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変換なしの雑食夢

ran

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すれ違う三成 2

「おい!」
「?」
「ようやく帰ってきたか」
「三成?」
「朝帰りとは剛毅なことだ!来い!」
「な?」




結局夜明け直ぐに大阪城に帰ると門番達が色めき立つ。何?何事?!と思えば三成が帰ってきたら直ぐに知らせろと言っていたみたいだ。あれよあれよと三成に捕まって彼の部屋に連れ込まれる



「春」
「っん?!」
「ん?!」
「何…するの!」
「貴様…」
「んん!!」
「私を拒絶する気か!」
「や、やだ?」
「拒絶するなど許しはしない!」
「みつな、り」
「貴様は私のものだ!」










優しくない三成はいつもの事だ。意地悪だし、しれっと私の胸を抉る言葉を簡単に言ってくる。
でもだ。こんなに無理矢理私を暴く事はしない。しなかった。


二人の時だけは優しかったのだ。
そう、信じていたのに






「っ」
「…」
「は、る」
「…っ?!」
「あ…」
「さわら、ないで」
「すまない…春」
「これで」
「…おい」
「これで満足した?」
「?!」
「もう、行くわ」
「ま、待て!」
「や、やだ!」
「私の元から去る事は許さない!」
「や、だ!」
「春」





嬌声と水音しか聞こえない。
いつの間にか気を失っていたらしい。




「やれ、春殿」
「よし、つぐ?」
「気がつかれたか?」
「…此処は?」
「三成の部屋よ。主は大事ないか?」
「…そう、見える?」
「…」
「大丈夫よ。思いの外、頑丈だから」
「こんな時まで笑わしゃるな」
「…ん」
「…その、よ」
「なに?」
「主は」
「?」
「かんちが」
「春!」
「っ?!」
「やれ三成。」
「起きたか?!」
「…」
「すまない。体は?」
「…何の謝罪?」
「?」
「やれ二人とも。落ち着きゃれ」
「貴様にすまぬ事をしたからだ。その」
「遊びのつもりだったからでしょ?」
「?!」
「謝るくらいならしないで」
「ちがっ?!」
「なにが違うの!…ちがうなら、どうしてこういう事するの?」
「っ。其れは」
「もう良いわ」
「ま、待て!」
「春殿」
「どこに行く!」
「部屋に帰る…」
「私を裏切る気か!」
「先に!」
「何だ!!!」
「先に!…裏切ったのはあなたの方じゃない」
「?!」
「もう良いわ。さよなら」
「ま、待て!」







すれ違う三成 2









「春君が?」
「ひひひ。我とてお手上げよ」
「二人とも若いからなぁ」
「しかしながら三成が些か悪い。あれならば勘違いしても無理はなかろう。現に事情を知らぬ彼方の何人かは勘違いをした。誤解は解けたが」
「春君は意外と真面目だから…ね。君達にすら弱みを見せずにやって来た子だよ?そうか」
「本に手のかからぬ良い子であったからなぁ。」
「三成君は逆だものね。…ん、わかったよ。春君には少し休んでもらう」
「手加減せずにひどく抱いたらしいからなぁ」
「情熱家っていえばいいのかな?」
「愚直と言うのよ。正常に動けば可愛いものだが今回は些か」

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すれ違う三成

「気を病んでいると思ったら…妊娠してるだなんて」
「申し訳ありません」
「謝ることではないわ。おめでたい事だもの」
「瓜生様…」
「で」
「?」
「相手は」
「…」
「言えない相手?」
「いえ…その」
「誰か。この子の相手を私の前に連れてきなさい」
「?!」
「縁を結ぶも否も…貴方達だけの話ではないのだから」
「…は、い」





そう言って連れてきた相手が三成なのだから心底びっくりする。この男が?上に立つものが、簡単に人んとこの兵に手を出すなんて…とふつふつと怒りがこみ上げてくる。いやそれより何より…。
ばきりと持っていた脇息をへし折ったあたりで横にいた刑部と左近が慌て始める。


