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変換なしの雑食夢

ran

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日月 5

「やれ姫」
「どうしたの刑部殿」
「あの娘」
「?」
「頭のネジがどこか抜けておるな」
「…酷い言いようね」
「先だって揶揄い序でに我の饅頭をやったが嬉しそうに食していた」
「甘いものが好きだし、私にも治部殿にも餌付けと言ってくれるのに???変なこそかしら?」
「ああ…そういえばぬしも三成もそうであったな」
「嬉しいくせに」
「それはぬしらだけよ。我は知らぬ。」
「ひどいわ…あ。ゆき殿は?」
「行儀見習い中ゆえもうちとかかろう。頭の出来は普通故。身元も調べ太閤並びに賢人の許しも出た故此処に来たいと駄々をこねていた」
「そう。」
「三成は?」
「寝ている」
「は?」
「ほら」
「ずっとべったりだと思っていたが。そういう関係か?」
「いいえ。母と赤子のような。さっきまで愚図っていたの。」
「まさにのう。して」
「?」
「帰られた心地は如何か?」
「ただただ嬉しい。」
「左様か」
「ええ」
「…う」
「治部殿」
「姫様、何処に?」
「側にいますよ。さぁもう少しおやすみなさい」
「私を、置いて」
「行きませんよ。」
「ん…」
「手のかかる殿方なこと」
「それで男女の仲にないのが不思議よのう」
「…」
「真っ赤よの」
「だっ…刑部殿」
「姫も姫よ。昔は蜘蛛でも蛇でも捕まえるような童なのに裳着の後よりはすっかり女子になって」

だってと言って私は刑部殿を見る。二人が綺麗というのだものといえば嬉しそうに引き笑いをするのでますます赤くなる。



「そうか」
「笑いすぎ」
「いや、すまぬ」
「裳着も逃げ出そうとしてたのに…あんな嬉しそうな顔で治部殿が見るのだもの。刑部殿は暖かい顔で笑いますし。琴を引けば褒めて頂けるし、連歌も…じゃあ頑張らないとと思っていたらもう、こんな感じに」
「我はそれで良いと思う」
「でも」
「ん」



いつかは治部殿も私も誰かと番ってこうもしていられなくなるのでしょうね言いながらキラキラと輝く銀髪を撫でる。いつの日か、この指の先の主が変わってしまうのだろう。彼の髪を撫でる指の主も変わるのだろう。それが辛いですというと沈黙が生まれて妙に思って、私は顔を上げる。
凄く間の抜けた刑部殿の顔を見たのは久しぶりだ




「主がその様に思っていたとは」
「?」
「左様か。番うなら三成がいいと」
「…寝ているかしら?」
「寝ておろう」
「…誰かの妻になるなら治部殿がいい。」
「ひひ」
「ああ、もう…恥ずかしい」
「愛い愛い」
「…刑部殿」
「我はこの不幸が身に降りかかった折のぬしらの言葉が忘れられぬ」
「?」
「皆から見捨てられた我を看病すると言い張った愛い童の戯言よ」
「???」
「不幸が主らに降ってはならぬ故ほっておけと言った折、二人して抱きつきそれなら三人でお揃いだと一番の不幸は我がいなくなることだと」
「言ったと思いますが戯言ではなくかなり本気で私など号泣して叫んだものだから父上と半兵衛が走ってきて凄く笑われたのを覚えてます。君の鳴き声が体に触ったらどうするのって半兵衛が冗談をいうから、それを聞いて刑部殿が死んじゃうって益々号泣して、つられて治部殿まで泣いて…」
「本になぁ。騒がしい童が殿を務め帰還する日が来ようとは」
「早く休日に来てくれたから…私もゆき殿も助かったの。」
「…その時の皆の顔が忘れられぬ」
「?」
「これがこうまで主から離れず、太閤賢人が見舞う理由よ。皆主が好きで幸せになってほしい故。我も同じよ。我と賢人は三成と主が夫婦になってほしいと常に言っておったからなぁ」
「は?」
「早く孫の顔を見せてほしいものよ」
「…刑部殿もいますか?」
「勿論よ。主らの子を愛るのが我と賢人の仕事故」
「私は刑部殿にずっと守られていますね」
「それは我も同じよ」
「ふふふ」







