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変換なしの雑食夢

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勝手すぎる三成 8

あれを初めて見たのは見合いの席ではない。半兵衛様に拾われ体調を戻し頃に連れて行かれた茶会の席だったはずだ。茶会と言っても洋式の花見をしながら大人達が話すといったもので取り留めて楽しかったという記憶はない。


「好きに回れ」
「良いのですか?」
「彼方にケーキがあるみたいだよ。食べてくればいい。此処は大人でも退屈だ」



その言葉に甘えて私はお二人から離れる。
ケーキが欲しかったわけではなく半兵衛様の言う通りこの場所が暇だったのだ。大人の退屈な話より始めてきたこの場所を探検する方が興味深かった




「やれ、坊は?」
「今一人で回っているよ」
「左様か」
「…大事ないか?」
「秀吉は心配性だね。」
「豊臣と書かれた名札をしておる故誰も無体はしまい。子供同士のいざこざもまぁ」
「彼なら鼻で笑って終いかな?」







桜の大木がある。これがこの庭の自慢らしく、この木の子供達がこの庭を飾る桜らしい。美しいと思う反面、恐ろしくもある。昨日、刑部が読んでくれた本の中に桜の木下には死体があると書かれていた。この桜はどれ程の人の血を吸っているのだろうかと戦々恐々となる。
今思えば、魅入られていたのだろう。桜の根元へ行こうとした時それを見つけた。




桜の根元に美しく着飾った女が一人。眠っていたのだ。





年は私より少し下か?着物のまま座るなど愚行だと思いながら私はゆっくりとそれに近づく。妖か?人とは思えない美しさにため息をつくとその大きな瞳がパチリと開いたのだ




「な?!」
「誰?」
「私は」
「お客様?」
「…」
「会場は彼方です」
「知っている。何故貴様は此処にいる?!」
「邪魔になりますから」
「?」
「さよなら。部屋に帰らないと」
「待て!」
「?」
「名前は?…貴様の名前はなんという?」
「幸」
「私は石田三成だ」
「…」
「その、此処の桜は美しいな」
「!」
「その」
「嬉しい」
「!」
「大叔母様が愛した桜なの」
「そうか」
「ええ…あ」
「?!」
「ごめんなさい。行かないと」
「まっ?!」
「さようなら、三成さん」







それが彼女との初めての出会いだった。







勝手すぎる三成 8








「おい」
「?!」
「寝ているのか?」
「今はな!何の用だ!」
「…」
「な?!何で私に頭を下げる」
「あれの…幸の家族はお前しかいないからだ。許しを乞いにきた」
「?」
「幸を嫁にしたい」
「駄目だ!」
「必ず、大切にする。」
「母の敵だ」
「…お前と幸と3人で家族になりたい」
「貴様は!どの口を開いて!!!」
「よく、わかっている。だが…あいつと初めて会った時から。私は」
「母は…ずっと苦労していた!でもいつもあの時よりマシだと言うんだ!」
「…」
「そんなところに、母を」
「佐吉…?」
「母」
「如何したの?」
「母は此処で私といるんだよな」
「ん?」
「な、母」
「そうよ。」
「あの男のところに行かないよな!」
「あの男?」
「母の!」
「…私の?あら」
「幸…私は」
「何方、ですか?」
「?!」
「母?」
「佐吉のお知り合い?」
「如何したんだ?母?」
「私がわからないのか?」
「?」
「…な、ぜだ?」
「刑部を呼んで来い!私は先生を」
「佐吉…母は如何して此処にいるの?」
「っ?!」





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勝手すぎる三成 7

「…」
「…」
「(寝ているな)」
「…ん」
「?!」
「…すぅ」
「…」
「…」
「(痩せたな)」






目が醒めると花瓶が置いてあって驚く。可愛らしい色の花は一体どこから来たのか。じっと見てみるとひひひと笑い声がする。ああ、吉継さんかと思っていたら「はてさて花か?」と言うので違うらしい。


