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変換なしの雑食夢

ran

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菖蒲

「ちい?何処だ」
「三成様?お茶ですか???」
「いや、その。で休まないのか?」
「?」
「その、だ。菓子を貰ったのでな。如何かと」
「まぁ。では大谷様もお呼びいたしましょう」
「ああ。声を掛けておく。」
「まぁ。可愛い」
「…」



そう言って嬉しそうに笑う顔には硬さがなくなっせいる。大政所様と共にいる時までとは言わぬもののそこに近しい表情になるので思わず顔が綻ぶ。



「では」
「三成ーーーー!」
「?!」
「家康か?こんなところまで何用だ!」
「今度の出兵について兵の…ん?」
「?!」
「お前の後ろに誰かいるのか?」
「見るな穢れる!」
「酷いなぁ…おっ。」
「三成様…」
「奥へ行っていろ。すぐに戻る。おい家康!ちいをその様に不躾に見るな!怯えるだろう!この筋肉達磨。」
「ちい殿か。儂は徳川家康。三成に虐められてないか?」
「貴様…」
「…はじめまして。こちらの屋敷付きの下女でついと申します。」
「つい?」
「はい。其れと三成様は良くしてくださります。」
「は?」
「では、失礼します」
「…」
「三成様。お茶をお持ちいたします」
「これな奴に茶などいらん」
「ですが」
「つい殿」
「…はい」
「良い女だ。」
「…は?」
「どうだ儂付きの侍女に。」
「っ!」
「ああ。三成の背に逃げてしまった。…三成?」
「退け、去れ、去れ、退れ、散れ、消えろ!」
「わっ!抜刀するなよ。」
「こうべを垂れるか?此処ではてれば良いがちいの眼前に貴様の首など粗忽なものを晒すのは目障りだ。さぁ選べ」
「いや、ははは。」
「家康ぅぅぅぅぅぅ!!!!」
「…やれ騒がし…ちい殿危ない。こちへきりゃれ」
「わっ。大谷様」
「刑部!助けてくれ」
「何。馬に踏まれていなくならしゃれ」
「わわわっ!忠勝!」






茶櫃をもって縁先に行くと項垂れる三成様としゃくしゃくと笑う大谷様がいて苦笑する。なるほど短気とご自身で言うだけはある。そう思いながらお茶の準備をしていくと淡々としておるなぁと言われるので再び苦笑する。聞いておりましたからと言えばと静かに確実に項垂れるのでどうしたものかと思案する



「やれ落ち込むな。」
「然し」
「ちい殿は歯牙にもかけぬよ。なぁ」
「はい。驚きましたが、仲のよろしいことと」
「ひひっ」
「あれとは!仲など良くないのです」
「三成様」
「いや、その、だ。…やはり短気短慮だ」
「主らしく一番いかぬとこよな。」
「お茶を飲んで落ち着いてくださいませ。逆に言えば」
「ん?」
「私はあの様な殿方が苦手ですので助かりました」
「は?」
「苦手とな」
「はい。…可笑しいでしょうか?」
「いや、なぁ。ちい殿はどの様なとこ方が好きか?」
「え?」
「刑部!」
「なに髪上げも済んだ故いつ嫁がれても不思議はなかろ?」
「考えたこと、ありませんでした。」
「左様か」
「そう、ですね。夜の様な静かで御優しい方が良いです。」
「夜、なぁ」
「ええ。あまり騒がしいのは苦手です。ので…あ」
「如何した?」
「先程のお菓子」
「あ、ああ」
「すぐに持ってまいります。お待ちくださいませ」






「夜、なぁ」
「何だ」
「優しい」
「…」
「まぁがんばりゃれ。」
「なにを?!いや。貴様に隠しても仕方がない。が、…そうか。」
「ん?」
「家康は好かんか」
「いやも嫌よもとあるのでな」
「?!」
(本に揶揄い甲斐がある)
「三成様、大谷様?」
「?!」
「やれ美味そうな菓子よな」
「はい。…三成様?」
「いや、何でもない」






