忍者ブログ
変換なしの雑食夢

ran

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

言えない三成 11

「おい」
「はい」
「起きていたのか?」
「え?ええ」
「…」
「もう少しで朝餉が出来ますよ」
「…ああ」
「そんな所で寝っころがらないでください。」
「ん」
「石田様」
「それはもういい」
「?」
「夫婦だ」
「?!」
「なんだ?」
「いえ…ですがまだ許嫁ですよ」
「それでもだ」
「なんとお呼びすればいいですか?」
「三成」
「恐れ多い」
「佐吉」
「…佐吉様?」
「なんだ」
「(なんとまぁ嬉しそうに笑う)お召し物が汚れますよ」
「いい」
「左様ですか?」
「…おい」
「はい?」
「そんなに食えん」
「あら?そうでございましたか?」
「…誰の差し金か見当はつくが半分でいい」
「はい」
「…」
「もう少しで出来ますからね」
「おい」
「?」
「お前はこのままでいいのか?」
「はい?」
「いや、一姫として」
「お嫌いでしょ?」
「す、きではないが」
「私も嫌いです」
「嫌いとは言っていない!」
「往生際の悪い。嫌いでしょ?あれだけ言っていたのですから。」
「ぐ…」
「面倒向かって嫌いといったではありませんか」
「そ、うだが」
「歯切れの悪い!」
「その、だ。今考えてれば貴様が一生懸命演じていたと思えば…いじらしくなってきた」
「…呆れた」
「ぐ!言うな」
「あなた様はどんな私でもお好きなのですね」
「当たり前だ!…お前は」
「?」
「違うか」
「…不用意に刀振り回していれのは如何かと思いますが」
「!」
「如何致しましたか?」
「な、ぜ知っている」
「知るも何も徳川様追いかけるじゃありませんか」
「…家康!」
「ですが」
「?」
「いい所も悪い所も全て貴方様なのですから。愛おしいものですよ」
「?!」
「ふふふ」
「笑うな。」
「いえ。」
「おいまて!増えている!」
「目下はこれすべて食べるあなた様が大好きですわ」







言えない三成 11







「やれ、一体全体どうしたものか?」
「いえ、たんと朝餉を食べさせたらこうなりました」
「左様か」
「刑部…貴様」
「はてさてなぜ我を威嚇する?」
「たくさん食べさせたのが大谷様のせいと思っておられるようですよ」
「ひひひ。違う違う。我は食べれば良いと言ったのよ」
「何?!」
「たくさん食べさせたのは竹中様のご達示です」
「半兵衛様の?!」
「一度にどれだけ食べられるのか見てみたいと」
「悪趣味よの」
「大盛りと言っても成人男性より少ないのですがね」
「三成よ、朝から災難と言いたいが」
「如何した刑部」
「いや、なに。膝枕とは優雅なものと思うてな」
「?!」
「暴れますな。お加減が悪くなりますよ」
「だ、が」
「なにを咎められましょう。許嫁でございますよ。私の膝の上で寝られるのは貴方様の特権でございましょう」
「ぐ…」
「ということでお休みなさいませ」
「ひひひ。しっかり尻にひかれておるなぁ」

拍手

PR

言えない三成 10

刑部様が石田様をお怒りになっているのを尻目に私はせっせと草抜きをする。この時期の雨はありがたい反面雑草が生い茂って嫌になる。
ひと段落をつけて体を伸ばしたときでもあちらはまだ終わらないらしい。



