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変換なしの雑食夢

ran

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翡翠色

「奥」
「はい」
「今日は天気がいいな」
「はい」
「三成様ー!雑賀の御使者です。刑部さんが呼んでますよ」
「今、行く。」





そう言うとそそくさと部屋を出て行かれるので私は苦笑する。不器用なんっすよという島様の言葉を聞きながら。もう、それすら苦笑してしまう。




「奥方様も少し散歩でもなさったら如何っすか?」
「散歩?」
「俺お供するっすよ。気晴らしになるし」
「そう、ね。」
「松も参ります。」
「あ、良いっすね!」
「お時間は?大丈夫ですか?」
「大丈夫ですって!行きましょうよ!」
「なら」





久し振りに庭に出る。ここのと言うのでは本当に初めてだ。
庭木が大阪と違う。あちらは半兵衛が作っていたから麗美だったがこちらは素朴だ。



「此処は三成様が婚約が決まって作ったとこっすよ」
「そう」
「元気ないっすね」
「ふふふ。そうかしら?」
「三成様も心配してたっすよ。めっきり表情が変わってしまって。何より、喋らなくなったって」
「昔からこの様なものよ」
「そっすかねぇ。あ!今度琵琶湖行きましょうよ!此処からも見えますけど。大阪から来た時だけっしょ?ゆっくり温泉に入って美味しいもの食べて!ね?」
「本当に楽しそうですね」
「じゃ決まりっすよ!…ん?」
「あら…」
「島殿!」
「いや、わざとじゃ無くて!!!…奥方様?」
「本に私以外ですね」
「(あちゃー…)そんなことないっすよ!」
「良いのですよ。」
「奥方様?」
「一喜一憂してはならないとよくわかったのですから。松」
「はい。」
「部屋に帰りましょう。少し気分が悪いと当分人払いを」
「はい」
「はいって?!松さんも!」





部屋に帰って私は打掛を松に渡す。寝着に変えますかと聞かれるので曖昧に答える。綺麗な人だった。あれが噂の雑賀の棟梁なのだろう。美しくて強い女性。



「松」
「はい」
「貴方も少しやすみなさい。私は大丈夫ですから」
「…ですが」
「良いですね」
「…はい」




あの人と肩を並べられる女性なら良かったのに。矢張り、私の位置は人質で人形なのだろう。あれだけの事を言っていただいて、何も変わらない程度の。




「奥方様はお休みになられています。」
「では見舞いを」
「やっと寝たところで御座いますので…起きてしまってはことですから」
「そう、か 。」
「時に先ほどの方は?」
「孫市だ」
「随分と親しげな」
「よく働く。潔く誇り高い。裏切らない女だ。」
「そうですか」
「?」
「奥方様の前では言いませぬ様」
「何故だ」
「あの方は何より己が家族を欲しておりましたので」
「は?」









翡翠色







「はぁ。本に間が悪く達が悪い」
「奥方様は如何する気っすかね。あ!三成様」
「…やれ三成。早々の帰りとは珍しいの」
「寝ていたので会えなかった」
「左様か」
「刑部」
「よき様に回ったかと思うたが…此れは骨の折れる話よな」
「??」
「ヌシもとっとと目をあわしゃれ。何ずっとみよというわけでもない。それに着物もきなしゃれ。」
「汚れてはいかん!」
「後生大事に持っていたとして何になる。奥にすれば来てもらえぬと嘆いておるやも知れぬわ」

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若木色

「奥帰った!」
「御前様?」
「帰ったぞ!」
「…」
「?」
「お帰りなさいませ」
「っ」
「お召し物をおときくださいませ」
「あ。ああ」
「お手伝い」
「いらん!」
「…」
「左近!手伝え!!!」
「ではお茶の」
「いい!」
「…」
「奥」
「はい」
「顔色が良くなった。」
「!?」
「じっとしてろ。着替えたらすぐ来る。」
「は、い」