菖蒲





「やれ、ちい殿」
「はい」
「何故徳川にはついとおっしゃった?」
「願掛けです」
「?」
「もう会いませぬ様にと」
「ああ。終いか」
「はい」
「何故嫌う?あったばかりよな」
「実は一度」
「?」
「文を届けてくださったのですがついといなくなってしまって本田様は覚えておいでだったみたいですけど。…如何してもああよく言って大らかな方は」
「ひひひ。人気があるのでな」
「そうなのですか?…そうかもしれませんが私はその枠ではないだけでしょうね。…でも如何して?」
「…こちらの屋敷に越してくる」
「のでしたら私は帰ります」
「冗談よ。然し」
「?」
「三成には懐くのになぁ」
「三成様は御優しいです。今日も厭う私をお護りくださいました。」
「…ぬしと三成の相性は良いと見えるなぁ」
「いいえ、恐れ多い。近習の筆頭と下女。武家のあの方と駆け落ち紛いで農家に嫁いだ娘の子である私では身分も立場も違います。」
「いちいち気にするとは思えんが」
「だから大谷様がいらっしゃるのでしょう。」
「ぬ…」
「私は大それた事など思いも願いもしておりません。ただ、少なからず良き縁で出会えた三成様と貴方様には御健常であって欲しいのです」う「?!」
「?」
「我もか」
「はい。」
「ぬしは我を厭わぬか」
「?はい。私、三成様と貴方様が共にあるのが好きです。」
「ではなく」
「?」
「我の病よ」
「病…と言われましても。特には気になりませんが。強いて言うならば包帯の変えや洗濯をお手伝い出来ればと」
「…本に変わっておる」
「そうでしょうか?」

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牡丹

「此処で暮らすのですか?」
「うん。給金もあるし。いいだろう?」
「御ばば様の家は?」
「父上と母上が面倒見てくれる。元々祖父の隠居場所だ。あんな辺鄙なところに君を独り置いておけない」
「位牌は?」
「後日父上が持ってくる。」
「…」
「ちい」
「はい」
「そんな顔をしないで。何も僕は此処に閉じ込めようと思っていないよ。買い物だってなんだって行けばいい。三成くんか吉継君を護衛につけるよ。けどね、君を狙う男どもの巣に君を置いてはいけないよ」
「…はい」
「ああ、泣かないで。ちい?」
「わかっています。母も。伯父上と半兵衛様の言うことを聞く様にと言っていました。」
「…」
「掃除の続きを」



そう言って一礼して部屋を出る。ぽろぽろと溢れる涙を拭って井戸端に着いたものの涙は止まらない。泣き虫。そう笑って桶をとる。
彼処は私の全てだった。建てつけの悪い戸。庭の梅。畑に機織り機。おくど。秋の稲。青空。御ばば様のいた部屋。欠けた碗。

全てが満たされていたのに。私の安住の地、だったのに。





「ちい様?」
「っ!」
「如何したのですか?」
「目に、ゴミが」
「少し目をつぶって」
「あの」
「…碗を」
「石田様」
「目が痛みます。」
「大丈夫ですから」
「涙で取れましたか?」
「はい」
「ちい様」
「半兵衛様に此処で働く様に言われました」
「そう、ですか」
「はい」
「残念です」
「?」
「あまりうれしくなさそうだ」
「生まれてずっと彼処で暮らしていましたから。不思議といい思い出しか思い出さなくて」
「…」
「帰りたい」
「私は」
「石田様」
「わがままを御許しください。私はいてくれて嬉しく思います」
「そう、なのですか」
「此処の下女初め侍女がいないのは私のせいなのです」
「石田様の?」
「私が短気で短慮な為。恐れてやめるのです」
「石田様は御優しいのに?」
「そうおっしゃるのは貴方様だけです。」
「そう言えば…最初に此処に来た折。怒っておいででしたね。」
「はい。貴方様がきてこの自室近くでは丸くなったと刑部が言います」
「良いことですか?」
「きっと」
「…まだ私は誰かのお役に立てるでしょうか」
「はい」
「…石田様」
「なんですか?」
「お願いがあります」
「何なりと御命じください」
「時折。本当にお手すきの時で良いのです。お墓参りに連れて行っては下さいませんか?」
「…」
「す、すいません!我儘を。忘れてください!」
「ち、違います!その」
「無理なお願いをして」
「ちい様」
「本当に」
「聞いてください。」
「石田様」
「此処に居てくださいますか」
「え?」
「…」
「怒っておられませんか?」
「怒ってなどいません。で」
「私の様なものがお役に立てるのなら」
「っ」
「い、石田様?」
「よかった…」
「は、離してくださいませ」
「?!申し訳ございません」
「あと」
「?」
「私のことはおいとかそこのとかで」
「無理です」
「なら」
「?」
「呼び捨ててください」
「は?」
「様は少し恐れ多くて」
「…ちい」
「はい。石田様」
「私も」
「?」
「下の名で構いません」
「ならば敬語もやめてくださいますか?少しでも良いですから」
「…」
「石田様?」
「善処、する。」
「ありがとうございます。三成様」