日月





「姫様ぁ」
「あらゆき殿」
「ひひひ。講義は済んだのか?」
「もういっぱいいっぱいです。あ…石田様が寝てたのですね」
「大丈夫よ。こうしてたら起きないから」
「凄くお似合いですねぇ」
「そうよなぁ」
「あ!大谷様!」
「ん?」
「この間はお菓子ありがとうございます」
「は?」
「すっごく美味しくて。お礼をと思ったのですが…何がいいのかわからなくて着物の繕い物が溜まっておいででしたので洗って直して置いておきました」
「ぬ」
「だめ、でしたか?あっ!それは侍女の仕事でした…すいません。お、お給金が出ましたら何が」
「い、や。いらぬ。それに助かる。我のものを洗うのを厭うものは多いのでな」
「そうなのですか?ついでに包帯も洗っちゃいましたが出ましたらいけませんでしたか?」
「…主の頭なやはりネジが飛んでいる?」
「え?!ネジですか?姫様ぁ私は絡繰」
「ふふふ。刑部殿も初々しい」
「姫」
「ゆき殿がこういう人だから連れてきたのですよ。向こうでは虐げられていましたから」
「…左様か」
「?」
「やれ、姫も休ましゃれ。ゆき、とやら。ぬしに礼をせねばな。菓子が良いか何が良い」
「わあ。いいんですか?」
「…」
「姫様。お菓子もらってきてもいいですか?」
「ええ。お菓子ついでに刑部殿は博学な方です。色々草子を見せていただきなさい。」
「いいですか」
「ひひひ。きりゃれ」




静かに閉まる音。案外気に入ったかしらと思案しながら治部殿の頭を撫でながら横になる。まぶたが重い。






「姫、はいる…」
「どうした半兵衛」
「君が子離れできているからいいものの。見てごらん」
「三成か」
「ああ、可愛らしいね。このまま夫婦にしてしまいたいよ」
「吉継からは姫はそれがいいと言っていたが」
「三成君も前聞いたらそう言ったから」
「なら、祝言を挙げるか」
「そうだけど…まぁ慌てなくていいよ。」
「そうよな」

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日月 4

「姫様は夜空が好きですね」
「そうね。私は月が好きだから」
「だから」
「まぁ、少し違うのだけど。」
「?」
「かぐや姫の話知ってる?」
「???」
「月から来たお姫様の話」
「いいえ」
「竹から産まれたの」
「???」
「城に帰ったら教えてあげる。」
「はい」
「あ」
「姫様?」
「流れた」
「星がですか?」
「ええ」
「姫様?」
「来た」





空に流れる星。それが合図だ。戦さ場でも有事の際でも。刑部殿と治部殿と私しか知らない合図。





「姫様!」
「任せなさい」
「でも!傷が」
「貴方のおにぎりで治ったわ」
「そんなぁ」
「ほら追っ手が来た!」
「ひっ」
「スピード上げるわよ。」





小脇にゆき殿を抱えて走る。80%位かなと思いながら走るとわーとかぎゃーとかいう声が聞こえる。本田殿に気づかれたら厄介なものの仕方がない。遠くで起こっている小競り合いに誘導されているだろうからしばらく時間はあるはずだ。


「いた!」
「徳川殿」
「姫様!」
「厄介なのが来たなぁ」
「私を捨ててください!だったら」
「今捨てても捨てなくても一緒だよ。ゆき殿。心配しなくて良い。舌を噛まないようにしなさい」
「え?!んぐー!!!」





さて逃げ切れるかな?意外にしぶとい。それに肩の傷が開いたな。さっきの技を避けきれなかったし。これは詰めてきたか?いやもうと思いながら駆けると撃てという台詞が聞こえる。