「起きたらあったから」
「我ではないなぁなぁ佐吉」
「ああ。鬼平について話してたからな」
「…話が合う人見つかってよかったね」
「今度刑部が太秦というところに連れて行ってくれるらしい。近くに撮影した寺院もあるらしい!」
「(静かに興奮してる)」
「主の快気祝いよ。にしても」
「?」
「芍薬か。主の結婚式を思い出すなぁ」
「母のか?」
「ひひひ。主の母の花嫁姿は美しくてなぁ。その時部屋を飾っていたのがこの花よ。鴇色…と言うてわかるか?」
「ピンクだろう?!鮭の色に近いやつだ」
「サーモンピンクって言って…」
「この色に似ておったわ…ん?」
「達筆だ」
「ぬしに手紙よ。ひひひ。花の送り主はあれらしい」
「…石田さんからですね。」
「何と書いてある?」
「…」
「復縁を乞うているか?」
「雑賀さんが詫びていたと書いてあります」
「?!」
「それだけですね。」
「左様か」
「…」
「物には罪はなかろう」
「そう、ですね」
「袈裟まで憎いか?」
「い、え。ですけど」
「?」
「よく覚えていましたね、あの人」
「ひひひ」
「結婚式なんてずっと睨むか目を閉じてるかだったのに」
「言うてやるな。此方から見れば照れていたのがようわかったがなぁ」
「照れて…ですか?あのこの世の終わりのような顔が?」
「ひひひ。」
「…嘘でもどちらでも良いですけど。吉継さん」
「ん?」
「雑賀さんと仲良しみたいですよ。あの後食事をしたって。その時に聞いたみたいですね」
「…」
「この花の手配も頼んだって。許してやって欲しいって」
「…あの馬鹿者は」
「そういう人、何ですよ。あの人は」
「ひひひ」
「再婚すれば良いのに」
「仕事仲間よ」
「さて、如何ですかね」
「?」
「彼方はそういう風には見えてないみたいですし…どうせ誰とも切れてないんでしょう?」
「…」
「ふふふ。当たりですか?」
「他は片付いている。一度も会ってはおらんよ。だか…雑賀は、部下故」
「子供も?いても不思議ではないわ」
「いや、それは居ないらしい」
「そう…」
「やれ」
「吉継さん」
「?」
「ありがとうございます」
「急に…如何致した?」
「佐吉が。本当に嬉しそうで。私には…そう言う意味で頼れる人が居ないから」
「我の責任よ。仕事に関しても賢人に押し付けてある。心配しりゃるな。ぬしが治るまで我は此処にいて佐吉と共にいる。」
「本当に…」
「?」
「もし、私に何かあったら」
「何もなかろう?主の主治医に聞いても経過は安定していると聞いている」
「母?」
「ふふふ。佐吉」
「?」
「もし、母が死んでしまったら」
「嫌だ!」
「佐吉」
「!」
「大切な話をしています。今すぐではないのよ。もし、の話だけれども大切な話だからきちんと聞いて」
「はい」
「もし、私に何かあったら佐吉をお願いします。…この子が此処まで懐いたのは貴方だけですから」
「あいわかった」
「佐吉も。もし母の妹や親と名乗る人が来ても吉継さんの言うことを聞きなさい。…良いわね」
「はい」
「弁護士を入れて公正証書を作成しても良いですか?…きちんとしておきたい」
「急よな」
「こういう事は急ってよくわかりましたから」
「左様か」
「…」
「?」
「もし、この花をあの人が見舞いのただそれだけに買って飾ってくれれば少しは違ったのかもしれませんね」
「…」
「母」
「何?」
「母はどこか悪いのか?死んで…しまうのか?」
「死なないわ。貴方がいるもの。でもね。母も人だから。何かあったらいけないでしょ?だからこれは保険なの」
「?」
「貴方を父の元には置きたくないわ」
「…母はあのもやしが嫌いなのか?」
「…そうね」
「やれ」
「酷い男だと思っているわ」