「そう」
「ものを壊すな」
「うちの兵に手を出したのは三成なのね」
「その話に来た」
「…いつ知ったの?」
「お前が気づいた後だ。早く言うべきだと思い、ここに来ている」
「…」
「すまん。責任を持つ。」
「責任を持つ…そうね。当たり前よね」
「…何を怒っている?」
「や、やれ三成。主の言葉が足りておらん」
「そ、そっす!違うんす!落ち着いてください!!!三成様は」
「左近」
「はひっ!」
「…これが落ち着いてられる?」
「(こっえー!)」
「おい。本当に如何した?」
「触らないで」
「な?!」
「責任を取っていただけるのなら結構。ただこれからは事後承諾は無しにしていただきたいものだわ。」
「どこに行く!」
「…」
「何故急に怒り出す?!大事な話をしているはずだ!席を外すなんて、許さない!」
「ゆるさ、ない?」
「三成!」
「何だ刑部!」
「少し黙しゃれ!…やれ、これには訳が」
「吉継。」
「何か?」
「後はうちの副官に任せるから。宜しく」
「待て!」
「やれ、三成…ああ。行ってしもうた」












「っち!」
「舌打ちしないでくださいよ」
「気にしないで」
「春様。」
「何?」
「本当に宜しいのですか?」
「秀吉様と半兵衛様の許しは貰っているわ」
「ですけど。」
「何?」
「許可を貰ったというより奪い取ったが近いでしょうし。きっと半兵衛様なんて引き攣ってましたよ」
「見てないくせに」
「いつもの事だもの」
「煩いわよ。」
「男装までして遊郭に来るほどの事ですか?」
「んー…」
「私は楽できていいけど」
「寝てる」
「私はお座敷あるから」
「酷い!」
「どうせ晩になったら帰るんですよね」
「そうだけど」
「まぁどうせ石田様の事でしょうけど」
「…」
「喧嘩しました?」
「子供が出来た」
「え?!おめでとうご」
「私じゃない。他の女」
「え?」
「しかも部下」
「…御愁傷様」
「本当にねぇ。」
「とりあえず寝なさいって」
「うおっ!このふくふく感が堪らん」
「デブと言いたいか」
「うんん。」
「春様?」
「女らしくて羨ましい」
「…」
「眠い」
「おやすみなさいませ。」
「ん…」











すれ違う三成







「んあ」
「酷い顔」
「今何時?」
「もうそろそろ夜が明けますよ」
「えー…」
「副官の方が来て一晩此処で寝さしておくようにって。寝ててくださいね」
「ん」
「お座敷出たらすぐ戻りますから」
「うん」
「ちゃんと寝ててね」
「うん」




ほろほろと泣いてしまっているのを気づいて頭を撫でてくれる。苦界にいる彼女の方が大変だろうにと思いながら瞳を閉じる。






『春』







馬鹿みたいな話だな。こんな時に思い出すなんて。




「身受け」
「え?」
「身受けしたい」
「馬鹿な事言わない」
「ずっと側にいてくれればいいのに」
「他の方がいるでしょ?」
「みんな嘘の私が好きなんだもの」
「…」
「もう疲れたわ」
「よく寝なさいな。」
「うん」
「また帰ってきたら話しましょう。」
「うん」



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胃袋を掴まれた三成

「石田様が呼んでいらっしゃるようだよ!」
「え?」
「早く手を洗って!身綺麗にして!」
「今無理」
「何言ってんの!」
「代わる?」
「…出汁?」
「しかも一番出汁。御前に出す奴」
「ごめん…無理」
「小半刻はかかる。その間に仕込みをしておくわ。御前に上がるものに手抜きはできないし。そうお伝えください。無理なら九つ半なら何とかと」
「私が言うの?!」
「…代わる?」
「行ってきます」





舌打ちしながら私は作業にとかかる。生きの良い鯛に野菜。左近が鴨を取ってきてくれたから…と思いながら作業を着々と進める。「早すぎる」
「すっげー」というのは褒め言葉として「鬼の形相」とか「人外」いった輩覚えていろよ。後で再教育だ。
取り敢えず魚を捌く。すると何故だか周りが騒然となる。
「石田様が御成です!」と侍女たちが慌ただしく動き始める。そして私の周りも。