一週間後の御帰城でしたのにと言いながら松が打掛を持ってくる。その顔は本当に面倒臭そうでおもわず笑ってしまった。




「奥!」
「あら。御前様。早かったですね」
「あ、ああ。」
「?」
「座っても」
「ええ。殿のお屋敷で」
「そちらではなく。貴方が」
「私が?」
「座っても大事ないか?」
「ええ。」
「よかった」
「…矢張りお茶を入れてもよろしいですか?」
「だが」
「だって」
「?」
「御前様の無事の姿を御拝顔して私もホッとしているのです」
「本当か?!」
「ええ。ですから」
「では頂く」
「勝ち戦とのことおめでとうございます」
「私は何も。ただ秀吉様のお陰だ」
「戦のことは良くわかりませんが半兵衛が文を」
「半兵衛様が?!」
「お読み遊ばしますか?」
「い、いや。それは貴方」
「?」
「読んでも良いのだろうか」
「はい」
「…」





手紙を読んでいる間にお茶を入れる。時節の挨拶を送っただけだ。静かに読み終えた殿が嬉しそうな顔をなさる。本当に兄上や半兵衛が好きだなと。この間の武功を終えた2人でお褒めになったという言葉は何よりもこの人を喜ばせるのだろう…ああまた。目を逸らされる。致し方ないと思うもののやはり島様の言は客観性に足りなかったのだろう。
お茶をと勧めたところ丁寧にお礼を言って頂く。





「宜しかったですね半兵衛も喜んでいる様ですし」
「…」
「?如何致しました?」
「なぜ半兵衛様を呼び捨てになさるのか?」
「あ申し訳ありません。婚礼の後に様と呼んでいましたし、手紙にもそう書いていたのですが怒られてしまいました。」
「…」
「御前様?」
「…良く、手紙のやり取りを?」
「はい。一時期は兄上と半兵衛に育てて頂きましたから。童の折は無礼にも呼び捨てにしか出来なくて…その名残です」
「育てて?!」
「は、はぁ。私を姫と育てて何所ぞに嫁すのが半兵衛の目的だったのでしょうから」
「そう、か」
「?」
「貴方と半兵衛様が婚約していたと聞いたことがあった」
「事実です」
「?!」
「少し、強引な方が居まして。最後には拐かされそうになりました。城に、上がる前ですが。それでしょうがなく。」
「そうか」
「城に上がってほどなく解消しています。私は半兵衛を兄とは違う…なんといえばいいのでしょうか。家族と思っていますしあちらはあちらで。ですから様は嫌だと。…お耳苦しいのでしたら」
「いや、そうでは無く」
「?」
「貴方が半兵衛様を思っているのではと」
「家族の念で御座いますれば。彼の方も兄上しか見ておりませんよ」
「も?」
「お茶が冷めてしまいます。」
「…ああ」
「松」
「はいはい」
「?」
「此れを殿に」



松から手渡された風呂敷をお渡しすると少し困った様な顔をされて受け取られる。開けてもと丁寧に断りを入れていただくので私もどうぞとしか言えなくなる。
存外私は喋りだ。此れを作っている最中も松に叱られる程度には。だが殿の前では喋れなくなる。自分がいかに愚かかを突きつけられている様で。居た堪れなくなるのだ。






「着物?」
「はい」
「私にですか」
「ここの縫い方に聞いて縫ってみたのですが…」
「ありがとう、ございます」





笑顔無理にしても、少しは綻ぶかと思った。何より少しでもこちらを見てくれるかと思ったのに




『貴方のことをお慕いしています』
『三成様は貴方のこと本気で好きっすよ。』





こんな険しい顔になられるとは思わなかった。本当に、自分の愚かさに泣きたくなる。一度の接吻。額のそれに踊らされてしまったのだから。

普通の夫婦になれるかもと思ってしまったのだから。



「有難く」
「いえ。殿もお時間大丈夫ですか?」
「え?…ああ。長居しすぎた。すまない。又、後で」










若木色










「…やれ三成。如何したその様な顔をして」
「奥、が」
「離別でも言われたか?」
「違う!私に着物を!手ずから」
「…で、その顔か。」
「?」
「で、目は合わせられたか?」
「…」
「無理か。やれ、また拗れるなぁ」
「?!」

