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変換なしの雑食夢

ran

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死屍累々 16

「奥?!…っ。夢か」
「また魘されていた…奥方か?」
「ああ」
「顔色の悪い…もう何ヶ月もまともに寝ておらぬのよ。一層の事、薬で無理矢理寝てみてはどうだ?」
「刑部」
「ん?」
「奥の墓は見つかったか?」
「…」
「如何した?」
「真逆、主の口から聞くとは思わなんだ」
「何故だ?」
「興味がなさそうであったのでなぁ」
「…直ぐに調べた」
「左様か」
「この辺りの寺院に書状を書いたが何処も答えは否だった。少し離れたところへと進めていっていたが…無駄だった」
「…」
「下人は何処のどいつか…調べてもわからない。刑部」
「やれ、その顔で凄むな。怖いこわい」
「私が噓いつわりを…裏切りを嫌うのを知っているのではないか?!」
「ひひひっ真逆主が我のあずかり知らぬところで動くとはなぁ」
「刑部!」
「まず、その真意を問うてからよの」
「…」
「主のそれは何故か?」
「…下知を無視して菩提を弔う気だった」
「主が?太閤の命を無視?!」
「弔い済んで後に…言うつもりだったが何処もあれはおらぬと言う。」
「そうよなぁ」
「刑部」
「ひひひ。主がなぁ…ならば良い。寧ろ上々よな」
「ならば!」
「喉はついた」
「?!」
「が、賢人が取り押さえた」
「生きて、いるのか?」
「さてなぁ。」
「如何いう意味だ!!」
「以前言うただろう?あれはちと特殊よと」
「…」
「人質、暗殺、盾に刀。そのためだけの訓練をしてきた女子よの。故に一度出れば郷には帰れぬ」
「訓練…か」
「左様。故に主があれの部屋で五島を抱いて郷に帰ると雖も帰らぬのはそのせいよ。まだ、その役が残っていた故」
「役?」
「ぬしの正室で有事の際の盾刀になるという役よ。実際水際でよう止めてくれておった。毒殺、寝首、暗殺。忍びなどは特になぁ」
「…」
「我の乱波とよう連絡しておったわ。これは我とてつい最近知った事よ。侍女から下人に至るまで全て奥が決めておったからなぁ」
「そう、か」
「まだ居場所があった奥に、三行半を突きつけたのは…三成自身よ」
「…」
「寵愛もなく、役も失った。故にあれの存在意義はなくなった」
「そんなわけあるか!!!」
「三成よ」
「その程度で!意義を失うのならば今の私は一体なんだ?!」
「我とて思うが…奥方はそうは思わなかったのよな。最後役目である自害もままならんとな…死人同然よ」
「!」
「まぁ主よりはまともよの」
「食事は?」
「ん?」
「食べているか?」
「食べている」
「水は」
「飲んでおるなぁ」
「寝ては」
「よく寝ている。主の方が心配よ」
「…私がつけた傷は?」
「?」
「頬の」
「…いつの話よ。痣も消えた、消えた」
「…刑部」
「喉の傷は跡にもならなんだと言えば嘘になるが…薄いものよ」
「そうか」
「三成」
「…そう、か」
「やれ、泣かしゃるな」
「無事なら、良い。」
「ひひひ。安心いたせ。毛利にも行っておらぬよ」
「…」
「鳩が豆鉄砲くろうたような顔よの…毛利に逃げたと思うたか?」
「…」
「三成よ」
「腸が、煮え繰り返るような」
「やれ、禍々しい」
「心地だが、幸せなら仕方ないと」
「ひひひ。貞操は主の方が軽い軽い。」
「…そうか」
「主は本にわかりやすい」
「…」



そう言えば三成はあの白い亡霊は矢張り…と言うのでさてなぁと濁しておく。するとぶつぶつと何かを言って立ち上がる。




「奥!!!」
「やれ叫びしゃるな!!!」
「出て来い!!!!」
「三成…もうちと優しゅう」
「…出てきてくれ!」
「ひひひ」
「貴様は私の奥だ!役目ではない。」
「…?」
「私に貴様の顔を見せてくれ」
「やれ…三成」
「お、く」
「?!やれ!!!三成!っ?!起きよ!如何した!!!!」









