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変換なしの雑食夢

ran

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日月 5

「やれ姫」
「どうしたの刑部殿」
「あの娘」
「?」
「頭のネジがどこか抜けておるな」
「…酷い言いようね」
「先だって揶揄い序でに我の饅頭をやったが嬉しそうに食していた」
「甘いものが好きだし、私にも治部殿にも餌付けと言ってくれるのに???変なこそかしら?」
「ああ…そういえばぬしも三成もそうであったな」
「嬉しいくせに」
「それはぬしらだけよ。我は知らぬ。」
「ひどいわ…あ。ゆき殿は?」
「行儀見習い中ゆえもうちとかかろう。頭の出来は普通故。身元も調べ太閤並びに賢人の許しも出た故此処に来たいと駄々をこねていた」
「そう。」
「三成は?」
「寝ている」
「は?」
「ほら」
「ずっとべったりだと思っていたが。そういう関係か?」
「いいえ。母と赤子のような。さっきまで愚図っていたの。」
「まさにのう。して」
「?」
「帰られた心地は如何か?」
「ただただ嬉しい。」
「左様か」
「ええ」
「…う」
「治部殿」
「姫様、何処に?」
「側にいますよ。さぁもう少しおやすみなさい」
「私を、置いて」
「行きませんよ。」
「ん…」
「手のかかる殿方なこと」
「それで男女の仲にないのが不思議よのう」
「…」
「真っ赤よの」
「だっ…刑部殿」
「姫も姫よ。昔は蜘蛛でも蛇でも捕まえるような童なのに裳着の後よりはすっかり女子になって」

だってと言って私は刑部殿を見る。二人が綺麗というのだものといえば嬉しそうに引き笑いをするのでますます赤くなる。



「そうか」
「笑いすぎ」
「いや、すまぬ」
「裳着も逃げ出そうとしてたのに…あんな嬉しそうな顔で治部殿が見るのだもの。刑部殿は暖かい顔で笑いますし。琴を引けば褒めて頂けるし、連歌も…じゃあ頑張らないとと思っていたらもう、こんな感じに」
「我はそれで良いと思う」
「でも」
「ん」



いつかは治部殿も私も誰かと番ってこうもしていられなくなるのでしょうね言いながらキラキラと輝く銀髪を撫でる。いつの日か、この指の先の主が変わってしまうのだろう。彼の髪を撫でる指の主も変わるのだろう。それが辛いですというと沈黙が生まれて妙に思って、私は顔を上げる。
凄く間の抜けた刑部殿の顔を見たのは久しぶりだ




「主がその様に思っていたとは」
「?」
「左様か。番うなら三成がいいと」
「…寝ているかしら?」
「寝ておろう」
「…誰かの妻になるなら治部殿がいい。」
「ひひ」
「ああ、もう…恥ずかしい」
「愛い愛い」
「…刑部殿」
「我はこの不幸が身に降りかかった折のぬしらの言葉が忘れられぬ」
「?」
「皆から見捨てられた我を看病すると言い張った愛い童の戯言よ」
「???」
「不幸が主らに降ってはならぬ故ほっておけと言った折、二人して抱きつきそれなら三人でお揃いだと一番の不幸は我がいなくなることだと」
「言ったと思いますが戯言ではなくかなり本気で私など号泣して叫んだものだから父上と半兵衛が走ってきて凄く笑われたのを覚えてます。君の鳴き声が体に触ったらどうするのって半兵衛が冗談をいうから、それを聞いて刑部殿が死んじゃうって益々号泣して、つられて治部殿まで泣いて…」
「本になぁ。騒がしい童が殿を務め帰還する日が来ようとは」
「早く休日に来てくれたから…私もゆき殿も助かったの。」
「…その時の皆の顔が忘れられぬ」
「?」
「これがこうまで主から離れず、太閤賢人が見舞う理由よ。皆主が好きで幸せになってほしい故。我も同じよ。我と賢人は三成と主が夫婦になってほしいと常に言っておったからなぁ」
「は?」
「早く孫の顔を見せてほしいものよ」
「…刑部殿もいますか?」
「勿論よ。主らの子を愛るのが我と賢人の仕事故」
「私は刑部殿にずっと守られていますね」
「それは我も同じよ」
「ふふふ」







日月





「姫様ぁ」
「あらゆき殿」
「ひひひ。講義は済んだのか?」
「もういっぱいいっぱいです。あ…石田様が寝てたのですね」
「大丈夫よ。こうしてたら起きないから」
「凄くお似合いですねぇ」
「そうよなぁ」
「あ!大谷様!」
「ん?」
「この間はお菓子ありがとうございます」
「は?」
「すっごく美味しくて。お礼をと思ったのですが…何がいいのかわからなくて着物の繕い物が溜まっておいででしたので洗って直して置いておきました」
「ぬ」
「だめ、でしたか?あっ!それは侍女の仕事でした…すいません。お、お給金が出ましたら何が」
「い、や。いらぬ。それに助かる。我のものを洗うのを厭うものは多いのでな」
「そうなのですか?ついでに包帯も洗っちゃいましたが出ましたらいけませんでしたか?」
「…主の頭なやはりネジが飛んでいる?」
「え?!ネジですか?姫様ぁ私は絡繰」
「ふふふ。刑部殿も初々しい」
「姫」
「ゆき殿がこういう人だから連れてきたのですよ。向こうでは虐げられていましたから」
「…左様か」
「?」
「やれ、姫も休ましゃれ。ゆき、とやら。ぬしに礼をせねばな。菓子が良いか何が良い」
「わあ。いいんですか?」
「…」
「姫様。お菓子もらってきてもいいですか?」
「ええ。お菓子ついでに刑部殿は博学な方です。色々草子を見せていただきなさい。」
「いいですか」
「ひひひ。きりゃれ」




静かに閉まる音。案外気に入ったかしらと思案しながら治部殿の頭を撫でながら横になる。まぶたが重い。






「姫、はいる…」
「どうした半兵衛」
「君が子離れできているからいいものの。見てごらん」
「三成か」
「ああ、可愛らしいね。このまま夫婦にしてしまいたいよ」
「吉継からは姫はそれがいいと言っていたが」
「三成君も前聞いたらそう言ったから」
「なら、祝言を挙げるか」
「そうだけど…まぁ慌てなくていいよ。」
「そうよな」

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