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変換なしの雑食夢

ran

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紅緋

熱が下がって少し経った頃、離縁状を渡される。
目の前が真っ暗になるかと思っていたのそうでもなかったのは偏に三の姉様がいる事と三成様が一度も来られなかった事だろう。体の事も気がつかれたのだろうし。いろいろ加味して今の落ち着きがある。
離縁状を畳み松に渡して頭を下げる。「お役に立てず申し訳御座いません」と兄上に言えばまずは体を愛えとの事。そしてここにいれば良いと昔の様な口振りで仰るので私は涙を零してしまった。




「姫様」
「もう姫になってしまったのね」
「…申し訳ありません」
「松のせいではないのよ。全部私の所為」
「落ち着いてくださいませ」
「体の弱さも意志の薄弱さも。全て私の所為だから」
「その様な」
「次のお相手はきっと三姉様ね。あの方ならお似合いでしょうに」
「ですが!これは石田様のご意思ではないのですよ」
「治部嫌いの松が珍しい」
「…」
「でもこれは殿の筆跡。まさか忍びに書かせたわけでもありません。この色の紙は懐かしいものですね。もう、見る事はないでしょうに」
「姫様」
「もう離さないと仰ったのに。私だけを妻にしてくださるとおっしゃったのに…男の嘘を見破れない私が誰かの妻になってはならないのでしょうね」
「っ」
「酷い世だわ。酷い男。何よりも」
「泣かないでくださいませ」
「馬鹿で哀れで愚かな私だこと」










「三成」
「…帰ってきたか?」
「如何いう事か…我がおらぬ間に何があった?」
「奥…いや姫に離縁状を渡した。」
「なぜその様な!」
「姫の身体を嬲った所為だ。子を成せず休息を与えず食事の確認も疎かにしていた。痩せて窶れる様に気づかず、ただ、己の欲のみを突き詰めた罪だ」
「姫は?」
「此処に来てより会っていない。」
「何故?…三の姫君か」
「其れもあるが…刑部は姫が熱が出た折に食すものを知っているか?」
「粥、よな。卵を入れたものよ。幼き折より病の折はそれ故。」
「私は知らなかった」
「…」
「落ち着いて考えてみれば私は姫の事を知らん。何が好きで何を嫌うかすら。姫様は逆でわたしの好みをよくご存知だった。…刑部」
「何か?」
「私は姫に貴方以外愛さぬし妻にはしないと言っていた。だが三の姫君か姫の妹姫を嫁すそうだ。私は」
「…」
「体を傷つけ無理をさせ続け苦しめた上に嘘をつくのだ。嫌われて当然だ」
「泣くな、三成」
「何故あの時姫を大事にしていなかったか?帰った折より執務室に篭り剰え休んでいた姫に罵声をかけたのか。いや、その前より文も書かず労らぬ私が何故姫を己のものにできると思ったのか!」
「やれ」
「如何かこの哀れな男を断罪する許可を!慈しみ唯一の家族として愛すると誓いしこの口唇で貴方に何を謝罪すれば良いのか。いくら言葉を並べても全てが偽りとなるのは私自身の所為!」
「みつな…ん?」
「如何したのだ?」
「治部?!此処にいますか??」
「はっ。控えております!」
「如何された。ぬしまで血相を変えるとは珍しい」
「姫が!」
「?」
「御自害遊ばれた!」
「!」
「まこ、とか?」
「まだ意識はある!早く行きなさい!!」
「三成!」







紅緋








「姫!!!しっかりして!目を開けて!!!」
「はん、べえ」
「如何して?!なんでこんな事に?」
「まつ…は?」
「姫様!」
「あと、おいは。ゆるしません。あに、さま。まつをおねがいしま、す。」
「心配するな」
「何を言ってるの?医師もくる。きっと良くなるよ!春になったら皆んなで花見に行こう!君の琴を島くんにもたせて」
「ほん、に。たのし、そう」
「だから、ね!目を開けて」
「はんべぇ。」
「何?」
「じぶ、をみちびいてあげて。ぎょうぶだけではきっと、」
「姫?!」
「三成はまだか?!」
「あにうえ、おやくにたてぬ、いもうとでもうしわけ」
「いい!お前ほど兄思いの妹がいるか!目を開けよ!姫!!!」
「姫様!!!」
「姫…」
「ああ、と、の」
「あ、何故?如何して?!この様な!!!」
「ぎょうぶを、こまらせませぬように」
「医師はまだか!姫!目を!貴方の美しい尊眼で私をみてください!」
「ぎょうぶも、むりをしないで」
「…ああ。姫もはよう目を開けぬか。我と囲碁を指す約束が残っておる」
「ああ、みなが、そくさいで。たいがんをかなえられますように」
「ひ?!」
「姫様?お目を」
「っ」
「お目を開けてくださいませ。姫様!」
「…」
「あああああああああああああ!!!!!!!」

