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変換なしの雑食夢

ran

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胃袋を掴まれた三成

「石田様が呼んでいらっしゃるようだよ!」
「え?」
「早く手を洗って!身綺麗にして!」
「今無理」
「何言ってんの!」
「代わる?」
「…出汁?」
「しかも一番出汁。御前に出す奴」
「ごめん…無理」
「小半刻はかかる。その間に仕込みをしておくわ。御前に上がるものに手抜きはできないし。そうお伝えください。無理なら九つ半なら何とかと」
「私が言うの?!」
「…代わる?」
「行ってきます」





舌打ちしながら私は作業にとかかる。生きの良い鯛に野菜。左近が鴨を取ってきてくれたから…と思いながら作業を着々と進める。「早すぎる」
「すっげー」というのは褒め言葉として「鬼の形相」とか「人外」いった輩覚えていろよ。後で再教育だ。
取り敢えず魚を捌く。すると何故だか周りが騒然となる。
「石田様が御成です!」と侍女たちが慌ただしく動き始める。そして私の周りも。



侍女達は玉の輿の為。
周りは私を止める為。





「てめぇら!」
「ひっ?!」
「その白粉塗りたくった姿でここに入るなって言ってんだろう!」
「萩さん!怒らない!!!」
「言葉!言葉が酷い!!!」
「萩男になってる!!!」
「うっさい!お前らも退け!埃が立つ!!!」
「後で幾らでも謝ります!ですから、今は!!!」
「今は何!?離せ!」
「オメェラも早く行け!!!左近様に言えばどうにかしてくださるかもしれねぇから。萩さん押さえとくから!!!」
「は、はい」
「何事だ」
「「「?!」」」
「みみみみ三成様!やばいですって!」
「何がだ?半刻も待つ猶予は私にはない。此処の責任者である萩という女を呼べ」




「下足の…まま」



「左近様!!!」
「ごめん!止めたけど無理!!!」
「役立たずー!!!」
「…下足の、まま」
「やばっ?!」
「何処のどいつかしらねぇけど。」
「わー!!!」
「萩さん!落ち着いて!!!」
「落ち着いてられるか!!!」
「ぎゃー!!!!!」
「な?!」
「あんた!」
「…何だ?」
「此処を何処だと思ってる?!御前の食事を作るところだ!塵一つ入らない様に作り手が心を砕いてもあんたみたいな男が全部台無しにしちまうんだ!見てみな!此処の奴らはみな下足なんて履いちゃいねぇ!あんた達だけだ!」
「な?!」
「出て行きな!私はあんたに仕えてるわけでもなんでもない!あんたの言うことを聞いてやる義理なんてこれっぽっちもないね!だからあんたの時間に合わせる必要も何もない!!」
「…それは」
「左近!早く連れて行きな!!!今日は誰にも合う暇なんてないよ!」
「ま、待て!」
「お前ら!とっとと食材を仕舞っちまいな!私は今から魚屋に行く。御前の昼餉に間に合わせるよ!」
「へい!」









げんなりする。あの男のせいで今日の予定は散々だった。今何時だと思った時には夜食を半兵衛様の為にお持ちして欲しいとお願いされた。もうそんな時間か…。2人分と言われたので御前の分も?と尋ねるとそうではないということ。また誰かと話ながらかな?と思いつつ用意をして膳を持っていく。





「失礼いたします」
「ああ、萩君」
「御夜食をお持ちいたしました。今日は冷えますから温かいものを。火鉢をお借りしてもよろしいですか?」
「良いよ。ああそうそう。」
「半兵衛様?」
「ふふふ。」
「?」
「聞いたよ」
「…ああ。賄い方の話ですか?」
「この城で君のところに土足で行くのは彼くらいだろうけど、彼に啖呵を切るのも君くらいだね」
「御前と半兵衛様の口に入るものですから」
「君のそういうところ嫌いではないよ」
「短気はそう治せませんね。…でもどの様な用件だったのか聞いていませんでした」
「言わせなかったの?」
「まぁ…そうですね」
「いや、ね。行きたまえと言ったのは僕なんだよ」
「?」
「彼あんまり食べなくてね。特に西の方の職人は雑だから。」
「雑…ですね。確かに雑です。ですが…西の方の者まですべて作るのは今の質では無理でございます。」
「それは僕が嫌だね。…何人ならいけそう?」
「1.2人ならば何とかと。」
「では三成君と吉継君の分を増やしてはもらえないかい?あの二人は必要だからね」
「…」
「目下この夜食も。」
「では私は失礼して」
「えー!萩君がしてくれるんだろう?」
「…」
「ああ、来たね」





失礼致しますと入ってきた男は件の男だ。此方を見てぎょっとしているものの私は無言を貫くと決めている。
半兵衛様に至っては食事の件伝えておいたからと言って夜食をせっつく。意外と良く食べるのだ。この御仁は。そして何より味にうるさい




「三成君も一緒に食べよう」
「ですが」
「今日は何かな?」
「鯛茶漬けです」
「あれ僕好きだよ」
「貴方様の其れが偽りでないことを祈っています」
「…半兵衛様」
「ほら三成君も」
「はい…」
「石田様」
「?!」
「どの位召し上がりますか?」
「う…その、だ」
「?」
「少なくて、良い」
「はい」
「すまない」
「?」
「私は余り食べない、から」
「伺っております。…半兵衛様」
「美味しそうだね」
「…石田様」
「…」
「ふふふ。美味しいね」
「…」
「今日は色々あったけど締めがこれなら良い日だったよ」
「ありがとうございます」
「…」
「三成君?」
「え?!あ…申し訳ございません、半兵衛様」
「へー…」
「とても美味しかった」
「もう少し召し上がりますか?」
「…ああ」
「…」
「すまん」
「御嫌いなものなど有りましたらお言いつけ下さい」
「あ、ああ」
「侍童が参りましたね…それでは」
「ああ。おやすみ」
「おやすみなさいませ」
「…」









胃袋を掴まれた三成










「やれ三成…?」
「?!」
「如何致した?」
「な、何でもない!」
「左様か…ん?」
「失礼致します」
「は、萩殿?!」
「萩…はてさて。太閤の賄い方が何ぞ用か?」
「昨晩、半兵衛様より言いつかりまして大谷様と石田様の食事も作らせていただきます。」
「侍童を送ったが」
「取り敢えず、先に謝っておきます」
「?」
「何かしたか?」
「貴方様同様で…今日はまだ戸外の出来事でしたので」
「すまない…」
「!」
「昨日言えればよかったが…迷惑をかけた」
「…」
「萩殿?」
「い、いえ。私こそ。申し訳ございませんでした。将兵の方にあのような言い振り。料理に関しますと短気で…萩男と言われる程度に荒れますから」
「秀吉様のために粉骨しているから…その怒りは理解できるし、昨日見ていて成る程私が良くないと重ねて理解できた。」
「…」
「何だ?」
「いえ、本当に」
「良いか?話の腰を折っても」
「あ、はい。大谷様」
「早よ膳を。一度噂に名高い主の膳を食してみたかったのでなぁ」
「はい。量は足りますか?」
「ああ」
「我もよ」
「ではごゆるりと」




「行ったなぁ」
「…」
「…」
「…」
「…何だ?」
「恋待ち顔よなぁ」
「?!」
「それで主の悪癖が治れば我は文句などないがなぁ」

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