牡丹





「初々しいね」
「…」
「伯父上として心配?」
「いや、良い縁組だと思うが内心穏やかではないのはお前の方か?」
「僕には笑わないもの」
「あれは竹中のものに気兼ねをしているだけだ。また昔の様になろう」
「そうだ!秀吉。ちいの離れを作ろう。祖父のところの様に。畑を作って。」
「ああ」
「あの垣根よりこちらは僕たちに取っても彼にっても安住の地にしたいからね。」

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蓮花

「…」
「何やら此処も花やんだか?」
「ああ」
「洗濯物に繕い物。三度の食事と大変よな」
「ああ」
「にしても」
「?」
「賢人が用意した部屋を厭い賄いどころの横。下女の部屋で寝起きしているらしい」
「は?」
「太閤も賢人も家格から言えば清貧だが。それに輪をかけて」
「あそこは…待て。昼食の時間よりお顔を拝してはおらん」
「そう、言えば」
「少し行ってくる。医師の準備を」
「あいわかった」



賄い方に行くとお姿がない。道中もなかったので裏の井戸かと外に出ると藍色の服が見えてゾッとする。



「ちい様?!」




叫んでも返事はない。静かに地に伏せられているまま。急いで駆け寄り掻き抱くと小さな声で呻いて、静かに瞳を開かれる。




「石田、様?」
「ひどい熱だ。申し訳ございません」
「…」
「医師は呼んだ。太閤と賢人は出払っておる故、文を書く。」
「やはり此処は寒い。…私の部屋にお連れするがよいか?」
「致し方あるまい。ぬしの万年床でも役には立とう。一度そこに休ませてちい殿に誂えた布団を持ってきりゃれ。ぬしの事。寝ずに看病する気よな。左近に声をかけておく。暫くしたら行く故。万事任されよ」
「すまん」



ちい様を寝かせると火鉢を持って湯を沸かす医師は少し考えてから過労からくる風邪だろうといって薬を置いていった。介護から葬儀、そして登城と疲れが溜まったのだろう。額に手を置くと熱い。苦しいのだろう。汗もかかず酷くうなされている。



「ちい様」
「…」
「っ…早く良くなってください」





額に手ぬぐいを置く。少しだけたじろぐと涙が溢れるのがわかる。
泣かないで、欲しい。そっと頬に触れると今までのどの女より愛しく思うこの気持ちを自覚するのだった




蓮花






「…」
「…」
「あ、の」
「良かった」
「は?」
「もう少し、寝ろ」
「あ、あの。石田様?」
「…」
「…」
「っ?!わ、私は!!!」
「こほっ」
「?!いや、申し訳ございません。倒れている貴方を見つけて…」
「看病、してくださったのですか?」
「…勝手に看病をしておきながら、寝てしまうなど。剰え女子の部屋で」
「ふふふ」
「?」
「石田様、寝跡」
「っ?!」
「ありがとうございます。御手を煩わせてしまって。それに、 こんな上等な床で…あ」
「?!如何致しましたか?気分が優れないのならば」
「いえ、石田様はどちらでお休みになられるのですか?」
「わ、私は部屋の隅にでもと思っていましたが…不覚にも」
「本当に」
「ちい様?」
「御優しい方ですね」
「は?」

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梅花

「おはようございます」
「?!」
「石田様?」
「いえ、おはようございます。」
「御早い御目覚めですね」
「姫様こそ」
「石田様」
「?」
「私は姫という身分ではありません。…あれでも其れでもお呼びください」
「その様な!あの」
「?」
「…尊名はなんと」
「尊名?」
「あなた様のお名前です。秀吉様に聞いても濁されてしまい…」
「石田様は本当に伯父上を尊敬なさっておられるのですね。」
「それは、はい。私の唯一ですから」
「貴方様は同族同血と言いますが私の毛色は伯父上と少し違います。第一此処では私も殿下と呼ぶこととなりました。私は下女ですし…どうぞ、一婢女としてお使いください」
「いえ、ですが」
「それに」
「それに?」
「私には名がないのです。仮称と代名詞で人は生きていけるものです」
「は?」
「亡き母は終と呼んでおりました。子がたくさんおりましたし、私が生まれる少し前に父が亡くなって。流石に終わりと書いてついなれば仮称でも哀れと竹中の方々や伯父上と御じじ様御ばば様はちいと。小さいちい。すべて呼称であり仮称です。母がいつかはつけてくれると思ったのですが、最後まで。私は名もない、その様なものですから」
「…」
「その様な顔をなさらないでください。もう慣れました。し不自由はないものですよ。」
「では私も」
「?」
「小様とお呼びしてよろしいですか?」
「あなたがそう呼びたいのなら」
「…小様。」
「はい。石田様。」




