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変換なしの雑食夢

ran

落ち着かない三成 10

「如何でしたか?」
「…」
「奥方様?」
「え?いえ。その…びっくりしてるわ」
「そうでしょうね。真逆一緒に入るだなんて」
「…」
「お話も弾んでいませんでしたし」
「そうね。…でも」
「?」
「そういう人なのよ。きっと。でも駄目ね」
「え?」
「浮かれてしまいそうだけども。…きっと今だけだもの。」
「…」
「殿方と私たちでは色々違うでしょ?要らぬことをお伝えしてしまったわ。…浅ましくお思いでしょうに」
「そうでも、ないみたいです」
「?」
「今まで毎日、供養していたみたいです。」
「え?」
「強ち、悪い方ではないのかもしれません」
「…そう」
「?」
「貴方がそう言うのなら、そうなのかもしれないわね」
「奥方様!」
「…ふふふ。そうだわ。貴方もそろそろ年頃ですもの。嫁ぎ先を探さないといけないわね。」
「何を仰っているのですか!私は」
「貴方もそのうち…」
「落ち着いてください、奥方様」
「?!」
「ふじは生涯貴方様と共にあると言ったではありませんか」
「…ごめんなさい。おふじ。私は、如何してこんな考え方しか出来ないのかしら…旦那様と寄り添いたいと思うのに。いつかは父上様のようになることを知っているから…」
「申し訳ございません…奥方様のお気持ちもよく考えず、差し出がましいことを。このふじ、どんな事がありましても貴方様のそばから離れません!」
「おふじ」
「そのような悲しいことを言わないでください」
「ごめんなさい」
「奥方様」
「私はみなを不幸にするわ。母からは命を奪い兄弟からは母を奪い。貴方からは女の喜びを奪い、旦那様からは自由と寵臣を奪った」
「そんな」
「これ以上、誰かを不幸にする前に消えて無くなりたいと思うのに…あの目で見られたら…そばにいて添いたいと浅ましく思ってしまうの。そんな事無理なのに。きっと父上様や兄上様達のように…」
「浅ましくありません。人で御座いますもの。何より私は貴女様の側に居られるだけで幸せなのですから」
「…」
「奥方様」
「ありがとう。おふじ」










「…という事なのです」と言って私はお茶をすする。奥方様は殿様と一緒に庭を見に行っているし、私達は下がっていろと言う命なのだ。渡瀬殿と二人っきりになり、昨日あった話をすると何とも奇妙な顔をされる。実際私もそうだろうが、確信を持てないのだ。





「何ですか?」
「い、え。藤川殿が、その」
「?」
「私にその様な話をしてくれるとは…」
「言いません」
「?」
「独り言です」
「ふふふ」
「私は奥方様が好きですから。生涯独身であろうとも嫌ではありません。ですが、貴方は違うでしょ?ああ、攻めているわけではないの。それの方が奥方様は嬉しいのよ。私のは勝手なわがままだから」
「侍女の鑑です」
「ありがとう。でも違うのよ。私は居たいからいるだけですもの。」
「…」
「殿様がどのようなお考え方わかりませんが奥方様はあの優しそうな表情の下に誰も理解出来ないような孤独を抱えていらっしゃる。体の弱い御生母様は奥方様を産んだのち益々お身体を崩しなさった。その死は家族にも、何より奥方様をいたく傷つけた。あの方にとって母という寄る辺が無かったのです。」
「そうでございますか…だからいつも殿様をみる目があんなにもお辛そうなのですね」
「いつかは本当に愛した方を側に入れてしまうだろう。自分ではない誰かを。何より、私など家と家との繋がりだけのようなものだと。寵はいつかは喪う…いいえ、持ってすらいないものだからと…。殿様はどの様にお考えなのでしょうか?側室を入れる様な方がもういらっしゃいますか?この湯治もそれを伝える為に?」
「え?!」
「奥方様も…ここに来る前から」
「ないないないない!ないです!」
「本当ですが?」
「少なくとも私は聞いておりません!もしそうなら…私も断固として抗議いたします!今回は本当に奥方様の為だけなのですよ。」
「…」
「実は後朝の文の事も言いましたの。なら目を白黒させて…思い出しただけで面白いです。あの手紙は実はそれなのですよ。気恥ずかしいしああいう性格だからそうは見えないだけで。それに流石に今はお身体大事とて夜参りませんが、他の女子…小姓に手を出しているわけではないのです。」
「あれで?!」
「あれで」
「…」
「藤川殿」
「はい」
「こちらの本心としては、奥方様には実は好きな人がいるのではないかと心配しているのです」
「は?」
「物憂げに微笑みなさいますし、拒否はいたしませんが…肯定もいたしません。」
「あの方の性分です。し、喪うくらいなら手に入れない様にしていらっしゃったから。ただ、最近の奥方様の物憂げさは…」
「ええ」
「きっと」
「嫌がっておいでなのでしょうか?」
「いえ…きっと逆」
「?!」
「お好きだからわからないのでしょうね」
「まぁ!」
「だから困るのです」
「あらあらあらまあまあまあ!ついに、佐吉兄の初恋が叶うのね!」
「初恋?」
「そうですよ!そうなんです。あの人、大切なモノ以外は全部どうでもいいものだから…だから」
「どうでもよかったのね」
「そういう事です。」
「何方へ」
「…」
「くれぐれも大谷様の耳には入れませぬ様に」
「はい」








落ち着かない三成 10








「奥」
「はい」
「これも食え」
「もうこれ以上は」
「滋養にいいと聞いた」
「では、少しだけ」
「!」
「如何しましたか?」
「いや、そのだ」
「???」
「奥は好いた男は居なかったのか?」
「え?」
「…私は居た」
「私は…親類以外の殿方にあった事ございませんでしたから」
「そう、か」
「ええ」
「あ、一度だけ」
「?」
「里に殿下や竹中様が来た折」
「それは私だ」
「え?!…あ。そう言えば」
「私はその時小姓で身分も低かった」
「…」
「身分違いのお前に、恋をした」
「…は?」
「だから」
「だ、旦那様?」
「私はもう、お前以外いらないと言っている」
「それは、」
「三成様ー!!!」
「左近か…茶席の用意ができたな。無作法ものめ…奥。行くぞ」
「っ?!」
「?!」
「あ…」
「如何した?」
「っ?!すいません」
「ま、待て!!!」

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