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変換なしの雑食夢

ran

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老竹色

あの頃の我は紀之介と呼ばれ、三成は佐吉と呼ばれていた。お互い太閤の側仕えでなぁ。姫とはその時に出会った。お互い今とさほど変わらぬ性格でな。ただ一つ違うのは三成は姫を姫は三成を表立って慈しんでいたことか。その頃より三成は対抗配下の武将の中より抜きんじておったし、何よりあの三成が姫の言うことだけは聞きしゃる。ぬしらはあまり見たことなかろうがあれは男だろうが女だろうが慇懃無礼でなぁ。自分の認めたもののみにだけ心を開く。太閤に賢人。我に…今はぬしらや真田が続くか。実力のあるものは認めはするが…心は開かぬ。本に面倒な男よ。
その面倒な男が唯一心を開き慈しんだ女が姫なのだ。
我とて理由はわからぬ。当の本人ですらわからぬであろう。出会った瞬間といえば軽々しいがそれ以外言いようがない。出会った折の印象が今の今まで変わらなかった。姫は三成の思い続けた姫であり三成は姫の思い続けた三成だったということよな。幼い、まだ髪もあげぬ折よりそうなのだから究極の青田買いよ。姫も三成も

太閤も賢人も。我とて姫が髪を上げたのち、早々と祝言を挙げようとよく話していたものよ。まだままごとの様だろうけども美しい女雛男雛になろうとなぁ。。





その歯車を狂わせたのは一人の女よ。ヒヒヒッ。あの堅物が浮気などしりゃるか。そう融通の利く男なればこうはならなかった故。




一人の女は姫の乳母。それとその一族郎等よ。
姫はこの者を実の母の様に慕っておったが、またこの女は虚栄心の強い女でなぁ。純粋な姫にはその裏の顔がわからぬ。姫を拐かし、内乱を起こそうとする其れの計画をいち早く知ったのは我よ。仲間にならぬかと打診しよった。後継者を三成に奪われて悔しくはないかとのう。ヒヒヒッ。笑を堪えるのに苦労したわ。よりによって我にそれを言う。我は何より、あの二人が夫婦になるのを楽しみにしておった。我の敵は我を害するものではなくてな。…それこそ我を厭うものはごまんとおる故きりがない。逆に我を厭わず。我を家族といってくれるものは少ない。それが三成と姫よ。故に我の敵はあの二人を害成すものよ。それからは早くてなぁ。姫を早々と奪還し、当時大阪で一番安全な座敷牢に入ってもらった。此処なれば、これ出すことはできぬでな。姫は非力故、苦渋の選択だった事を察してほしい。何よりあの姫に血溜まりを見せるのは、何より母の様に慕い仲良くしていた一族の躯を見せるのは太閤ですら憚られた。何より三成が厭うたのだ。姫も内乱を起こそうとするのなら話は別だろと気丈でな。さすが太閤の姫よと思ったものよ。


事は簡単に済んだ。元々武に長けた一族ではない上に我らの逆鱗に触れた故事は早かったのだがなその乳母は何故かその座敷牢の前にやって来てな恨みごとを散々言ったのち姫を射殺そうとしよった。
その時の姫は座って待っていろと太閤に言われた場所から一寸も動いておらんかったそうよ。そう、賢人に躾けられていたのを我らは知っていた故血が凍る心地だった。ただ、一人。三成が動いた。斬撃も間に合わぬ故に奴の体を盾にして。そしてそのままその女を殺した。姫の眼前で。


我も三成も賢人も。兄である太閤ですら物心のついた姫が泣くところは見たことなかった。色々な種類であるが姫は何時も笑んでおられた故。
姫が一筋の涙を流したのを見たのは後にも先にもその時だけよ。



三成はこの涙の意味を眼前を血で汚し、裏切ったとは言え大切な人を殺した悲しみと思い、即日婚約を破棄してほしいと願い出た。そして今の通り、必要時以外は声を出さず姿を見せず。眼前に侍るのを厭う。

