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変換なしの雑食夢

ran

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牡丹

「此処で暮らすのですか?」
「うん。給金もあるし。いいだろう?」
「御ばば様の家は?」
「父上と母上が面倒見てくれる。元々祖父の隠居場所だ。あんな辺鄙なところに君を独り置いておけない」
「位牌は?」
「後日父上が持ってくる。」
「…」
「ちい」
「はい」
「そんな顔をしないで。何も僕は此処に閉じ込めようと思っていないよ。買い物だってなんだって行けばいい。三成くんか吉継君を護衛につけるよ。けどね、君を狙う男どもの巣に君を置いてはいけないよ」
「…はい」
「ああ、泣かないで。ちい?」
「わかっています。母も。伯父上と半兵衛様の言うことを聞く様にと言っていました。」
「…」
「掃除の続きを」



そう言って一礼して部屋を出る。ぽろぽろと溢れる涙を拭って井戸端に着いたものの涙は止まらない。泣き虫。そう笑って桶をとる。
彼処は私の全てだった。建てつけの悪い戸。庭の梅。畑に機織り機。おくど。秋の稲。青空。御ばば様のいた部屋。欠けた碗。

全てが満たされていたのに。私の安住の地、だったのに。





「ちい様?」
「っ!」
「如何したのですか?」
「目に、ゴミが」
「少し目をつぶって」
「あの」
「…碗を」
「石田様」
「目が痛みます。」
「大丈夫ですから」
「涙で取れましたか?」
「はい」
「ちい様」
「半兵衛様に此処で働く様に言われました」
「そう、ですか」
「はい」
「残念です」
「?」
「あまりうれしくなさそうだ」
「生まれてずっと彼処で暮らしていましたから。不思議といい思い出しか思い出さなくて」
「…」
「帰りたい」
「私は」
「石田様」
「わがままを御許しください。私はいてくれて嬉しく思います」
「そう、なのですか」
「此処の下女初め侍女がいないのは私のせいなのです」
「石田様の?」
「私が短気で短慮な為。恐れてやめるのです」
「石田様は御優しいのに?」
「そうおっしゃるのは貴方様だけです。」
「そう言えば…最初に此処に来た折。怒っておいででしたね。」
「はい。貴方様がきてこの自室近くでは丸くなったと刑部が言います」
「良いことですか?」
「きっと」
「…まだ私は誰かのお役に立てるでしょうか」
「はい」
「…石田様」
「なんですか?」
「お願いがあります」
「何なりと御命じください」
「時折。本当にお手すきの時で良いのです。お墓参りに連れて行っては下さいませんか?」
「…」
「す、すいません!我儘を。忘れてください!」
「ち、違います!その」
「無理なお願いをして」
「ちい様」
「本当に」
「聞いてください。」
「石田様」
「此処に居てくださいますか」
「え?」
「…」
「怒っておられませんか?」
「怒ってなどいません。で」
「私の様なものがお役に立てるのなら」
「っ」
「い、石田様?」
「よかった…」
「は、離してくださいませ」
「?!申し訳ございません」
「あと」
「?」
「私のことはおいとかそこのとかで」
「無理です」
「なら」
「?」
「呼び捨ててください」
「は?」
「様は少し恐れ多くて」
「…ちい」
「はい。石田様」
「私も」
「?」
「下の名で構いません」
「ならば敬語もやめてくださいますか?少しでも良いですから」
「…」
「石田様?」
「善処、する。」
「ありがとうございます。三成様」












牡丹





「初々しいね」
「…」
「伯父上として心配?」
「いや、良い縁組だと思うが内心穏やかではないのはお前の方か?」
「僕には笑わないもの」
「あれは竹中のものに気兼ねをしているだけだ。また昔の様になろう」
「そうだ!秀吉。ちいの離れを作ろう。祖父のところの様に。畑を作って。」
「ああ」
「あの垣根よりこちらは僕たちに取っても彼にっても安住の地にしたいからね。」

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