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二藍

「姫の容態は如何だ?」
「あ、ああ。秀吉、か。過労と栄養不足といったとこらしい」
「栄養不足?!」
「松に確認したら食事は十分頂いているから彼女の性格かな?」
「そうか。」
「少し体の弱いところがあるから…」
「吾より夫より心配しているな」
「僕が一番可愛いと思う妹だからね」
「そうか」










薬の所為か疲れの所為か。思いの外深く寝てしまった。
松、と呼べばお疲れが出たのですと声が聞こえて思わずふふふと笑ってしまう。不意に視線を変えると銀髪が見えて目を見開いてしまう。何故か枕元に半兵衛がいて峠でしたの?と聞いてしまった。



「のわけはないだろう?」
「だって」
「僕だって心配くらいはする。」
「ご多忙中でしょうに」
「ある程度にね。」
「半兵衛らしい。」
「まだ熱があるね」
「熱」
「無理しすぎだよ。休めなかったのかい?」
「奥方様は真面目でいらっしゃいますので。手隙の時は領民の様子を見に行ったりなさっておいででした。」
「休んでからにしなよ」
「と言いましても。性分なのでしょうね。ふふふ」
「早く死んでしまう気かい?」
「長生きできましたらいいのですけど。」
「今回は体調が戻るまでここにいる様に。」
「殿の世話は?」
「三のに頼んでいる」
「そうですか」
「姫」
「いえ、三の姉様に御礼申し上げませんと」





そう言うと半兵衛が頭を撫でる。童に戻った様ねといえばその通りだと珍しく声が柔らかい。ゆっくりと瞳を閉じて微睡むと誰かが入ってきた音がする。誰かしらと瞳を開こうとした瞬間それを遮られて気にしなくていいから寝なさいと言われる。目を開いたところで視界は暗い。それに身体もついてはいかない。お言葉に甘えて私は眠るのだった








二藍








「あら兄様が看病とは珍しいですね。」
「そうだね。…三成君聞きたいことがあるのだけれども」
「…は」
「姫は過労と栄養不足らしいね。」
「は?!」
「いや、ね。これは松から聞いている。姫は自己犠牲精神が凄いからね。自己管理ができていないは彼女のせいだけれども」
「半兵衛様?」
「もしかして子が出来たのかと思ってね。確認させてもらったよ。」
「!」
「如何いうことかな?何故、姫は子が出来ないかもしれない程度に傷ついているのか」
「それ、は」
「その後も夜伽させていた様だけれども…あれほど言ったよね。姫は体が僕たちの様には出来ていないと」
「…」
「思った以上に傷つきやすくてボロボロになってしまう。何があったのか松にきつく問いただしても口を割らずにいた。彼女をと吉継くんが要請してきた辺り何かあるのだろうと思っていたけど。こんなことになっているとは思わなかったよ。」
「申し訳ありません」
「以後、完治するまで大阪に止め置く。君の武将としての活躍はこれに関係しないから安心して。現に秀吉は他の妹を送ればいいとだけ言っていたくらいだから。」
「なっ?!」
「今から選定に入るよ。吉継君には後で伝える。彼は今は毛利に行っているからね。ああ。そうだ。三のが良かったらそれでも良い。」
「お待ちください!私は」
「…ん」
「姫」
「…はん、べえ?」
「ごめんね。煩かった?」
「うんん。わたし、おきたらあれたべたい」
「あれ、ね。用意させておくよ」
「ありがとう」
「奥」
「寝た、ね。三成君、あれってわかる?」
「いえ」
「三のは?」
「たまご粥でしょ?熱出たらいつもそうだったから」
「正解。ね、君がいかに姫を大事にしていなかったかよくわかったよ。姫は偶像でも虚像でもないからね。…面会は三のか僕が吉継君と同伴で頼むよ。一人では合わせる気はないからね。」
「お待ち下さい!!!半兵衛様!半兵衛様!!!!!!」