「足を狙え!」
「はっ」
「姫様?!」
「っ!治部殿!!!刑部殿!!!」
「撃て!」



火薬の音、爆音。



これは腕一本覚悟しなければと思いながらゆき殿を庇う。砂埃の中意外と痛くないものだと場違いなことを思っていたら藤色と銀が見える。





「治部殿…」
「刑部!」
「ひひひ。確保した。ん?」
「?」
「これはまた。捨てしゃるか?」
「駄目です」
「その娘は刑部が持て!私は姫を!!!離脱する」
「やれやれ。」
「治部殿!」
「姫様。話は後です!」
「三成!!!!!!!!?」
「…貴様!家康!!!!!!!」
「やれ、三成。賢人の申し付けを忘りゃれたか?」
「姫様の肩!!!怪我が酷いのです!!!早く手当を」
「っ…」
「今は憎悪より姫の保護が一番よ!やれ、娘。しっかりつかまりゃれ」
「はひっ!」
「…いつか必ず!その首!秀吉様、姫様に献じてやる!!!!!」
「わっ!」
「貴方に触れる許可を!参ります」










日月










「父上。半兵衛」
「姫」
「ああ!おかえり。怪我はないかい?何か酷いことされなかったかい」
「怪我は少し。ただ」
「ん?」
「徳川で世話になった娘です。この子がいなければ今頃私は死んでいたでしょう。ゆき殿。私の父上と…母上?兄上の様な竹中殿です」
「はひ」
「?」
「やれ、姫よ。輿に酔ったようだ」
「ああ。大事ありませんか」
「大丈夫、です」
「くくく。随分と可愛らしい護衛を見つけたようだね。ゆき君。僕たちの大切な姫を助けてくれてありがとう」
「我からも礼を言う」
「ひひひ。」
「私からもだ。姫が撃たれそうになったおり壁になろうとしていたな」
「!」
「本当うに感謝する。」
「…姫様」
「ふふふ。こちらが治部殿こちらは刑部殿よ」
「噂の?!」
「む」
「ひひ」
「姫の大切なお友達ですね!」
「そうよ。」
「先ほどはありがとうございました。」
「…いや」
「ひひひ。それよりこの娘は如何する?」
「連れて帰って私の侍女に」
「珍しいね。侍女嫌いの君が」
「命の恩人ですから。治部殿と刑部殿も。二人にも礼をしなくてはなりませんね」
「そ、そのような」
「姫様!勿体無いです」
「む」
「へ?」
「ひひひ。よく似たものが居たものだ」
「ふふふ。」
「姫」
「はい父上」
「帰る」
「はい」
「目的は達成したし。帰るよ」
「は」
「やれやれ」
「大阪ですか?楽しみです」
「ふふふ」

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日月 3

「…」
「ん?忠勝か?」
「…」
「ああ、これか。姫様にと思ったのだがけんもほろろに断られた。医者にもわしから言えば黙して語らぬが…忠勝ではどうだ?」
「…」
「そうか…それもそうだな。自身の父上を弑し奉らんとしたのだから。」
「…」
「ああ。大丈夫だ」






ぱちりと目がさめると同じ天井で嫌気がさす。今頃皆は如何しているのか?如何すれば合流できるのか…と思案して痛みでそれを止めざるえないこの体を呪った。治部殿。きっと刑部殿と新しく加わった島殿に迷惑をかけているのだろう。刑部殿も体を酷使してそれに答えているのではないのだろうか。出来るだけ自愛してほしい。
熱は下がった。もう少しすれば、体も動くだろう。そう思案しているとゆき殿が入ってくる。


この娘を殺す。

あの家康殿が言うのだから本気だろう。連れて行けるだろうか?否、この子にも家族があるだろう。ならば皆殺しか…絆を謳う男が笑わせてくれる。それが偽善でも悪でもない。ただ、相容れない。それだけだ。