侍女達は玉の輿の為。
周りは私を止める為。





「てめぇら!」
「ひっ?!」
「その白粉塗りたくった姿でここに入るなって言ってんだろう!」
「萩さん!怒らない!!!」
「言葉!言葉が酷い!!!」
「萩男になってる!!!」
「うっさい!お前らも退け!埃が立つ!!!」
「後で幾らでも謝ります!ですから、今は!!!」
「今は何!?離せ!」
「オメェラも早く行け!!!左近様に言えばどうにかしてくださるかもしれねぇから。萩さん押さえとくから!!!」
「は、はい」
「何事だ」
「「「?!」」」
「みみみみ三成様!やばいですって!」
「何がだ?半刻も待つ猶予は私にはない。此処の責任者である萩という女を呼べ」




「下足の…まま」



「左近様!!!」
「ごめん!止めたけど無理!!!」
「役立たずー!!!」
「…下足の、まま」
「やばっ?!」
「何処のどいつかしらねぇけど。」
「わー!!!」
「萩さん!落ち着いて!!!」
「落ち着いてられるか!!!」
「ぎゃー!!!!!」
「な?!」
「あんた!」
「…何だ?」
「此処を何処だと思ってる?!御前の食事を作るところだ!塵一つ入らない様に作り手が心を砕いてもあんたみたいな男が全部台無しにしちまうんだ!見てみな!此処の奴らはみな下足なんて履いちゃいねぇ!あんた達だけだ!」
「な?!」
「出て行きな!私はあんたに仕えてるわけでもなんでもない!あんたの言うことを聞いてやる義理なんてこれっぽっちもないね!だからあんたの時間に合わせる必要も何もない!!」
「…それは」
「左近!早く連れて行きな!!!今日は誰にも合う暇なんてないよ!」
「ま、待て!」
「お前ら!とっとと食材を仕舞っちまいな!私は今から魚屋に行く。御前の昼餉に間に合わせるよ!」
「へい!」









げんなりする。あの男のせいで今日の予定は散々だった。今何時だと思った時には夜食を半兵衛様の為にお持ちして欲しいとお願いされた。もうそんな時間か…。2人分と言われたので御前の分も?と尋ねるとそうではないということ。また誰かと話ながらかな?と思いつつ用意をして膳を持っていく。





「失礼いたします」
「ああ、萩君」
「御夜食をお持ちいたしました。今日は冷えますから温かいものを。火鉢をお借りしてもよろしいですか?」
「良いよ。ああそうそう。」
「半兵衛様?」
「ふふふ。」
「?」
「聞いたよ」
「…ああ。賄い方の話ですか?」
「この城で君のところに土足で行くのは彼くらいだろうけど、彼に啖呵を切るのも君くらいだね」
「御前と半兵衛様の口に入るものですから」
「君のそういうところ嫌いではないよ」
「短気はそう治せませんね。…でもどの様な用件だったのか聞いていませんでした」
「言わせなかったの?」
「まぁ…そうですね」
「いや、ね。行きたまえと言ったのは僕なんだよ」
「?」
「彼あんまり食べなくてね。特に西の方の職人は雑だから。」
「雑…ですね。確かに雑です。ですが…西の方の者まですべて作るのは今の質では無理でございます。」
「それは僕が嫌だね。…何人ならいけそう?」
「1.2人ならば何とかと。」
「では三成君と吉継君の分を増やしてはもらえないかい?あの二人は必要だからね」
「…」
「目下この夜食も。」
「では私は失礼して」
「えー!萩君がしてくれるんだろう?」
「…」
「ああ、来たね」





失礼致しますと入ってきた男は件の男だ。此方を見てぎょっとしているものの私は無言を貫くと決めている。
半兵衛様に至っては食事の件伝えておいたからと言って夜食をせっつく。意外と良く食べるのだ。この御仁は。そして何より味にうるさい




