忍者ブログ
変換なしの雑食夢

ran

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

落ち着かない三成 10

「如何でしたか?」
「…」
「奥方様?」
「え?いえ。その…びっくりしてるわ」
「そうでしょうね。真逆一緒に入るだなんて」
「…」
「お話も弾んでいませんでしたし」
「そうね。…でも」
「?」
「そういう人なのよ。きっと。でも駄目ね」
「え?」
「浮かれてしまいそうだけども。…きっと今だけだもの。」
「…」
「殿方と私たちでは色々違うでしょ?要らぬことをお伝えしてしまったわ。…浅ましくお思いでしょうに」
「そうでも、ないみたいです」
「?」
「今まで毎日、供養していたみたいです。」
「え?」
「強ち、悪い方ではないのかもしれません」
「…そう」
「?」
「貴方がそう言うのなら、そうなのかもしれないわね」
「奥方様!」
「…ふふふ。そうだわ。貴方もそろそろ年頃ですもの。嫁ぎ先を探さないといけないわね。」
「何を仰っているのですか!私は」
「貴方もそのうち…」
「落ち着いてください、奥方様」
「?!」
「ふじは生涯貴方様と共にあると言ったではありませんか」
「…ごめんなさい。おふじ。私は、如何してこんな考え方しか出来ないのかしら…旦那様と寄り添いたいと思うのに。いつかは父上様のようになることを知っているから…」
「申し訳ございません…奥方様のお気持ちもよく考えず、差し出がましいことを。このふじ、どんな事がありましても貴方様のそばから離れません!」
「おふじ」
「そのような悲しいことを言わないでください」
「ごめんなさい」
「奥方様」
「私はみなを不幸にするわ。母からは命を奪い兄弟からは母を奪い。貴方からは女の喜びを奪い、旦那様からは自由と寵臣を奪った」
「そんな」
「これ以上、誰かを不幸にする前に消えて無くなりたいと思うのに…あの目で見られたら…そばにいて添いたいと浅ましく思ってしまうの。そんな事無理なのに。きっと父上様や兄上様達のように…」
「浅ましくありません。人で御座いますもの。何より私は貴女様の側に居られるだけで幸せなのですから」
「…」
「奥方様」
「ありがとう。おふじ」










「…という事なのです」と言って私はお茶をすする。奥方様は殿様と一緒に庭を見に行っているし、私達は下がっていろと言う命なのだ。渡瀬殿と二人っきりになり、昨日あった話をすると何とも奇妙な顔をされる。実際私もそうだろうが、確信を持てないのだ。





「何ですか?」
「い、え。藤川殿が、その」
「?」
「私にその様な話をしてくれるとは…」
「言いません」
「?」
「独り言です」
「ふふふ」
「私は奥方様が好きですから。生涯独身であろうとも嫌ではありません。ですが、貴方は違うでしょ?ああ、攻めているわけではないの。それの方が奥方様は嬉しいのよ。私のは勝手なわがままだから」
「侍女の鑑です」
「ありがとう。でも違うのよ。私は居たいからいるだけですもの。」
「…」
「殿様がどのようなお考え方わかりませんが奥方様はあの優しそうな表情の下に誰も理解出来ないような孤独を抱えていらっしゃる。体の弱い御生母様は奥方様を産んだのち益々お身体を崩しなさった。その死は家族にも、何より奥方様をいたく傷つけた。あの方にとって母という寄る辺が無かったのです。」
「そうでございますか…だからいつも殿様をみる目があんなにもお辛そうなのですね」
「いつかは本当に愛した方を側に入れてしまうだろう。自分ではない誰かを。何より、私など家と家との繋がりだけのようなものだと。寵はいつかは喪う…いいえ、持ってすらいないものだからと…。殿様はどの様にお考えなのでしょうか?側室を入れる様な方がもういらっしゃいますか?この湯治もそれを伝える為に?」
「え?!」
「奥方様も…ここに来る前から」
「ないないないない!ないです!」
「本当ですが?」
「少なくとも私は聞いておりません!もしそうなら…私も断固として抗議いたします!今回は本当に奥方様の為だけなのですよ。」
「…」
「実は後朝の文の事も言いましたの。なら目を白黒させて…思い出しただけで面白いです。あの手紙は実はそれなのですよ。気恥ずかしいしああいう性格だからそうは見えないだけで。それに流石に今はお身体大事とて夜参りませんが、他の女子…小姓に手を出しているわけではないのです。」
「あれで?!」
「あれで」
「…」
「藤川殿」
「はい」
「こちらの本心としては、奥方様には実は好きな人がいるのではないかと心配しているのです」
「は?」
「物憂げに微笑みなさいますし、拒否はいたしませんが…肯定もいたしません。」
「あの方の性分です。し、喪うくらいなら手に入れない様にしていらっしゃったから。ただ、最近の奥方様の物憂げさは…」
「ええ」
「きっと」
「嫌がっておいでなのでしょうか?」
「いえ…きっと逆」
「?!」
「お好きだからわからないのでしょうね」
「まぁ!」
「だから困るのです」
「あらあらあらまあまあまあ!ついに、佐吉兄の初恋が叶うのね!」
「初恋?」
「そうですよ!そうなんです。あの人、大切なモノ以外は全部どうでもいいものだから…だから」
「どうでもよかったのね」
「そういう事です。」
「何方へ」
「…」
「くれぐれも大谷様の耳には入れませぬ様に」
「はい」








