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変換なしの雑食夢

ran

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芍薬

「…小姫、だよね」
「あら、半兵衛様に石田様。お久しぶりでございます。」
「どどどどど!」
「?」
「どうたんだい?!その髪!!!」
「髪?ああ。竹中の御隠居様たちが哀れんで下さりまして。幾ら何でも童一人は駄目だから形だけでもと。」
「ジジイどもが!」
「半兵衛様」
「僕がどれ程!断固抗議してくる!三成君!」
「は」
「小姫の護衛を頼んだよ!」
「あっ!半兵衛様…行ってしまいました。石田様」
「はい」
「どうぞ御座りになってください。直ぐに粗茶でも」
「いえ、そのような。それに」
「ああ。ふふふ。一人になってしまいましたから。御漬物と干物にしようかと」
「お手伝いを」
「御武家様に…それに殿方にして頂いては半兵衛様に叱られてしまいます。本当に御座りになってお待ちくださいませ。」
「しかし」





そういうものだから私は茶櫃を持ってくる。私も休憩いたしますからといえば仕方なさげに座るので思わず苦笑してしまった。





「きっと帰って来れば騒がしくなりますから」
「?」
「竹中の御隠居様とお父上様。半兵衛様はよく似ていらっしゃって。ふふふ。お母様やお姉様方の顔が思い浮かびます。」
「そうですか」
「はい」




そう言うと石田様は静かにお笑いになるので私は驚く。そんな、御優しい顔をなさるとは思わなかった。慕っていらっしゃるのですねといえばコクリと頷く。




「伯父上も半兵衛様も良き御近習を」
「いえ、私は」
「これからも伯父上を宜しくお願い致します」
「そんな!私など…」
「?」
「いう、その。まだまだ若輩者ですので」
「そうなのでしょうか?私は御武家様のことは知りませんが…半兵衛様が私的なことを用立てておられる様ですので随分と信頼している方だと思っております」
「…」
「石田様?」
「いえ。」




一口お茶を含んで私は席を立つ。野菜の手間は終わったから次は畑の手入れと。ああ、その前に仏前の花を換えないと。
庭木の花を少し切る。石田様の方に視線をやるとじっと見ているだけで続けてもいいとの事なのだろう。安心して私は微笑む。




「仏花ですか?」
「はい」
「以前ここに座らせていただいた折より少し広く感じる。」
「人一人いなくなるというのはそう言う事なのでしょう。物質的より精神的虚脱を感じます」
「姫様」
「はい」
「御寂しくはありませんか?」
「え?」
「…」
「寂しくないといえば嘘になります。ただ、竹中の御隠居様たちが時折。それに村の方々も親切ですし」
「秀吉様が」
「伯父上が?」
「用心などを考えて城に上がってほしいと。何より、その」
「?」
「女一人ではやはり。良き縁談に差し障ると」
「呆れた。でも伯父上らしい」
「…」
「用心も何も。大丈夫ですよ。童の相手をするものも…ああそういえば髪をあげましたね。それを加味しても。私に言い寄る物好きはいませんよ。寂しさも用心も竹中のご隠居様がよくしてくださいますし。…石田様?」
「いえ。なんでもありません。」
「なら、いいのですが…御ばば様。御好きなお花ですよ。石田様は御武家様なのでしょ?」
「え?」
「言い方が駄目でしたね。お家柄が」
「はい」
「私の父は農民です。」
「は?」
「伯父上たちはよく怒っていましたが、母が兄たちを産み、御じじ様や御ばば様が共に暮らしておりましたから、段々とお許し頂いたのです。ですからここは元々竹中家の土地。今はそれを私に貸してくださっているのです。短い時間なのかもしれませんが私が生まれて成長した大切な思い出はここにあります。ここに生きて一人で居るのも誰かに夜這われて子を成し育てるのも定めと思っております」
「姫様」
「ですから。お気持ちはありがたいのですが大阪には参らないと。もに何かありましてももう死んだものと御思いくださいとお伝えください。私はここからはなれたくはないのですから」





そう言って私は笑う。一人になって気が遠くなる様な短い間に考えた結論だ。なのに何故か石田様は辛い様な苦しい様な顔をされる。 のだった










芍薬








夜半過ぎに帰ってこられた半兵衛様は些かぼろぼろで。久方ぶりの親子ゲンカの凄さを物語っていた




「帰るよ!三成君」
「は」
「御気をつけて」
「良い?絶対つれていくからね!それまで風邪ひいちゃ駄目だよ」
「はい。半兵衛様もご自愛ください」
「うん」
「石田様も」
「姫様も」