姫の涙の真の理由は、己が力がない故皆の足手まといになり三成を傷付けてしまった事にある。日頃より力の無いものは不必要という男故その思考に拍車をかけたのだろう。婚約破棄もそれが理由と。すぐに受け入れた。そして姫として親しき臣下に接するが如くよ。昔の様に幸せそうに笑わなくなった。


これはただ純朴で面倒な二人の話よ。








老竹色

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「姫様は?」
「其処」
「初めて見ました。兄上が其処まで仕事しているのは。もっと盛っておけばよかった」
「吉良!てめぇ!!!」
「黙れ姫様が起きる!」
「へーへー。あー疲れた。明日は朝から宴開いてやる」
「良いですよ。今月分は終わりましたから」
「マジか!そりゃ良い!一月遊べるぜ」
「貴様…」
「あんたら大阪に送って行って一仕事してくるわ。えーと何処行くかねぇ。」
「最上あたりは如何。あれは見目が些かうざい」
「ははは。いいね。お茶を土産に帰り寄るわ」
「…」
「三成いそいそと羽織をかけしゃるな。こちらの話を聞け」
「貴様に任せる。」
「やれやれ。凶惶とて姫には弱い。今の今まで大阪以外に姫が一月も居ないとは初めて故なぁ」
「ははは。のようだ。」
「黙れ…吉良殿。姫様は」
「殿?!」
「吉良殿は事細かに姫の容態を早船で知らせてくれてなぁ」
「もう安定しています。船もこんな兄上ですが航海の腕はピカイチです。富嶽を走らせたら大きい分酔いにくいのですが流石に憚れますので沖より船を出しましょう」
「あいわかった」
「熱もおさがりのようだ…礼を言う」
「にしてもよー。あっさきちって知ってっか?」
「やれ、如何いう意味ぞ?」
「魘された姫さんが俺をそいつの見間違えてな。眼福眼福。いい顔見せてもらったぜ」
「ヒヒヒッ。主も銀髪故」
「佐吉など知らん」
「死んじまったのかね?恋待ち顔だったぜありゃ」
「兄上」
「…そんなはずはない。何かの勘違いだ、長曾我部」
「そうか。そりゃ残念。」
「その佐吉とやらは姫様を泣かした大罪人だ。もう二度と、口にするな。」
「へいへい。あ、行っちまった。」
「ヒヒヒッ。何処まで知ってる?」
「両方が焦れったい片思いしてるところはな」
「なれば話は早い、が。吉良殿。姫を侍女に頼んで寝所に運んで下され。我は」
「?」
「少し面倒な二人の昔話をしよう」






