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変換なしの雑食夢

ran

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死屍累々 14

「…」
「刑部さん!」
「ん?何用よ」
「可哀想っすよ!」
「やれ」
「三成様!あんなに憔悴して…寝てねぇし飯も食ってないんっすよ!」
「はてさて。そんな三成に勝てぬ主が心配することではない。」
「そっすけど!」
「はてさて。仕事は今まで以上に完璧よなぁ。」
「逃げちまいたいんでしょ?転寝していても魘されて起きちまいますもん」
「まぁ、なぁ。」
「やっぱり墓の位置わかんないんっすか?」
「言った通りよの。彼れは三成が離縁した以上豊臣とは無縁よ。生家も縁を切っておる故受け取りがおらぬ。野晒しにせぬのは賢人と我の情よ。」
「でもどこに埋められたくらい」
「分からぬものは我とてわからん」
「…」
「?」
「昔、奥方様の前で五島の悪口言ったんすよ」
「左様か」
「したら奥方様に叱られたんっすよね!俺わかんなくて、普通奥方様が怒るとこって言ったら」
「言ったら」
「『悪言も恨みも何もかも。願望があるから起こるのですよ』って」
「奥方らしい」
「俺、奥方様に願望ないのか聞いたんっすよ」
「濁されたか?」
「遠い昔に無くしたかもって…三成様を度外視にしても花や線香の一つくらいあげたいっす。きっと次は奥方様が笑える希望に満ちた生き方ができるって」
「ひひひ」
「刑部さん?」
「やれ、すまぬ。我とて同じよ。供養の一つしてやりたいが…これが世の習いよ。諦めりゃれ」
「でも」
「それに」
「?」
「それは本来三成の役目よの。我らはその後よ」
「…」
「不服かえ?」
「三成様は奥方様を嫌ってたから」
「そうよな」
「表情は確かにないっすよ!でも…困ってるやつ見つけたら身分関係なく手助けする優しい方で、ここの下働きのやつとかに本当に慕われてたんっす。俺、」
「三成が分からぬか?」
「あんな良い人を自害に追い込むなんて…三成様らしくねぇ」
「左様か…しかし、三成とて」
「?」
「彼れは人の機微に疎いのよ。他人でも己でもなぁ」







からりという音がするので顔を上げる。刑部が困ったような顔をして横に座るので少し待てとだけ呟く。
書類が書き終わる。これで秀吉様から頂いた仕事は終わった。あとは佐和山の方の仕事をと考えていたら名前を呼ばれる。



「すまん」
「入れ込み過ぎよ」
「佐和山の」
「大阪の仕事は終えたのか?」
「今、な」
「少し喰うて休みをとらしゃれ」
「…」
「皆心配しておる」
「いらん」
「三成」
「くどい!いらんと言えばいら」
「主がいくら食わず寝ずを突き通しても奥方は帰ってこぬ」
「!」
「良い加減にしりゃれ。皆、心配しておる」
「刑部…」
「…」
「寝ると、奥が出てくる」
「夢枕に立つのは縁の深い証拠よな」
「…違う。彼れは決して私の夢枕には立たん。彼れの死んだ顔だ」
「左様か」
「辛いと言っていた。ただ、楽しい人生だったとも」
「奥方らしい」
「私は彼れに楽しみを与えてやれていない。偽りなく、笑ましたことがない」
「…致し方ない。主が奥方を思う気持ちに気付いたのは最近故。」
「私は奥に嫌われても仕方がない男だ。…ただそれだけだ」
「三成よ」
「確かに秀吉様の一兵卒が畳の上では死ねん!少し喰うて寝る。」
「膳を持ってくる」
「すまない、刑部」






死屍累々 15






「ようやく食べて寝たんだね」
「はてさて。また悪夢で起きるのも時間の問題よ、問題」
「仕方ないね。彼にしたらこうなるとは思わなかっただろうから。」
「はてさて。西海の鬼から何と?」
「元就君の動きはないみたいだよ。まぁ、こっちの方が時間の問題かな」
「彼れも罪な女よ」
「そうだね。変わった子だったものね」
「ひひひ」
「そういえば」
「?」
「新しい正室の件」
「言うておらんよ。とても言えぬ言えぬ」
「僕も嫌かな?もう少し待ってみようか」
「やれ、賢人」
「三成君?寝てたんじゃ…」
「ついてきりゃれ」
「ああ。あそこへ行くのかな」
「慟哭よな。…憐れよ憐れ」
「そうだね…」
「しかし時はまだ…」
「もう少し様子を見ていうか否か決めようか」
「あいわかった」

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