勝手すぎる三成 7







「ぬしは」
「?」
「母の敵だ!」
「ま、待て!何故そう」
「雑賀」
「孫市が如何した?」
「あれの容態を聞かず、雑賀のことばかり書けば普通嫌われよう。」
「だが」
「本に復縁したいのか?」
「…」
「わからないのであれば手を放してやれ」
「それ、は!」
「ぬしもまだ若い。子も出来よう。佐吉は我が面倒を見る故安心しりゃれ」
「佐吉は私の子だ!」
「大切にせぬ主が悪い。」
「ぐ…」
「佐吉は母の横にいる。佐吉がおるから生きているようなものよ。」
「それは、わかっている。だが、孫市とはもう何もない」
「それは当たり前よ!…いや、このような話。もっと前に話すべきだった。」
「刑部」
「我とて主達が上手く行くのが良いとは思うが…今のままでは余りにも哀れよ。主も」
「…」
「良い加減腹をくくれ!」
「…もし、だ」
「もし?」
「捨てられたら…」
「…」
「二度と」
「今のままならば遠くない先そうなろう。あれも儚くなりかねん」
「それは…」
「この間のことが突発的に何度も起これば。もし、それが佐吉の眼前ならば。」
「?!」
「我は何よりもそれが恐ろしい」
「…ああ」
「主は我がおる。見捨てぬし安心しりゃれ」
「…恩にきる」
「…三成」
「少し、考える」



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勝手すぎる三成 6

「此処ですかね」
「ああ。そのようだな」
「あの石田さんの想い女かぁ」
「姫?」
「すごく怖い人なら如何しましょう?」
「如何もしない」
「流石!」
「ふふ。では入ろうか。」





失礼する、といって入ると静かに眠る女が一人居た。目の眩む美人でもなければ若さが取り柄といったわけでもなさそうで肩透かしをくらう。純粋に普通の女だ。そこら辺りに落ちていそうな程の普通の女。



「いませんねぇ」
「居るだろう?」
「え?!」
「如何した?」
「あ、の!石田さんのお嫁さんですよ!!姉様並みにばーんとしてるんじゃ」
「何だ其れは」
「ん…」
「あわわわ。起きちゃいました」
「だ、れですか?」
「石田三成の奥方で間違いないか?」
「人違いでしょう?」
「ほらやっぱり」
「姫」
「あの人モデルばりの美人じゃないとうなづきません!姉様と関係ある位なんでしょ」
「…」
「姫。すまない。石田さんという女性を探していたんだ。間違えて入ってきて、騒がしてしまった」
「いいえ」
「?」
「もう私は6年前からあの人の妻ではありませんから」
「?!」
「えー?本当に?!この人が??」




戦略結婚でしたからと言えば可愛い女の子は納得したみたいで石田さんは何処ですかと聞かれる。知りませんよと言いながら姉様と言われた人を見る。美人で…何処かでと思って合点が行く。愛人の一人。一番長く続いた人だ。私はこの人と結婚すると思っていたのだ。




「雑賀、さんでしたね」
「ああ」
「私は貴方とあの人が結婚すると思っていましたし、あの人から聞かされていました。」
「?」
「離婚届は書いてありますから。どうぞ石田さんと話してください」
「何を言っている?」
「?」
「確かにそう言う関係ではあったがもう今はただの同僚だ」
「…」
「居なくなっての6年。随分と傷ついていたぞ」
「…」
「離婚したければきっちりとして其れで出て行けばよかったんだ。そうしたら、あれもそこまでは」
「貴方に言われたくない」
「?!」
「何処の誰でもない。貴方には、言われたくありません」
「なっ?!姉様になんて言い方をするんですか!」
「…本当のことですから。貴方たちに言われたくない。特に貴方には」
「…すまない。」
「お引き取りください。…息子の話なら此処の病院にいるそうですが私はこの部屋から出れませんから。」
「…本当にどうにかしていた。すまない。大谷に連絡をして」
「…」
「では、な。失礼する」
「姉様!良いんですか?!あんな」
「姫。言われて当然だ。…私がいけない。失礼しよう。私たちがいては何かと、な」
「っ」