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薄紫

「やあ!姫、久し振りだね」
「半兵衛」
「…?!」
「半兵衛様!左腕三成帰参いたしました」
「ん。三成君も。」
「如何致しましたか?」
「いや、別に。そうだ!僕の妹が君の帰参を待っていたよ」
「はい!」
「…あれ?行っちゃった。あいも変わらず彼らしい。それより」
「…ふふふ。貴方の目は誤魔化せませんね」
「当たり前だよ。そうだね。うん。もう休みなさい」
「ですが兄上に」
「秀吉には来る様に伝えるよ。君の局はそのままだ。そちらに行けば良い」
「ありがとう」




そう言うや否や刑部様が如何した話よなと聞いてくるので半兵衛がにこりと笑って体調がすこぶる悪いんだよと私の代わりに言う。刑部様はそれを聞いてびっくりなさった後いつからかと尋ねられるので曖昧に頷く。




「随分痩せたね。無理をさせているのだろう。三成君相手なら夜伽だけでも相当な苦労のはずだからね。うん、熱もあるね」
「奥」
「帰参されて間もない殿や刑部様にご心配かけるわけには」
「君らしいけどね。うん。やっぱり横になりなさい。少しでも休まないと」
「でも」
「姫」
「ああ。秀吉」
「兄上」
「半兵衛の言う通りにせよ。休め。吾の命ぞ」
「…あいわかりました」
「にしても、三成君も気づいていそうなのに」
「いえ、お忙しかったので」
「そう言うものかな?うん。では行こう」
「きゃ」
「賢人よ」
「多分歩くのも大変だったと思うよ。僕が連れて行く。松」
「はい」
「竹に言って医師を」
「あいわかりました」
「半兵衛」
「ごめんね。いろいろ聞いてる。幸せになったと思っていたけど辛かったね」
「本に皆大事にしてくださいます大変なことなど」
「妹に行かせようか?」
「?!」
「あれなら躱したりしながらいけるだろう」
「…兄上と貴方様。殿の御心のままに」
「わかった」






「あれ、は」
「兄様ね。いたし心配されていたから」
「私の奥をですか?」
「ええ。実の妹よりも大切になさっていたから。貴方と縁を結んだ後も良く文のやり取りをなさっていたでしょ?」
「ええ」
「出来れば己の嫁にしたかったでしょうに」
「?!」
「私たちは若紫と言ってましたもの」
「そ、の。」
「ああ。とは言っても何もないのよ。本当に。治部」
「は」
「そんな顔をしないの。さぁ参りましょう」







薄紫









「ああ。三成君。良いところに」
「半兵衛様」
「当分姫は秀吉が預かるよ」
「なっ?!」
「正式な事はまた後で言うから。三…」
「数字で呼ばないでくださる?」
「君はそれで十分だ。三成君の滞在中の世話を頼むよ」
「はい」
「その様な?!恐れ多い」
「命令だからね。」
「お、お待ち下さい!奥は?!」
「…君は気づかなかったのだろう?あの子が随分と無理をしていたことを。まぁ君らしいのだけど」
「?!」
「少し休ませるだけだよ。いいね」
「…」
「三成君」
「…あい、わかりました」

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白銀

「やれ三成」
「如何した刑部」
「帰ってきて早々、執務室に篭ったか」
「?」
「5日程になる。奥に会わしゃたか?」
「いや」
「ぬしに小言は無意味思うが二週間の帰参がひと月になり、挨拶そぞろに部屋にこもりよるのは如何かの」
「何が言いたい?」
「ぬしの愛しき奥方が賢人の妹姫に悋気してはならぬからの」
「何故だ?!あの方は尊敬できる方だ!教えを乞うて何がいけない」
「そう言う話ではない。ぬしも以前賢人に悋気しよったであろう?奥は己の心内を露わにせぬでなぁ。やれ、ぬしは致命的に不器用。奥は我慢強すぎる」
「そんな下賤な感情はない」
「下賤、のう」
「尊敬の念のみだ。あの方もそうであろう」
「(なまじ、たちが悪い)」
「…如何した?」
「いや、会いにいかぬのか?」
「まず風呂に入りひと眠る。」
「左様か」