「三成君も一緒に食べよう」
「ですが」
「今日は何かな?」
「鯛茶漬けです」
「あれ僕好きだよ」
「貴方様の其れが偽りでないことを祈っています」
「…半兵衛様」
「ほら三成君も」
「はい…」
「石田様」
「?!」
「どの位召し上がりますか?」
「う…その、だ」
「?」
「少なくて、良い」
「はい」
「すまない」
「?」
「私は余り食べない、から」
「伺っております。…半兵衛様」
「美味しそうだね」
「…石田様」
「…」
「ふふふ。美味しいね」
「…」
「今日は色々あったけど締めがこれなら良い日だったよ」
「ありがとうございます」
「…」
「三成君?」
「え?!あ…申し訳ございません、半兵衛様」
「へー…」
「とても美味しかった」
「もう少し召し上がりますか?」
「…ああ」
「…」
「すまん」
「御嫌いなものなど有りましたらお言いつけ下さい」
「あ、ああ」
「侍童が参りましたね…それでは」
「ああ。おやすみ」
「おやすみなさいませ」
「…」









胃袋を掴まれた三成










「やれ三成…?」
「?!」
「如何致した?」
「な、何でもない!」
「左様か…ん?」
「失礼致します」
「は、萩殿?!」
「萩…はてさて。太閤の賄い方が何ぞ用か?」
「昨晩、半兵衛様より言いつかりまして大谷様と石田様の食事も作らせていただきます。」
「侍童を送ったが」
「取り敢えず、先に謝っておきます」
「?」
「何かしたか?」
「貴方様同様で…今日はまだ戸外の出来事でしたので」
「すまない…」
「!」
「昨日言えればよかったが…迷惑をかけた」
「…」
「萩殿?」
「い、いえ。私こそ。申し訳ございませんでした。将兵の方にあのような言い振り。料理に関しますと短気で…萩男と言われる程度に荒れますから」
「秀吉様のために粉骨しているから…その怒りは理解できるし、昨日見ていて成る程私が良くないと重ねて理解できた。」
「…」
「何だ?」
「いえ、本当に」
「良いか?話の腰を折っても」
「あ、はい。大谷様」
「早よ膳を。一度噂に名高い主の膳を食してみたかったのでなぁ」
「はい。量は足りますか?」
「ああ」
「我もよ」
「ではごゆるりと」




「行ったなぁ」
「…」
「…」
「…」
「…何だ?」
「恋待ち顔よなぁ」
「?!」
「それで主の悪癖が治れば我は文句などないがなぁ」

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秘密を抱える三成 12

「たのもー!!!!」
「ちょ、旦那!声が大きいって!」
「そうか?ここの屋敷は一番大きいから、このくらいの声で言わぬと聞こえぬだろう」
「そういう問題じゃないでしょ!」
「石田殿ーーーー!!!!!」
「はいはーい」
「「ん?」」
「なぁ、佐助」
「何?」
「石田殿の屋敷から似つかわしくない声が聞こえたが…」
「あはー。やっぱり旦那も聞こえた?」
「幻聴ではなかったか」
「みたいだね」
「ちょっと待ってくださいね」
「奥様?!」
「そのような事は私がいたします!」
「あー!!!またお前!何勝手なことしてんだよ!」
「げ!うざ左近」
「刑部さーん!ここに居ましたよ!」
「やれ、奥」
「刑部さん。お客様!」
「はてさて、ぬしは何度言えばその薄っぺらい脳に記憶を止めておけるのか。」
「酷い蔑み!」
「主はここの奥で、メイドではないのになぁ。ほれほれ」
「いたっ!痛いですって!こつかないでー!!」
「ほれほれ。早よう三成の元へ参りゃれ」
「わーん!みんなが仕事取るー!!」


このドアの向こうで何が起きているのか俺様知りたくない。
ちらりと旦那を見てみたらドン引きしているかと思ったのに意外と普通で逆に驚く。曰く、姫様のようではないとのこと。ひらひらうふふ苦手だものね旦那。