スライドで閉められるドアは私と全てを隔絶したかに思うほど重い音を立てる。
本当に、母が死にたくなった気持ちがわかる。佐吉がいる、けど耐えられない。もう耐えられないのだ。ふらりとベッドから立ち上がる。窓辺から見た空はとても青くて美しいのに私の心は晴れることはない。
静かに目を伏せる。何時までこの生き地獄で息をすれば良いのだろうか?佐吉は、私がいなくとも大丈夫かもしれない。…吉継さんが良くしてくれるはずだ。一切はあの子に残すこともできる。

もう、私がいなくても大丈夫。そう。

大丈夫なのだ





「何をしている?!」
「っ!」
「死ぬ気か!!」
「…あ」
「5階から落ちたら如何なるかわかっているだろう!死ぬぞ!」
「…死には、しませんよ」
「窓に足をかけている奴の台詞か!」
「っ」
「馬鹿者」
「…触らなで」
「誰か来たら離す。今は無理だ!」
「如何して…」
「…窓からお前が見えた。挙動が変だったからな。」
「ほっておいてくださればよかったのです」
「お前が死んで誰が喜ぶ!」
「…貴方はその方が良いでしょう?」
「良いものか!」
「あの、綺麗な方と一緒にすれば良いではないですか!」
「…誰か来たのか?」
「貴方の!」
「私の…そうか。すまない」
「離してください」
「すまない」
「離して…」
「私のために生きてくれなど言わない。ただ、佐吉のために生きてくれ」
「?!」
「あれを、私やお前。刑部の様な不幸な子供にしてくれるな」
「…う」
「泣くな…」
「母!?」
「や、やれ?!何事よ?」
「母!母!!!このもやし!何をした!!!」
「殴る間があったらティッシュ持ってこい!母が泣いているのが見えんのか!」
「うるさい!!!母!如何したんだ?!私は此処にいるぞ!寂しかったのか???アイスを黙って買いに行ってしまった私を許してくれ」
「「…」」
「刑部がな。母が寝たから!ううう。母!」
「な!?」
「やれなかしゃるな。我がなぁ…余計な」
「吉継さん煽らないで」
「母ぁぁぁぁ!!!アイスぅぅぅぅ!!!」
「佐吉。落ち着いて。母が悪いのであって佐吉が悪いわけではないのよ、ね?」
「母ー!!!」
「なにごとですか?!石田さん?!!!点滴!!!外れて?!先生いー!!!!」
「母!!!」
「頭、痛い」
「そのままいろ。運んでやる」
「結構です!」
「ぐ…」








勝手すぎる三成 6








「やれ、雑賀が?何の用だ???」
「書類を持ってきただけだ」
「奥にあったのか?」
「ああ」
「失礼です!あの人!!!」
「失礼も何も…よう会いに行ったな」
「私もそう思う。失念していた。」
「な?!」
「普通はそうよ。ひひひ。主は盲目故」
「ですけど!…もう良いです」
「ひひひ。」
「此の儘でいい。後は頼む」
「ああ」
「まだ帰ってこないんですかぁ?」
「不服か?!」
「また寝ていないのだろう?…倒れるぞ」
「寝ている。半兵衛様からまだ二月猶予を頂いている。」
「そうだったな」
「我は佐吉と帰るまで帰らぬよ」
「…父親より馴染んでいるな」
「ひひひ。可愛い孫の様な心地よ。賢人の気持ちがようわかったわ」
「ぐっ」
「まぁ、頑張れ。姫」
「はーい。じゃあ帰りましょう!」

