怒うておるか?」
「いえ?…薬を先に飲んでおきましょう」
「…」
「ささ。」
「不味い」
「飲まないと治りませんよ。」
「左様か…ん。不味い」

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死屍累々3

「騒がしいわね」
「奥方様!」
「如何しましたか?」
「それが…」






大谷様が先だってより体調を崩していたのは知っていた。ただの風邪の看病なのに彼の方にある元の病があまり宜しくないものだったら、万が一にもうつってしまえばよろしくない。故に看病するものがいないという。





「失礼いたします。」
「奥!」
「やれ、何用よ?本なら」
「看病しに参ったのですよ」
「?!」
「奥、そういうものは」
「私の妹は長患いで私が看ておりましたから…看病に慣れているものがした方がよろしいでしょ?幸い、竃も風呂場もありますから。
「ひひひ。気を違えたか?」
「正気ですよ。旦那様、竹中様からの御許可は得ております。ですが、貴方様はご退室下さいませ」
「何を言っている!」
「そしてこれより先、医師が良しというまではあなた様が組み敷いた女子は一切近づけさせないでくださいませ。もし、懐妊しておりましたら一大事でございます!」
「っ」
「奥方」
「なんですか?」
「…」
「この離れの門より一歩たりとも入る事は許しません!さあ、手筈通りに!」



そう言うと何か言いたそうにしていた旦那様に大谷様が何か言う。流石、心得ておいでだ。納得はしていないものの部屋は出て行く。それを見届けながら流石ですことといえば、主が賢人につなぎをつけて動いたからよと笑いながら言われるものののいつもより覇気がない





「熱が高いですね」
「ひひひ」
「お疲れが出たのですよ。手拭いをかえます」
「冷や冷た」
「口を開けて下さい」
「飲みとうないな」
「熱が下がりませんよ」
「やれ、手厳しい」
「今から看病全部致しますから…早く良くなりませんと色々恥ずかしいかもしれませんよ」
「左様か」
「…口」
「ひひひ」
「匙はどこかしら」
「ちと聞きたい」
「はい?」
「主の妹は?病だったのか?」
「労咳です。彼方の方が良く感染るので、私にまで気を使って可哀想でした。もう少しで完治だったのすが」
「のうなったか?」
「いえ、見殺しになりました。」
「?」
「私が嫁ぐのか決まりまして行くことを禁じられましたから。結局誰も看病しませんでしたから。」
「左様か」
「女子でしたから特にですね。…貴方様は大丈夫ですよ。皆貴方のことを大切に思っておられますから。竹中様なんて説明する途中で許可しましたよ。」
「ひひひ」
「ですからよく食べてよく寝てとっとと治して下さいませ。風邪ですよ。はい、口」
「苦い」
「妙薬なのでしょう?」
「主は不幸よなぁ」
「?」
「普通ならこのようなこの下女がすることよ」
「下女はかなり適当ですよ。あなた様が苦しい時にうたた寝する程度に。喉が渇いても水もなかなか来ないことでしょう。それでよろしければ」
「…生々しい話よな」
「ご経験が?」
「あるので言い返せぬなぁ」
「左様でございますか。では私で良いのですか?」
「良くは、ないが」
「良いではありませんか。家中のこと。正室の務めですもの」
「話はそこではない。われは良いとして主はその正室よ。万が一にも」
「女子なんて生家でも駒ですよ。不具合があればお返しするのが習い。なによりどこにいっても殿方のお心一つで、生死が決まる。今日を惜しんで明日は刀の曇りになっていることもあるのですから」
「達観しておるな」
「なにより都合の良い話でございましょ?」
「ん?」
「旦那様の放蕩に怒れず、帰れずかといって悋気もせず。姑様と小姑様の看病ができる程度の嫁ですから」
「賢人もか?」
「今は小康状態です。」
「左様か」
「大谷様も竹中様も。生き急ぎなさるなと言いたいですね」
「われも賢人も本体が動きすぎるゆえもぎ落ちるよ」
「私と違って替が利かないのですから。」
「ひひひ」
「少しお休みください。枕の下と布団の下。袂のものはこの箱の中に。」
「…」
「2.3日すればまたいつもの大谷様ですよ。はい、封をします」
「眠い」
「寝てください。起きたら、粥を作りましょう」