死屍累々 16





「気が抜けたんだねきっと」
「ゆるりと寝たら治ろう」
「季節も2つ回ったし。もう彼女次第かな?」
「主の調子も安定しよったからなぁ」
「もー!口煩くてさ!そこが彼女らしいんだけどね。そろそろ返してあげようかな」
「ひひひ」

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死屍累々 15

(三成様…寝たかなぁ)
(…)




夜回りをしているといつもは閉まっている三成様の部屋の障子が半分閉まっていて珍しく寝たのかなと思ったのがことの始まりだった。でも蝋燭ついてるし…そっと障子の隙間から中を覗くと白い影が見える。ん?三成様また寝なかったのかよと思いつつもう一度目を凝らして中を見ると三成様は珍しく机で寝ている。ので、白い影は何なのか?!



(まさ、か?!お化け?!!!にしては怖くねぇ?嫌々、怖いって!ん?!何で三成様の羽織をかけるんだよ??)
「…」
(ば、バケモンだろうと何だろうと!三成様は俺が…)
「?!」
(!)
「…」
(わらっ?!)
「…」
(消えっ?!ぎゃゃゃゃゃ!!!!!)









「というわけなんすよ!」
「…」
「刑部さん!!!」
「我とて知らぬわ。…にしても、祟られたなぁ、左近」
「何で?!!!なんで俺?!!!」
「ひひひっ!哀れ哀れ」
「やややややややややややややめてくださいよ!マジで冗談になってねぇって!」
「祟られているのか?」
「三成様まで!」
「左近。落ち着け。なぜ貴様が祟られる?」
「そっすよね!ほら、刑部さん!!!」
「祟られているのは私だろう…」
「三成様?!」
「奥が恨めしくてたたってきたのだろう?」
「はてさて、何故そうなりよる?」
「当たり前だ。私のせいで苦しんで…」
「やっぱ!供養したほうがいいっすよ!奥方様は優しいから許してくれますって!!!」
「構わん。このままでいい」
「三成様ぁ!!!」
「早々に奥にあって詫びてやれる。もう一度、彼の顔が見えるのならそれにこしたことはない」
「!」
「供養はそれから…」
「だが、ニヤリと笑ったのよの?」
「そっす!それ見て俺気絶したんっすから」
「ニヤリとでもあの奥方が笑うか?」
「…そういえば」
「五島の方やもしれぬなぁ。よく、主と肌を交わしてた故悋気や情念は業が深かろう」
「ひっ!?五島って奴も?!いつの間にかいなくなってたけど」
「主が虫の息まで痛めつけたのよなぁ」
「あれの讒言に乗った私が一番悪いがあれも同罪だ」
「あれより、我も知らぬ、知らぬ」
「なら、あれは…」
「第一笑わぬよなぁ」
「三成様…」
「一度、偽りの中であれも笑みを見たが…そういう類のものではなかった。…刑部、目障りだ。どうにかしろ」
「あいわかった」
「お、俺は?!」
「祟られぬようになぁ」
「ひぃぃぃぃぃ!!!」








死屍累々 15







「あれから出て来ないところを見ると…ひひひ」
「っち!」
「まぁなぁ。奥方は祟るような性格とは違う故」
「あの女は」
「ん?奥方か?」
「五島だ」
「ああ。如何した?」
「あれは寝ている私に羽織をかけるようなおんなでは無い」
「主の女子を見る眼は本に無いなぁ」
「…」
「故に奥方かもしれんと…捨てきれなんだか」
「だが違うようだな…」

