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変換なしの雑食夢

ran

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好みではない夫の三成 8

「今日は絵草紙です」
「殿から?」
「はい」
「…困ったわね」
「寵愛されているという事です。」
「ふふふ。ああしの」
「はい」
「お礼の手紙」
「あの、ですが」
「そういうのがお好きみたいだし」
「奥方様に書いて欲しいのでは」
「私が?浅ましい字など見て欲しくはないもの」
「…」
「それにしても」
「?」
「ここから見える庭はいつも綺麗ね」
「それは!…奥方様が御療養中は特に気にかけるようにと」
「そう…ふふふ」
「奥方様?」
「貴方の方が随分と大阪に馴染んだみたいね」
「?!」
「あ、怒っているわけでも悋気でもないの。早く殿も貴方に手をつければ万事解決するのに」
「それは」
「?」
「無理かと…奥方様を大変」
「しの」
「っ」
「…ごめんなさいね」
「いえ」
「何はともあれ。紅葉も色づいてきたわ」
「…」
「嫌な色」
「…?」
「少し休みます」
「はい」
「お手紙お願い」







「昔の許嫁が忘れられないんじゃないかな」と言った賢人の顔を見る。失念していた。というよりも興味が無かった。あれには昔許嫁がいた。




「忘れていたのかい?」
「ひひひ。もう耄碌してしもうたわ。…確か」
「今の当主の兄さ。温厚な武人だったよ」
「知っておるのか?」
「少しね…戦さ場で討たれた。というか暗殺かな?」
「血なまぐさい話よ」
「まぁ、それは良いとして。仲の良い許嫁だったらしくてね。これはちょうど良いなと」
「…」
「彼女もよく理解しているみたいだしね」
「ふむ…故に三成がちょうど良いと」
「君が気に入ったのなら二人で愛でても良いよ。子が出来ればそれで良い。彼女も名ばかりの母になりたいみたいだしね」
「ふむ」
「如何したの?」
「あれの孤独はそこからか」
「そうというわけでもないけど…君は気づいていないのかな」
「?」
「まぁ、そのうちわかるよ」
「意味深よな」
「彼女は復讐のためにここにあるのかもしれないね」
「…」
「だからこそ、三成君が都合が良いのさ。君では惹かれあってしまうだろう?無論僕もだ」
「孤独なもの同士がよく似合う。三成がほって置けないのもそのせいか…ひひひ。」
「仲睦まじくここで生きてくれても良いんだけどね」
「我にも嬲られてか?」
「乗り気かい」
「少しなぁ」
「君らしくもない」
「捨て猫を飼いならしてみたいと思うのもまた人の常よ」








好みではない夫の三成







「…あ、ら」
「やれ、起きずにいりゃれ」
「ふふふ。大谷様」
「矢張り腫れたか。熱も高いなぁ」
「如何、なされましたか?」
「喋りにくいか?うなづくだけで良い。先ほど太閤の下知で我も主を嬲る要員になった」
「?」
「話を早く行って仕舞えば早く子供を産ん仕舞えという事よな…ん?そのような顔をしりゃるな。まぁ我から言った手前そういう顔をされても悲しいかなしい。」
「二夫に仕えるのですか?」
「それはちと違う。主は三成の嫁よ」
「?」
「我は抱けぬ故な…人肌寂しいときに共寝をしてくれれば良い。それもなかなかあるまい。」
「大谷、様?」
「吉継よ。よしつぐ」
「吉継、様」
「主にそう呼んで欲しかったのとこう看病する口実よな」
「!」
「口を開けしゃれ。少し苦いが…薬よ」
「あ、う」
「主はちと、人の優しさにならしゃれ」
「私は」
「我とて主に何かあればかなしい。」
「?!」
「其れに美花よりも仇花が好みよな」
「…」
「やれ、泣かしゃるな」
「私のこと」
「主が思っておる以上に知っておって思っておる以上に知らぬよ。それはお互い様よ」
「…」
「にしても主は愛いな」
「!」
「すまし顔も良いが年相応にしりゃれ。それの方が可愛い」
「か、わ?!」
「ひひひ。我も大義を貰うたからな。存分に可愛がろうよな」