落ち着かない三成 10








「奥」
「はい」
「これも食え」
「もうこれ以上は」
「滋養にいいと聞いた」
「では、少しだけ」
「!」
「如何しましたか?」
「いや、そのだ」
「???」
「奥は好いた男は居なかったのか?」
「え?」
「…私は居た」
「私は…親類以外の殿方にあった事ございませんでしたから」
「そう、か」
「ええ」
「あ、一度だけ」
「?」
「里に殿下や竹中様が来た折」
「それは私だ」
「え?!…あ。そう言えば」
「私はその時小姓で身分も低かった」
「…」
「身分違いのお前に、恋をした」
「…は?」
「だから」
「だ、旦那様?」
「私はもう、お前以外いらないと言っている」
「それは、」
「三成様ー!!!」
「左近か…茶席の用意ができたな。無作法ものめ…奥。行くぞ」
「っ?!」
「?!」
「あ…」
「如何した?」
「っ?!すいません」
「ま、待て!!!」

拍手

PR

落ち着かない三成 9

「辛くないか?」
「はい。ですが…旦那様」
「?」
「歩いても大丈夫ですよ。皆、歩いておりますし」
「…」
「わかりました。此処におります」
「そうしていろ」
「はい」




山深い場所かと思えば、太閤殿下が愛し整備されておられるので、眼前は華やかで賑やかだ。ふふふと笑いながらキョロキョロしていると不思議そうな顔をされるので私はふふふと笑ってしまう。




「今日は楽しそうだな」
「はい」
「そうか」
「ありがとうございます」
「まだ、着いてもいない」
「あ!」
「…」
「そうでした」
「…本当に変わらん」
「え?」
「何でもない」
「???」










「藤川ちゃん」
「…」
「うひゃー。冷てぇ」
「何ですか?」
「三成様と奥方様。本当にお似合いだよな」
「…」
「あんなに優し気な三成様。初めて見たぜ!」
「そうですか」
「ななっ!奥方様は?三成様についてなんか言ってる?!」
「ご縁があったと。」
「縁かぁ…それだけ?」
「…」
「黙りまぁす」
「大体、」
「んー?」
「私は認めてません!」
「そっかー…」
「…何も言わないんですね」
「三成様も超不器用な人だからね。実はさあ。三成様、ずっと供養してるんだよね」
「何をです」
「お二人の子」
「…は?」
「奥方様もお辛いるだろうけど、三成様も辛いんだよ。ただでさえ忙しいのに。ご自分で行かれるから、時間足りなくてさ。」
「…」
「言い訳すりゃいいのにね。」
「知りませんよ」
「可愛いなぁ」
「なっ?!」






後ろの方で藤川と左近殿が叫んでいるらしく騒がしい。ちらりと旦那様のお顔を見ると今にも怒り出しそうなので私は困ってしまう。




「如何した?」
「え?」
「困ったことでもあるのか?」
「いいえ。後ろが」
「ああ。後で左近は仕置きしておく」
「いえ。道中無言より楽し気な方がよろしいでしょう?にしても」
「?」
「左近殿は藤川が好きなのですね」
「のようだ」
「うふふ。可愛らしい」
「あれはお前の乳兄弟か…」
「はい。実の兄弟以上に仲良くしてまいりました」
「そう、か」
「?」
「…左近に添わせるか?」
「!」
「いや、気に入らないのならば」
「素敵ですね」
「そ、うか?」
「それと真田様と渡瀬殿も」
「???」
「きっと相思相愛ですわ」
「…刑部に言ってみる」
「ええ。先にそちらの方がいいかもしれません」
「家柄の釣り合いもいいしな…それより」
「まぁ」
「着いたな。」
「美しいところですね」
「秀吉様は天下一等の温泉と仰った。輿から降りるか?」
「はい」
「手を出せ」
「…です、が」
「早くしろ」
「はい」
「…」
「旦那様?」
「いや、いい。行くぞ」