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死屍累々 14

「…」
「刑部さん!」
「ん?何用よ」
「可哀想っすよ!」
「やれ」
「三成様!あんなに憔悴して…寝てねぇし飯も食ってないんっすよ!」
「はてさて。そんな三成に勝てぬ主が心配することではない。」
「そっすけど!」
「はてさて。仕事は今まで以上に完璧よなぁ。」
「逃げちまいたいんでしょ?転寝していても魘されて起きちまいますもん」
「まぁ、なぁ。」
「やっぱり墓の位置わかんないんっすか?」
「言った通りよの。彼れは三成が離縁した以上豊臣とは無縁よ。生家も縁を切っておる故受け取りがおらぬ。野晒しにせぬのは賢人と我の情よ。」
「でもどこに埋められたくらい」
「分からぬものは我とてわからん」
「…」
「?」
「昔、奥方様の前で五島の悪口言ったんすよ」
「左様か」
「したら奥方様に叱られたんっすよね!俺わかんなくて、普通奥方様が怒るとこって言ったら」
「言ったら」
「『悪言も恨みも何もかも。願望があるから起こるのですよ』って」
「奥方らしい」
「俺、奥方様に願望ないのか聞いたんっすよ」
「濁されたか?」
「遠い昔に無くしたかもって…三成様を度外視にしても花や線香の一つくらいあげたいっす。きっと次は奥方様が笑える希望に満ちた生き方ができるって」
「ひひひ」
「刑部さん?」
「やれ、すまぬ。我とて同じよ。供養の一つしてやりたいが…これが世の習いよ。諦めりゃれ」
「でも」
「それに」
「?」
「それは本来三成の役目よの。我らはその後よ」
「…」
「不服かえ?」
「三成様は奥方様を嫌ってたから」
「そうよな」
「表情は確かにないっすよ!でも…困ってるやつ見つけたら身分関係なく手助けする優しい方で、ここの下働きのやつとかに本当に慕われてたんっす。俺、」
「三成が分からぬか?」
「あんな良い人を自害に追い込むなんて…三成様らしくねぇ」
「左様か…しかし、三成とて」
「?」
「彼れは人の機微に疎いのよ。他人でも己でもなぁ」







からりという音がするので顔を上げる。刑部が困ったような顔をして横に座るので少し待てとだけ呟く。
書類が書き終わる。これで秀吉様から頂いた仕事は終わった。あとは佐和山の方の仕事をと考えていたら名前を呼ばれる。



「すまん」
「入れ込み過ぎよ」
「佐和山の」
「大阪の仕事は終えたのか?」
「今、な」
「少し喰うて休みをとらしゃれ」
「…」
「皆心配しておる」
「いらん」
「三成」
「くどい!いらんと言えばいら」
「主がいくら食わず寝ずを突き通しても奥方は帰ってこぬ」
「!」
「良い加減にしりゃれ。皆、心配しておる」
「刑部…」
「…」
「寝ると、奥が出てくる」
「夢枕に立つのは縁の深い証拠よな」
「…違う。彼れは決して私の夢枕には立たん。彼れの死んだ顔だ」
「左様か」
「辛いと言っていた。ただ、楽しい人生だったとも」
「奥方らしい」
「私は彼れに楽しみを与えてやれていない。偽りなく、笑ましたことがない」
「…致し方ない。主が奥方を思う気持ちに気付いたのは最近故。」
「私は奥に嫌われても仕方がない男だ。…ただそれだけだ」
「三成よ」
「確かに秀吉様の一兵卒が畳の上では死ねん!少し喰うて寝る。」
「膳を持ってくる」
「すまない、刑部」






死屍累々 15






「ようやく食べて寝たんだね」
「はてさて。また悪夢で起きるのも時間の問題よ、問題」
「仕方ないね。彼にしたらこうなるとは思わなかっただろうから。」
「はてさて。西海の鬼から何と?」
「元就君の動きはないみたいだよ。まぁ、こっちの方が時間の問題かな」
「彼れも罪な女よ」
「そうだね。変わった子だったものね」
「ひひひ」
「そういえば」
「?」
「新しい正室の件」
「言うておらんよ。とても言えぬ言えぬ」
「僕も嫌かな?もう少し待ってみようか」
「やれ、賢人」
「三成君?寝てたんじゃ…」
「ついてきりゃれ」
「ああ。あそこへ行くのかな」
「慟哭よな。…憐れよ憐れ」
「そうだね…」
「しかし時はまだ…」
「もう少し様子を見ていうか否か決めようか」
「あいわかった」