「ひひひ。」
「こわっ!ドア越しに笑わないでよ」
「早よ、入りゃれ。真田に忍び」
「いやー…入っていいの?」
「開いておるわ」
「申し訳ございません」
「ささ、案内いたします」
「失礼つかまつる」
「久しいのう」
「先だっての会議以来でござるが…こちらに来るのは何十年ぶりでござる」
「前はすっごく暗かったのに」
「ひひひ。姦しい限りよ。」
「にしては楽しそうだね」
「馬鹿な子ほどと言うからなぁ」
「へー。大谷の旦那も随分お気に入りみたいじゃん」
「ひひひ。こちらよこちら。」



石田の旦那の執務室の扉が開かれるとあいも変わらず薄暗いのに花なんか生けてあって。それが先ほどの奥さんが置いて石田の旦那が容認しているというところに驚きを隠せなかった。本当に結婚は人を変えるらしい




「真田か?」
「ご無沙汰しておりました」
「お久しぶり〜。はいこれ」
「?」
「頼まれていた書類。」
「ああ」
「あとこれはご結婚のお祝いでござる」
「…」
「楽しそうな奥様みたいだね!最も静かな感じかと思ったけど」
「あれが黙るのは食事の時だけだ。」
「へー」
「何だ?!」
「いや、意外だと思ってね」
「ふん!」
「で、その奥方は?声だけしか聞いてないんだよね」
「某も担い手として…ご挨拶したいのでござるが」
「…」
「三成」
「っち!」
「やれ、奥方。…ん?」
「「?」」
「居らぬのか?」
「盛大に拗ねて、寝た」
「「…」」
「左様か」
「え?!良いの其れで」
「良いも何も、あれはそういう女だ」
「左様でござるか」
「起こしてくる。刑部」
「あいあい。」







秘密を抱える三成 12







「おい」
「んあ。」
「…」
「寝てた…?寝てました???私」
「ああ」
「…起こさないで下さい」
「真田と忍びが会いたいと言っているが」
「会いに行ったら怒られたもん」
「拗ねるな」
「…」
「おい」
「怒られる、もん」
「泣くな…お前が泣くと私が困る」
「困ればいいんですよ!」
「そう布団に顔を埋めるな。呼吸しづらいだろう」
「…」
「なぁ」
「…」
「来訪者が真実其れとは限らんのだ」
「?」
「貴様に害をなすものならば…だから私のメイドの時分からドアを開けることなどさせなかったはずだ」
「ん」
「こちらを向いてくれ」
「…」
「目が腫れてる」
「みんな怒るし、三成様も鬼の形相で怒るからです」
「すまん」
「あなたの顔、普通の時ですら怖いんですよ!自覚してください」
「な?!」
「男前なんだから!美人が怒ると怖いんですよ!」
「…」
「?」
「貴様は愛らしいな」
「?!」
「小動物の抵抗だ」
「そっちか!」
「…おい」
「何ですか」
「こちらを向け」
「ん」
「美しい」
「…この男前が!」
「くくく」











「ね〜、大谷の旦那」
「ひひひ」
「何あれ」
「ようよう見りゃれ。」
「見てどうすんの?」
「いかに我が面倒臭いかわかろう」
「…そっちか」
「にしても」
「旦那?」
「石田殿がああいうお顔をされるとは…」
「この世の奇跡よなぁ」

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初恋の三成 8

「懐に入るまで野生の動物みたいなんだよね。でも入って仕舞えばすぐ懐いてくれるんだけど」
「左様左様。敵か味方か見極めて味方とわかれば至極可愛らしいものよ」
「ふふふ。味方とわかったかな?」
「ひひひ」
「用意は万端なのね」
「何時になるかなぁ」
「早くして欲しいよねぇ。」






「梅!」
「?!」
「今帰った!」
「…」
「怪我は無い。そんな顔をするな」
「本当ですか?」
「ああ。秀吉様からお褒めいただけた。」
「良かった」
「?」
「…」
「如何、した?」
「え?」
「さっきまでと反対の顔だ。…その、」
「???」
「その。私にだ。笑って、いるのは初めてかもしれない」
「そうですか?」
「ああ」
「…」
「…」
「それより」
「ん?」
「お帰りなさい」
「?!」
「無事で何よりです」
「あ」
「?」
「…そのだ」
「石田様?」
「…ただいま」