「くどい!」
「我とて言いとうないわ!」
「ぐ…」
「本にぬしは言うに事欠いて!何故素直に言わん!」
「失礼します」
「おお!ぬしもちと言ってやれ!」
「お、落ち着いてください。大谷様。ぐるぐると後ろの鉄が回っております。石田様…何を此処まで大谷様を怒らせてしまったのですか。」
「刑部はいつもこうだ」
「三成!」
「石田様…何を拗ねておられるのか知りませんがご友人に対してそのような態度は如何かと思います。大谷様はいつも優しく親切ではありませんか」
「姫っ!やはり我が三国一の婿を探してこよう」
「刑部!」
「ふふふ。まぁ一服なさってください。」
「…茶か。あいすまぬ」
「…」
「石田様?」
「三成?」
「私は」
「「?」」
「お前のこういうところが好ましい。」
「は?!」
「日常を彩ってくれる。華やかでもなく飾り立てるわけでもないのに…」
「…」
「お前がいて刑部がいれば私人としての私は満たされる。そう、お前が臆せずかと言って媚びず美しい笑みを浮かべて私の名を呼んだときそう思った」
「…石田様?」




そう言うと指先を持たれる。この時、こんな感じに触れられること自体初めである事を気がつく。



「ずっと言いたかった」
「…は?」
「私は言葉が足りない」
「はい」
「否定しろ」
「ふふふ」
「…」
「石田様?」
「私はお前の笑顔が好きだ。」
「え?」
「私の横で、そう笑っていてくれ」
「…」
「おい」
「もし私が兄様の妹ではなかったら」
「?別に今でもどうでも良い。大体姫のふりをしているお前は好ましくない。抑揚のないつまらないといった声は聞くに堪えん。」
「そうでしたね。石田様の姫嫌いは有名でした。」
「すべて捨てて私の元に来い」
「…兄様も?」
「秀吉様は崇拝しろ。…おい、笑うな」
「刑部様…くくく」
「ひひひひひひ」
「おい!」
「お腹が痛い!」
「我もよ。本に言葉が足りない」
「?」
「声をかけられた瞬間に一目惚れよ」
「そう言っているだろう?」
「わかんな…くくくくく」
「笑うな」
「ふふふ。私、綺麗でもないし朴訥ですよ」
「誰が言った!!!お前は何よりも美しい」
「ぬしよ。ぬし」
「…言ったか?それで怒っていたのか?!」
「ふふふ。今はもう」
「笑って言うな」
「拗ねないでください」
「拗ねていない!」
「お嫁さんにしてください」
「笑う…は?」
「お嫁さんにして下さい」
「嘘ではないな」
「嘘で言いませんよ」
「…刑部」
「本に疑り深い男よ。」
「っ!?」
「顔真っ赤ですよ」
「お、お前が!」
「?」
「…いや、いい。刑部?どこへ行く?」
「保護者会よ」
「「?」」






言えない三成 10











「新居は此処でいいです」
「だがのう。狭い」
「勿体無いし…戦にお金入りますから」
「ぬ…」
「石田様は?」
「同じ事を言う」
「ふふふ」
「いやはや。如何するか」
「此処にいたら孫の顔見れるといえば決着つきますよ」
「左様か」
「あら、石田様?」
「おおおおおおおおお前は!」
「何やら叫んでおりますよ」
「はてさて」
「まままままままご!」
「ああ。いつかは子が欲しいでしょ?」
「…」
「どちらが初心かわからんなぁ。」

