忍者ブログ
変換なしの雑食夢

ran

落ち着かない三成 7

「遅くなってすまないね。秀吉」
「面を上げよ」
「…」
「奥。…言われた通りに」
「…はい。」
「ふふっ。流石に良く躾られているね」
「傷は如何だ?」
「ああ。僕達は養親だよ。気兼ねなんて要らないよ」
「奥」
「太閤殿下、竹中様のお心遣いで今は傷痛みもなく。」
「そう。それは良かった。」
「子の事も。寺社に懇ろにして頂いたと…本当にお礼の言葉しか言えないのが不甲斐なくていけません。」
「吾にとって孫でもある」
「君の心中、如何許りかと心配していたんだよ。湯治の件も。三成君も全然休まないからね。ゆっくりとしておいでよ。」
「ありがとうございます」
「にしても」
「?」
「この件の始末は、あれが君を侵入者と見間違えて危害を加え良心の呵責によって自害したってことになっているけど…本当にいいのかい?」
「はい。」
「ほら、三成君は諸共攻め落としたかったんだよ。歯ぎしりしないの」
「はっ!」
「本意は、三成の奥よ」
「…あの者の家は、石田家に心底忠義を誓ったところと聞き及んでいます。あの件も根底はそこで御座います。みすみす、全部失うのは得策とは言い難いですので」
「療養中にも一度会ってなぁ。忠義で返せと彼方に言っておる。故に、良き働きよ」
「ふふふ。広い視野だ。良い嫁が来たね」
「勿体無い事でございます」
「体を愛って養生したまえ。さぁ、秀吉」
「うむ。」
「其れでは失礼するね」






平伏をしていると障子の閉まる音がする。行かれたのかしらと思いつつそのままでいると旦那様に呼ばれて顔を上げる。何故顔を上げないとおっしゃられるので、旦那様より先に顔を上げる訳には参りませんからと言えば合点がいったと言わんばかりにこちらをじっと見られる。

嫁いでこの方、昼の光でこの方の顔をこんなに近くで見たのは初めてかもしれない。そっと頬に伸ばされた手は、殿方の手だ。痩せたか?と尋ねられて旦那様の方がと返せばバツの悪い顔を為さる。




「やれ、三成」
「?!」
「初々しいのは良いが…残りをとっとと済ませよう。」
「な?!だが…」
「?」
「体の具合は如何だ?…日を改めるか?」
「私は大丈夫でございますよ。」
「だが」
「と言うより、外で居るわ。」
「?!」
「よ!」
「は、破廉恥!!!」
「大将〜。夫婦の会話なんだから」
「はっ!そうか…そうだな!!!」
「貴様が、そうか…。っち!あの老耄、隠しておったか!!!」
「旦那様…」
「っ!」
「そ、の」
「そのまま後ろにいろ。」
「はい」
「(背後に隠れた…だと?!)仲良くないってきいてたけど!って!!!あぶねー!!!!」
「貴様…首を垂れろ」
「やれ、三成。奥方怯えよるよ」
「っ!」
「やれ奥。これが今おる武将よな。姦しい事よ。まるで落ち着きのない故」
「石田治部少輔三成様の室で御座います。先達てのお心遣い痛み入りましてございます」
「へー。あんたに嫁ぐっつーから、どんな女傑かと思ったらよ。可愛いかみさんじゃねぇか。」
「いえ、その様な」
「普通よな」
「毛利様。私は家柄のみで決まった様な平々凡々な女で御座いますれば。旦那様にご迷惑ばかりかけて申し訳なく思ってばかりですわ」
「そんな事はない!」
「だ、旦那様?落ち着いてくださいませ」
「ふんっ!」
「(怒ってしまわれた?)」
「御生母様は日ノ本一の美人ってね。ふーん」
「私は残念ながら母にではありませんでしたので。」
「そ、その様な事は御座らん!そ、のだ!」
「きぃぃぃぃさぁぁぁぁまぁぁぁぁぁらぁぁぁぁぁ!!!」
「さ、奥方様!」
「え?!でも。ああ、藤川!落ち着いて。渡瀬殿?」
「後は乱闘で御座いますから。大谷様」
「御礼をきちんと」
「あれで良い。十分過ぎよ」
「あ、ああ。旦那様」
「ぬしは己を知らぬ故。三成も大変、タイヘン」
「?」
「まぁそこにおりゃれ。」




はぁと気の抜けた返事をして殿方たちを見る。皆名の通った方達だけれども、本に仲の良さそうな。ふふふと笑って藤川の衣を掴む。こうでもしないと乱入しそうで恐ろしい。


「渡瀬殿」
「え?!あ、はい」
「ふふふ。可愛らしい」
「え?!その」
「…脈はありそうですね」
「そんな事ないですよ」
「んー…藤川もそう思う?」
「はい」
「奥方様!」
「ふふふ。」
「悪い様にはしませんよ。…ああ!如何したのですか?!」
「あら、旦那様。」
「っ!?如何した」
「渡瀬殿の顔色が…もう、お止めくださいませ」
「瀬が、か?」
「何と!そ、某!!!」
「(旦那頑張って!)」
「おおお送り致します」
「お願いしてもよろしいですか?」
「し、失礼致します!」
「わ、きゃ」
「藤川殿をよろしくお願いいたしますよ」
「心得申した!」
「…行ってしまったのう。やれ、奥」
「ふふふ」
「じゃー俺らも行くわ。ほら毛利!」
「触るな空け!!!!」
「嫁さんも無理すんなよ」
「はい、ありがとうございます」
「奥」
「私は大丈夫でございますよ。」
「そうか」
「奥方様」
「ありがとう、藤川」
「いえ」
「…」
「…」
「ひひひっ。男の嫉妬は誠醜かろう」
「黙れ!」
「旦那様?」
「…何だ?」
「私は如何すればよろしいですか?」
「は?」
「奥方様は本来此処には入れませんので」
「?!そうか!すまん」
「いえ。…旦那様?」
「行くぞ」
「はい」









落ち着かない三成 7






「あー疲れましたね」
「藤川」
「お偉いさん苦手なんですもの」
「そうね。でも」
「?」
「旦那様のお顔久しぶりに見ましたが…お休みになっておられないのね」
「あー…」
「朝の食事、またお願いしようかしら」
「えー…」
「藤川」
「面倒」
「もう。折角ご縁があったのですから、寄り添って行きたいでしょ?」
「奥方様らしくて大好きですけど!…文でも書いてみては?」
「文…そうね」

拍手

PR