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好みではない夫の三成 7

「あら、殿」
「…もう良いのか?」
「良くはないのですけれども、飽きました」
「飽きた?」
「ずっと寝てましたからね」
「そうか」
「ええ」
「…随分、痩せたな」
「そうですか?こんなものですよ、元々。」
「…」
「ああ、絵巻ありがとうございます」
「構わん…が」
「?」
「文がない。刑部には書いてあっただろう?」
「ああ」
「貴様はやはり」
「何歯ぎしりしているんですか?忘れただけですよ。誰か」
「?」
「はい、奥方様」
「しのを呼んで」
「はい」
「しの?」
「私の祐筆です。里から連れてきました一人。お手つきにしてませんでした?」
「…知らん」
「奥方様」
「殿にお礼を書いて。絵巻の」
「で、すが」
「形も大切よ、ですね」
「書かんのか?」
「悪筆ですの」
「それでも良い」
「嫌ですよ。」
「おい」
「手が墨で汚れるところみたいですか?」
「幼な子か!貴様は!!!」
「…冗談ですよ」
「お、くがた様」
「ああ。ありがとう」
「…要らん!」
「酷い」
「何が酷いだ!」
「いると申したのに。」
「お前が書け!」
「嫌ですってば」
「…」
「さて、と」
「待て!何処に行く!!!」
「しのは貴方好みですよ。豊かな体躯をしていますし」
「…たし、かにそうだが」
「しの、お相手を」
「!」
「私は少し散歩してきます」
「お、おい!待て!!!」







めっきり寒くなったものだと思いながら部屋を出る。しのは私の父方の遠縁だ。もし子供ができたとしても万事上手くいく。性格も温厚で気立ても良い。豊満タイプだし大丈夫。



「おい!」
「あら、殿?」
「人の話を聞け!」
「?」
「刑部が貴様を嫁にと言ったそうだな!!!」
「ああ、はい」
「貴様は」
「お断りしましたよ」
「?!」
「聞きませんでしたか?」
「聞いて、いたが…本心か?」
「大体婚儀も済んでお目見えしたのちですもの。今更大谷様にというわけにはいかないでしょう」
「ぐ…」
「?」
「それが可能なら嫁ぐのか?」
「大谷様はお優しいから。そう、気を使っていただきましたが。…もしそうなったとしても私の方からお断りします」
「?」
「その点あなた様はちょうど良いので」
「どういう意味だ!」
「こちらの話ですよ」
「っこの!」
「!」




ばきともぼきとも聞こえたそれは私の腕が折れた音だろう。振り上げられた手を避けられることもなく、壁に叩きつけられた代償は腕の骨と口の中の傷と痛みか。笑ったほうが良いかもしれないけども笑えない。笑えないほどの痛みが走る。




「す、すまん!」
「っ!?」
「っ!」
「だい、じょうぶです」
「腕、が」
「折れてません!」
「折れている!少し待て」
「痛っ」
「う…動かさないといけない」
「なら、自分で」
「無理を言うな!」
「っ!」
「す、すまん!…泣いて、いるのか?」
「…」
「な、泣くな」
「…」
「奥、泣くな!っいや。泣かないでくれ。…奥?おい、奥!!」





好みではない夫の三成







「自ら転んで骨折して、気を失った所三成に拾われたとぬしはいわしゃるか?」
「ええ」
「話は喰い違うものよの」
「殿は?」
「猛省しておる。」
「しなくていいのに」
「にしても」
「?」
「殴られたか?」
「いいえ」
「ひひひ」
「?」
「女の嘘は馬鹿らしい哀れなものと思うたが」
「可愛いものと思わないといけないみたいですよ」
「なぜ主は三成を固執する?」
「?」
「そのための嘘なればちとわからぬ」
「ふふふ」
「?」
「誰も傷つかないためです」
「主はひどい状態よの」
「…私は都合の良い方でいいのです」
「悪い女にはなれぬな」
「あの方に付け入るとあなた様が困るではありませんか」
「そうよの…主が転けた。そちらで行く」
「承知いたしました」