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白色

「えーと。これは?」
「釣りした事ねぇのかよ」
「ええ、まぁ」
「人生損してんぜ!」
「こちらの海は綺麗ですものね。大阪に繋がっていますが」
「兄上!!!!!貴方という人は!昨日ようやく床上げされたご婦人に体に触る海に連れ出そうとは!!!今日という今日は許しません!そこにお座りなさい!!!」
「げ、吉良がきれた!」
「うふふ。こういう時は逃げかくれせず怒られるのがよろしいかと。逃げれば火の粉が大火になられますよ」
「げー…姫さんまで。助けてくれねぇの?」
「ええ。経験が…吉良様は半兵衛をとても親切に親切にした様な方ですので。怒らせるのは得策ではありませんよ。何より、吉良様が大変そうで大変そうで」
「ほらごらんなさい!」
「しゃーねーな。」
「兄上!」
「あ、そういや。石田から文を貰った。あんた砂糖菓子好きなんだろ?ほれ」
「わ。」
「一緒に送ってきたから礼言えよ。」
「なぜ貴方が偉そうなのです」
「早けりゃ今日こっちに着くだろうに。まぁ普通なら明日明後日か?それまでゆっくり寝てな」
「…干菓子。可愛い」
「本当に好きだな」
「ええ」
「隠す気ないのかよ」
「ここには治部がいませんから。はい、吉良様。あーん」
「美味しいものですな」
「何だよそれ」
「だって吉良様、保護者会には入れそうな程親切なんですもの」
「保護者会?」
「刑部に佐助様。あと片倉様。当主がある意味何かを欠落しているところの右腕です」
「何だよ!欠落って!!!」
「治部は食と休息。真田様と伊達様は…あれですし。お二人は無意識有意識別として政務が。ですので長曾我部様も。仕事をして下さい。絡繰は万歩譲っても釣り三昧は。」
「う」
「言ってやってください。本当はからくりもいい加減にしろと言いたいのですが」
「あれはあれで国益ですけど…長曾我部様」
「な、何だよ」
「はいあーん」
「ん。うめぇなおい」
「美味しゅうございますか?」
「おう」
「先程」
「ん?」
「吉良様の顔色が悪いので如何したのかお尋ねしたのです。もし、私の病をうつしてしまっては大変ですから。ですが、あなた様を探し諌め代行し己が仕事をこなしその上の私の看病でございました。もう、肩身が狭くて狭くて。なにかお手伝いする事はとお尋ねいたしましたら貴方様の案件が疲労の八割との事。長曾我部様」
「…はい」
「お仕事いたしましょうね。菓子も食べましたし頭が働かないという事もありますまい。あと、私、治部や刑部。吉良様程の能吏ではありませんが妥協というのは恐ろしくてできません。さぁ早くお手の荷物を渡してそこに座りましょう」
「…はい」







白色







「やれなんぞあれは」
「躾けて頂いております」
「手伝おう」
「ならぬよ三成」
「何故だ!」
「ここできっちり躾けねば再々海を渡る羽目となろう。今は見守るが吉」
「…無理は」
「させませぬ。無理をさせるのはあのバカのみです。」
「なーなー姫さんよ」
「何ですか?」
「釣り」
「まだ一割もできておりませんよ。」
「でもよー海がよー」
「海も良い主人が来た方が喜びましょう。ほら計算間違ってます」
「うげ…」
「以前左近でも見たの」
「何??!」
「おっ!お二人さん来たのかよ!酒の用意」
「治部、刑部」
「わかっておる。わかっておる」
「おい、何処で荷解きをすればいい」
「夕刻までに終わらせましょうね」
「意外と怖ぇ」
「出ないと鬼ヶ島に単身できませんよ」

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深緋色

「何ですか?」
「おい、熱下がったか?」
「兄上は仕事をして下さい。くどくど女々しくいうものですから特別に同室でしているのですよ。」
「休憩だ。きゅーけー」
「っち。まぁ仕事せずウロウロするよりマシか」
「俺、当主なのに」
「黙って手拭いを変えなさい。…大谷殿からの書状で今の戦が終わり次第迎えに行くと」
「へー」
「あの進軍スピード。傘下に下るのは甚だ遺憾ですか英断だったのかもしれません」
「俺は豊臣の参加じゃねぇよ。姫さんのだ」
「まぁ、この方を見ていたら案外悪くないかもしれませんね」
「ははは。本当だな」
「ん…」
「姫様?」
「…」
「薬飲めそうかい?」
「…」
「っ!」
「さ、きち」
「は?」
「…」
「寝てしまったみたいですね」
「さきち?」
「にしてもあのように笑われるのですね」
「んー…どっかで聞いた様な。」
「石田様の幼名ではありませんでしたか?」
「そういや。銀髪で見間違えたか。…ん?」
「どうしました?随分酷い顔をしておいでですが」
「いや、ね。」





目が醒めると体が楽になっていてほっとする。周りを見ていると吉良様がいて苦笑してしまう。



「お気づきですか?」
「ご迷惑をおかけしました。」
「いいえ。」
「大分体調も良くなりました。長曾我部様は?」
「先に言っておきます」
「?」
「今から兄上が碌でもないことをしようとしても我らには何の関わりもないこと。処罰は兄上だけにして頂き、我らには火の粉が降りかかれませぬ事平にお願い申し上げます」
「何か、あったのはわかりましたが。とりあえず胃薬をお飲みください」