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水蜜桃

「姫様」
「石田様?」
「此方を御ばば様に。滋養がついて良いと聞き及んでいます。」
「え?あの。」
「?」
「今日はどの様なご用件でしょうか」
「…?!」
「?」
「いえ、その。体の弱い友人に滋養のつくものを聞きまして」
「え?」
「姫様も、お顔の色が…ですので」
「其れで。わざわざ?」
「申し訳ございません。ご迷惑を返りみず」
「いえ、あ!宜しければ縁に御回りください。粗茶ですが」
「いえ!これをお渡ししたかっただけですので」
「ですが」
「失礼します」




そう言うとあっという間に走っていかれる。速い。とあっけにとられていると中から声がするのでハイハイと言いながら中に入る。御ばば様は嬉しそうに笑うけれどももう直ぐ居なくなってしまう。昨日の発作の時に医師にそう言われてしまった。もってあと2日。一緒に亡くなってもおかしくないと。




「ちい」
「この間来た御武家様が常に良いってわざわざ持ってきてくださったの。でもどうやって食べるのかしら?食べ方までわざわざ書いてくださってて。にしても…武家の人らしい字。」
「そうかい」
「後で食べましょうね。甘くて美味って書いていますから」
「なぁ、ちい?」
「何?」
「私は幸せだったよ」
「どうしたの?」
「…言いたいことを言わないと」
「御ばば様」
「ちい」
「…私も幸せでした」
「童のお前に苦労をかけたね。」
「いえ。御ばば様に私は何度も救っていただきました」
「ちい」
「?」
「私の可愛いちい」
「御ばば様?」












なんと人はあっけなく死んでしまうのだろう。苦しみしなかったのがせめてもの救いだった。
にしても伯父にも半兵衛様にも文は書いたものの音沙汰はない。御ばば様が死んで葬儀も済み100日も済んだ。武家の人たちは来ず身内としては寂しいものになってしまった。あの時は辛くて泣いてしまったものの今となっては其れで良かった気がする。行李にしまう御ばば様の遺品を見ながら最近そう思うのだ。きっと伯父たちは泣けないだろう。其れは其れで辛い話だ。私も私で泣かずにおれなかった。心ゆくまで泣かせてもらえた。そう思えば幾分気持ちが軽くなる。
父上と母上。死した兄弟。御じじ様御ばば様。その位牌の前で泣くこともなくなってきた。






「夕餉の支度をしないと。」




そうひとりごちて視線を上げると庭先に影ができたのに驚く。あの日の様に風の様に現れるのだから驚いてしまう





「姫様」
「石田様?」
「ご無事で!」
「?」
「あの日あの後大政所様の御逝去と聞きました」
「あ、はい。でも苦しまずに…何より大往生でしたから」
「…」
「石田様?」
「もう少し」
「え?」
「もう少しおそばにいれば…何かの慰めに成ったのにと。」
「…」
「すぐに出陣の触れで今日帰ってきたところです。」
「え?!」
「如何致しましたか?」
「そんな大変な時にわざわざ?怪我はありませんか???」
「大丈夫です。ですが…」
「石田様?」
「顔色が宜しくない。」
「っ」
「一人で泣いておられたのですね。」
「?!」
「私が見ても仲の良いお二人でしたから」
「っいえ。大丈夫です。ですから…その様に優しいお言葉は」
「姫様」
「泣いてしまいますから…お願いします。」
「泣いてください。私は気にいたしませんから」
「っ」
「…姫様」
「…」




両手で顔を隠して声を殺して泣いてしまう。御ばば様以外で初めての無償の優しさだったから。
すると石田様は優しく両手をとってギュッと抱きしめてくれる。ぽんぽんと頭を撫でてくれて辛かったでしょうというものだからますます泣いてしまう。








「っ!?」
「…御起きになられましたか?」
「え?!わたし…寝てしまったのですね」
「申し訳ございません。何を使えばいいのかわからず…私の羽織で」
「?!!」
「姫様?」
「すいません本当に…石田様のご迷惑に」
「いえ。」
「夕餉の…今何時でしょうか?」
「…」
「石田様?」
「私はもう暇を。これ以上ここにいては貴方様の名を。いくら前髪をお上げする前と言いましても妙齢の女性ですので」
「?」
「保護者のいない家に上がり込むのは些か。しかも夜に」
「!?」
「また参ります」
「え、あの」
「では!」