拍手

言えない三成 9

「おい」
「あー…お帰りなさいませ」
「寝ていろと言っただろう?」
「いえ…だって」
「言い訳は良い。床に戻れ」
「はい…」
「そんな顔をするな」
「もう少しで出来るんです」
「何がだ?」
「石田様の着物」
「…」
「いえ、あのですね。昨日横でお仕事なさっていたでしょ?その時にこの色も似合うなぁと思ったら…いてもたってもいられなくなって」
「はぁ…」
「ごめんなさい」
「構わん。が、熱が下がってからにしてくれ」
「?」
「熱で魘されるお前は見たく無い」
「ふふふ」
「?」
「やっぱり優しい」
「変わり者め」
「もし」
「どうした?」
「とても綺麗な女性が目の前に現れたらどうします?」
「何処のものかと詰問して事によっては…」
「物騒ですよ!」
「何故だ?」
「相手は女性ですから、ね!」
「…お前は知らんだろうが女で銃の使い手だったり弓、太刀の使い手だったりするは多々ある。」
「そうなんですか?」
「詰問するのに越したことは無い」
「…じゃあ、石田様を恋しく思う綺麗な女性が目の前に現れたら?」
「…」
「?」
「それはお前か?」
「は?!いえ、違いますよ!」
「なら、くだらん。」
「…」
「私はお前が良い。」
「いや…だって」
「何だ?!」
「私綺麗じゃ無いですよ」
「?」
「頭もそこそこですし」
「…ああ。そういうことか」
「?」
「ならハッキリ言う。私はお前が畑でちょろちょろ働いているのを見たときには全く興味はなかった」
「…」
「ただ毎日毎日、飽きもせずクソ真面目に。朴訥に田に向かい微笑むお前に興味が出てきた。それだけだ」
「…」
「何だ?」
「…何でも無いです」
「ならどうして不服げな顔を…おい!」
「寝ます。おやすみなさい」








言えない三成 9







「やれ、起きておるか?」
「…大谷様」
「拗ねておるか?三成が困っておった」
「いえ…ですが」
「ん?」
「今まで居ない田舎娘が物珍しくて嫁にした…みたいですから」
「は?」
「…少し寂しかったので。すいません。」
「(あやつまた何を言ったか?!)…謝らないで良いが、婚儀如何いたす?」
「?」
「三成の嫁に」
「成りませんよ」
「?!」
「一時的な気の迷いみたいでしたから…器量好しを見つけてください」
「いや、そのよ」
「朴訥か…

拍手

言えない三成 8

あれからどれくらいの日にちが経っただろう。とんでもなく恐れ多い告白を聞いて答える間もなく出陣した。勝ち戦といえこんなにも大阪に帰りにくい日は今までなかった。いつもなら嬉々として帰るのにと思えば顔に出ていたらしく、刑部に苦笑されてしまう。


あれが姫様だった。



そう言われれば声がそっくりなのだ。刑部も何故気がつかなかったのだろうかと頭を抱えるほど私達は気がつかなかったのだ。そう。それならいい。それだけなら。


私は、あれに姫様が如何に嫌いかを言っていた。自他共に認める程度に私は姫様が嫌っていた。知識だけで力はなくある日突然姫様となった無力な女。それが私が姫様を嫌う最大の要因だった。



のに、






『私にとって石田様は…何ていうんだろう?怖いとか恐ろしいとかでは無くて日々の何気ない優しさであったり穏やかさであったり。心地よさ!そう、心地良いんですよ』




そう笑うあれを私は想っている。
よく笑い、よく働き、私を支えてくれる彼女を私は今でも妻にしたいと思っているのだ。




「やれ、三成」
「刑部か?何だ」
「ちと食すなり休むなりいたせ」
「今はいい」
「はてさて困った困った。我ではいかぬようよの」
「何の話だ」
「彼女の話よ。倒れたと聞いて急いで帰ってきたのに良いのか?」
「…知らん」
「最奥に閉じ込めてしもうては容体も聞き出せぬなぁ。賢人も苦戦しておるようよ」
「そうか」
「そわそわするで無いわ。ぬしもとっとと嘆願致せ」
「しか、し。そのだ。私は」
「ぬしが姫を如何に嫌うておったのか皆知っている事よ。」
「ぐ…」
「包み隠さず言っておるのだ。逆に出世欲の無いものとして好まれておるやもしれんぞ」
「知らぬとはいえ悪言を言ったのだ。嫌われている。」
「ぬ…」
「私が蒔いた種だ。仕方が…ん?」
「…誰か来たか?」
「そこにいろ、刑部。」
「あいわかった」




ザサリという音がする。刀を持って立ち上がり外を伺うと、彼女の作った畑に誰かがいる。此処は秀吉様の私室の一つだ。軽々しく入れる場所では無い。のに。剰え彼女の畑に何かをしようとしている輩は残滅するしか無い。