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好みではない夫の三成 6

「女心が分からぬと思うておったが」
「女心が分かるお方と端から思っておりませぬよ。大谷様、お見舞いの品辱く頂戴いたします」
「なに、つまらぬものよ」
「庭の景色に飽きていたところです。良い香り。菊なんてまだ咲いていたのですね」
「主は鼻が良いなぁ」
「犬みたいでしょ?」
「ひひひ。して」
「?」
「主は良いのか?」
「何がですか?」
「このままでは飼い殺しよの」
「ふふふ」
「?」
「お噂通りの大谷様で無くて、つい」
「からかいしゃるな」
「元々。誰でも良い縁組ではなかったのですか?」
「ひひひ」
「漁色を落ち着かせるというより、一人正室だけは定めておかないと跡目が大変ですものね。郷は妙に無駄に立派な先祖と関東に広い領土を持っておりますし、優秀な長兄は後継を残さず死にました。その上次兄は愚の極み。難癖つけて取り上げやすいですもの」
「主は」
「皆そう言っておりましたよ。まぁ、そちらの方が良いみたいですけども。…知らないのは愚兄だけ。」
「そういう話がないとも言えないが…故に子が要らぬのか?」
「私の子で無くとも養子…いいえ偽って申せば通りますから無意味ですよ。それを知らない貴方様ではありませんでしょ?」
「聡いのぅ」
「良いのか、悪いのか。…私は私が嫌いなだけで御座います。故に子は欲しくないのですよ」
「左様か」
「左様で御座います」
「もう一つ」
「?」
「わざと食わぬのか?」
「…私の殿はいつの間にやら大谷様になったようですね。姑様かしら?」
「からかうでないわ」
「ふふふ」
「奥」
「食べられないのは真実食べられないのです。欲しいと思わぬ上喉を通らなくって。故に汁を作って飲んでいます」
「…」
「?」
「味が合わぬか?主の所と此処では味が異なる故」
「!」
「如何した?」
「ほん、に。殿、と呼びましょうか?」
「わらわしゃるな」
「だって」
「…なれば。」
「大谷様?」
「そう太閤に奏してもいい。」
「!」
「我も子はいらん。名目は三成の妻だが、事実上我の」
「大谷様」
「…」
「ありがとうございます。お心を割いてくださっている上このような申し出。恐れ多い話です」
「主がそれでいいというなれば我とて厭わん。何、今と変わらぬわ」
「ふふふ。ですけども」
「貴方も私を知れば知る程嫌いになりますわ」
「?」
「ですから」
「奥?」
「私の殿は石田様のように私をすぐに切り捨ててくれる人で無くてはいけませんもの」
「…そのようなことを申したか?」
「ええ。…命が下されて私を切っても悲しみも憂いもない夫でなければいけません。逆でもそうです」
「…」
「もし、貴方様に何かありましたら悲しいです」
「左様、か」
「はい」
「我とて好みでなかろう?」
「違いますけど…ここに来て下心があったとしてもあなた様が一番自然に私を見てくださいましたから」
「…ひひひ」
「もし、何かありましても悲しまないでくださいませ」
「ああ」
「そういうあなた様が私は好き」
「振っておいての言い草にしてはちと酷い」
「酷い女なのですよ」
「いや」
「?」
「孤独な女よな」







好みではない夫の三成








「手紙?」
「ああ、花の礼よな」
「…」
「祐筆に書かしてあるらしいが…如何した?」
「私は貰ったことはない!」
「主が何もせぬからよな」
「先達て果物を」
「…食べられぬ相手よ」
「…」
「?」
「誰か!絵巻を出せ!」
「見舞いか?」
「ふんっ!」
「誠素直ではない男よな」