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桃色

「奥方様」
「はい」
「殿が御目通りを」
「え?あの…」
「事を急ぐそうなので」
「なれば」



御簾を下ろす様にと言えば松にもう良いでしょうと投げやりに言われる。だけれどもと言い訳する頃には殿は直ぐ近くまで来られていて障子に影がうつる。



「奥?!すまない。御簾が」
「い、え。ご不快でなければ」
「いや。そのだ…衣装が」
「あ」
「御簾があるものとばかり。申し訳ない」
「…戦でございますか?」
「あ、ああ。一月ほど留守にするので」
「大阪にも?」
「そのつもりだが」
「?」
「貴方も大阪に?」
「?!」
「?」
「何時でしょうか?」
「え?明日ですが進軍を終えた後になりますので詳細は」
「では早めに荷物をまとめておきます」
「は?」
「?」
「小旅行程度ですので…荷物を…?!」
「御前様?」
「違います!奥を大阪に連れて参るのは気分転換の様なもので身命を賭して違います。お返しするつもりは」
「…ふふふ」
「っ」
「私などに身命を賭さないで下さいませ。兄上にも道具とと」
「言われましたが…やはり見る事は出来ませんでした。」
「え?」
「入っても?」
「…はい」





静かに入ってこられるのはあの時の姿で思わず身構える。それを見て困った様な顔をしてやはりというので私は構いませんとだけ告げる。
手が強張る。




「矢張り、良くない」
「いいえ」
「奥は私が憎くないのか?」
「?」
「あの様な無体…まだ痣も消え切っていないし…何より私のせいで貴方を母親に」
「憎いというのはわかりません。私は人形の様なものですから…もし御前様が壊そうが捨てようが」
「私は貴方を人形だと思った事はありません」
「は?」
「人として聞いているのです」
「…人として」
「はい」
「憎くはありません。どこに嫁いだとしてもあり得る話ですし。何より弱い私がいけないのですから…ただ」
「ただ?」
「恐ろしいのかもしれません」
「…そうですか」
「申し訳ありません。」
「あの様な非道を行ったのに貴方が会って下さるのはそういうことなのですね」
「え?」
「再びあの様な目に合わぬ様にと」
「違います!」
「何が違う?!」
「っ」
「あ、いや。…すまない。」
「…御前様」
「泣かせるつもりではなく。ただ、挨拶に来ただけだったのが」
「ごめんなさい」
「もう、行かなくてはいけない」
「?!待って下さい」
「奥方様?!じっとなさってください!まだ安静なのですよ」
「ですが、この様な別れは嫌です」
「は?」
「童の内より貴方が私を厭うていたことは知っておましたし、その最中の非道仕打ちも身に染みております。止めはあの所業としたとしても。私は」
「…」
「貴方様の妻であるうちは貴方に健やかでいて頂きたいのです。」
「は?」
「嫁いだ折より役に立たない妻でした。何より、貴方様のために何もできませんでした。」
「その様な」
「ですからただ無事を願うしか私には出来ないのです」
「…は?」
「?」
「私の無事を?」
「他の誰の無事を妻として願うのですか」
「っ!?」
「本当ですよ。奥方様は仏間で懇ろにお願いしたりしております。許可が下りれば神社仏閣に参るつもりですよ」
「本当ですか?」
「はい」
「…」
「恐ろしいのはお許しください。ただそれだけの感情ではないのですが…それ以外の言葉を知らないのです。ですが憎しみはありません。貴方が私を厭うゆえの所業と」
「厭うたことはない!」
「は?」
「私は」
「三成様ー!早くしないとやばいっすよ…てありゃ?」
「間の悪い!」
「左近んんんんんんん!!!!貴様!!!!!」
「ひっ?!」
「殿!」
「…」
「?」
「いい。行ってくる」
「はい」
「…近づいてもいいから?」
「え?」