水蜜桃








「あれ?三成君。遅かったね」
「申し訳ございません。姫様がお休みしておられましたので…その」
「いやいいよ。君には一番の信を持っているから」
「…」
「御ばば様の件で落ち込んでなかったかい?」
「少し。」
「そう」
「…」
「僕も少し手が開く。秀吉は無理だろうけど。早く呼び寄せないと」
「はい」
「君には共を頼むよ」
「はい」

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梨の花

「あ」
「あら」
「ここは大政所様のお住まいと聞いて」
「伯父上の近習の方ですね。半兵衛様も酔狂な」
「は?」
「縁に御回りください。粗茶で宜しければ」
「…」




縁に回ると少しの畑と井戸洗濯物が干されていて唖然とされただろう。以前来たお二人はこれを見てすぐに帰られたのだから。お茶を入れて縁に行くと驚いたことに近習の方は座らずに庭を見ている。いや、遠くの大阪城を




「粗茶でございます」
「あ、辱い」
「文を直ぐ書きますのでお待ちを。伯父上と半兵衛様のご厚意は嬉しいのですが…皆様にご迷惑をお掛けして心苦しい限りです」
「秀吉様の命ですから」
「ちい」
「あ、はい。」
「ちい?」
「この家の最後の娘なので。ちいと。伯父二人はご存知の通り伯父の下で働いておりましたから。父と母がここの家を継いで。もう私と御ばば様だけですけど」
「ちい」
「はい。おりますよ。お水ですか?」
「ん…ありがとう」
「良いんですよ。梨を頂いたの。召し上がりますか?」
「うんうん」
「御武家様は?」
「私は」
「あ、手紙でした」
「いや、先に大政所様に」
「申し訳ありません。直ぐに」
「本当に、構いません。お待ちいたしますので」
「…ありがとうございます」
「…いえ」




梨を剥く。半分を御ばば様に。半分を御武家様にお渡しすると大変恐縮される。御ばば様は若い子がしっかり食べなさいと笑うので仕方なくといったところだ。少しだけ待ってねと一口口に含ませると甘いと笑うので私も笑ってしまう。私は御ばば様の子の顔が好きだ。何度もなんども救われた。
ふふふと笑って筆を取る。書くことはいつも通り。だから其れほど時間はかからない。あとは乾くのを待つだけだ。



「もう少しで乾きます。」
「…はい」
「御ばば様。もう少し食べれる?」
「ちい」
「はい」
「可愛いねぇ。ちいが一番」
「ふふふ。ありがとう」
「ちいの子を見たかったけど無理の様だねぇ」
「何を言うの?私はここで御ばば様と一緒に生きるのだから。長生きしてね」
「そりゃあいい…そりゃ」
「御ばば様?」
「…」
「おやすみ遊ばされた様ですね」
「はい。」
「姫様は大丈夫ですか?」
「は?」
「お顔が」
「いえ、あ。はい。大丈夫です。文」
「え?」
「乾いた様です」
「…」
「これをお持ち下さい。お手間を取らせました」
「いえ、その」
「?」
「…失礼いたします」
「御気をつけて」
「姫様」
「あの、その呼び方は」
「…ですが」
「御武家様にその様に呼ばれると」
「石田三成です」
「え?」
「では」






梨の花








「あ、三成君」
「遅くなり、申し訳ございません」
「良いんだよ。至極私的な用事だから。どうだった?」
「色良いお返事は…お返事を預かっております」
「うん。大政所様の容態が芳しくないからか…あの年で一人で介護は無理だろうに」
「お顔の色が少し」
「そう」
「…」
「三成君?」
「はい」
「ふーん」
「?」
「まぁ良いよ。少しずつだ。何事も」

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沈丁花

「もし」
「ん?如何した童。お前の様なものが来る場所ではないぞ!」
「何より危ない。早く立ち去れ。」
「いえ、御取次を」
「取り付き?」
「父上か?なんていう名前だ」
「竹中半兵衛様を。小が来たと言えばお分かりになります」
「「は?」」





其れから城内は騒然としたらしい。まぁこんな大きな城の主人の側近の名を私みたいな子供が言うと可笑しいわねと内心思いながら御白湯を啜る。
庭は簡素だし花一つ生けていないのだから彼ららしいと思うものの表情は変えてはならない。だって襖の向こうからひしひしの視線を感じるのだから