「姫様?お加減は如何ですか?今日はお蜜柑を」
「ゆき殿」
「はい」
「私は貴方に感謝してもしつくせないと思っております」
「は?」
「ですが、貴方は徳川の私は豊臣の。この体が動く様になれば、私は全力を持ってここを立ち去る予定です」
「…姫様?」
「その時、貴方は咎をおい、殺されてしまうでしょう」
「え?私殺されるんですか?」
「だから、今のうちに暇乞いをするか配置を変えて貰いなさい」
「ですが貴方様のお世話は誰か?」
「抑、捕虜にその様な者はいらないのですよ」
「姫様は殿様の御正室になるのでは?」
「その様なことになれば私は舌を噛んで自害致します」
「!?」
「良いですね。もうここには近づいてはいけません」
「私は」
「ゆき殿?」
「お父ちゃんもお母ちゃんも皆んな死んでしまいました。流行病です。ですから今の今まで人間扱いしてもらったりしてきませんでした。感染るから近づくな。ただ一人の生き残りは石を投げて殺されても不思議がないのを村の長に助けてもらい逃げたんです。だから、お父ちゃんもお母ちゃんも弔ってもらえたのかすら知らないんです。」
「…そうですか」
「だから私が姫様のお世話役になりました。…黙っていてすいません。あっ!殿様やあの大きい方の言いつけじゃないです」
「ええ。わかっていますよ。」
「私、綺麗な人には私が見えてないと思ったんです。野良犬とかそういう物に見られていたのかな?だから姫様に初めて会った時ありがとうと頭を下げられた時本当にびっくりしたんです。私が見えるんだって」
「ゆき殿」
「何より、お母ちゃんとお父ちゃんに貰った名前を褒めてもらったのは初めてでした。凄く」
「?」
「凄く嬉しかったのです」
「ゆき殿」
「私は貴方にお仕えしたいのです。命など…いりません!」
「命を粗末にしてはいけませんよ。ましてや貴方は女子ではないですか」
「姫様でないと、そんな事思いませんでした。ですから」
「ああ、泣かないの」
「ですから。お願いです。そばに置いてください」
「…困ったわ。」
「?!」
「益々貴方を見捨てられなくなったじゃない」
「?!それでは」
「家康殿には私から言います。貴方を私の侍女として頂きましょう。ですから、いま今日より。この部屋で寝食を共にしなさい」
「はい」
「いい子」
「あ!」
「ん?」
「実は聞きたかったことがあるのですが。凄く関係のない話で」
「良いですよ。言ってみて」
「姫様には旦那様がいらっしゃるのですか?」
「いいえ。でも、如何したの?」
「いえっ!その。譫言で誰かをお呼びしてたので」
「治部殿と刑部殿かしら?無二の友なの」
「そうなんですか?!私てっきり。姫様に使えるんだったら旦那様にも使えないとって…勝手に」
「ふふふ」
「姫様ぁ」
「私は父上の選んで下さった方と添い遂げる予定ですが…私の様なものと一緒にされるのは殿方としては地獄でしょうね。傷だらけだったでしょ?殿方は絵巻物の様な女子が好きでしょうから」
「そんな!姫様は凄く綺麗で…」
「(妹が居たらこんな感じなかしら)」
「姫様?」
「ふふふ。好きな人はいるの。でも、きっと振り向いてはくれないかしら」
「そんなぁ!」
「きっとそのうち貴方も会うわ。あっそれより。」
「?」
「いい?私がいない時に銀髪の男の人にあったら私の名前と月の使いですと言いなさい。ああ。神輿に乗った包帯をした人にも。すぐ保護してくれるから」
「はぁ」
「合言葉なの」
「へぇ!」
「だから他には秘密よ」
「はい!」



そう言うところころと笑う。きっと治部殿に会えばびっくりするだろうなぁと思いながらそっと外を見る。笑みは消えたところを見ると動いたのかしら。ゆき殿を背に隠して彼の名を呼ぶ。




「動いたのね」
「ああ」
「そう」
「わしは三成と戦う」
「ええ。そうしなさい。」
「貴方はこの徳川のものにも人気がある。」
「何かしら、急に」
「食してくれないか?」
「きっと治部殿は食べていないわ」
「…」
「寝てもいない。貴方のせいよ」
「わしにも」
「絆をうたって人質を取るのが道かしら」
「手厳しい」
「私は義を説き信を説く。仁を説いて礼を説く。智を説く。己の内を高め、足らずを招合いながら時に支え時に諭し満たした上で、力を持つ。故に強くあれる。」
「…」
「戻れませんか?家康殿」
「あの死屍累々の屍の上に?」
「…」
「もうわしには無理だ」
「そうですか」
「…」
「家康殿…いえ、徳川殿。私達は袂を分かってしまったのですね」
「…ああ」
「では一つ」
「?」
「死屍累々と仰った。我らは後松永だけだったのです。それももう済んでしまったのでしょう」
「ああ」
「そこに貴方が立った。均衡は崩れ戦が再び始まるのでしょう」
「?!」
「死屍累々を厭う貴方がより凄惨な屍を産む咎を絆、と呼ぶのでしょうね」
「やめてくれ」
「やめれません。ここで私を屍に変えたとしても始めたのは貴方なのですから」