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勝手すぎる三成 5

「すまぬ」
「よ、吉継さん?!」
「我のせいだ。本当にすまぬ」
「あ、頭を上げてください!落ち着いて」
「これが落ち着いていられるか…主のことを彼方に漏らしたのは我の雇った弁護士の下手間よ。金に目が眩んでやったとぬかしよったから、其れなりの処罰はしてきた」
「はぁ」
「主が気の済むようにしりゃれ。殴っても良い!」
「無理です」
「さあ一発なくりゃれ!!!」
「無理言わないでください!」
「我の気が晴れん!」
「佐吉に聞きました。私がICUにいる間ずっと面倒を見てくださったそうですね」
「当たり前よ。もし…この子がひもじい思いをしたら如何する!」
「あ、ありがとうございます。佐吉?どうしたの??」
「刑部は良いやつだ!」
「これで十分です。なかなか男の方に懐かない佐吉が…この数日で」
「これで良いというなら我にとっては褒美よな。ひひひ。佐吉、楽しかったなぁ」
「ああ!」
「吉継さん」
「ん?」
「あの…そのあまり覚えていないのですが私、麻酔か薬かで錯乱して暴れたそうですね。申し訳ありません…何が変なこと言ったりしませんでしたか?」
「暴れたというには可愛いものよ。きにしりゃるな。」
「その、石田さんにも?」
「覚えておるか?」
「はっきりとは…ただ、いらっしゃったのはなんとなく」
「左様か。ひひひ我の性故きにしりゃるな。…なぁ佐吉」
「うじうじしていた!」
「は?」
「一緒に我のホテルで寝ておったのよなぁ。佐吉」
「ああ!あいつもいた。仕事をしているとシャキッとしていたが後はうじうじしている。母」
「何?」
「本当にあれで良いのか?何が良いのか私はわからん。あんなモヤシのようなやつ!」
「もや?!」
「ひーひひひひっ!」
「佐吉。そういうこと言ってはいけないのよ。貴方、他になんて言ったの?」
「血が繋がっているだけで虫唾が走るといった」
「?!」
「昨日は血が繋がっていると思うと情けないといったなぁ。」
「…目眩が」
「良いのよ。真実そうよなぁ」
「あんな貧弱なモヤシ。母には不釣り合いだ!」
「言うてやるな。あれは馬鹿なのよ。」
「真性の馬鹿だ!」
「何処でそんな言葉を覚えてくるの?…本当に申し訳ありません」
「ひひひ。久方ぶりに笑ったわらった」
「本当に…何て言えば良いのか。佐吉」
「母が大っ嫌いと言ったのが一番ショックだったみたいだぞ!」
「そんなわけないでしょ?」
「嫌われたと言ってうじうじしていた。なぁ、刑部。あんな蛆虫嫌われて当然だ!」
「蛆虫?!」
「あいあい。蛆虫よ蛆虫。蠢いていればよかろう。はてさて、主とてこの結婚三成から言い始めたのは聞いて居ろう?」
「…」
「?」
「…初めて聞きました」
「本に何も言っておらなんだのだなぁ。まぁ良い。其れより主の怪我は如何か?」
「え?あの…」
「長引きそうか」
「聞いておいでなのでしょう?」
「三成がな。うじうじして的を得んのよ。詳しく聞いておるようで駄目よな。役に立たぬ。頭蓋骨折とだけ聞いておる。後遺症があってはならぬからなぁ…長くなると我が思うただけよ」
「少し様子を見ないといけないみたいです。麻痺が出ないと早いのですけど…その」
「!?」
「痺れ程度ですよ。このまま酷くならなければ気にならない程度で済むだろうと言われてます。でも経過観察に大分」
「左様か…しかしここは治す時よ。ゆるりと休まれよ」
「それは…そうなのですけど」
「?」
「恥ずかしいながら…仕事の方が。休職は難しいと言われました。主任のおかげで3月は待ってもらえますけど…お医者さんにいって少し早められないか相談してみようかと」
「駄目だぞ!母はすぐ無理をするから絶対に倒れる」
「補償も必ずさせるが…そうよ。言い忘れておったが主の母は精神的におかしくなったと言ってなぁ父親共々療養のため田舎に引っ込むそうよ」
「?!」
「元より、経営はしておらぬのよ。赤字続きでなぁ。役員給与と株を配当してそれで生活できるようにしておる。主の父親からの提案よ」
「あの父から?!」
「左様。最後まで三成が手伝っていたが。…経営には向いておらぬ男よ」
「そうですか」
「のんびりと過ごすようよな。それもまた幸せよ」
「…そうですね」
