死屍累々 14 死屍累々 2016年07月22日 「…」「刑部さん!」「ん?何用よ」「可哀想っすよ!」「やれ」「三成様!あんなに憔悴して…寝てねぇし飯も食ってないんっすよ!」「はてさて。そんな三成に勝てぬ主が心配することではない。」「そっすけど!」「はてさて。仕事は今まで以上に完璧よなぁ。」「逃げちまいたいんでしょ?転寝していても魘されて起きちまいますもん」「まぁ、なぁ。」「やっぱり墓の位置わかんないんっすか?」「言った通りよの。彼れは三成が離縁した以上豊臣とは無縁よ。生家も縁を切っておる故受け取りがおらぬ。野晒しにせぬのは賢人と我の情よ。」「でもどこに埋められたくらい」「分からぬものは我とてわからん」「…」「?」「昔、奥方様の前で五島の悪口言ったんすよ」「左様か」「したら奥方様に叱られたんっすよね!俺わかんなくて、普通奥方様が怒るとこって言ったら」「言ったら」「『悪言も恨みも何もかも。願望があるから起こるのですよ』って」「奥方らしい」「俺、奥方様に願望ないのか聞いたんっすよ」「濁されたか?」「遠い昔に無くしたかもって…三成様を度外視にしても花や線香の一つくらいあげたいっす。きっと次は奥方様が笑える希望に満ちた生き方ができるって」「ひひひ」「刑部さん?」「やれ、すまぬ。我とて同じよ。供養の一つしてやりたいが…これが世の習いよ。諦めりゃれ」「でも」「それに」「?」「それは本来三成の役目よの。我らはその後よ」「…」「不服かえ?」「三成様は奥方様を嫌ってたから」「そうよな」「表情は確かにないっすよ!でも…困ってるやつ見つけたら身分関係なく手助けする優しい方で、ここの下働きのやつとかに本当に慕われてたんっす。俺、」「三成が分からぬか?」「あんな良い人を自害に追い込むなんて…三成様らしくねぇ」「左様か…しかし、三成とて」「?」「彼れは人の機微に疎いのよ。他人でも己でもなぁ」からりという音がするので顔を上げる。刑部が困ったような顔をして横に座るので少し待てとだけ呟く。書類が書き終わる。これで秀吉様から頂いた仕事は終わった。あとは佐和山の方の仕事をと考えていたら名前を呼ばれる。「すまん」「入れ込み過ぎよ」「佐和山の」「大阪の仕事は終えたのか?」「今、な」「少し喰うて休みをとらしゃれ」「…」「皆心配しておる」「いらん」「三成」「くどい!いらんと言えばいら」「主がいくら食わず寝ずを突き通しても奥方は帰ってこぬ」「!」「良い加減にしりゃれ。皆、心配しておる」「刑部…」「…」「寝ると、奥が出てくる」「夢枕に立つのは縁の深い証拠よな」「…違う。彼れは決して私の夢枕には立たん。彼れの死んだ顔だ」「左様か」「辛いと言っていた。ただ、楽しい人生だったとも」「奥方らしい」「私は彼れに楽しみを与えてやれていない。偽りなく、笑ましたことがない」「…致し方ない。主が奥方を思う気持ちに気付いたのは最近故。」「私は奥に嫌われても仕方がない男だ。…ただそれだけだ」「三成よ」「確かに秀吉様の一兵卒が畳の上では死ねん!少し喰うて寝る。」「膳を持ってくる」「すまない、刑部」死屍累々 15「ようやく食べて寝たんだね」「はてさて。また悪夢で起きるのも時間の問題よ、問題」「仕方ないね。彼にしたらこうなるとは思わなかっただろうから。」「はてさて。西海の鬼から何と?」「元就君の動きはないみたいだよ。まぁ、こっちの方が時間の問題かな」「彼れも罪な女よ」「そうだね。変わった子だったものね」「ひひひ」「そういえば」「?」「新しい正室の件」「言うておらんよ。とても言えぬ言えぬ」「僕も嫌かな?もう少し待ってみようか」「やれ、賢人」「三成君?寝てたんじゃ…」「ついてきりゃれ」「ああ。あそこへ行くのかな」「慟哭よな。…憐れよ憐れ」「そうだね…」「しかし時はまだ…」「もう少し様子を見ていうか否か決めようか」「あいわかった」 PR