日月






「姫様」
「?」
「…」
「ああ、ごめんなさい。怖かったわね」
「ぐすん」
「夢ばかりで統治できぬことを忘れていたもの!…ゆき殿」
「はい」
「こんな私でもいい?」
「?!勿論です!言っていることはわからなかったけど!怖かっただけですし。そんなことで姫様を嫌いになれません!」
「…可愛い」
「は?」
「妹みたい」
「ひっ?!姫様の!?だだだダメです!そんな、勿体無い!」

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日月 2

「…ここは」
「!?」
「こほ…」
「起き?!」
「ああ、貴方」
「はひっ」
「お水を入れてくれますか?」
「はいっ!!!」




コクリと飲むと口の端から溢れてしまうし咳き込んでしまう。すると横にいた少女が一生懸命背中を撫でてくれるものだから私はありがとうと言って頭を下げる。
まだ城に上がったばかりだろう。初々しくもあり可愛らしい。




「姫様!?その様な!もったいない!!!」
「いいえ。礼を言うのは当たり前よ。えっと」
「ゆきと言います」
「ゆき?白い雪かしら?」
「いえ、あの…とりあえずの名前だと思います。私は夏生まれですし」
「なら、幸せのゆきね。取り敢えず名をつけたとしても貴方にぴったりな名前だわ」
「っ!!!」
「ありがとう、ゆき殿」
「殿だなんて!そんな、私」
「でここは、浜松かしら」
「はい!」
「ふふふ。良い返事ね。嗚呼、少しごめんなさい」
「姫様?!立ち上がってはなりません!すごい傷と熱でやっと意識が戻ったばかりなのです」
「…」
「なんですか?」
「敵将に優しいけど…大丈夫?今まで何もされていない?」
「は?」
「家康も。私につけるのなら百戦錬磨の本田をつければいいものを!…貴方の様な子なら暴れるに暴れられないわ」
「本当に姫様は戦さ場にお立ちになるのですか?」
「ええ。」
「…」
「嘘に聞こえる?」
「い、いえ!そんなにお美しいのにと」
「…ますますやりにくいわ」




そう言うと困った顔をしてゆきちゃんが見るものだから私は苦笑する。誰かに目覚めたことを言っておいでと言った端からからりと襖が開く




「姫様」
「…家康ですね。」
「無理をなさるな」
「貴方がつけた傷ですよ」
「ワシは!いや…貴方が病床になければ勝てはしなかった」
「…そんなことはどうでもいいわ。私をどうする気ですか」
「暫くここで御滞在頂く」
「…」
「ゆきを気に入りましたか?」
「ええ」
「もし貴方が逃げればあの子を斬る」
「そう」
「驚きませんか?」
「貴方が謀反を起こしたのです。今の私は…治部殿が謀反を起こす以外驚くことはないですよ」
「…」
「煮るなり、焼くなり好きになさい。あの場で死ぬつもりでしたから。恐ろしいとも恨めしいとも思いませんよ」
「流石、姫様だ」
「大体、迷いのある貴方に何を恐れれば良いのか。愚かな話です。絆が大事など…当たり前の話を御旗に掲げてしまったのですから」
「?!」
「如何しましたか?」
「覚えていたのですか?」
「当たり前です。父は勿論治部殿も他の者も、貴方のその様なところを気に入っていましたから。…警戒していたのは私と半兵衛と刑部殿くらいかしら。以前貴方は私に全ての民を笑ましたいと言っていましたね」
「それが最大の理由です。秀吉公では」
「ですが貴方は私の笑みを奪いました。治部殿の、貴方を友と呼ぶ彼の笑みも。それを見る豊臣の皆の。貴方にとって豊臣は民ではないのすね。」
「ちがっ!」
「しかし事はなり笑みを奪ったのですから…何より自身がよくわかっているでしょう?」
「…貴方は何故、そうまで強く居られるのだ。」
「王者は必ず搾取せずには存在せぬと知っているからですよ」
「そう、か」
「これからは監視役はゆき殿以外にして下さいな。侍女としてお借りいたす。槍も刀もないと私は止められぬよ」
「…了解した」