そう呼ぶと何か言いたそうにして朝の稽古に行って参りますと一礼される。本当に礼儀の正しい人だ。昨日の怒った姿が夢の様。と思いながら井戸に向かう。雑巾を洗い、箒を持つ。汚れは少ないものの綺麗ではない。落ち葉の少ない季節で良かったと思いつつ、半兵衛様の朝餉まだ?お腹すいたよーで今の時間を知る。ほんとうに。一回り上とは思えない。でも、少し懐かしい気もする。



「遅くなりました」
「いや、構わぬ。大方賢人に捕まっておったのだろう?ぬしも大変よの」
「気にかけていただいているだけありがたいと。朝餉をお持ちいたしました。」
「まともな朝餉は久方ぶりよな」
「大谷様も御苦労絶えませんね。昨日お伝えいたしました繕い物と洗濯物はこれで?」
「済まぬなぁ。」
「いえ。…包帯の換えは本当によろしいのですか?」
「良い良い。いつも三成が手伝ってくれる故。それに女子の見るものではない故」
「…何かありましたら言ってくださいませ。そのためにここにいるのですから。少しの間といえども。」
「本に変わった女よ」
「?」
「我を厭わぬか?」
「???」
「まぁ、いい。」
「はぁ。では一旦失礼いたします」
「のう」
「はい?」
「もっと笑えばよかろう?菓子が草子か?ぬしは何を見れば笑しゃる?」
「そうでございますね。きっと、そのうち」
「左様か。…ん」
「刑部」
「やれ三成」
「石田様。ご苦労様でございます」
「小様。」
「大谷様に朝餉を。…石田様はいかがいたしますか?」
「こちらで食べます。」
「朝餉をお持ちいたします。着替えも」
「いえ、あの…行ってしまわれた」
「ひひひ。苦しき恋慕よの」
「…」
「否定せぬか。にしても。笑わぬ太閤の姪御を好むとは。確かに顔立ち素作はよいが。取り留めてぬしの心を掴むとは思えぬが。」
「笑うところを一度見たことがある」
「ん?」
「一度だけだ」
「左様か」
「…にしても」
「ん?」
「なぜ姫様を御呼び寄せになったのに下女の様な扱いに…聡明な方だ」
「かの方を戦さ場に連れて行く気はない様だ。今は下女だがいつかは有力なものに嫁させるつもりよな」
「は?」
「あの様に静か故間違えるが先月前髪を上げたばかりよ。不思議とは思わんがの」
「そう、か」
「ひひひ。ぬしが執着とは珍しい。太閤の血縁は大切と見える」
「それは、そうだ。あの秀吉様の姪御。大切でないはずはない」
「失礼いたします」
「?!」
「お食事を。あと着替えも」
「あ、ああ。申し訳ありません」
「石田様」
「?」
「後生でございますからその様な喋り方は。一婢女として」
「しかし」
「ちい殿この漬物は美味よなぁ」
「刑部?」
「ありがとうございます。」
「「…」」
「どこかな?おーい!」
「あ、半兵衛様。洗い物は後から取りに参ります」
「は、はい」



「…ちい様」
「笑っておったな」
「ああ」
「すごい破壊力よな」
「言ってくれるな」




梅花




「はぁ」
「ちい様」
「石田様」
「雑巾掛けなど」
「え?ああ。すいません。御見苦しいところを」
「そう、ではなく」
「?」
「お疲れではありませんか?」
「はい。」
「ですが…」
「石田様もよくお召し上がりになられて…そろそろ私も」
「は?」
「いえ、家を開けっ放しは流石に」
「これから此処にお住まいになられるのでは?!」
「いえ。石田様の体調が戻るまでと。」
「…」
「それに此処は私には敷居が高くて。」
「その様な」