「ひひひ。話が逸れた。ぬしも少しは休みゃれ。ずっと働き通しだったのだろう?佐吉に聞いておる」
「ですけど…生活が」
「帰ってこぬか?」
「帰りません」
「刑部のところなら良いぞ!」
「我のもとに帰ってきたら益々ややこしい。と言ってもどうせ隣よ隣。あやつのせいで漉したのでなぁ。故に佐吉は毎日遊びに来れば良いのよ。部屋も余っておるから安心いたせ」
「時代劇見放題か!」
「…もので釣られないで」
「時代劇チャンネル故見放題よ」
「!」
「二人とも」
「療養にしても…彼方の方が良い病院がある。如何か?」
「彼方は物価が高いので無理です」
「…思ったより強情よな」
「私は離婚していただければ。出来ればほっといて下されたら一番良いのです」
「それは無理よ」
「意味がわかりません」
「三成は粘着質なのよ」
「…」
「そう嫌な顔をするな。あれはなぁ、有り体に言えば女を信じられぬのよ」
「?」
「我の母が阿婆擦れで主の母も…主を苛めたまぁ、嫌な女よ。まぁ色々な形の嫌な女いるがな。三成の母もまた酷い女でなぁ」
「…お会いしたことありませんので。そうなのですか?」
「佐吉の年に絶縁しておってなぁ。賢人が如何な手を使ったのかしれぬがもう二度とあれとは会えぬ」
「そうですか」
「まぁその母は、実子である三成を虐待してなぁ。あれは食が細かろう?その名残よ。腐ったものを食べさせたり色々しておったらしいわ。」
「?!」
「目の前で客を取ったりなぁ。まぁうちの阿婆擦れも同じようなことをしたがな。叩く蹴るは当たり前でな。発見された時は虫の息だったそうよ。」
「そうでしたか」
「故にあれは女を信じておらぬでな。何より、どうすれば愛していると伝えられるかを理解できぬのよ。簡単なことなのになぁ。…愚かな男よ」
「…」
「故に信じる迄当てつけのようなことをして愛情を図るところがある。我とてやられたわ。ひひひ。幼かった故可愛いものだがなぁ」
「何故、」
「ん?」
「何故、私なのですか?」
「さてなぁ。其れは知らぬよ。ただ、主と主の妹と見合いした折、ぬしだけ顔を上げなかったそうだ。」
「え?ええ。あれは妹との縁談と思っていましたから」
「彼方はギラギラしておったなぁ。そこから主に興味を持ったらしい」
「…」
「まぁああいう性格よ。…佐吉」
「何だ?」
「耳を塞ぎゃれ」
「こうか?」
「素直な良い子よなぁ。三成がなぁ愛人を主に見せびらかしたのもその後抱くのも。…傷付けても側にいてくれると言う証が欲しかったようよ。」
「は?」
「言いたいことはわかる。馬鹿なのよ。其れも大馬鹿ものよ」
「…」
「さてと。もう良い」
「何の話だ?」
「大人の話よ。」
「?」
「佐吉」
「何だ?」
「石田さんは今どこに居るの?」
「知らん!病院に来たらどこかにいうぐ!何をする!!刑部!」
「其れは秘密よ秘密」
「…ここに来ているの?」
「母がICUに入っている間もだ!有名だぞ!あのもやし。なんの仕事をしているのかわからん!良い大人が仕事もせずに一日中部屋の前にいるのだからな!」
「…本当に?」
「本当だ!」
「これ、佐吉」
「母には隠し事はしない」
「左様か…そうよのぅ。最初は1日中、ぬしはそう言っておったわ」
「1日中?」
「さすがにここに置いておけなくてなぁ。ぬしも容態が良くないのでICUにはいったであろう?ホテルに連れて行ったは良いが危うく後ろ手につかまるところだったのよ」
「佐吉」
「本に主が羨ましいわ。母にこんなにもたくさんの愛情を受けてなぁ」
「当たり前だ!」
「ひひひ。可愛い可愛い」
「母」
「何?」
「あいつはもやしだ!もやしなら私が守ってやる!」
「!」
「嫌なことがあってももう私がいる!母は何も心配しなくていい。」
「我もおる。賢人もなぁ…かなり反省しておる。あれはあれで馬鹿親故」
「子供を持ってなんとなく、わかります」
「なれば帰りゃれ。同じマンションの別室を用意しておる。佐吉にもぬしにももう苦労はかけぬ。嫌なら我が責任を持って新しい住処と職を手配する。かえってきりゃれ」
「母」
「佐吉は行きたい?」
「母が治るまでは!取り敢えず利用しよう」
「…」
「…」
「何だ?」
「そう言うことは吉継さんのいないところで言って」
「我は悲しい」
「要はそう言うことだろう?いちいちショックを受けるな!私と刑部で母を守れば良いだけだ!」
「あいあい」
「わかったな!母は何も考えずまず体を治せ」