ふうと息を吐く頃には目眩がして横になると困った様な顔をする。この顔は変わらんなと思いながら目を閉じると哀しそうに惑う治部殿の顔が見えた気がした






日月








「大阪はすぐに奪還出来たなぁ」
「ああ。尊城が二心ある者らに蹂躙されてなるものか!…しかし」
「姫は拐かされたらしい。生きているだけでまずは良しとせねばなぁ」
「…姫様」
「失礼いたします」
「やれ、如何した」
「城の探索及び片付けをしていましたらこれが」
「?」
「書かれた方はわからないのすが」
「これは、姫の手が」
「何?!」






戦さ場に立つ二人に会えなくなるのは寂しいものですがこれも今生の定めと諦めなくてはなりません。父上と半兵衛始め貴方の元へお返しできただけでも褒めてくださいね。私信など久方ぶりに書いたので書き方を忘れてしまいました。昔はよくと懐かしいことを考えてしまいます。
治部殿、刑部殿。いつまでも仲良く。父上を頼みます。半兵衛の話をよく聞くのですよ。何より、私憤に駆られてはなりません。常に冷たい氷の如く。冷静に。


刑部殿、苦労をお掛けします。しかし、無理をせず体を愛とうて下さい。
治部殿も同じです。苦労をお掛けしますが、ちゃんと食べ、寝てください。それだけでも刑部の仕事が減るのですから









「本に」
「…」
「泣きしゃるな」
「どの様な」
「ん?」
「どの様なお気持ちで、書かれたのか」
「さて、なぁ」
「…お助けせねば」
「そうよな」
「刑部、頼んだ」
「ひひひひひ」

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日月

「こほ…」
「やれ、大事ないか?」
「風邪だから。大丈夫。でも」
「ん?」
「治部殿の相手を刑部殿に押し付けたみたいで申し訳ないの」
「ひひひ。本に、ヌシらしい。安心しやれ。いつものことよ。」
「大変ね」
「大変たいへん。大体ヌシが行ったとしても前線に立たすまい。姫に傷一つ付けたものなら我でも止まらぬ」
「私ももう武人なのだけど。治部殿にすればまだまだなのでしょうね」
「そういうわけではあるまい」
「?」
「刑部!姫様のご容態は?!」
「やれ静かに入りゃれ。姫も咳き込んで…水よ。のましゃれ」
「ありがとうございます」
「申し訳ございません!」
「いいえ私こそ。治部殿の軍の末座にと思ったのに」
「いえ!末座など。拝すべき姫様に敵国の首を献しいたします!」
「ええ。父上のため。豊臣の為励んでください。ですが」
「?」
「治部殿に刑部殿」
「は!」
「ん?」
「幼い砌よりの…友として無事の生還を。あなた方2人に何かあると…私は耐えられませんから」
「っ!」
「わかった。ヌシも確り滋養しりゃれ。…やれ、三成」
「治部殿?」
「?!い、いえ!恐れ多いお言葉!」
「…」
「あ、その!」
「いつの間にか治部殿は遠くに行ってしまいましたね。」
「違うのです!その…貴方様は貴いお方です…が」
「?」
「友と…おっしゃてくださるので私は嬉しいのです」
「…」
「姫、様?顔が赤く…熱が?!」
「やれ違う違う。」
「ふふふ。治部殿はいつも私を喜ばせてくれますね」
「!」
「刑部殿は癒してくださいます。ありがとうございます」
「身にあまるお言葉!」
「本に豊臣の月よのう。今大阪には太陽と月があるか。ひひひ。」
「ごほ…時間は良いのですか?父上にはお会いしたのでしょう?」
「あ、いえ。今から行って参ります。」
「珍しい」
「それは、その。」
「心配しておったからなぁ」
「刑部!?」
「そう。…本当に駄目ね。貴方たちに心配ばかり。本当にご迷惑なさい」
「いえ」
「三成」
「わかっている。姫様」
「行ってらっしゃい」
「はい」