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死屍累々 13

「三成!」
「刑部か…如何した?」
「…」
「書類はそこだ。」
「やれ三成よ。随分と落ち着いているようよな」
「さてな」
「ひひひっ。昔の主を見ているようよ」
「そうか」
「なら、いい事よなぁ。」
「心平静で秀吉様の為に命をかけて生きるのが私の最上だ」
「主のそれが、あれの命の上に立っているのなら、な」
「…は?」
「ぬしは本に何も聞いておらぬな。まぁ致し方ない。…あれは自害した」
「じが、い?」
「今遺体を運び出しているところよ。」
「何故だ!里に」
「あれは一度里をでれば帰れぬ宿命よ。」
「刑部!」
「何よ」
「はっきり言え!」
「はてさて、あれの家は少々特殊よ。女子でも一兵卒とて…いやそれ以上よな。訓練されておる。そんな女子を一つの駒してそばに置いたり、そばに送ったり。あれの姉は毛利に送られ…あれの弟にあたる。それを暗殺した。あれは…有事の際主の盾になるようにと守り刀として賢人が選んだ。ただ、誓約として生きて一人で此処を出る事はないと両家で取り決めてある。」
「…」
「主が離縁し、此処から追い出したのだ。誓約として…あの真面目なあれの事よ。自刃したのよなぁ。賢人の前で…喉をついたそうよ。苦しんでいた所を」
「…いい」
「ん?」
「もう、いい」
「左様か」
「奥、は?」
「はてさて、主の奥はそこな部屋よな」
「ちがっ!」
「あれは主が手放した故、もう我らには関係ない」
「!」
「今生の情よ。今、賢人と無縁墓に葬る支度をしておる」
「何処、だ!」
「さてなぁ。北、よ。主とあれの今生の別の部屋よ」







走って北へ行く。何故、如何してはなく。ただ、奥に会いたいと。最後に会った部屋。何食わぬ、いつも通りの無表情でいた奥が何処に行ってしまったのだろうと思って周りを見渡すと半兵衛様を見つける。黒い砂利石の上に立って半兵衛様は少々面倒な顔をして私をご覧になられる。ただ、その足元は洗い流されたと言っても残る血の跡と蒸せ返るその匂いに満ちていた。





「お、く?」
「きたのかい?まだ済んでないんだよ」
「半兵衛様」
「彼女らしいよね。掃除のしやすい砂利の上で自害するなんてね。」
「発言、する、許可を」
「良いよ。」
「奥は?」
「君の部屋だろう?」
「いえ…半兵衛様」
「…君は、その純粋な白さが魅力的だけど。こうなると可哀想でもあるね。今の、まぁ。まだ許可していないから遊び女の一人だけど、五島に何て言われたんだい?」
「私が、奥を、壊してしまうと」
「ふーん…」
「半兵衛様?」
「里から来た侍女で、ましてや姉妹である彼女が誓約を知らないとは思えないね」
「…!」
「まぁ、過ぎたことだよ。表向きには病死にしておくよ。正室は喪中は空座だ。」
「お待ちください!」
「何だい?」
「今、何処にいるのですが?」
「ああ。もう埋葬したよ。」
「?!」
「というか投げ込んだというのが早いかな?」
「半兵衛様…」
「冗談だよ…ただね、豊臣とはもう無縁の仏だよ。君には関係ない」
「半兵衛様!」
「…血の涙を流すほどなら最初から手を合わせて生きて行けばよかったんだよ」
「っ」
「彼方」
「奥…」
「もう直ぐしたら…いや、良いさ。」
「半兵衛様」
「最後の別れだよ。僕も恩も義理もあるからね…あっておいでよ」
「許可」
「いいよ。早く」





指差された場所には荷車に白い布がかけられている。
めくる勇気がない。




あの下にある事実を認めたくはない





「奥」




痩せてしまった容貌に首に巻かれた白い布が赤く染まっている。
正反対に、血の気の引いた青い顔。私はそれに触れる。





「おい、起きろ。奥。起きないか…」




『貴方にとって無数ある花の中の一番出来損ないでしょうが私にとって唯一の旦那様ですから』




「貴様は私にとって美しい花だった。枯れてはならないと大切にしたいが仕方の分からぬ私は他の花にばかり気取られて…大切な花を蔑ろにしていたのだな。」






『ですが、楽しい人生でもありました。私としては精一杯生きましたから…ここで生死別として別れたとしても未練はありません。』





「私は後悔と未練ばかりだ。…奥、起きてくれ。」





『旦那様』






「奥」
「三成君…」
「奥!!!!」
「もう時間だ。」
「ま、て!連れて行くな!!!」
「頼んだよ」
「待て!待ってくれ!!!奥!!!!奥!!!!!!!」








死屍累々 13









「三成君は?」
「昔以上によく仕事をしておるよ。」
「食べず、寝ず…ね。」
「致し方あるまい。あれが元凶故」
「手厳しいね」
「五島という女も処分した。彼れに正妻はやらぬ、やらぬ」
「まぁね」
「主とて…」
「看病してくれたことかい?そうだね。口煩いし…でも優しい良い子だったね」
「ひひひ。」
「秀吉はこの件僕に預けてくれたよ」
「左様か」

