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変換なしの雑食夢

ran

好みではない夫の三成 6

「女心が分からぬと思うておったが」
「女心が分かるお方と端から思っておりませぬよ。大谷様、お見舞いの品辱く頂戴いたします」
「なに、つまらぬものよ」
「庭の景色に飽きていたところです。良い香り。菊なんてまだ咲いていたのですね」
「主は鼻が良いなぁ」
「犬みたいでしょ?」
「ひひひ。して」
「?」
「主は良いのか?」
「何がですか?」
「このままでは飼い殺しよの」
「ふふふ」
「?」
「お噂通りの大谷様で無くて、つい」
「からかいしゃるな」
「元々。誰でも良い縁組ではなかったのですか?」
「ひひひ」
「漁色を落ち着かせるというより、一人正室だけは定めておかないと跡目が大変ですものね。郷は妙に無駄に立派な先祖と関東に広い領土を持っておりますし、優秀な長兄は後継を残さず死にました。その上次兄は愚の極み。難癖つけて取り上げやすいですもの」
「主は」
「皆そう言っておりましたよ。まぁ、そちらの方が良いみたいですけども。…知らないのは愚兄だけ。」
「そういう話がないとも言えないが…故に子が要らぬのか?」
「私の子で無くとも養子…いいえ偽って申せば通りますから無意味ですよ。それを知らない貴方様ではありませんでしょ?」
「聡いのぅ」
「良いのか、悪いのか。…私は私が嫌いなだけで御座います。故に子は欲しくないのですよ」
「左様か」
「左様で御座います」
「もう一つ」
「?」
「わざと食わぬのか?」
「…私の殿はいつの間にやら大谷様になったようですね。姑様かしら?」
「からかうでないわ」
「ふふふ」
「奥」
「食べられないのは真実食べられないのです。欲しいと思わぬ上喉を通らなくって。故に汁を作って飲んでいます」
「…」
「?」
「味が合わぬか?主の所と此処では味が異なる故」
「!」
「如何した?」
「ほん、に。殿、と呼びましょうか?」
「わらわしゃるな」
「だって」
「…なれば。」
「大谷様?」
「そう太閤に奏してもいい。」
「!」
「我も子はいらん。名目は三成の妻だが、事実上我の」
「大谷様」
「…」
「ありがとうございます。お心を割いてくださっている上このような申し出。恐れ多い話です」
「主がそれでいいというなれば我とて厭わん。何、今と変わらぬわ」
「ふふふ。ですけども」
「貴方も私を知れば知る程嫌いになりますわ」
「?」
「ですから」
「奥?」
「私の殿は石田様のように私をすぐに切り捨ててくれる人で無くてはいけませんもの」
「…そのようなことを申したか?」
「ええ。…命が下されて私を切っても悲しみも憂いもない夫でなければいけません。逆でもそうです」
「…」
「もし、貴方様に何かありましたら悲しいです」
「左様、か」
「はい」
「我とて好みでなかろう?」
「違いますけど…ここに来て下心があったとしてもあなた様が一番自然に私を見てくださいましたから」
「…ひひひ」
「もし、何かありましても悲しまないでくださいませ」
「ああ」
「そういうあなた様が私は好き」
「振っておいての言い草にしてはちと酷い」
「酷い女なのですよ」
「いや」
「?」
「孤独な女よな」







好みではない夫の三成








「手紙?」
「ああ、花の礼よな」
「…」
「祐筆に書かしてあるらしいが…如何した?」
「私は貰ったことはない!」
「主が何もせぬからよな」
「先達て果物を」
「…食べられぬ相手よ」
「…」
「?」
「誰か!絵巻を出せ!」
「見舞いか?」
「ふんっ!」
「誠素直ではない男よな」

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