死屍累々 3







「ん…」
「起きられましたか?」
「やれ、ぬしは寝て居らぬのか?」
「人の心配より己の心配を。果物を絞りましたから…口」
「甘い」
「あちらでは乱痴騒ぎのようですね」
「左様か」
「旦那様から大量のお見舞いの品です。あと手紙」
「あれは?」
「お会いしておりません」
「左様か」
「私に会いとうないでしょう。」
「そうか…いや待て。ぬしとて懐妊しておったら」
「それはないですよ」
「言い切れぬであろう」
「言い切れまする」
「?」
「初夜の日ですら私の侍女と寝たのですから。五島はその時から。よほど私が好みではないのでしょうね。まぁ顔立ちも普通でございますから」
「…左様か」
「左様でございますとも。」
「故の達観か?」
「これは性分です。ニコリとも笑わぬと妹に怒られておりましたから」
「…」
「さて、粥です。食べられますか?」
「いや、すまぬ」
「熱も少しマシになりましたな。食した後、包帯変えますからね」
「それは良い。ぬしとて女子」
「寝付いたら困りましょう?諦めなさい」
「…本に変わった女子よの」

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死屍累々 2

「何が気にくわない」
「?」
「貴様が好きと言ったから取り寄せたのだぞ!」
「…」
「?」
「きっとそれは違う閨話ですね」
「…」
「…」
「…ああ」
「お相手を思い出しましたか?」
「貴様は好まんのか?」
「有り体に言えば。」
「そうか。邪魔をした」
「…」
「…」
「…まだ何か?」
「怒らんのか?」
「何をです?」
「…」
「いちいち怒ったほうがよろしいのでしたら」
「いや、いい」
「ならば、いいではありませんか」
「…」
「…」
「何を読んでいる?」
「大谷様からお借りした書物です」
「刑部か?」
「はい」
「…」
「…」
「…」
「…」
「ちと邪魔する…ん?ここにおったか三成よ」
「あら、まだいらっしゃったのですか?」
「「?!」」
「奥?」
「いえ、本を読んでいましたから。…大谷様ありがとうございます。とても興味深くて。」
「やれ、それは良いとして…ん?菓子か?」
「まだお持ちになっていらっしゃらなかったのですか?」
「五月蝿い」
「…誰か。風呂敷を」
「はい」
「7つに分けて各々にお持ちしなさい」
「はい」
「「?!」」
「如何致しましたか?」
「人数」
「あら、また増えましたか?」
「いや、何故」
「…」
「…」
「…風の噂ですわ」






そう言えば難しい顔をして部屋から出て行かれる。
これでやっと静かになったと思いながら頁をめくる。どれくらい経っただろうか?借りているものも読み終えたし、衣類の直しもした。今取り立ててしておくことはして済んだ。暇だと思っていたら侍女が縁に出られては如何ですかと言うのでぼんやりとうなづく。賄い方は言ってはダメだと言われている今、本当に暇なのだ。
草履を履いたものの庭に出る気はしない。人の陰口も聞きたくないし、何より、外には出てはならんと言われているのだ。だけれども縁に腰掛けて外を見るのは思ったよりも良い。只、陽射しはきつくて暑い。ついそう言ってしまうと、見る見るうちに暑くなってくる。川に行きたい。そう思ったところで無理だろう。結局は桶に張った水で手を打つのだ。




「…」
「根をお詰めになったのでしょう。大丈夫で、ございますか?」
「ええ」
「少し、お休みになられま…奥方様?」
「六になったら起こして」
「…寝てしまわれた」
「私が扇いでおきます。日陰を」
「はい」
「…やっぱりいいわ!起きる!そんな人垣みたいな事は止しなさい」
「ですが」
「大体左腕の妻がうたた寝とは醜聞なのでしょう?誰か手ぬぐいを。部屋に戻ります」
「お、お待ちください!そのようなつもりではありません」
「?」
「お許しください。奥方様の御心を」
「怒っていないのよ」
「え?」
「駄目ね。この顔だからすぐそう思われるのだけれども。怒ってはいないのよ。皆が暑気あたりしてはいけないし。」
「良かった」
「ふふふ。では私は休むわ」
「え?!」
「少し待って。誰か墨を。これを大谷様にお渡しになって。夕餉の折も起きませんから。」
「今日は殿様と!」
「おやすみなさい」







死屍累々 2








「奥は来ぬよ」
「何故だ!」
「愛想を尽かされない方が不思議よ、ふしぎ」
「何?!」
「他の女の贈り物を渡すとはなぁ」
「あれが傷付くものか。あの無表情は変わらん」
「左様か」
「…」
「…」
「今」
「寝ておるゆえ行かぬが得策よ」
「…」
「やれ、三成。歯がちびる」

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