風の様に近づいて来られて私の眼前に御前様はいる。どういうことかと焦っていると静かに、考えられないほど優しく額に口付けを落とされる。





「御前様?!」
「帰って話す。」
「う…あ」
「それまで良く…どうした?」
「そ、の」
「無理をするな。手が震えている」
「…あの」
「奥?」
「早く、帰ってきて、下さい」
「っ」
「私はここでずっと待っています、から」











桃色









「如何した半兵衛」
「いや、ね。三成くんのところ。良い動きだなと思って」
「ああ」
「功も焦ってないし。それでいて疾風の様だね。うん。興味深い」
「我とは違う強さを得るか?」
「かも、しれないね」

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桜色

「松」
「はい」
「殿の、手紙ですか?」
「はい」
「…」
「なんて書かれていますか?」
「桃の花が咲いたそうです」
「もうそんな時期ですか」
「ええ。その様ですね」
「手紙を読まれるのも苦ではなくなりましたか?」
「…少し」
「左様ですか」
「松?!」
「あの時の字と同じですね」
「きっと同じ祐筆に書かせていらっしゃるのね」
「…」
「?」
「誰か島殿を」
「は?」
「如何かしましたか?」
「いえ。何故…島様を?私はあまり話したありませんが…」
「刑部様は駆け引きに長けた方ですから。尋問は素直な若人がちょうど良いのですよ」
「松」





という事で刑部さんにいらぬ事を言うなと釘を刺され、三成様には禍々しいまでの視線を頂き。不肖島左近。奥方様の御前にいます。が、何故か松様が恐ろしい顔をなさっている。いや、違う。悪巧みを考える刑部さんにそっくりな顔だ。





「今、失礼な事を思っていたでしょう?」
「いやいやいや!そんな恐ろしい事!」
「…ならいいですが。今から訪ね聞く事に素直に答えなさい」
「はひっ」
「でなくば」
「…いくらなんでも女に手をあげるのは無理っすからね」
「何故私が貴方と腕力で話さなくてはならない?」
「へ?」
「もし噓いつわりを申したら」
「私が泣けば良いのですね。松」
「大きな声で島殿のご乱心を告げますれば叩かれたと叫ぶのですよ」
「殺されますって!!!絶対嘘言いません!!!だからそれだけは!!!」