「小姫!?」
「お久しぶりでございます。ご健勝」
「そんなことは良い!如何したの急に」
「急にではないのですが…手紙でお送りいたしましたが御読み遊ばしていませんね半兵衛様」
「う、戦に忙しくて」
「知っております。ですから伯父ではなく貴方様に御取次をお願いいたしました。伯父は?」
「ん?秀吉かい?元気にしているよ」
「…出てくる気はないのですね。…まぁ良いです。で」
「な、なんだい?」
「手紙は」
「読んでないよ」
「去る2年前。あなた方が御立ち遊ばして手紙が滞った折よりの話でございます。我が母上がお亡くなり遊ばれました。遺言はここに認めてまいりましたので。母らしい最期でございました。御ばば様は実妹の葬儀に来れぬとはと大層お怒りでしたが、菓子をお送りいたしまして詫び状を送っております。また文を御書きくださいませ。それと竹中の姉君はご出産致しまして男の子を御産みに。されど、旦那殿は外に女殿が居ましたので…私の判断で離縁いたしましたよ。あんなロクデナシ。だからやめろと言ったのです。丁度琵琶湖近くの地侍に良き縁がありましたから其方に嫁しました。今となっては良い夫婦です。あと、細々とありますが。お時間は平気でございますか」
「旭君は亡くなってしまったのかい?!」
「ええ。元々体の弱い方でしたから。風邪を貰ってそのまま。その時に下の子も。兄上は御家中に加えて頂いていますし姉も嫁いでいましたから。私だけが生き延びてしまいました。竹中の母君も息災で心配されておりました。文をあずかろうと言いましたら其れよりと薬を渡してくださいました」
「母上らしい」
「取り敢えず、それだけです。」
「もう帰るのかい?」
「ええ。」
「そう」
「御忙しい間に申し訳ございませんでした。竹中の姉上の差配に問題がなかったか気になっておりましたので。火急の用があればまた。」
「少しゆっくりしていけば良い」
「…いえ。其れでは伯父上によろしくお伝えください」





そう言って一礼して部屋を出る。顔色が良くて良かった。少しほっとする。言いたいこともたくさんあるし知らせなくてはならないこともたくさんあるけど忙しいお二人に迷惑はかけられない。
そう思いながら裏口で草鞋を履く。正門から入るのはさすがに憚られるからと言いながら杖を受け取る。不意に銀髪が目に入る。半兵衛様のふわふわした其れではなくサラサラとした美しい髪だ。驚いて見開くと彼方はの眉間にはひどいシワが寄る。慌てて目を閉じて一礼する。危ない。気の短さまで似ている様だ。
裏門を聞いてそこまで歩いていく。統制のとれた軍。





「城からの使いですよ」
「は?」


其れからひと月。前触れもなく伯父上の城から使者が来た。着物を着替えて登城する様にという偈ちは有難くはない。ただ平凡にもう長くはないだろう御ばば様を看取り畑を守って土に帰りたいと思っていた矢先の出来事なのだから






沈丁花







「ってさ。ここには来ないと。見事な字だよね。どちらにしても来年ようやく裳着の童ができる技ではないよ」
「あれの母もよく似ていた。ただ体が弱すぎたのだ」
「儚く散ってしまったらしいね。秀吉」
「何だ」
「僕はね。あの子を妹の様に思っていたよ。よく笑って愛らしい子だった。けどこの間あった時は能面のようだったよ」
「あれには己が母以外に我の家半兵衛の家と見てもらっていたからな」
「帰ってきてって、旭君が危ない時に書いてある。思わず泣きそうになったよ」
「ああ」
「此方にはあのこと年の近い者が大勢いる。ここで成人させて嫁がせたいんだ。良いかい?」
「好きにせよ」

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日月 終

「姫様ぁ。風邪振り返してしまいますよ」
「あら、ありがとう」
「琴ですか?」
「ええ。久し振りに」
「私聞いたことないんです」
「では貴方の一番は私の琴音なのね。」




そう言って笑うとゆき殿は嬉しそうに横に座る。ふふふと笑って爪をつけていくと不思議そうに見てくる。それすら可愛い
弾き始めるとそわそわした顔が輝く様な驚いたような…可愛らしい顔になる。刑部殿もそこにやられたのかもしれない。