落ち着かない三成 9








「如何だ」
「広い、のですが…」
「?」
「ご一緒に入ってよろしいのですか?」
「不服か?」
「いえ、その」
「他は入ってこない」
「はぁ。」
「何だ?」
「その」
「?」
「恥ずかしい、です」
「?!」
「…」
「そ、そうか!そうだな。すまない!!」
「だ、旦那様?!何処に???」
「私はそう身分も高く無い出だから…すまん」
「?!ち、違います!!兄達はどうか知りませんが…父達も…嗚呼よく知りませんが」
「おい」
「私は、石田の家に嫁いだのです。旦那様のおっしゃる通りに致します」
「?!」
「旦那様?」
「湯着は着たな」
「はい」
「行くぞ」






「ひひひっ。初々しい話よ。些か面倒臭い」
「…」
「ほら!藤川ちゃん!!!落ち着いて」
「仲のよろしいことですね」

拍手

落ち着かない三成 8

奥へ
湯治まであまり時間が取れん。故に朝餉は辞退する。しかし、いつかはまた共に食べるので、それまで待て。
湯治の日よりは決まったので伝えておいた。用意をしておけ




「あらまあ」
「…」
「申し訳ございません。今は彼方はすごく忙しくて…」
「湯治の件が重荷になっては居らぬのですか?」
「え…ええ」
「素直におっしゃい!」
「長期に休むの自体初めてですから…調整をしていて」
「忙しいと」
「藤川。そう渡瀬殿に当たらない。何も出来ないのは歯痒いことですとお伝え下さい。」
「奥方様…差し支えなければ、その」
「?」
「文、を」
「ああ。そうでしたね。ふふふ。少し待ってくださいね」
「はい」





旦那様

朝餉の件、ご多忙中の折にも関わらず無遠慮なお願いをしてしまいまして申し訳ございません。また、湯治の件は太閤殿下に畏れながら御許可頂いたとはいえご無理をなさっておいでではないかと心配しております。どうかお身体をご自愛下さいませ。貴方様の為に何も出来ないのは口惜しく、申し訳なく思っております。只々、貴方様のお身体の事だけ案じております






「奥方よりの文何と書いてある?」
「…」
「ふむ」
「湯治は気に入らんのか?」
「ひひひ」
「刑部」
「ぬしの体の心配よの。そのせいで体を壊さぬか心配しておるのよ。瀬より聞き及んでいるのは誠楽しみにしていると。初めてらしい」
「…嘘ではないな!」
「やれさて。偽りを言うて如何する」
「そう、か。」
「ぬしも素直にならしゃれ」
「…」
「余りに放っておくと嫌われよう」
「?!」
「ぬしの様に遠くから見れる訳ではあるまい。…ん?居らぬな。ひひひ」








落ち着かない三成 8






「旦那様?」
「…」
「如何なさったのですか?」
「やる!」
「え?」
「…半兵衛様から頂いた」
「何ですか?」
「金平糖という南蛮の砂糖菓子だ」
「…可愛らしい」
「気に入ったか?」
「とても…ですが宜しいのですか?」
「いい。食べろ!」
「はい。…でも」
「?」
「勿体無い位可愛らしい」
「っ!」
「あ…」
「な、何だ?」
「少しお待ちください。」
「???」
「えっと…あった」
「何だそれは」
「夜着です。以前お作りして大分経ちましたから。単は渡瀬殿に渡してありましたが」
「…そう、なのか?」
「出来るだけと思いましたが…至らぬところがありましたらおっしゃってくださいね」
「いや、」
「?」
「此処最近のものはいいと思っていた。…お前が作っていたのだな」
「はい」
「…感謝する」
「!」
「?」
「い、え。あっ!お茶も出さずに」
「いや、もう行く。邪魔した。…湯治は行くぞ」
「はい」
「ではな」