深緋色





「元気になったみてぇじゃねぇか!」
「はい」
「…」
「で不躾なんだけどよ」
「?」
「さきちって誰だ?」
「治部ですね」
「…あんたらそういう関係?」
「いいえ。違いますよ」
「の、わりには」
「?」
「魘されている間とか寝ぼけてる時なんかいい顔だったぜあんた」
「ふふふ。これですね」
「ええ。あいすみません」
「いえ。いいのですよ。永遠の片思いの様なものです」
「ふーん」
「兄上」
「お気になさらないでください。半兵衛なんてもっと酷いものですよ。ですが…長曾我部様吉良様。決して治部には言わないで下さいません」
「どうしてだよ」
「治部は兄様に忠誠を誓っております。…お心の内と反する事は私としても遺憾なのです」
「そんな顔すんなって。な」
「ふふふ。ありがとうございます。」

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「…」
「起きなさったか?」
「ぎょうぶ?」
「昨日より酷いか。しかし…今日明日が病の峠よの。此処から快癒に向かおうが…やはり日を改めるか?」
「いいえ。じぶもあなたもいそがしいみ」
「にしても太閤よりは半月の猶予をもらっておる」
「でも、はんべえがおこる」
「なれば二人を呼ぼうなぁ。誰か」
「ありがとう」
「よく礼が言える。姫は良い子だ」
「ほめられました。」
「姫はようよう良い子故褒める機会がない、ない」
「ふふふ。」
「来よったな」
「やっぱり酷くなってるな。姫さんよ。やっぱり明日にしねぇか?」
「いいえ。でも」
「?」
「うごけません」
「ははは。そりゃそうだ」
「とこからはいけませんか?」
「俺はいいぜ。吉良。おめぇさんも異存はないな」
「兄上がそうおっしゃるのなら」
「我らも構わんよ」
「…わたしもだ」
「では」




そういうと刑部が誓紙と硯を取ってきてくれて座らせてくれる。さらさらと書いてこれでいいですか言うと異存はないようで皆に名と花押。血判を頼む。これだけでも目が回るのだからかなり厳しい。



「姫」
「ああ、わたしのばんてすね」
「あいも変わらず別嬪な字だ」
「…そういえば」
「?」
「血判はどうする。まさか切るとは申しはしまいな」
「え?きらないと…たれかわたしのかいとうをとってください」
「そいつはいけねぇ!」
「ですがけっぱんがないと」
「ならぬならぬ」
「では針を」
「?」
「針でついてなら」
「…」
「じぶ。おかおがこわい」
「申し訳ありません。ですが…」
「…いかがいたしましょう?」
「朱肉で如何か?」
「だめでしょ?」
「いや!ここんとこにその旨書けば良い!なぁ!お二人さん!」
「名案よ名案」
「いいのですね?」
「ヒヒヒッ。誰か朱肉を」
「…過保護ですね」
「おはずかしいかぎりです」










「一旦帰ってまた来る」
「いつでも待ってるぜ」
「もしも何かあった折はこの忍びを使うてくれ」
「ああ」
「三成」
「今行く」
「そういや、聞きたい事があった」
「私的か?公的か?」
「私的。姫さんのことだけどよ」
「?」
「婚約破棄されたって本当かよ?」
「…ああ」
「やれ、三成。西海の。それをどこで?」
「本人に聞いた」
「破棄ではなく…停止よ停止」
「相手は?豊臣の?」
「やけに気にかけるな」
「いやさな。なんな悲しそうな顔させると相手が誰かと思ってな」
「ヒヒヒッ。まぁその話は緩々と。…三成」
「今行く」
「名残惜しければぬしは残るといい」
「構わん。長曾我部」
「おう?」
「姫様を頼む。」

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