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変換なしの雑食夢

ran

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日月 3

「…」
「ん?忠勝か?」
「…」
「ああ、これか。姫様にと思ったのだがけんもほろろに断られた。医者にもわしから言えば黙して語らぬが…忠勝ではどうだ?」
「…」
「そうか…それもそうだな。自身の父上を弑し奉らんとしたのだから。」
「…」
「ああ。大丈夫だ」






ぱちりと目がさめると同じ天井で嫌気がさす。今頃皆は如何しているのか?如何すれば合流できるのか…と思案して痛みでそれを止めざるえないこの体を呪った。治部殿。きっと刑部殿と新しく加わった島殿に迷惑をかけているのだろう。刑部殿も体を酷使してそれに答えているのではないのだろうか。出来るだけ自愛してほしい。
熱は下がった。もう少しすれば、体も動くだろう。そう思案しているとゆき殿が入ってくる。


この娘を殺す。

あの家康殿が言うのだから本気だろう。連れて行けるだろうか?否、この子にも家族があるだろう。ならば皆殺しか…絆を謳う男が笑わせてくれる。それが偽善でも悪でもない。ただ、相容れない。それだけだ。




「姫様?お加減は如何ですか?今日はお蜜柑を」
「ゆき殿」
「はい」
「私は貴方に感謝してもしつくせないと思っております」
「は?」
「ですが、貴方は徳川の私は豊臣の。この体が動く様になれば、私は全力を持ってここを立ち去る予定です」
「…姫様?」
「その時、貴方は咎をおい、殺されてしまうでしょう」
「え?私殺されるんですか?」
「だから、今のうちに暇乞いをするか配置を変えて貰いなさい」
「ですが貴方様のお世話は誰か?」
「抑、捕虜にその様な者はいらないのですよ」
「姫様は殿様の御正室になるのでは?」
「その様なことになれば私は舌を噛んで自害致します」
「!?」
「良いですね。もうここには近づいてはいけません」
「私は」
「ゆき殿?」
「お父ちゃんもお母ちゃんも皆んな死んでしまいました。流行病です。ですから今の今まで人間扱いしてもらったりしてきませんでした。感染るから近づくな。ただ一人の生き残りは石を投げて殺されても不思議がないのを村の長に助けてもらい逃げたんです。だから、お父ちゃんもお母ちゃんも弔ってもらえたのかすら知らないんです。」
「…そうですか」
「だから私が姫様のお世話役になりました。…黙っていてすいません。あっ!殿様やあの大きい方の言いつけじゃないです」
「ええ。わかっていますよ。」
「私、綺麗な人には私が見えてないと思ったんです。野良犬とかそういう物に見られていたのかな?だから姫様に初めて会った時ありがとうと頭を下げられた時本当にびっくりしたんです。私が見えるんだって」
「ゆき殿」
「何より、お母ちゃんとお父ちゃんに貰った名前を褒めてもらったのは初めてでした。凄く」
「?」
「凄く嬉しかったのです」
「ゆき殿」
「私は貴方にお仕えしたいのです。命など…いりません!」
「命を粗末にしてはいけませんよ。ましてや貴方は女子ではないですか」
「姫様でないと、そんな事思いませんでした。ですから」
「ああ、泣かないの」
「ですから。お願いです。そばに置いてください」
「…困ったわ。」
「?!」
「益々貴方を見捨てられなくなったじゃない」
「?!それでは」
「家康殿には私から言います。貴方を私の侍女として頂きましょう。ですから、いま今日より。この部屋で寝食を共にしなさい」
「はい」
「いい子」
「あ!」
「ん?」
「実は聞きたかったことがあるのですが。凄く関係のない話で」
「良いですよ。言ってみて」
「姫様には旦那様がいらっしゃるのですか?」
「いいえ。でも、如何したの?」
「いえっ!その。譫言で誰かをお呼びしてたので」
「治部殿と刑部殿かしら?無二の友なの」
「そうなんですか?!私てっきり。姫様に使えるんだったら旦那様にも使えないとって…勝手に」
「ふふふ」
「姫様ぁ」
「私は父上の選んで下さった方と添い遂げる予定ですが…私の様なものと一緒にされるのは殿方としては地獄でしょうね。傷だらけだったでしょ?殿方は絵巻物の様な女子が好きでしょうから」
「そんな!姫様は凄く綺麗で…」
「(妹が居たらこんな感じなかしら)」
「姫様?」
「ふふふ。好きな人はいるの。でも、きっと振り向いてはくれないかしら」
「そんなぁ!」
「きっとそのうち貴方も会うわ。あっそれより。」
「?」
「いい?私がいない時に銀髪の男の人にあったら私の名前と月の使いですと言いなさい。ああ。神輿に乗った包帯をした人にも。すぐ保護してくれるから」
「はぁ」
「合言葉なの」
「へぇ!」
「だから他には秘密よ」
「はい!」



そう言うところころと笑う。きっと治部殿に会えばびっくりするだろうなぁと思いながらそっと外を見る。笑みは消えたところを見ると動いたのかしら。ゆき殿を背に隠して彼の名を呼ぶ。




「動いたのね」
「ああ」
「そう」
「わしは三成と戦う」
「ええ。そうしなさい。」
「貴方はこの徳川のものにも人気がある。」
「何かしら、急に」
「食してくれないか?」
「きっと治部殿は食べていないわ」
「…」
「寝てもいない。貴方のせいよ」
「わしにも」
「絆をうたって人質を取るのが道かしら」
「手厳しい」
「私は義を説き信を説く。仁を説いて礼を説く。智を説く。己の内を高め、足らずを招合いながら時に支え時に諭し満たした上で、力を持つ。故に強くあれる。」
「…」
「戻れませんか?家康殿」
「あの死屍累々の屍の上に?」
「…」
「もうわしには無理だ」
「そうですか」
「…」
「家康殿…いえ、徳川殿。私達は袂を分かってしまったのですね」
「…ああ」
「では一つ」
「?」
「死屍累々と仰った。我らは後松永だけだったのです。それももう済んでしまったのでしょう」
「ああ」
「そこに貴方が立った。均衡は崩れ戦が再び始まるのでしょう」
「?!」
「死屍累々を厭う貴方がより凄惨な屍を産む咎を絆、と呼ぶのでしょうね」
「やめてくれ」
「やめれません。ここで私を屍に変えたとしても始めたのは貴方なのですから」







日月






「姫様」
「?」
「…」
「ああ、ごめんなさい。怖かったわね」
「ぐすん」
「夢ばかりで統治できぬことを忘れていたもの!…ゆき殿」
「はい」
「こんな私でもいい?」
「?!勿論です!言っていることはわからなかったけど!怖かっただけですし。そんなことで姫様を嫌いになれません!」
「…可愛い」
「は?」
「妹みたい」
「ひっ?!姫様の!?だだだダメです!そんな、勿体無い!」

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