勝手すぎる三成 5









「帰ってくるのか?!」
「お前の家ではない!」
「?!」
「佐吉、我、主の順で部屋を借りてある。まぁ。これが最善よ最善」
「私の部屋に帰って来れば良い!」
「拒否する!」
「?!」
「ぬしとてわかって居ろう。其れはまず無理よ」
「くっ…」
「刑部!これで母は治るのだな」
「当たり前よ。ちとまたしゃれ。三成!」
「左近か?私だ。ああ。あの医者…何といった。まぁいい。ああ。特別室だ。そうだな。そうしろ。拒否は許さん!明後日には行く。行けるな刑部」
「あいあい」
「なぁ、刑部。」
「ん?」
「何でこいつ、これを母にしないのだ?」
「馬鹿故よ」
「だからもやしなのだ!」







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勝手すぎる三成 4

「母」
「何?」
「今日の夕飯はなんだ?」
「今日はねぇ。佐吉の好きな」
「ここに居たのね!」
「?!」




聞き慣れた、でも聞きたくない声がする。家の前にはある意味一番会いたくない人がいて私は慄く。

場違いなほどに綺麗に着飾っている、母がすごい形相で立っていて私は咄嗟に佐吉を隠すのだ。佐吉は何がなんだかわからない顔をしながらも私の後ろに隠れている。唯、この間の石田さん達が来た時と似ているから眼光は鋭い。



「見つけたわ!!!!」
「お母さん…」
「あの女とそっくりね!出奔だなんて!!!どれ程私が迷惑したと思っているの?!」
「…」
「貴方がいなくなって…私たち親子がどんなに肩身が狭かったか!さぁ!帰るわよ!!!」
「やめてください!」
「何をする!母から手を離せ!!!」
「其れが石田様の子ね!なら貴方でも良いわ」
「や、やめてください」
「離しなさい!この子は私のものよ!」
「佐吉から手を離して!!!」
「触るな!!!!」
「っ?!何この子!…流石お前の子だ!躾のなっていない!」
「煩い!母に何をする気だ!離せ!!!」
「もう帰ってください!!!私たち親子に関わらないで!」
「馬鹿を言うんじゃないよ!あんた達は私達のためだけに生きていれば良いのよ!」
「っ」
「早く用意なさい!石田様にお詫びするの!そうすれば!!!!」
「母?!」
「あんたのせいで!!!!」
「きゃ!!!」
「母!!!」
「あんたさえ!あんたさえいなけりゃ!!!!」
「い、嫌だ!!!母!!!目を覚まして!!!」
「死んでしまえ!!!!」
「母!!!!」











目が醒めると見慣れない天井に驚く。頭が痛くて動かせないな…と思っていたら看護師さんが目の前に現れてにこりと微笑まれた。
曰く、押されて転けて頭を強かに打ったらしい。入院しないといけませんねと言われて初めて頭の傷が痛くなってくる。今のところ脳出血はないですけど傷が酷いですから触らないでくださいと言われて私は今の状況が思いの外酷いことを知る。
母は何処から私の居場所を知ったのだろうか。と思った瞬間私は飛び上がって看護師さんの腕を掴む。血相を変えたのは私だけではなく、絶対安静ですよ!と言われるものの其れどころではない。