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死屍累々 12

朝、左近の騒がしい音で目を覚ます。昨日は久々に褥を共にしたせいか瞼が重い。何よりも初めて見た奥への涙と苛立たしさの為に呼び寄せた五島を抱いた事への罪悪感とで気分が頗る悪い。不意に横を見ると寝ている五島。よく、似ているのだ。私の奥に。


『姉に恋をしていらっしゃるのでしょう。私を姉だと思ってくださっても構いません』



口からついて出た愁傷な思いと裏腹に求める所は大きな女だ。衣服に宝飾品。全く奥とは違うのだ。






「探せ!」
「今侍女たちが探しています!ただ、此処は大きいんっすよ。絡繰も多いから怪我してないか心配で」
「門番がいるはずだ!それに聞け!」
「あ!そっか!!!流石三成様!俺も行ってきます!」
「ふんっ!」
「三成、様?」
「早く着替えろ」
「姉が怪我をする事などありませんよ」
「…如何いう意味だ」
「あの人はただの…いえ。私から言う言葉ではありません。竹中様か大谷様に聞けばすぐに教えてくださいましょう」
「…」
「きっと、北へ行ったのでしょう。この部屋と姉の部屋はすごく近いから…」
「っ!」





その時初めて気が付く。白痴と言うには余りにも稚拙で、残酷な行為を私はしていたのだ。




「北」
「三成様」
「奥」
「私を姉だと」
「違う!触るな!!!」
「なら、何故」
「何故」
「姉を愛さないのですか?」
「愛す?」
「三成様?」
「愛するなど…私に理解できるはずもない」





絶望しなくてはならない。恋慕親愛の類の情を私は理解しかねる。幾ら、あれを思っても私はどうすればいいのかすら、解らず終いだ。慈しみ大切にする事以上に傷付けて壊してしまう事しかできない。


私は、あれを、どう、したい?






「貴方様は姉を見た瞬間に恋に落ちたのでしょう?」
「黙れ」
「でも、どうすれば分からない。大切であればある程貴方の両腕は姉から遠のく。傷つける事しかできませんもの」
「黙れ!!!」
「だから、私が丁度いいのですよ」
「何、を」
「姉と似た外を持つ、大切でない女の私が」
「…」
「傷つきもせず、壊れませんよ」
「…だが、貴様は奥ではない」
「ですから…私を奥にしてしまえば姉を貴方が壊さずに済みます」
「!」
「声も匂いも何もかも姉そっくりな生き人形でございますよ」
「っ」
「さあ、私の腹にあなたの稚児を、旦那様」









死屍累々 12










「…」
「此処にいたのか」
「…」
「また喋らんつもりか…まぁいい」
「?」
「離縁状だ。」
「はい」
「…此の期に及んで無表情か」
「長らくお世話になりました」
「…」
「五島を宜しくお願い申し上げます」
「あれを正室におく」
「はい」
「今すぐ、この大阪城から出て行け」
「あいわかりました」



そう言って私は一礼すると立ち上がる。いるものは少ない。嫁入り道具はそのまま五島のものとなるのだろう。荷物なんてあってないものだ。そして顔を上げると旦那様はもういなくなっていた。


あっけのない話だな思いながら笠を探す。いや、これも要らないか。




「間に合ったかい?!」
「竹中様」
「間に合った!」
「いえ、離縁状はいただきました」
「君がいればなんとかね…にしても行くあてが有るのかな?」
「さぁ。…お約束通りなら西に参るだけですよ」
「そうだね。でも…君はそれでいいのかい?」
「いい悪いも。一人で生きて大阪を出られず、と仰ったのはあなた様です」
「…」
「覚悟は出来ておりますよ」
「待ちたまえ!」
「介錯を」
「っ!!!」

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