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変換なしの雑食夢

ran

好みではない夫の三成 7

「あら、殿」
「…もう良いのか?」
「良くはないのですけれども、飽きました」
「飽きた?」
「ずっと寝てましたからね」
「そうか」
「ええ」
「…随分、痩せたな」
「そうですか?こんなものですよ、元々。」
「…」
「ああ、絵巻ありがとうございます」
「構わん…が」
「?」
「文がない。刑部には書いてあっただろう?」
「ああ」
「貴様はやはり」
「何歯ぎしりしているんですか?忘れただけですよ。誰か」
「?」
「はい、奥方様」
「しのを呼んで」
「はい」
「しの?」
「私の祐筆です。里から連れてきました一人。お手つきにしてませんでした?」
「…知らん」
「奥方様」
「殿にお礼を書いて。絵巻の」
「で、すが」
「形も大切よ、ですね」
「書かんのか?」
「悪筆ですの」
「それでも良い」
「嫌ですよ。」
「おい」
「手が墨で汚れるところみたいですか?」
「幼な子か!貴様は!!!」
「…冗談ですよ」
「お、くがた様」
「ああ。ありがとう」
「…要らん!」
「酷い」
「何が酷いだ!」
「いると申したのに。」
「お前が書け!」
「嫌ですってば」
「…」
「さて、と」
「待て!何処に行く!!!」
「しのは貴方好みですよ。豊かな体躯をしていますし」
「…たし、かにそうだが」
「しの、お相手を」
「!」
「私は少し散歩してきます」
「お、おい!待て!!!」







めっきり寒くなったものだと思いながら部屋を出る。しのは私の父方の遠縁だ。もし子供ができたとしても万事上手くいく。性格も温厚で気立ても良い。豊満タイプだし大丈夫。



「おい!」
「あら、殿?」
「人の話を聞け!」
「?」
「刑部が貴様を嫁にと言ったそうだな!!!」
「ああ、はい」
「貴様は」
「お断りしましたよ」
「?!」
「聞きませんでしたか?」
「聞いて、いたが…本心か?」
「大体婚儀も済んでお目見えしたのちですもの。今更大谷様にというわけにはいかないでしょう」
「ぐ…」
「?」
「それが可能なら嫁ぐのか?」
「大谷様はお優しいから。そう、気を使っていただきましたが。…もしそうなったとしても私の方からお断りします」
「?」
「その点あなた様はちょうど良いので」
「どういう意味だ!」
「こちらの話ですよ」
「っこの!」
「!」




ばきともぼきとも聞こえたそれは私の腕が折れた音だろう。振り上げられた手を避けられることもなく、壁に叩きつけられた代償は腕の骨と口の中の傷と痛みか。笑ったほうが良いかもしれないけども笑えない。笑えないほどの痛みが走る。




「す、すまん!」
「っ!?」
「っ!」
「だい、じょうぶです」
「腕、が」
「折れてません!」
「折れている!少し待て」
「痛っ」
「う…動かさないといけない」
「なら、自分で」
「無理を言うな!」
「っ!」
「す、すまん!…泣いて、いるのか?」
「…」
「な、泣くな」
「…」
「奥、泣くな!っいや。泣かないでくれ。…奥?おい、奥!!」





好みではない夫の三成







「自ら転んで骨折して、気を失った所三成に拾われたとぬしはいわしゃるか?」
「ええ」
「話は喰い違うものよの」
「殿は?」
「猛省しておる。」
「しなくていいのに」
「にしても」
「?」
「殴られたか?」
「いいえ」
「ひひひ」
「?」
「女の嘘は馬鹿らしい哀れなものと思うたが」
「可愛いものと思わないといけないみたいですよ」
「なぜ主は三成を固執する?」
「?」
「そのための嘘なればちとわからぬ」
「ふふふ」
「?」
「誰も傷つかないためです」
「主はひどい状態よの」
「…私は都合の良い方でいいのです」
「悪い女にはなれぬな」
「あの方に付け入るとあなた様が困るではありませんか」
「そうよの…主が転けた。そちらで行く」
「承知いたしました」

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