「佐吉…息子は?!」
「息子さんは無事です!でもその前に!寝てください!!本当に重症なんですよ!!!」
「佐吉は?!本当に無事ですか?!!!」
「本当に!逆向いてください!」
「?!」
「寝てしまったので横に。ずっと側にいたんですよ」
「よかっ…た」
「怪我もありませんから安心してください!」
「…」
「ほら、寝て」
「母?」
「?!」
「起きちゃった。お母さん起きたよ」
「?!!!?!」
「佐吉!」
「母!!!」
「よかった…」
「何も良くない!!母は…大怪我」
「母は大丈夫よ。佐吉が無事なら…ああ、泣かないで」
「母ぁ」
「ごめんなさい。恐ろしかったね」
「石田さん。ご主人ももう少しで帰ってきますよ」
「?!」
「今手続き」
「駄目!」
「?」
「主人なんて…」
「救急車から入院の手配までされていましたよ。…ああ帰ってきましたよ」
「?!」
「…」
「やれ、気がついたか?痛みは如何か」
「如何、して」
「貴様に会いに行くとこうなっていた」
「やれ看護師。席を外しゃれ」
「10分ですよ。無理出来ませんから」
「あいあい」




パタリと締められた部屋には機械音だけが聞こえる。ベットサイドの椅子に座ると傷は如何だと言われるので私は無言に徹する





「…何かいえ」
「貴方がまだここにいるとは思いませんでした」
「如何いう意味だ?」
「そのままの意味です。佐吉」
「母?」
「母の鞄に携帯電話があるの。取ってくれる?」
「わかった」
「おい!」
「仕事場に連絡しないと」
「やめれば良い」
「…生活が有ります。」
「そんなもの!帰ってきたら私が養う。」
「私達の家は此処ですから」
「?!」
「母」
「主任に連絡しないと…」
「私は大野の婆様が見てくれると言っていた!」
「そう言うわけには…主任に」
「おい!!!!」
「…大きな声を出さないでください」
「勝手に決めるな!お前は私の」
「勝手にしろと仰ったのは貴方です」
「それは…」
「私の家族は佐吉だけです。」
「っ?!」
「やれ、そう言うてやるな。あの女を退け今に至るまでずっとぬしの側にいたのよ?三成も佐吉に負けず心配しておったのよ…其処をなぁ」
「…吉継さん」
「ん?」
「なぜ母は此処を知っていたのですか?」
「それ、は…」
「今までの手配感謝します。でも、もう二度目の前に現れないでください!」
「母?」
「や、やれ。落ち着きゃれ。血圧が」
「おい!」
「私が死んで欲しいのならそういえば良いでしょ?!あの母が私たちに何の危害を与えないと思ったのですか?!」
「それは」
「私だったから良かったものの!もし、佐吉に何かあったら!私は貴方を許しはしません!」
「話を聞け!」
「母、落ち着いて!機械から変な音がする!!!」
「貴方なんて嫌い!!!大っ嫌い!!!私の生活を、人生を滅茶苦茶にして楽しいですか?!」
「違っ」
「出て行って!!」
「石田さん?!」
「鎮静剤を!!!」
「興奮させてはならないとあれ程言ったでしょ!」
「部屋から出て!!!」
「石田さん!!!落ち着いて!!!」
「やだ!離して!!!」
「鎮静剤まだか?!」
「佐吉を!!佐吉を返して!!!」











勝手すぎる三成 4







「やれ、佐吉」
「触るな」
「だがなぁ」
「貴様は私の父親なのか?」
「…そうだ」
「貴様の血が私に流れていると思うと虫酸が走る」
「…そうか」
「なぜ現れた!母は貴様達が来るまで幸せそうにしか笑わなかった!貴様らのせいだ!いつもどこか恐れてる!!!母を不幸にするため此処に来たのか!!」
「やれ、それは違う。主の父は主達を心底心配しておってだな」
「では何で6年もかかった!此処は母の唯一の場所だろう?」
「?!」
「それすら覚えていない貴様が何が心底だ!」
「…」
「三成」
「また、来る。時間だ」
「もう二度と来るな!」
「やれ、われは此処にいるが良いか?」
「好きにしろ!」
「貴様も帰れ!」
「大人がいなくてはならないこともあろうに。」
「ふんっ!」
「今回はわれの不手際よ。謝って済むことではないがなぁ…」

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