ニヤリと笑ってよろしいという姿は絶対刑部さんに似てる。






「まず、この文は誰が書かれたものか」
「?これは三成様っすよ」
「島様。祐筆では無いのですか?」
「違いますって。あの人箆棒に事務処理能力高くって。誰もついていけないんっすよ。一度怪我の折代筆を頼んだら遅い汚いって暴れて。まぁスラスラ書いちまうし言ってくれないしで石田軍に祐筆はいないっすね。」
「…直筆なのですね」
「大体これは奥方様宛っしょ?すっげえ気を使って書いてるんっすよ。」
「そうなのですか?」
「昔、奥方様が手折った花を嫌った時とか何を口実に手紙を贈ろうかと真剣に考えてたんすよ。あーでも無いこーでも無いって。紙なんかも。秀吉様とか半兵衛様には特別な白い紙っす」
「そう」
「あ、勘違いしてるでしょ?」
「?」
「刑部さんもその白い紙。俺らとかには普通の紙。奥方様だけなんすよね。」
「私だけ?」
「そうっすよ。薄い藤色の特別な紙」
「そういえばいつもこの紙ですね」
「この色。三成様の色なんすよ。」
「え?」
「直ぐに自分とわかる様に。何より、少しでも思い出してもらえる様に。奥方様が姫様の時からずっとこの紙は貴方だけのものなんすよ」
「…」
「すっごく不器用で女の扱いなんて知らない人ですけど奥方様にはずっと笑って欲しいって言ってました。だから嫌われている自分が結婚しても良いのかって考えてはヘタを打ち。戦さ場に行っても奥方様は息災かって心配しては後手に回り。姫様ん時からずっとそんな感じっすね。ベタ惚れなんっすよ。でも失敗続きで自己嫌悪に陥ってるっすね」
「でも」
「まーあんな人だから信じれないのも仕方ないっすけど。」
「…兄上との関係で演じているって事はありませんか?」
「誰がっすか?」
「殿が」
「…もし、三成様が演じる事ができる人ならもっと楽に生きてますよ。奥方様にも上手く言って夫婦円満を装って。他の人との軋轢もなくて。でもそれが出来ないから三成様なんっすよね。」
「…その通りですね」
「ね!」
「島様は本当に殿が好きなのですね」
「はい。いやー本当に奥方様が好きなんっすよ。あ。三成様の話っすよ。踊りを見た後のベタ褒め感とか琴の音が聞こえたらすごく良い顔して聞かれるんっすよ。これは言いたかったんすけどようやく許可頂いたんでお教えします。それに実はっすね」
「?」
「元々奥方様の部屋にって思ってたところは実は三成様の政務室の直ぐ近くで、何かあったらお守りできるのと近くにいたいのとでそこにしたんっすよ。勿論今でも誰にも使わせて無いんですけど。あの風流に無頓着な三成様が奥方様が喜ぶだろうって庭をちゃんと整備してるんっすよ。」
「そうなのですか」
「少しでも過ごしやすい様にって。色々考えてたんっすけど。今はすっごい悩んでます。奥方様を守るって言った自分が傷つけてしまったと。」
「…」
「ああいう人っすから。言葉に出して言ったりしないっすし態度も悪いですけど。確かに奥方様を大切に思ってますよ」
「あの、ですね」
「何っすか?」
「…言いませんか?」
「(きっと横にいるけど気づいてないんだろうな)言わないっす!」
「松」
「(隣に居るけど荒療治で良いか)言いませんよ」
「殿はいつも目を合わしてくれないのです」
「あー…」
「披露宴の時も。皆はそう言ってくださいますが。きっと嫌われているのですね」
「(刑部さん。取り押さえて下さいよ!!!島左近!頑張ります)奥方様は三成様が好きなんっすか?」
「…」
「(そう来たか)私たちだけなのですから。言っておしまいなさい」
「…私が童の折酷い近習の方だと思いました。色々ありましたし。いつも怖い顔をしている様な方で。髪を上げた折半兵衛に許嫁の様なものだと言われた時どうしようかと思いましたもの。鬼に嫁ぐ様な心地で」
「(絶体いま大変なことになってるわ)へ、へー」
「ですが」
「?」
「…一度微笑まれたのを見てしまって」
「あの、三成様が?!」
「人違いでは?」
「私は皆様の様に身体能力が高くありませんので…何か折縁から落ちそうになった事がありました。髪を上げた後直ぐのことです。すごく怒られたのですが…怪我がなくよかったと不意に微笑まれて。あれからは一度も見ていないので…あの時から兄上や半兵衛に向けられるその視線の一雫でも私に向けられればと。ですが…取り留めて才覚のあるわけでもなく。歯牙にもかけていただけませんでしたから」
「(両思い!)三成様は物凄く不器用な方なんっすよ!」
「え?」
「嫌いな人なら落ちるの助けないし。微笑みませんって。それに…これ言って命あるかな、俺」
「言っても言わなくても同じですよ。言いなさい」
「?」
「実は奥方様が知らないだけで三成様もずっと奥方様見てんっすよ。あっ気持ち悪い感じじゃなくて」
「…」
「披露宴の時も。じっと見ては恥ずかしくて目を逸らしの繰り返しで。真っ赤だったんすよ」
「…」
「すっごい好きで惚れ切ってるから、こんなことになっちまったんすけど奥方様」
「は、い」
「三成様は貴方のこと本気で好きっすよ。あの人は地位とか名誉とか外聞とかそういうのどっちでも良くて。そういうもので左右されるくらいなら刑部さんも困りませんから」
「…島様」
「?」
「ありがとうございます。少し考えてみます」
「そうしてください!」