にこりと笑うのでこちらの頬も緩む。帰って間も無い、其れこそ甲冑のままの状態で嫌ではなかっただろうかと思いつつも会わずには居られなかった。





「あの」
「何だ?」
「お姿…改めなくても?」
「あ、ああ」
「あ、そうだ。」
「?」
「少し、いえやっぱり後で」
「???」
「疲れておいででしょう?」
「…いや、平気だ」
「なら。少し部屋まで行ってきます」
「?」
「ついてきていただけますか?」
「?!」
「?」
「あ、う…それ、は」
「石田様?」
「そ、の。」
「?」
「やはり、半兵衛様の許可を得ないままは」
「え?」
「…」
「あ、の!」
「?」
「お渡ししたいものがあるのです」
「???」
「えっと…ですね。それが、部屋に。あって…今戦から帰ってきた人ばかりだからあまり…その」
「!」
「やはり私一人で」
「す、すまない!」
「?」
「ついていく。もしものことがあったら大変だからな」
「ありがとうございます」




盛大に勘違いした己を恥じながら梅の顔を見るとふふふと笑われた。良く、笑うようになってくれたと思う。さあ行こうといって歩き出すとキョロキョロと周りを見ている。ごった返す兵士がやはり恐ろしいのだろう。
大丈夫だろうかと思いつつ、少し開けたところに出ると身体が強張るのがわかる。




「梅」
「え?!あ…すいません」
「…」
「石田様?」
「抱きかかえる許可を」
「は?」
「私の足ならこの喧騒は一瞬だ」
「!」
「顔色も悪い…すまない」
「?」
「私のせいだ…」
「?!」
「…」
「ち、違いますよ。そんな…あからさまに落ち込まないでください」
「しかし」
「梅様ー!!!」
「あ」




いたいたと言いながら老女がかけてくる。はたとした顔をして、少し待っててくださいいいですねと言ってそちらに梅が行く。確か…半兵衛様の乳母を呼び寄せて梅につけたと言っていたが、その方だろうか?と思いながらそちらを見ていると助かりますとかそそっかしいとか言いながら何かを受け取って急いで帰ってくる。手には笹の描かれた風呂敷包み。半兵衛様からか?と思いつつもそれをじっと見てしまう。青い顔の梅が少し困った顔をしてそれを持ってくる。それと状況が余りにも不可思議なのだ。






「あの、ですね」
「?」
「お約束しましたから」
「約束?」
「お迎えに上がると」
「ああ」
「急いで来てしまって…これを」
「?」
「い、らなかったら捨ててください」
「あ、おい!」





そう言うとパタパタとかけて行った。
手には先ほどの風呂敷包み。





「やれ、三成」
「刑部」
「梅殿に会えたか?」
「会えた、が」
「?」
「逃げてしまった」
「…またなんぞ致したか?」
「いや…これをだ。」
「?」
「置いて…半兵衛様からか?」
「それは…賢人のものではあるまい。」
「なら」
「…開けて見りゃれ」





その場に座り込んで風呂敷を広げる。白檀の淡い香りがして、薄紫色の着物が現れる。




「縫取りか。無紋は不味かろうしなぁ」
「着物?」
「主のであろう」
「?!」
「はよ着替えるが良かろうに」
「何故?!」
「さてなぁ。礼、であろう」
「!」
「良かったなぁ」










初恋の三成 8








「梅」
「お帰りなさい、父上様」
「変わりなく?」
「はい」
「それより、三成くんに何したの?」
「?」
「会いたいってさ。わざわざ僕に申し出てくれたよ」
「…」
「通してあるから会っておいで」
「…今は、その」
「?」
「どんな顔して合えばいいか」
「いつも通りでいいんじゃない?」
「そういう意味では」
「…そう言えば」
「?」
「新しい着物着ていたね」
「!」
「大丈夫。すごく喜んでいたから。」
「本当?」
「本当」
「…」
「行っておいで」








「半兵衛」
「おや、秀吉」
「二人はどうだ?」
「可愛いものさ」
「祝言はいつにする」
「それはまだ先だよ」
「そうか」
「意外と可愛がっているよね」
「当たり前だ。吾とて心配している」
「ふふふ。本当にね」

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