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変換なしの雑食夢

ran

落ち着かない三成 6

「やれ、三成」
「何だ」
「奥の見舞いに行かぬで良いのか?」
「…外から顔は見た」
「それは見舞うとは言わぬ」
「…」
「やれさて。ぬしは何時から奥方一筋になった?」
「…一筋ではない」
「意外とくるものは拒まずの男よのぬしは。好色とは言わぬとても一途でもない。左馬もそうよの。だが、奥方は違う。縁が決まるときにぬしはどの娘かと聞いたのぅ。ぬしは知っておったのか?」
「ああ」
「そうか」
「私が秀吉様の小姓の折に何度か会った。話したことは一言だけだ。花を見ていたら、良い季節ですねと。たった一言。何も言えず逃げ帰るように秀吉様の元へ行ったのを覚えている。あの折より」
「意外よの」
「そうか?」
「が、ぬしらしいとも言えるか」
「…家柄から何まで違う。縁を結べるなどと思いもしなかった。秀吉様のお陰で嫁にもらうと決まった時。どれほど嬉しかったか」
「其れで関係のあるものを整理したのか…あれにもそう言うたのか?」
「ああ」
「本にぬしらしい。…三成よ」
「何だ?」
「ちと、待て…誰か?」
「私でございます」
「瀬か?何用よ」
「奥方様からご機嫌伺いの文で御座います。あれから一月、お会いしておられぬので無理矢理書いていただきました」
「左様か」
「お休み遊ばしておいでか、お食事はしておいでかと…日参されておいででしたのにお会いしておられなかったのですか?」
「今その話をしておったところよ」
「…余りこもってばかりですから…どうでしょう?有馬にでも湯治に行かれましたら」
「湯治?」
「偶にはお外の空気も必要で御座います。奥方様は殿様に気兼ねして、外出を控えおいでですから」
「そう、か…」
「やれまて奥の怪我には」
「傷はとうに塞がっておいでですよ」
「そうか…いや、そうよな。やれ、三成」
「その前に手紙を。返事を頂いて帰りますから」
「あ、ああ」





旦那様。如何お過ごしですか?
其方にはお伺いしないよう言われてておりますので、文にて失礼いたします。早いもので今日で嫁いで半年とあいなりまする。その間、私が貴方様に何もできなかったことが返す返す申し訳なく思っております。
お食事は召し上がっておられますか?御休息は?と勝手に心配しております。渡瀬殿に尋ねましたら小姓の代わりに左近殿が身の回りの世話をしておられるようですね。聞いて安心しております。
この間のこと以外にもご不快な点があるかと存じますが…お許し下さい。
それでは御身体を御愛いくださいませ









落ち着かない三成 6






奥へ
長く其方に行っていないことを許してくれ。今とても忙しい。
あと、来月有馬に行く。用意をしておけ。あの姦しい侍女の分もだ。
食事も休息も私には必要ない。貴様は十分に休んでいろ。拒否は許さない。





「初めての文がこれですか?」
「え?」
「渡瀬殿も奥方様付きならば気がついておいでのはず!抱いたら早々といなくなるわ!後朝の文もないわ!!」
「え?!そうなのですか!えー…佐吉兄。それはないわ」
「「佐吉兄?」」
「!?絵?!!!!いえ、聞き間違い!」
「のわけないでしょ!」
「良いのよ。私も藤川の事時々おふじって呼んでしまうもの。兄上とお友達なのだから」
「小さい時からああなんですか?!」
「えーと、余り変わりが…ないですね。でもかなり臆病者ですよ、あの人」
「え?!あれで??!」
「はい」
「…」
「好き嫌いがはっきりしているからその分、好きな人に嫌われるのが怖いんですよ。昔…」
「昔?」
「え?!いえ何でも」
「家康殿のことかしら?」
「ああ。裏切りの今は確かお亡くなり遊ばせておいでです」
「わわわわ私が」
「いいませんよ。…だから私たちを監視するのですね!」
「藤川」
「だって、代参の時も!」
「あれは…違います!その」
「渡瀬殿…藤川。決め付けは良くないと言ったでしょ?」
「ですが!」
「あれは…代参ではなく奥方様が行ってしまうのではないかと。また何かあったら駄目だからと…痛く心配されて。それに」
「?」
「あの人は太閤殿下のためだけに生きていた人で…その為の知識は取得に余念がありませんが…その」
「それ以外はどちらでも良いと言うのですね」
「はい」
「というより、あの人が源氏物語や落窪物語、そういうものを読んでいるとは思いません」
「後朝の文も知らないの?!貴方のお兄様は教育係でしょ!」
「兄もその…無頓着な人なので」
「…くくく」
「「?!」」
「そうね。…想像、つかないわ」
「そうなのです!あの人は死ぬ程そういうことが苦手で!でも…奥方様のことは本当に本当に大切にしておいでなのです」
「渡瀬殿」
「私は、こう。愚図ですから貰い手はないと思うのですけれども…すごく羨ましいです」
「渡瀬殿はとても優しくて頼りになる侍女ですよ」
「?!」
「藤川はこう見えて優しいのだけれども…完全に私の味方でしょ?こうなると丸みのない子ですから」
「私は奥方様に一生を尽くすと決めているのです。ほっといてください」
「ほら。可愛くなくて可愛いの。」
「…」
「私は貴方のことも好きなのですよ。渡瀬殿。貴方はそう自らを過小評価せずとも。そのままで良いのですよ」
「…は、い」
「それに結婚だって!いつかは必ず」
「ですが、その」
「…藤川殿。好きな殿方がおいでですか?」
「え?!あの」
「そうなのですか?」
「…っ」
「本に可愛らしい。私の知っている方かしら?」
「は、い」
「誰です?!」
「ふ、藤川殿?!」
「この子。本当はこういうのが好きなの。…誰かしら?」
「真田、様です」
「甲斐武田の?…確か」
「いえ!私なんて…」
「…」
「少し、おねだりしてみましょうか」
「奥方様?」
「それが良いですわ」








落ち着かない三成 6







「礼を言いたいと?」
「ああ。そう文に書いてあった。怪我の見舞いを頂いた秀吉様、半兵衛様。諸々の武将に。」
「今おるのは真田に長曾我部。後は…毛利か?」
「いないものは文で良いだろう。…私に共に行って欲しいと」
「左様か」
「あと、藤川と渡瀬を同行させると。良いか?」
「良い良い。ぬしが良ければな」
「同行すれば守れよう。それならば良い」

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