「琴の音」
「のようだ」



がさりという音が聞こえて庭先に目をやると稽古帰りの治部殿と島殿。それに刑部殿が出てくる。


「ぎゃ!」
「治部殿の島殿。何か羽織なさい。ゆき殿が困りますから」
「申し訳ございません!左近!!!」
「でも三成様。暑いってギギギギ刑部さん?!すぐ着てきます」
「私も失礼して」
「ああ、治部殿」
「は」
「少しこちらに。」
「っ」
「ああ。傷でなくて安心致しました。」
「は?」
「糸くず」
「あ、その!ありがとうございます!…姫様」
「?」
「その、すぐ帰ってまいりますので」
「ではそれまで。休憩いたしましょう。」
「すぐに戻ります」




あんまり急かずにねと言ったものの聞こえたかどうかわからない。ただ、ふよふよと浮かぶ刑部殿が笑ってゆき殿に餌付けするだから追わず微笑んでしまう。





「仲が良いわね」
「はい!」
「姫」
「私、大谷様大好きなんです」
「は?」
「そう。刑部殿は優しいと言ったでしょ?」
「はい。お茶お持ちしますね」
「気をつけてね」
「やれ、姫」
「ふふふ。満更でもないでしょ」
「…」
「あの後、貴方と治部殿のおかげで日の本が平定できましたから。失うものと得たもの。貴方には苦労をかけました。ゆき殿にも。私が体を壊してしまったから日がな夜がな尽くしてくれました。」
「本になぁ。ぬしの腕はやはりいかぬか?」
「ええ。長年の無理も祟ったのでしょう。」
「私はこれでよかったと思います。治部殿が後継者指名をされ、受けてさえくれば」
「私は受ける気などありません」
「やれ、三成」
「早かったですね。ふふふ。髪がはねていますよ。」
「これは!姫様をお待たせするわけには」
「こちらにいらっしゃい。」
「…」
「治部殿の髪は美しいですね。羨ましい」
「私の髪などて姫様の御髪に比べましたら芥と同じ。」
「ふふふ。…なおりました」
「ありがとうございます」
「いえ」
「あと」
「?」
「姫様ぁ」
「さてと、我はゆき殿と退散しようかの」
「え?」
「さて輿に乗りゃれ。ちと遠出をいたそう」
「でも」
「良いから行ってきなさい。」
「では」
「ひひひ」






そう言って二人がいないなる。私は治部殿の顔を見上げると困った様な辛そうな顔でこちらを見てくるものだから居た堪れなくなる。



「治部殿」
「後継者は貴方様です」
「家康殿に拐かされた以来戦さ場に立てなくなりました。」
「ですが!貴方様以外いないのです」
「?」
「…私は姫様の様に人をしきすることは出来ません。あの後も総大将として多くの戦さ場に立たれたではありませんか!」
「ですが」
「そうでもしないと」
「…治部殿?」
「貴方が消えてしまいそうで。再び私の元から消えてしまうのではないかと」
「…私はどこにもいきませぬよ」
「然し…」
「治部殿も私の様な壊れた女子の相手ばかりせず、奥を娶らないとなりませんね」
「姫様?!」
「ひゃ?!」




ギュウギュウと抱きしめられて私は硬直する。
子供の様な触れ合いはあった。だが、こんなものは私は知らない。




「この、愚かなる心情を吐露する許可を」
「は、い」
「貴方様は壊れてなどおりませぬ。ただ美しく聡明な私のただ一人の方でございます」
「治部殿」
「他の者を娶るなどというな。私は貴方だけいればそれで良い」
「あ」
「家康を葬り世が安定した故、秀吉様にお願いしようと…貴方を娶りたいと」
「…」
「愛している。貴方以外も女など私はいらん」
「っ」
「添い遂げてくれ。私と。共に老、朽ちるまで」
「治部、殿」
「っ!!!!」
「わ」
「私は、何を!も、うしわけございません!!!あの様な愚行」
「愚行…なのですか?」
「は?」
「偽りなのですか?」
「いえ、あ…姫様!泣かないでください!!!」
「ぐすん」
「っ」
「私は、嬉しかったのですよ」
「!」
「嬉しかったのに愚行だなんて」
「っ!?本当です!私は貴方を愛しております」
「…」
「貴方に触れる許可を」
「許可など、得ないで」
「姫様」
「許されるのなら、貴方の妻にしてほしい」
「本当でございますか!」
「ええ」
「姫様」
「治部殿?!」
「ああ、私の姫様だ。私だけの!やっと」
「く、苦しい」





日月





「ひひひひひひ」
「やっと引っ付いたね」
「姫様御嬉しそうです」
「…」
「婚礼の支度だよ!」
「やれ太閤」
「いや、なんでもない」

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