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好みではない夫の三成 5

「今日は静かですね」
「今日は太閤の側でおる故…本にすがすがしい秋の日よ」
「中秋の名月もすぐですから。こちらもこの様に皆様が静かに観られれば良いのですけど」
「ひひひ。我と主とはとんと縁のない話よな」
「あら、お出にならないのですか?」
「我がいれば宴が盛り下がる故な。主は?」
「右に同じくですわ」
「宴の花も入り用よ」
「仇花では無く麗しい百花で御座いますよ」
「主も頑固よの」
「頑固というか…何といいますか。ふふふ」
「ひひひっ。して」
「?」
「主は食わぬのか?好きな甘味よな?」
「え?ああ。まだ気分が悪くて。」
「左様か…食事はしておるとは聞いていたが」
「汁ものばかりにしてもらってます。風邪かしら?」
「いや、なぁ」
「ん?」
「三成が拗ねていてなぁ。」
「殿がですか?」
「食事をしたい様よ」
「些か。粘着質ですよね」
「ああ。」
「止めていただけませんか?」
「無理よな」
「あまり人前で食べるのは嫌いなのです。…そうですね。胃が治れば」
「いつの話になることか」
「ふふふ」
「にしても」
「…」
「?」
「…大谷様?」
「主、は」
「?」
「見えておるか?」
「え?ああ!近いです。」
「…」
「禍々しいお顔ですわ。…大谷様?」
「目が見にくいのか?」
「…ぼうっとしていただけです」
「にしては…ああ。通りで」
「冷たい手で御座いますね」
「高熱よの」
「あらあら」
「こういう時には我との約束を反故しりゃれ」
「うつってはいけませんでした。申し訳ございません」
「そういう意味ではない。…主は我と似ておるな」
「恐れ多い」
「まぁ我より可愛いものよ。ちとまたしゃれ」
「?」
「みつなっんぐ!」
「何を召喚しようと…来てしまったではないですか」
「どうした刑…何をしている」
「睦み合いよ」
「?!」
「ひひひ」
「こ、の!淫乱が」
「やれ、冗談を間に受けてどうする…奥方?」
「はぁ…貴方様であるまいし。」
「何?!」
「大体、己が子を欲しくはないと申し上げたはずです。」
「それは!…私を嫌っていても刑部とは」
「はぁ」
「何だ!」
「もう一度申しますよ。私は私の子が欲しくないのであって貴方との子が欲しくないと言ったことはございません。相手が誰であろうとも私は私の子が欲しくありません。お役目としてなれば産むまでは致します。ですが母とは名乗りません。お役目上そうであったとしてです。」
「…」
「落ち着きゃれ。我の戯言が過ぎたわ。やれ、三成」
「何、だ」
「奥方は高熱よの、コウネツ。部屋に…やれ、奥方。」
「何で御座いますか?」
「何処へ?」
「部屋に帰ります」
「三成に送って行ってもらいしゃれ」
「…理解力の低く思い込みの激しく、人の差異は全く気がつかない。例え他人が熱が出ようが気づかない上淫蕩に耽るご自身を棚に上げて人の貞操にケチつける殿方に送って行ってもらうくらいなら自ら歩きます」
「ぐ…」
「では大谷様。次の日取りは」
「主が良くなってからよ」
「失礼いたします」







「我も悪いが主が悪い」
「わかっ、ている!」
「今までのあれは手心があったのだなぁ」






好みではない夫の三成









「起きているか?」
「…」
「果物を…要らんか?」
「ええ」
「少し食え」
「本当にお構いなく…殿様もうつってしまいますから退室してくださいませ」
「だが」
「…」
「辛いか?」
「貴方様に嬲られるよりましですよ」
「ぐ」
「…」
「水」
「殿」
「?」
「ほっておいても良いのですよ」
「?」
「そうすれば郷に返せます」
「は?」
「はたまた死んだらしんだで楽ですよ。」
「何を言っている?」
「私が正室なのはあなた様にとって利はないということです」
「それを判断するのは私ではない」
「ならお見舞いも竹中様に言われて?」
「いや、刑部にだ」
「似た様なものですね」
「そう、だな」
「都合の良い正室ではあるということですね」
「…」
「少し喋り過ぎました」
「おい」
「はい」
「私が嫌いか?」
「?」
「その、だ。家康の腕の中なら安寧があるのだろう?私にはないか?」
「確かに好みではあります」
「…」
「歯ぎしりなさいますな。ですが」
「?」
「私にとっては誰の腕の中も安寧ではないということですよ」
「???」
「大体好き嫌いで嫁げませんし、貴方は殿下の命が下りましたらわたしを叩き斬りますでしょ?」
「ああ」
「その程度でよく安寧を求めさせたり好きにならそうとしましたね」
「お前はわたしを拒否するからな」
「他の女と違うと?」
「ああ」
「他の女子の様な性格なら私のもう少し楽に生きられましたでしょうね」
「違うのか?」
「違いますでしょ?」
「ああ」
「白い鳩の様なものですよ」
「…成る程」
「珍しいだけです。とっとと見慣れてくださいませ」
「そうする…寝ていろ。医師はつけておく」
「寝てれば治ります。ではおやすみなさいませ」

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好みではない夫の三成 4

「奥方様」
「?」
「此処におられましたか。」
「どうしましたか?」
「文が届いております」
「私にですか?…何方ですか?」
「兄上様から」
「…ああ」
「先ほど大阪城にいらっしゃっておいでで。嫁いだ妹に会うのは憚られるとこれを」
「嫌がらせかしら」
「?」
「焼き捨ててくださいな。ああ。大谷様に見せてから。どうせ胡麻擂りと世継ぎの催促でしょうけど」
「い、いいのですか?」
「良いのですよ。此処にまで来てあの人の下手な字は見たくありません」