拍手

落ち着かない三成 7

「遅くなってすまないね。秀吉」
「面を上げよ」
「…」
「奥。…言われた通りに」
「…はい。」
「ふふっ。流石に良く躾られているね」
「傷は如何だ?」
「ああ。僕達は養親だよ。気兼ねなんて要らないよ」
「奥」
「太閤殿下、竹中様のお心遣いで今は傷痛みもなく。」
「そう。それは良かった。」
「子の事も。寺社に懇ろにして頂いたと…本当にお礼の言葉しか言えないのが不甲斐なくていけません。」
「吾にとって孫でもある」
「君の心中、如何許りかと心配していたんだよ。湯治の件も。三成君も全然休まないからね。ゆっくりとしておいでよ。」
「ありがとうございます」
「にしても」
「?」
「この件の始末は、あれが君を侵入者と見間違えて危害を加え良心の呵責によって自害したってことになっているけど…本当にいいのかい?」
「はい。」
「ほら、三成君は諸共攻め落としたかったんだよ。歯ぎしりしないの」
「はっ!」
「本意は、三成の奥よ」
「…あの者の家は、石田家に心底忠義を誓ったところと聞き及んでいます。あの件も根底はそこで御座います。みすみす、全部失うのは得策とは言い難いですので」
「療養中にも一度会ってなぁ。忠義で返せと彼方に言っておる。故に、良き働きよ」
「ふふふ。広い視野だ。良い嫁が来たね」
「勿体無い事でございます」
「体を愛って養生したまえ。さぁ、秀吉」
「うむ。」
「其れでは失礼するね」






平伏をしていると障子の閉まる音がする。行かれたのかしらと思いつつそのままでいると旦那様に呼ばれて顔を上げる。何故顔を上げないとおっしゃられるので、旦那様より先に顔を上げる訳には参りませんからと言えば合点がいったと言わんばかりにこちらをじっと見られる。

嫁いでこの方、昼の光でこの方の顔をこんなに近くで見たのは初めてかもしれない。そっと頬に伸ばされた手は、殿方の手だ。痩せたか?と尋ねられて旦那様の方がと返せばバツの悪い顔を為さる。




「やれ、三成」
「?!」
「初々しいのは良いが…残りをとっとと済ませよう。」
「な?!だが…」
「?」
「体の具合は如何だ?…日を改めるか?」
「私は大丈夫でございますよ。」
「だが」
「と言うより、外で居るわ。」
「?!」
「よ!」
「は、破廉恥!!!」
「大将〜。夫婦の会話なんだから」
「はっ!そうか…そうだな!!!」
「貴様が、そうか…。っち!あの老耄、隠しておったか!!!」
「旦那様…」
「っ!」
「そ、の」
「そのまま後ろにいろ。」
「はい」
「(背後に隠れた…だと?!)仲良くないってきいてたけど!って!!!あぶねー!!!!」
「貴様…首を垂れろ」
「やれ、三成。奥方怯えよるよ」
「っ!」
「やれ奥。これが今おる武将よな。姦しい事よ。まるで落ち着きのない故」
「石田治部少輔三成様の室で御座います。先達てのお心遣い痛み入りましてございます」
「へー。あんたに嫁ぐっつーから、どんな女傑かと思ったらよ。可愛いかみさんじゃねぇか。」
「いえ、その様な」
「普通よな」
「毛利様。私は家柄のみで決まった様な平々凡々な女で御座いますれば。旦那様にご迷惑ばかりかけて申し訳なく思ってばかりですわ」
「そんな事はない!」
「だ、旦那様?落ち着いてくださいませ」
「ふんっ!」
「(怒ってしまわれた?)」
「御生母様は日ノ本一の美人ってね。ふーん」
「私は残念ながら母にではありませんでしたので。」
「そ、その様な事は御座らん!そ、のだ!」
「きぃぃぃぃさぁぁぁぁまぁぁぁぁぁらぁぁぁぁぁ!!!」
「さ、奥方様!」
「え?!でも。ああ、藤川!落ち着いて。渡瀬殿?」
「後は乱闘で御座いますから。大谷様」
「御礼をきちんと」
「あれで良い。十分過ぎよ」
「あ、ああ。旦那様」
「ぬしは己を知らぬ故。三成も大変、タイヘン」
「?」
「まぁそこにおりゃれ。」