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金木犀

「ぬしが、太閤の姪御殿、か?」
「はい。貴方様は?」
「ひひひ。三成の友と申せばいいか。大谷という。」
「石田様の?」
「左様。ぬしにちとお願いってな」
「はぁ。…どうぞ縁に。」
「縁?」
「御武家の家とは違い客間はこの家にはありません。見ての通り、囲炉裡部屋とお勝手だけです。その様なところに御通しするわけにも参りませんし…。日も当たりますし、暖かいのでご安心を。今御座布団を」
「ありがたや。ありがたや。」
「少しお待ちください。…粗茶を」
「ひひひ」
「失礼いたします。その、ご用件は?」
「ぬしに頼みは他でもない」
「?」
「石田三成を知っておられるか?」
「何度か伯父上たちの文を届けて下さいましたので」
「その三成がなぁ」
「?」
「三成が食さぬでな…最近特にひどい」
「まぁ。お体の具合でも?」
「やれ、いつもの事だが今回は目に余ってなぁ。以前ぬしの食事は美味しいと言っておったのを思い出してな。ぬしのならと思い訪ねてきたのよ」
「はあ」
「ぬしに頼む話ではないが、何か作ってやれぬか?」
「ですが…」
「このままではやせ細って倒れてしまう」
「っ?!しかし。」
「いかぬか?」
「そう、ではなく。」
「?」
「半兵衛様でしょうか?」
「…本に。噂通りよの。しかし。三成が食さぬのも事実よ」
「申し訳ございません。半兵衛様は策は練られても嘘をつく方ではありませんし、貴方様を疑っているわけではなく、その」
「?」
「その様なことは御正室様や許嫁様がなさる事では、と。ご身分の高い方ですので…御相手がおられますでしょうし。その方のご心中をさっすると…はいとは言いづらいのです」
「ぬしにとって三成は随分優しい男と見える」
「違うのでしょうか?」
「あれは不器用でなぁ。故に我が駆り出される。」
「ふふふ。」
「ん?」
「とても仲がよろしいのですね」
「そう見えるか?」
「ええ」
「で、如何か?」
「半兵衛様には石田様が食すまで。華美な調度や支度は入りませぬと。一時的な下女と御思いくださるのなら。それに時折墓前を参らせてくれるのなら参りましょうとお伝えください。」
「あいわかった。では荷を纏められよ。直ぐに経つ故」
「直ぐですか?」
「早う帰って見張らぬとなぁ。我も大変…ん?これは?」
「以前御ばば様が亡くなる前に届けてくださったものです。風呂敷をお返ししたくとも何を中に入れようかと思案しているうちに…御恥ずかしい話です」
「あれはぬしへか」
「?」
「滋養に良いものと聞かれて我が用意立てたものよ。」
「貴方様が…。お話には聞いておりました。ではますますもって断れません。」
「誠義理堅い」










大阪城に着くなり半兵衛様に出迎えられて私は驚く。現金な方だことと思いながら一礼する。一応、大谷様と一緒に件の話をしたものの聞いておられるか否か…きっと後者だろうと思いながら裏口の場所を尋ねる。
にしても。簡素な割には掃除が行き届いていない。どういうことかしらと思いながら周りを見ると侍女どころか下女の姿が見えず驚いてしまう。




「驚いたかい?」
「お食事などどうなさっているのですか?」
「色々だよ。」
「…半兵衛様」
「僕たちの分まで作ってくれると助かるよ」
「繕い物と雑務もですね。」
「さすが小姫」
「矢の催促の理由がわかりました。以前おられた下女の方々は?」
「暇を出したんだ。あまりにもひどくて。其れでも徒士の方にはいるけどね」
「そうですか」
「うん。」
「私、お墓前りに行く時間ありますか?」
「んー?どうだろう」
「はぁ。童の折から思いましたが人使いの荒い。」
「6つの時分で家政を覚える才女だからね。仕方ないさ」
「大谷様」
「ん?」
「御恨みいたしますわ」
「ひひひ。総ては賢人のせい。我は知らぬ。しらぬ」
「…事情が事情ですから頑張ります。」
「ひひひ」







半兵衛様と大谷様を見送って荒廃した台所を見る。挨拶はいいとのこと。どうにかしろということだろう。ため息をつく暇はないらしい。埃だけだからまだ良いと自分を慰めながら私は食料庫へ向かうのだった






金木犀






「失礼いたします。昼餉をお持ちいたしました」
「いらん!」
「石田様」
「今は其れどころではない!さが、れ?」
「御忙しいのでしたら後でお持ちいたしましょうか?」
「…姫、様?」
「はい」
「っ?!な、なぜ!!!」
「大谷様に聞いておられませんでしたか?え?!あの、石田様?」
「刑部!!!!」
「どうしましょうなにかさけんで…」
「三成、はいる…ちい?」
「伯父上。お久しぶりです」
「何故、此処に」
「食事と下手間がいないので…半兵衛様に」
「そうか」
「お礼を。竹中の御隠居様に聞きました。」
「いや、我こそ」
「…お体を大切にと御ばば様が」
「ん」
「…お食事お持ちいたしたいのですが。石田様がどこかに行かれて」
「そうか」
「一度下げます。伯父上はどちらに?」
「部屋に。三成のも。皆そこにいる。お前も」
「私は良いです。皆様の分お持ちいたします。」
「…」

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