それからどれくらいだろう。薬のおかげで寝ていた意識は大きな爆発音と足音で起こされる。自然武器に手を伸ばすものの熱が酷くて立つのままならない。




「姫様!」
「何事です」
「徳川です!徳川謀反にございます」
「!!?」





籠手を握って私は玉座にかけると難しい顔をしている父上と半兵衛がいる。



「姫?!起きだしちゃダメじゃないか」
「徳川、謀反と」
「うむ。間違いない」
「でも大丈夫。僕も秀吉もいるのだから。君は休みなさい。ひどい熱じゃないか」
「…父上と半兵衛はこのまま石田軍と合流なさってください」
「どういうことかい?」
「あの、徳川が仕掛けてくるのです。思慮深い男か。何かある」
「我が負けると?」
「そうではありません!しかし、玉体に何かあれば!貴方様は豊臣の太陽なので御座います!万が一!億が一もあってはなりません!お願いで御座います…私の最後の我儘と」
「ぬ…半兵衛」
「姫」
「?」
「その根拠は?」
「自兵を一兵も無駄にしたくない彼が豊臣に攻め入るという事実と経験則。何より」
「何より」
「私の勘です」
「君の勘か…」
「はい」
「わかった。秀吉。ここは姫の言う通りにしよう」
「しかし…」
「この子の勘は侮れないからね。さぁ行って!僕がここを引き受ける」
「いいえ、殿は私が」
「は?」
「それはならん。貴様は我の跡を継ぐもの」
「半兵衛はまだ豊臣になくてはならない。石田を導き父上をお支えするのは貴方しかできません。豊臣の為、父上とその右腕を無事左腕と合流させなくてはならないのですから。半兵衛。それを何より理解しているのは貴方だし実施なくてはならないのも貴方です」
「…でも!」
「話している暇はない。兵を全て連れて早く!貴方も半兵衛もかけがえの無い方なのですから」
「それは貴様とて」
「私はいくらでも替えがいる。父上が豊臣そのものなのだから。何より貴方の跡目に相応しいのは血より思考を継いだ治部です」
「…君は聡明で優しく強い子だ。早く合流しておいで」
「はい」
「半兵衛?!」
「早く行くよ秀吉!姫の行為を無にしてはいけない」
「く…」
「敗走ではなく合流。私は留守居。父上」
「必ず、合流せよ」
「はい」
「…三成君たちに伝えることは?」
「治部殿と刑部殿にはいつまでも仲良くと。あと…紅椿 積もりし雪に 散らんとも また相見んと 今は眠らん」
「承った」










父上たちが行ってどれくらい経っただろう。仕掛けが役に立ったようで私の方の準備もできた。




「姫?!如何して。貴方は三成と進軍したのでは?!」
「誤情報に踊らされましたね。ここに居るのは私だけ。」
「っ!貴方とは戦うつもりはない!わしは」
「裏切りは裏切り。謀反は謀反。失敗したのです」
「っ?!」
「逃がしませんよ。たとえ勝てぬとも。私は貴方を見過ごせない」
「!」
「精一杯足止めさせていただくわ」







日月








「姫、様が?!」
「…早くこの城を落として佐和山城に入るよ。いいかい?三成君」
「姫、様!?家康!!!!家康ぅぅぅ!!!!!」
「大丈夫。彼も姫は殺せはしない。現状を整えて!早く救出しよう」
「やれ、賢人」
「なんだい大谷君。」
「…なんでもない」
「あれからの言伝だ」
「?!」
「二人ともいつまでも仲良くと」
「ああ!」
「姫の事。句があろうがそれは後で。我とて平常でおれぬよのう」
「わかったよ」
「姫様…ひめさまぁぁぁ!!!!!!」

拍手