はぁと気の抜けた返事をして殿方たちを見る。皆名の通った方達だけれども、本に仲の良さそうな。ふふふと笑って藤川の衣を掴む。こうでもしないと乱入しそうで恐ろしい。


「渡瀬殿」
「え?!あ、はい」
「ふふふ。可愛らしい」
「え?!その」
「…脈はありそうですね」
「そんな事ないですよ」
「んー…藤川もそう思う?」
「はい」
「奥方様!」
「ふふふ。」
「悪い様にはしませんよ。…ああ!如何したのですか?!」
「あら、旦那様。」
「っ!?如何した」
「渡瀬殿の顔色が…もう、お止めくださいませ」
「瀬が、か?」
「何と!そ、某!!!」
「(旦那頑張って!)」
「おおお送り致します」
「お願いしてもよろしいですか?」
「し、失礼致します!」
「わ、きゃ」
「藤川殿をよろしくお願いいたしますよ」
「心得申した!」
「…行ってしまったのう。やれ、奥」
「ふふふ」
「じゃー俺らも行くわ。ほら毛利!」
「触るな空け!!!!」
「嫁さんも無理すんなよ」
「はい、ありがとうございます」
「奥」
「私は大丈夫でございますよ。」
「そうか」
「奥方様」
「ありがとう、藤川」
「いえ」
「…」
「…」
「ひひひっ。男の嫉妬は誠醜かろう」
「黙れ!」
「旦那様?」
「…何だ?」
「私は如何すればよろしいですか?」
「は?」
「奥方様は本来此処には入れませんので」
「?!そうか!すまん」
「いえ。…旦那様?」
「行くぞ」
「はい」









落ち着かない三成 7






「あー疲れましたね」
「藤川」
「お偉いさん苦手なんですもの」
「そうね。でも」
「?」
「旦那様のお顔久しぶりに見ましたが…お休みになっておられないのね」
「あー…」
「朝の食事、またお願いしようかしら」
「えー…」
「藤川」
「面倒」
「もう。折角ご縁があったのですから、寄り添って行きたいでしょ?」
「奥方様らしくて大好きですけど!…文でも書いてみては?」
「文…そうね」

拍手

落ち着かない三成 6

「やれ、三成」
「何だ」
「奥の見舞いに行かぬで良いのか?」
「…外から顔は見た」
「それは見舞うとは言わぬ」
「…」
「やれさて。ぬしは何時から奥方一筋になった?」
「…一筋ではない」
「意外とくるものは拒まずの男よのぬしは。好色とは言わぬとても一途でもない。左馬もそうよの。だが、奥方は違う。縁が決まるときにぬしはどの娘かと聞いたのぅ。ぬしは知っておったのか?」
「ああ」
「そうか」
「私が秀吉様の小姓の折に何度か会った。話したことは一言だけだ。花を見ていたら、良い季節ですねと。たった一言。何も言えず逃げ帰るように秀吉様の元へ行ったのを覚えている。あの折より」
「意外よの」
「そうか?」
「が、ぬしらしいとも言えるか」
「…家柄から何まで違う。縁を結べるなどと思いもしなかった。秀吉様のお陰で嫁にもらうと決まった時。どれほど嬉しかったか」
「其れで関係のあるものを整理したのか…あれにもそう言うたのか?」
「ああ」
「本にぬしらしい。…三成よ」
「何だ?」
「ちと、待て…誰か?」
「私でございます」
「瀬か?何用よ」
「奥方様からご機嫌伺いの文で御座います。あれから一月、お会いしておられぬので無理矢理書いていただきました」
「左様か」
「お休み遊ばしておいでか、お食事はしておいでかと…日参されておいででしたのにお会いしておられなかったのですか?」
「今その話をしておったところよ」
「…余りこもってばかりですから…どうでしょう?有馬にでも湯治に行かれましたら」
「湯治?」
「偶にはお外の空気も必要で御座います。奥方様は殿様に気兼ねして、外出を控えおいでですから」
「そう、か…」
「やれまて奥の怪我には」
「傷はとうに塞がっておいでですよ」
「そうか…いや、そうよな。やれ、三成」
「その前に手紙を。返事を頂いて帰りますから」
「あ、ああ」





