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変換なしの雑食夢

ran

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梅花

「おはようございます」
「?!」
「石田様?」
「いえ、おはようございます。」
「御早い御目覚めですね」
「姫様こそ」
「石田様」
「?」
「私は姫という身分ではありません。…あれでも其れでもお呼びください」
「その様な!あの」
「?」
「…尊名はなんと」
「尊名?」
「あなた様のお名前です。秀吉様に聞いても濁されてしまい…」
「石田様は本当に伯父上を尊敬なさっておられるのですね。」
「それは、はい。私の唯一ですから」
「貴方様は同族同血と言いますが私の毛色は伯父上と少し違います。第一此処では私も殿下と呼ぶこととなりました。私は下女ですし…どうぞ、一婢女としてお使いください」
「いえ、ですが」
「それに」
「それに?」
「私には名がないのです。仮称と代名詞で人は生きていけるものです」
「は?」
「亡き母は終と呼んでおりました。子がたくさんおりましたし、私が生まれる少し前に父が亡くなって。流石に終わりと書いてついなれば仮称でも哀れと竹中の方々や伯父上と御じじ様御ばば様はちいと。小さいちい。すべて呼称であり仮称です。母がいつかはつけてくれると思ったのですが、最後まで。私は名もない、その様なものですから」
「…」
「その様な顔をなさらないでください。もう慣れました。し不自由はないものですよ。」
「では私も」
「?」
「小様とお呼びしてよろしいですか?」
「あなたがそう呼びたいのなら」
「…小様。」
「はい。石田様。」




そう呼ぶと何か言いたそうにして朝の稽古に行って参りますと一礼される。本当に礼儀の正しい人だ。昨日の怒った姿が夢の様。と思いながら井戸に向かう。雑巾を洗い、箒を持つ。汚れは少ないものの綺麗ではない。落ち葉の少ない季節で良かったと思いつつ、半兵衛様の朝餉まだ?お腹すいたよーで今の時間を知る。ほんとうに。一回り上とは思えない。でも、少し懐かしい気もする。



「遅くなりました」
「いや、構わぬ。大方賢人に捕まっておったのだろう?ぬしも大変よの」
「気にかけていただいているだけありがたいと。朝餉をお持ちいたしました。」
「まともな朝餉は久方ぶりよな」
「大谷様も御苦労絶えませんね。昨日お伝えいたしました繕い物と洗濯物はこれで?」
「済まぬなぁ。」
「いえ。…包帯の換えは本当によろしいのですか?」
「良い良い。いつも三成が手伝ってくれる故。それに女子の見るものではない故」
「…何かありましたら言ってくださいませ。そのためにここにいるのですから。少しの間といえども。」
「本に変わった女よ」
「?」
「我を厭わぬか?」
「???」
「まぁ、いい。」
「はぁ。では一旦失礼いたします」
「のう」
「はい?」
「もっと笑えばよかろう?菓子が草子か?ぬしは何を見れば笑しゃる?」
「そうでございますね。きっと、そのうち」
「左様か。…ん」
「刑部」
「やれ三成」
「石田様。ご苦労様でございます」
「小様。」
「大谷様に朝餉を。…石田様はいかがいたしますか?」
「こちらで食べます。」
「朝餉をお持ちいたします。着替えも」
「いえ、あの…行ってしまわれた」
「ひひひ。苦しき恋慕よの」
「…」
「否定せぬか。にしても。笑わぬ太閤の姪御を好むとは。確かに顔立ち素作はよいが。取り留めてぬしの心を掴むとは思えぬが。」
「笑うところを一度見たことがある」
「ん?」
「一度だけだ」
「左様か」
「…にしても」
「ん?」
「なぜ姫様を御呼び寄せになったのに下女の様な扱いに…聡明な方だ」
「かの方を戦さ場に連れて行く気はない様だ。今は下女だがいつかは有力なものに嫁させるつもりよな」
「は?」
「あの様に静か故間違えるが先月前髪を上げたばかりよ。不思議とは思わんがの」
「そう、か」
「ひひひ。ぬしが執着とは珍しい。太閤の血縁は大切と見える」
「それは、そうだ。あの秀吉様の姪御。大切でないはずはない」
「失礼いたします」
「?!」
「お食事を。あと着替えも」
「あ、ああ。申し訳ありません」
「石田様」
「?」
「後生でございますからその様な喋り方は。一婢女として」
「しかし」
「ちい殿この漬物は美味よなぁ」
「刑部?」
「ありがとうございます。」
「「…」」
「どこかな?おーい!」
「あ、半兵衛様。洗い物は後から取りに参ります」
「は、はい」



「…ちい様」
「笑っておったな」
「ああ」
「すごい破壊力よな」
「言ってくれるな」




梅花




「はぁ」
「ちい様」
「石田様」
「雑巾掛けなど」
「え?ああ。すいません。御見苦しいところを」
「そう、ではなく」
「?」
「お疲れではありませんか?」
「はい。」
「ですが…」
「石田様もよくお召し上がりになられて…そろそろ私も」
「は?」
「いえ、家を開けっ放しは流石に」
「これから此処にお住まいになられるのでは?!」
「いえ。石田様の体調が戻るまでと。」
「…」
「それに此処は私には敷居が高くて。」
「その様な」

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