桜色









「というわけで文を頂いてきました」
「良くやりおったなぁ。ひひひ。使い様よな」
「なんか含みがすごいっすね」
「…」
「やれ三成」
「聞いてくれ刑部!又、文を書くと」
「良かった良かった」

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金茶

「ヌシの初陣の頃、よく笑う女童がいたのを覚えているか?」
「…?」
「何時もニコニコ笑っておってなぁ。良く道場横の楠にやって来ていた」
「ああ!あの姦しい童か。道場横で小鳥を呼んでは歌を歌っていた」
「其れが奥よ」
「…は?」
「あれが奥よ」
「…」
「煩いと小突き、姦しいと殴り。鳥に至っては稽古の邪魔と斬り伏せ。弱いお前が豊臣に居る理由を言えと恐喝し」
「刑部」
「その内笑わなくなった女童が局に移動して。裳着の後美しい女になっただけよな。」
「もう良い」
「確か裳着の儀も散々暴言を吐いていた。当然奥は聞き及んでおられるか。いつ懸想したかは知らぬがな」
「…」
「我もヌシの気持ちがわかった折よりは特にだが…ヌシの言を訂正していたが…ヌシの一味になってしまった。」
「私はどうすれば良い?」
「知らぬ。此処まで拗れてしまったら我とて知らぬ」
「…」
「やれどこに行く?」
「奥の元へ。会えぬとも良い。」
「左様か」





花を見てため息をつく。花と安直に考えていたが確か…手折るのを嫌っておられた。食べ物も好みがわからない。衣装も。





「奥方様」
「はい」
「起きられて大丈夫ですか?」
「いえ、だって」
「…あら」
「殿が、さきほど、から。右を左をされ、て」
「奥方様、笑い過ぎで御座います」
「だって、云々唸りながら庭に入ってこられて。やれ花では無い。甘味でも無いと。念仏の様に」
「其れはまた禍々しい念仏です事。殿」
「…?何故貴様が此処、に?!」
「此処は離れで御座いますゆえ。私がいてもおかしく有りますまい」
「奥?!いや、すまない。考え事をしていてだな、わざとでは無い」
「いえ…」
「すぐに…」
「殿?」
「いや、」
「?」
「久方振りに貴方の笑った顔を見る」
「あ…松」
「っそう隠さなくて良い。すまない。勝手に入ってきてしまった。」
「い、え」
「それと」
「はい?」
「私は貴方のその微笑みを見るのがとても、好きでした」
「…え?」
「ただ、それだけです。失礼いたします」







急いでその場を立ち去ると刑部がいて驚く。どうしたと尋ねれば笑うだけ笑って不器用よなと言われてしまう。



いつからかはわからない。ただ漠然と好きになったわけでも無い。




「これを弱さとおっしゃるのか」
「さてなぁ。だがヌシがまともに奥を愛したのなら…弱さ以外の何かを知りうるかもしれぬなぁ。」
「?」







金茶








「やれ、三成。」
「なんだ?」
「そう唸った頃で何も出来ぬ。」
「しかし」
「薬も医師も用意できる最良を用意した。傷も良くなってきて、床からも上がれる様になってきた。」
「何か奥が喜ぶ様なものは」
「女の好むものか…」
「甘味は」
「日々用意せよと言ったのを忘れたか」
「小動物は」
「ヌシのせいよな」
「花も手折るのを厭われる…刑部!」
「難題よな。なんだい。そうよな。手紙を再開してはどうか」
「だが」
「直接聞くにはそれしかあるまい」
「…」
「返事が来ねばまた考える。」
「わかった」

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