旦那様。如何お過ごしですか?
其方にはお伺いしないよう言われてておりますので、文にて失礼いたします。早いもので今日で嫁いで半年とあいなりまする。その間、私が貴方様に何もできなかったことが返す返す申し訳なく思っております。
お食事は召し上がっておられますか?御休息は?と勝手に心配しております。渡瀬殿に尋ねましたら小姓の代わりに左近殿が身の回りの世話をしておられるようですね。聞いて安心しております。
この間のこと以外にもご不快な点があるかと存じますが…お許し下さい。
それでは御身体を御愛いくださいませ









落ち着かない三成 6






奥へ
長く其方に行っていないことを許してくれ。今とても忙しい。
あと、来月有馬に行く。用意をしておけ。あの姦しい侍女の分もだ。
食事も休息も私には必要ない。貴様は十分に休んでいろ。拒否は許さない。





「初めての文がこれですか?」
「え?」
「渡瀬殿も奥方様付きならば気がついておいでのはず!抱いたら早々といなくなるわ!後朝の文もないわ!!」
「え?!そうなのですか!えー…佐吉兄。それはないわ」
「「佐吉兄?」」
「!?絵?!!!!いえ、聞き間違い!」
「のわけないでしょ!」
「良いのよ。私も藤川の事時々おふじって呼んでしまうもの。兄上とお友達なのだから」
「小さい時からああなんですか?!」
「えーと、余り変わりが…ないですね。でもかなり臆病者ですよ、あの人」
「え?!あれで??!」
「はい」
「…」
「好き嫌いがはっきりしているからその分、好きな人に嫌われるのが怖いんですよ。昔…」
「昔?」
「え?!いえ何でも」
「家康殿のことかしら?」
「ああ。裏切りの今は確かお亡くなり遊ばせておいでです」
「わわわわ私が」
「いいませんよ。…だから私たちを監視するのですね!」
「藤川」
「だって、代参の時も!」
「あれは…違います!その」
「渡瀬殿…藤川。決め付けは良くないと言ったでしょ?」
「ですが!」
「あれは…代参ではなく奥方様が行ってしまうのではないかと。また何かあったら駄目だからと…痛く心配されて。それに」
「?」
「あの人は太閤殿下のためだけに生きていた人で…その為の知識は取得に余念がありませんが…その」
「それ以外はどちらでも良いと言うのですね」
「はい」
「というより、あの人が源氏物語や落窪物語、そういうものを読んでいるとは思いません」
「後朝の文も知らないの?!貴方のお兄様は教育係でしょ!」
「兄もその…無頓着な人なので」
「…くくく」
「「?!」」
「そうね。…想像、つかないわ」
「そうなのです!あの人は死ぬ程そういうことが苦手で!でも…奥方様のことは本当に本当に大切にしておいでなのです」
「渡瀬殿」
「私は、こう。愚図ですから貰い手はないと思うのですけれども…すごく羨ましいです」
「渡瀬殿はとても優しくて頼りになる侍女ですよ」
「?!」
「藤川はこう見えて優しいのだけれども…完全に私の味方でしょ?こうなると丸みのない子ですから」
「私は奥方様に一生を尽くすと決めているのです。ほっといてください」
「ほら。可愛くなくて可愛いの。」
「…」
「私は貴方のことも好きなのですよ。渡瀬殿。貴方はそう自らを過小評価せずとも。そのままで良いのですよ」
「…は、い」
「それに結婚だって!いつかは必ず」
「ですが、その」
「…藤川殿。好きな殿方がおいでですか?」
「え?!あの」
「そうなのですか?」
「…っ」
「本に可愛らしい。私の知っている方かしら?」
「は、い」
「誰です?!」
「ふ、藤川殿?!」
「この子。本当はこういうのが好きなの。…誰かしら?」
「真田、様です」
「甲斐武田の?…確か」
「いえ!私なんて…」
「…」
「少し、おねだりしてみましょうか」
「奥方様?」
「それが良いですわ」








落ち着かない三成 6







「礼を言いたいと?」
「ああ。そう文に書いてあった。怪我の見舞いを頂いた秀吉様、半兵衛様。諸々の武将に。」
「今おるのは真田に長曾我部。後は…毛利か?」
「いないものは文で良いだろう。…私に共に行って欲しいと」
「左様か」
「あと、藤川と渡瀬を同行させると。良いか?」
「良い良い。ぬしが良ければな」
「同行すれば守れよう。それならば良い」

拍手

        
  • 1
  • 2