障子の向こうが騒がしくて目が醒める。寝着を整えながら松の名を呼ぶと殿のお声が聞こえるので困った顔になる。多分休息と伝えてそれでも入ろうとなさったのだろう。少しお待ちくださいと打掛を取る。これ以上は休むことはできないだろう




「申し訳ございません」
「何故こちらで休んでいる?!」
「え?」
「寝所は横だ」
「あ、ああ。申し訳ございません。すぐに支度を」
「昼間から休むとは如何いうことだ?」
「その」
「執務や実務がない。褥すらないのだからきちっと起きていろ」
「なっ?!」
「松」
「…如何した」
「いえ、申し訳ございません」




興がそれだと言って立ち去るあの人は大阪に行く前とは別人の様で苦笑してしまう。成る程刑部様の言った致命的に不器用というのはこういう時にもわかるらしい。




「松」
「何で御座います」
「興が逸れるとこうなってしまうのですね。」










白銀








「奥」
「はい」
「妹姫様の話だが」
「はい」
「あの様に素晴らしい女は見たことがない。来週また、大阪に行く」
「そうで御座いますか」
「あなたも来い」
「…」
「如何した?」
「殿の思し召しなれば」

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菫色

「奥は半兵衛様の妹君を知っているか?」
「ええ。どちらの姉様でしょうか?」
「私とそう年の変わらない…半兵衛様と同じ白銀の髪と菫色の瞳の」
「でしたら三の姉様ですね。博学であられて私も手解きを受けました。先達ての大阪帰参の折にお会いなさったのですか?」
「そうだ。あの美しいまでに洗練された学識は賞賛に値できる。その上、半兵衛様と同じ剣をお使い遊ばされる様は何ともたとえ難く素晴らしい」
「そうでございますね。三の姉様はお優しくもあられて」
「ああ。私の様な浅慮を窘めて下さった」
「ふふふ」
「少し文を書いてくる。あの方の進軍の手助けをしなければ」
「では硯箱を」
「いやいい。執務室に行ってくる。ここにいる間考えていた草案がいま纏まった。」
「では無理をなさいませぬ様」
「ああ。ではな」





大阪から帰城なさって直ぐにそう仰って執務室に篭ってしまわれた。こうなっては私どころか刑部様ですら休息させるのに一苦労だ。





「帰ってきて早々悲しき限りよな」
「御政務で御座いますれば…御目障りにならない様にしなければいけませんね」
「にしても、度が過ぎよう」
「ふふふ」
「やれ、本来はぬしが怒るところよ」
「いいえ。私が憂うことない様にお心遣い頂いておりますのに」
「やれ、奥」




そう言うと困った様な顔をなさるので私も同じ様な顔をする。その表情は暗に他の女と遊んでいるのに良いのかと窘められている様で私も困る。三の姉様は私が見ても博学で美しくそして御強い。惹かれるのは無理のないことでしょうにと内心思いながら刑部様を嗜める。




「実際問題として。御子が産まれませんでしたら側は必要でございましょう?三の姉様がというわけではありませんが。覚悟はしているのですよ。」
「やれ、奥」
「ご寵愛を失わぬ様に必死な私と三の姉様なれば魅力が違います。」
「またその様な」
「ふふふ。覚悟はいつしていても良いということです。今すぐなのか先なのか。」
「来るか来ぬかもわからぬがなぁ」
「そう、でございますね」
「奥?如何した?」
「いえ何でも。そんな事より刑部様」
「ん?」
「無事の帰城何よりで御座います」






菫色








「奥」
「刑部様はお気づきになったかしら?」
「いえ」
「ならいいの。松。少し横になります」
「では殿にその様にお伝えしておきます」
「いいえいいの。執務室側ではなく私の部屋と言って与えてくださった部屋に床を。邪魔してはなりませんから」
「晩になって気が付かれるとそこから移動するのは些か」
「良いのよ。」
「では直ぐに」

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