そう言言いながらくつくつ笑って私は庭先を見つめる。遠くに殿下が見える。きっと近くにはあの人もいるのだろう。少し思案して歩みを進める。此処に来てよくしてくれる侍女は後ろから付いてくるものの手紙の処遇に憐憫の情を持つらしい。恋文なら、哀れですけど里からの文は面倒なものでしょう?と言えば合点がいったらしく少し控えめにうなづく。




「今日は涼しいわね」
「曇り空ですから陽の光が差さないのが原因ですかね」
「ああ、通りで」
「?」
「いえ、こちらの話よ。今日は少し気分が悪いから…部屋で横になります」
「医師は?」
「そうですね…寝て治らなかったらお願いします。」
「先に見て頂いた方が。真逆?!」
「月の物ですもの。そういう心配はありませんよ」
「申し訳ございません」
「いえいえ。少し根を詰めたせいでしょう。些か疲れて」
「?!」
「あなたのせいではないのですから。落ち着いて…さて、ついた」
「お手伝いを致します」
「いいえ。自分でするからその文をおねがい、ね」






きっと左近様経由で大谷様にたどり着くことだろうと帯を緩める。月の物のせいだから視線がふらつくがいつもの事だと気合いで床まで這っていく。
次に目覚める時はどちらの地獄か。久々の登場で狼狽してしまった。忌々しい兄様。朽ちて仕舞えばいい。
悪口の限りを尽くしたとしてもあいつには堪えないだろう。罵って疲れるのはいつも自分だった。










「…」
「…ん」
「!」
「だ、れ?」
「…私だ」
「殿?」
「気分が悪いと聞いた。熱は?」
「寝ていれば大丈夫です。今は何時かしら…」
「昼過ぎだ」
「随分寝てしまいました。起きます」
「休んでいろ」
「…」
「死人の顔だ」
「あら」
「…?」
「とどめを刺しに?」
「憎まれ口を叩くな」
「申し訳ございません」
「…」
「…」
「あの、」
「私の里を焼きますか?」
「?!」
「今そういう夢を見ましたから」
「恐ろしいことを言うな」
「ふふふ」
「あの、だ。」
「?」
「懐妊、したのか?」
「違いますよ」
「そうか」
「そうです」
「…」
「…」
「邪魔をした」
「いえ。」
「…寝ていろ。死人の顔は真実だ」
「お言葉に甘えて」







好みではない夫の三成










「懐妊ではなかったか」
「ああ」
「医師は?」
「今は寝ていた。」
「なれば寝ていた方が良いよい。あれはあれで気疲れしておったのだろうしなぁ」
「?」
「そういうものよ」
「しらん!」
「そういうところが良くないよくない」
「…誰か。」
「何っすか?」
「医師を待機させろ」
「?」
「奥方によ」
「奥方様また怪我っすか?」
「怪我?」
「またとはどういう意味だ?」
「この間庭で転けられたそうで。医務室に担ぎ込まれてたっすよ」
「あれがか?!」
「それはまた。珍しい」
「想像できん!あれがどんな顔をして転けられるんだ?…無表情に転けたというの、か?」
「やれ、わらわりやるな」
「それがですねえ!…あ」
「「?!」」
「私も人間ですから転けますよ」
「奥か」
「左近様も伝えるなら面白おかしく言ってくだされば良いのですよ。」
「無理っすよ!」
「存外真面目な方ですね…まぁ良いです。殿」
「何だ?」
「医師は必要ありません。お心遣いだけ感謝します」
「含みがあるなぁ」
「ありませんよ。大谷様」
「おい、夕餉を食べていけ」
「あまり欲しくありませんから厨に果物をお願いしに行ったところです。それ食べて寝ます」
「…ここで食べれば良い」
「言い換えます。何も欲しくないのですが眠りできず徘徊していたところ貴方様の会話を聞きまして。例を申さないと遠いましたら怪我を笑われたので心置きなく自室に引きこもれるなと安堵しております」
「…」
「ではおやすみなさいませ」





「こっえー!!!」
「通常運転よの」
「ああ」
「流石三成様の奥方様っすね!」

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