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変換なしの雑食夢

ran

好みではない夫の三成 4

「奥方様」
「?」
「此処におられましたか。」
「どうしましたか?」
「文が届いております」
「私にですか?…何方ですか?」
「兄上様から」
「…ああ」
「先ほど大阪城にいらっしゃっておいでで。嫁いだ妹に会うのは憚られるとこれを」
「嫌がらせかしら」
「?」
「焼き捨ててくださいな。ああ。大谷様に見せてから。どうせ胡麻擂りと世継ぎの催促でしょうけど」
「い、いいのですか?」
「良いのですよ。此処にまで来てあの人の下手な字は見たくありません」







そう言言いながらくつくつ笑って私は庭先を見つめる。遠くに殿下が見える。きっと近くにはあの人もいるのだろう。少し思案して歩みを進める。此処に来てよくしてくれる侍女は後ろから付いてくるものの手紙の処遇に憐憫の情を持つらしい。恋文なら、哀れですけど里からの文は面倒なものでしょう?と言えば合点がいったらしく少し控えめにうなづく。




「今日は涼しいわね」
「曇り空ですから陽の光が差さないのが原因ですかね」
「ああ、通りで」
「?」
「いえ、こちらの話よ。今日は少し気分が悪いから…部屋で横になります」
「医師は?」
「そうですね…寝て治らなかったらお願いします。」
「先に見て頂いた方が。真逆?!」
「月の物ですもの。そういう心配はありませんよ」
「申し訳ございません」
「いえいえ。少し根を詰めたせいでしょう。些か疲れて」
「?!」
「あなたのせいではないのですから。落ち着いて…さて、ついた」
「お手伝いを致します」
「いいえ。自分でするからその文をおねがい、ね」






きっと左近様経由で大谷様にたどり着くことだろうと帯を緩める。月の物のせいだから視線がふらつくがいつもの事だと気合いで床まで這っていく。
次に目覚める時はどちらの地獄か。久々の登場で狼狽してしまった。忌々しい兄様。朽ちて仕舞えばいい。
悪口の限りを尽くしたとしてもあいつには堪えないだろう。罵って疲れるのはいつも自分だった。










「…」
「…ん」
「!」
「だ、れ?」
「…私だ」
「殿?」
「気分が悪いと聞いた。熱は?」
「寝ていれば大丈夫です。今は何時かしら…」
「昼過ぎだ」
「随分寝てしまいました。起きます」
「休んでいろ」
「…」
「死人の顔だ」
「あら」
「…?」
「とどめを刺しに?」
「憎まれ口を叩くな」
「申し訳ございません」
「…」
「…」
「あの、」
「私の里を焼きますか?」
「?!」
「今そういう夢を見ましたから」
「恐ろしいことを言うな」
「ふふふ」
「あの、だ。」
「?」
「懐妊、したのか?」
「違いますよ」
「そうか」
「そうです」
「…」
「…」
「邪魔をした」
「いえ。」
「…寝ていろ。死人の顔は真実だ」
「お言葉に甘えて」







好みではない夫の三成










「懐妊ではなかったか」
「ああ」
「医師は?」
「今は寝ていた。」
「なれば寝ていた方が良いよい。あれはあれで気疲れしておったのだろうしなぁ」
「?」
「そういうものよ」
「しらん!」
「そういうところが良くないよくない」
「…誰か。」
「何っすか?」
「医師を待機させろ」
「?」
「奥方によ」
「奥方様また怪我っすか?」
「怪我?」
「またとはどういう意味だ?」
「この間庭で転けられたそうで。医務室に担ぎ込まれてたっすよ」
「あれがか?!」
「それはまた。珍しい」
「想像できん!あれがどんな顔をして転けられるんだ?…無表情に転けたというの、か?」
「やれ、わらわりやるな」
「それがですねえ!…あ」
「「?!」」
「私も人間ですから転けますよ」
「奥か」
「左近様も伝えるなら面白おかしく言ってくだされば良いのですよ。」
「無理っすよ!」
「存外真面目な方ですね…まぁ良いです。殿」
「何だ?」
「医師は必要ありません。お心遣いだけ感謝します」
「含みがあるなぁ」
「ありませんよ。大谷様」
「おい、夕餉を食べていけ」
「あまり欲しくありませんから厨に果物をお願いしに行ったところです。それ食べて寝ます」
「…ここで食べれば良い」
「言い換えます。何も欲しくないのですが眠りできず徘徊していたところ貴方様の会話を聞きまして。例を申さないと遠いましたら怪我を笑われたので心置きなく自室に引きこもれるなと安堵しております」
「…」
「ではおやすみなさいませ」





「こっえー!!!」
「通常運転よの」
「ああ」
「流石三成様の奥方様っすね!」

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