「誰だ!」







戸を開けて叫ぶとぼうっと白い着物が浮かぶ。







「あ…」








少し痩せていて、頬を染めている。
それでいて顔色の悪い、彼女がそこに立っていた。







言えない三成 8








「やれ三成。もう済んだ…?!」
「刑部!布団をひく!!!ずれろ」
「あ、あいわかったが…何故此処に?」
「畑を見に来ていた。おい!少しおろすぞ!」
「石田様ぁ〜」
「素足で歩いてくるやつがあるか!!!まずは水!」
「待て三成。湯を張ってきた。」
「すまん…足を拭うぞ」
「ん…」
「熱いか?!」
「うんん。気持ちいい…」
「ひひひ。人の気も知らぬで呑気なものよ。我は太閤と賢人に言ってくる。それまで手出しはしまいよ」
「するか!おい…布団だ」
「…うう」
「水は飲めるか?」
「石田、様」
「どうした?!苦しいか???」
「ごめんなさい…」
「は?」
「嘘、ついて」
「私が勝手に勘違いしただけだ!謝るな。…私こそ、すまない」
「?」
「姫のお前のことを」
「あれ、私嫌い」
「は?」
「此処にいたときの私、の方が。好き」
「…」
「また、来ていい?」
「…勿論だ」
「ふふふ」
「おい」
「?」
「やっぱりお前が良い」
「???」
「私の妻になってくれ」

拍手

言えない三成 7

あれから三日三晩高熱にうなされた。5日目でようやく記憶がある。それ以前は曖昧で夢現つの境界がわからなかった。
ここはと尋ねると医者が少し笑って兄の私室の最奥である事を告げる。あの半兵衛様ですら入れない場所と言われてホッとする。小言や暴言を聞かずに済む。からりと扉が開くと兄様がいて私は笑う。



「如何だ?」
「まだ予断は許しませんがひとまず峠は越えたと」
「そうか」
「御心配おかけいたしました」
「何も考えず療養しろ」
「はい」
「…にしても」
「?」
「知恵熱とは」
「笑わないでください」
「すまん。ただな」
「?」
「いつも我の後を付いて回った妹が…もうそんな歳になったのだと驚いている」
「そりゃ…兄様!」
「すまぬな。くくく」
「もう!…ですが」
「?」
「嫌われてしまいました。」
「姫」
「彼の方の私嫌いは有名でしたもの」
「それは姫として創ろっている貴様によ」
「それは…そうかもしれません。」
「確かに奴の姫嫌いは有名だ。だが唯一興味を示した女も有名だ。」
「兄様…」
「吾を信じよ。悪い様にはせん」
「…ふふふ」
「ん?」
「悪者の台詞ですよ」
「…確かにな」










言えない三成 7







次に目が覚めた時には見舞いの品がたくさん届けられていた。驚く事にそれは半兵衛様と大谷様からで思わずたじろいでしまう。如何しろとといえば侍女が笑いながら二通の紙を手渡してくれる。一つはひねくれ者でもう一つは至極心配してくれている内容だった。やはり大谷様は優しい。急に戦が始まったため佐和山に帰った事。勝ち戦で帰る途中に私が熱で危篤な事を聞き及んだ事。痛く皆心配している事。それを書いてくれている。それだけで有難く感謝するしか無い。ただ、石田様の事は書いていなかった。無事、なのだろうか?食事をとっているのだろうか?




「姫様」
「はい」
「お熱が上がっておるようですよ」
「…かも、しれません」
「お休みくださいませ」
「まだ治らないかしら?」
「十分にお休み下さらないと拗らせてしまいますよ」
「はい」










夢を見た。畑の夢だ。


目を覚まして、物凄く不安になる。
作物が枯れてしまっているかもしれない。いや、畝ごと取り壊されているかもしれない。





「誰も居ないわね」





ふらつく足取りで私は部屋を出て行くのだった

拍手

        
  • 1
  • 2
  • 3